(2020年3月12日)
アビ女(DamePlongeon)神話に戻ります。粗筋は本投稿の初段(3月10,11日)にて紹介しております。手書き図を参考にしてください。また昨日11日投稿の図と見比べれば理解がはかどる当神話が他の南北新大陸神話とことなる点を申す;
写真:アビ女の神話を言い伝えていたAchomawi族の男(ネットから)何となく日本人に似ているので掲載した。
(天地開闢、文化創造を主題とする神話に限る)
1 他神話では英雄(すなわち男)が文化を創造する。しかしアビ女に限り女英雄が文化を創造する。女英雄なる語の形容矛盾は美しくない、以下ヒロインとする。
2 ヒロインが開いた天地には人が住まない、湖の底に彼女は潜む。アビ(水鳥)の陰鬱な鳴き声が響く湖水に人々の息吹は聞こえない。
3 文化の原点である竈の火をジャガーなどから盗むを文化の濫觴とする(ボロロ族など南米神話)、アビ女では「焼き尽くす火」、文化を否定する火である。
4 Aigle(ヒロインPlongeonの姉)は湖畔に住む兄弟に狩りの道具を与える。彼らが狩るのは野ブタ(viande肉)ではない。食べられないアビである。前回(3月11日)投稿し、解析した三角形の図式「竈の火+狩猟道具=料理」を手段として、目的の「肉」に向かう弁証法の方向は逆となる、これはすなわちanti-chasse反狩猟である。目的に向かうとは文化から遠のく。反文化なので下向きとした。
5 前回説明通り、肉はタバコに対して手段であり、またタバコの目的でもある。この二律背反性をして手段>目的の無限連鎖を断ちきり、神話三角形を閉じる役割を担わせる。そしてこのアビ女神話では肉を「狩る」文化的作業はない、食えないアビは「反肉」である。それはあるモノの手段であり目的となる。そのあるモノはタバコではなく灰である。灰、すなわちanti-tabacが無限連鎖を止め、神話三角形を「反文化」に色づけながら形成する。灰とはAigleが集めた父、兄弟の心臓である(原文ではdisque、直訳は椎間(円)板となる、アメランディアンはそこに人の精神(あるいは不滅)が宿ると信仰していたようだ。それと直訳しても含意を表現できないから、「心臓」とあえて誤訳した)Aigleは家族の心臓を集め灰にして蘇生させる。すなわち灰とは人由来、焼け死んだ者の一部をさらに灰に化けさせ蘇生するとは、元の(文化を未達成、特に同盟が成立していない)時代に戻るループを形成する。以上が「火」を素材にする反文化の弁証法的進展である。
6 水を元とした文化発展の様を見ると、服飾(parure)に死者の心臓を首飾りとするPlongeon(近親姦を迫る姉)が挙げられる。本来は水由来(貝、真珠など)を着飾るのだが人由来の服飾をanti-parureとレヴィストロースは説く。
7 蜜は火の加工を施さずに(水で希釈して)文化生産物(hydromel蜜酒)となる。蜜は求婚者が嫁実家への贈り物(役務prestation)として重要である。嫁実家では自家消費はほどほどにして、蜜酒を仕込む。これはその精製を祝う儀礼を村民総出にして執りもたれるなど、社会同盟の維持に欠かせない。婿の贈り物が多いほど、舅の社会地位は上がる。儀礼、地位、それに見合う服飾の華麗さ、供出する蜜酒の壺の数、これらが社会秩序で、文化そのものである。しかしアビ女神話では「秩序維持」をほのめかす挿話は出てこない。レヴィストロースは「塩泉」を蜜と対比させる。共通点は水、嗜好性、副産物を婿の役務(鹿肉)として利用できる。相違は一方は自然であり、自然を加工し文化となる。片方は人由来(人の涙)である故にanti-miel(反蜜)と位置づける。
8 全体を流れる思想は同盟の破壊「反同盟」である。弟と拉致し相姦を迫る姉(Plongeon)、腹いせに家族、村落を火で破壊する。孤立を選ぶ己は湖底で反文化(気味悪い叫び)をたてる。
9 一つの挿話、生き残った一人は隣村で娘に助け出され、恢復し同盟を結ぶ(娘二人を嫁にする)。その時にヤマアラシが出てきて「これ幸い」と捕殺して棘毛を抜いて、姑に贈る。また己の涙で鹿を呼び寄せ、多量の鹿肉を舅に贈る。これらは婿の役務で同盟結成の手順が、文化遵守で実行された訳だが、この同盟も結局は「蘇った旧家族の計略で」破壊される。反同盟の宙ぶらりんの文化社会に戻った。
アビ女神話はボロロ族の英雄と文化創造神話とは正反対、あらゆる点で「反文化」の思潮を元に語られる神話である。続く
アビ女(DamePlongeon)神話に戻ります。粗筋は本投稿の初段(3月10,11日)にて紹介しております。手書き図を参考にしてください。また昨日11日投稿の図と見比べれば理解がはかどる当神話が他の南北新大陸神話とことなる点を申す;
写真:アビ女の神話を言い伝えていたAchomawi族の男(ネットから)何となく日本人に似ているので掲載した。
(天地開闢、文化創造を主題とする神話に限る)
1 他神話では英雄(すなわち男)が文化を創造する。しかしアビ女に限り女英雄が文化を創造する。女英雄なる語の形容矛盾は美しくない、以下ヒロインとする。
2 ヒロインが開いた天地には人が住まない、湖の底に彼女は潜む。アビ(水鳥)の陰鬱な鳴き声が響く湖水に人々の息吹は聞こえない。
3 文化の原点である竈の火をジャガーなどから盗むを文化の濫觴とする(ボロロ族など南米神話)、アビ女では「焼き尽くす火」、文化を否定する火である。
4 Aigle(ヒロインPlongeonの姉)は湖畔に住む兄弟に狩りの道具を与える。彼らが狩るのは野ブタ(viande肉)ではない。食べられないアビである。前回(3月11日)投稿し、解析した三角形の図式「竈の火+狩猟道具=料理」を手段として、目的の「肉」に向かう弁証法の方向は逆となる、これはすなわちanti-chasse反狩猟である。目的に向かうとは文化から遠のく。反文化なので下向きとした。
5 前回説明通り、肉はタバコに対して手段であり、またタバコの目的でもある。この二律背反性をして手段>目的の無限連鎖を断ちきり、神話三角形を閉じる役割を担わせる。そしてこのアビ女神話では肉を「狩る」文化的作業はない、食えないアビは「反肉」である。それはあるモノの手段であり目的となる。そのあるモノはタバコではなく灰である。灰、すなわちanti-tabacが無限連鎖を止め、神話三角形を「反文化」に色づけながら形成する。灰とはAigleが集めた父、兄弟の心臓である(原文ではdisque、直訳は椎間(円)板となる、アメランディアンはそこに人の精神(あるいは不滅)が宿ると信仰していたようだ。それと直訳しても含意を表現できないから、「心臓」とあえて誤訳した)Aigleは家族の心臓を集め灰にして蘇生させる。すなわち灰とは人由来、焼け死んだ者の一部をさらに灰に化けさせ蘇生するとは、元の(文化を未達成、特に同盟が成立していない)時代に戻るループを形成する。以上が「火」を素材にする反文化の弁証法的進展である。
6 水を元とした文化発展の様を見ると、服飾(parure)に死者の心臓を首飾りとするPlongeon(近親姦を迫る姉)が挙げられる。本来は水由来(貝、真珠など)を着飾るのだが人由来の服飾をanti-parureとレヴィストロースは説く。
7 蜜は火の加工を施さずに(水で希釈して)文化生産物(hydromel蜜酒)となる。蜜は求婚者が嫁実家への贈り物(役務prestation)として重要である。嫁実家では自家消費はほどほどにして、蜜酒を仕込む。これはその精製を祝う儀礼を村民総出にして執りもたれるなど、社会同盟の維持に欠かせない。婿の贈り物が多いほど、舅の社会地位は上がる。儀礼、地位、それに見合う服飾の華麗さ、供出する蜜酒の壺の数、これらが社会秩序で、文化そのものである。しかしアビ女神話では「秩序維持」をほのめかす挿話は出てこない。レヴィストロースは「塩泉」を蜜と対比させる。共通点は水、嗜好性、副産物を婿の役務(鹿肉)として利用できる。相違は一方は自然であり、自然を加工し文化となる。片方は人由来(人の涙)である故にanti-miel(反蜜)と位置づける。
8 全体を流れる思想は同盟の破壊「反同盟」である。弟と拉致し相姦を迫る姉(Plongeon)、腹いせに家族、村落を火で破壊する。孤立を選ぶ己は湖底で反文化(気味悪い叫び)をたてる。
9 一つの挿話、生き残った一人は隣村で娘に助け出され、恢復し同盟を結ぶ(娘二人を嫁にする)。その時にヤマアラシが出てきて「これ幸い」と捕殺して棘毛を抜いて、姑に贈る。また己の涙で鹿を呼び寄せ、多量の鹿肉を舅に贈る。これらは婿の役務で同盟結成の手順が、文化遵守で実行された訳だが、この同盟も結局は「蘇った旧家族の計略で」破壊される。反同盟の宙ぶらりんの文化社会に戻った。
アビ女神話はボロロ族の英雄と文化創造神話とは正反対、あらゆる点で「反文化」の思潮を元に語られる神話である。続く
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