蕃神義雄 部族民通信

レヴィストロース著作悲しき熱帯、神話学4部作を紹介している。

野生の思考のまとめYoutube投稿

2021年01月07日 | 小説
部族民通信youtube講座第16回目(1月6日投稿)は野生の思考のまとめになります。
PDFを3葉あげてています。そのうち2葉を取り上げます。




中央の円は野生の思考の中核である「具体科学」。その特徴は「モノへの拘泥」です。モノが主体で、それが移動、結合、同化...などを(自主的に)行う。左上の円は魔術(哲学)。congruenceという、近代人には理解しにくい作用でモノ同士を紐つける。度々例として挙げる「雷怨念論」は魔術の思弁法を端的に現すのですが、死者の恨みと雷の勢いを一元因果でcongruence紐付けしている。左下は科学技術のbricolage寄せ集め、やっつけ仕事。分類法にはcorrepondance(交信)なる思弁が働き、一見なんの関連もない2体を結びつけます。

右の楕円に近代科学を置きました。これを理解するためにもう一葉を、


野生の思考と近代思考の対比です。この図の伝えかけは「近代科学はモノを属性の塊として見る」です。属性分解が近代科学の基本で、それはコペルニクス、デカルトに濫觴を発した....。実は近代科学はこの著作「野生の思考」ではほとんど触れられていない。ただ「それが生まれて数百年」とだけレヴィストロースは伝えている。その数百年にコペルニクスらを結びつけた、ここは部族民通信の勝手解釈です。その勝手を妄想気味に膨らませたのが、この図です。皆様のご批判をいただければ。

動画はyoutubeに入って部族民通信で検索するか、
部族民通信の「動画とPDFサイトwww.tribesmytube.com」を訪れてください。了(渡来部須万男2021年1月7日)
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親族の基本構造を解く1

2021年01月05日 | 小説
(2021年1月5日)
部族民通信としてこれまで取り上げていない「Les Structures Elémentaires de la Parenté親族の基本構造」(レヴィストロース著、初版1947年、第2版1963年)の解説を試みる。本書(小筆手元にあるは第2版=最終版、初版を増補して570頁)は大作である。頁を進めるにつれ、世界の諸先住民の婚姻にまつわる習慣、制度が紹介される。民族誌学の門外漢は族名に馴染みはなく、居住域やら族民らの外貌にも知識を持たない。挿話を追い続けるは荷が重い。よって紹介は;

序Introduction
第一部Nature et Culture 自然と文化 
以下章題のみ記述。 近親婚の問題 交換の基礎限定交換 規則の世界 族内婚と族外婚 互酬性の原理 二重構造 古代という幻想 同盟と系統 イトコ婚について(これが第9章)。 
また、ある一部族の制度が非常に興味深いので、これを紹介します;
婚姻と次世代再生産の仕掛けを精緻に制度化しているMurngin族(オーストラリア先住民アボリジン)の女と子の分配制度(第12章、章題はMurnginのシステム)。合わせておおよそ全頁の半分ほどとなります。残り半分は世界先住民の民族誌に詳しい方の領域と勝手に解釈して読んでいません。なお全章の章題は以下の通り(別紙=ホームサイトに載せる)。


第二版の表紙


いくつかの留意を「前文」として;

著作の経緯:
初版の出版は1947年、レヴィストロースは1940から45年まで米国に亡命していた。この間、英語圏の民族誌資料に接し、米国の民族学者とも交流を持った。終戦と共に帰国、かねてから温めていた主題「文化の誕生」を、社会組織発達の切り口から本書をまとめた。
自然から文化へ、親族構造の自然を「小バンド」ほとんど一家族のバンドとする。この構成のなかですでに「近親婚の禁止prohibition de l’inceste」の規則が形成されていたと想定している。人類はすべてがこの家族バンドを経由している。あらゆる社会で今も、近親婚の禁止(あるいは禁忌)の規則を持つ理由となる。後に新石器革命で集合体が拡大する過程(文化の発達)にて、それぞれの社会が独自の制度で「近親=婚姻できない範疇」を決めていった。

そのように解釈すると彼が投げかける謎、あらゆる社会は「近親婚の禁止」しているが、禁止の範囲は「社会ごとに異なる」が解ける。

本書は「結論ありき」。
レヴィストロースが自身の人類哲学を語る、これが本書の目的です。
社会科学書の一般は現象を見つけて、それを人に分からせんと(平易な)語句で説明する。レヴィストロースにあっては己が組み立てる理論が前段に揃っていて、その理論を証明するために社会事象を取り上げる。取り上げ方は当然の事、己理論の後陣からの説明となる。自説をまず先に出し事象を引き回す、読みつつこんな印象が湧き出るが、彼の人類学の着地点がここ、自然と文化の相克、にあると信じれば気にならない。

読者には分かりにくいと思われるから;

親族構造は狭い範囲での系統+同盟(filiation, alliance)をまず想定している。
系統とは家族であり、自己内で再生産を行わない族外婚(exogamie)の集団として位置づけられる。これをして、そもそもの始まりから人は近親婚を禁止していたと主張する。人として「自然」段階での近親婚の禁止状況です。
同じく族外婚の他家族と同盟を組み両の家族が娘を交換し合い2の系統でendogamie族内婚集団をなす。これを原初の「親族の基本構造」として想定する。この形態は「旧石器時代」の家族構造を伺わせる。地力生産性が低いから大きなバンドを組めない。
族外婚集団がより大きなバンド(数家族の集合)に発展し、同じく他の族外婚バンドと女の交換を通して、族内と族外の婚姻の制度を明確にして(=親族範囲の発展)関係を強固にする。バンドからさらに邑落単位に….

この理論の拠り所として彼は「もし私が家族と族内婚を実施していたら」すなわち「娘あるいは姉妹と近親婚」を実施していたら、他の集団と女交換の輪に入れない。俗な言い方で誰もセコハン娘を嫁にしない。そうしたバンド内で世代再生産に用いる試みが、かつてあったとしたら、その家族filiationはとっくに絶滅していた筈だ。系統filiaionとallienceの峻別は親族構造の原初であり、人としての原点でもある。
至極もっともな観察であります。

<Ta propre mère, ta propre soeur, tes propres porcs…..tu ne peux les manger>
実の母、実の姉妹、所有する豚をおまえは食ってはならない。Arapesh族の言い伝え、第2部の巻頭頁にM.Meadの採取として引用されている。

バンドが拡大する、邑落となる。これは親族構造の制度化を導きます。この制度の複雑化は即、社会規則の厳格化、巧緻化に帰結する。
しかしこの発展過程をレヴィストロースは考証するものではありません。
家族単位から族民全体への制度、構造への発展は思考の結果です。これをして(部族民蕃神)は哲学とします。それを受け入れるか、実証という観点からは賛同できないとするか…読者の選択です。
実証主義の根強い英米系人類学徒はこの演繹手法を読み取り、実際とことなるなど批判を浴びせていた。(結論ありきの論理展開はレヴィストロース他の作品にも認められる、野生の思考など)

(親族の基本構造 1 の了)

部族民通信から:2021年、この投稿を週2回の頻度で進めたい。また渡来部が出演する「youtube講座」は週1回水曜日に投稿する目標(蕃神)
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令和3年、部族民通信から新年の挨拶

2021年01月01日 | 小説
令和3年、西暦2021年、元旦を迎え当ブログ訪問者様に祝辞を申し上げます。今年一年、仕事、家庭生活でゆとりある健康な一年をお過ごしください。

昨年を振り返ると、邦国は年初から武漢ウィルスに襲われ、その猖獗の様たるは国民の呻吟すすり泣きに窺えるほどでした。もちろん経済停滞に見舞われました。業種によって売り上げの甚減により休業退業に陥った事業所もあると聞きます。投稿子(蕃神義男)にあって長らく短時間労働(アルバイト)に身を預けていた焼き鳥店(南平Yちゃん)雇い止めに遭い、生活苦の口すすぎ、ノリ喰む糧を得むとさる地方の製造事業所に期間契約員として潜り込みました。その契約が昨年末で終了、本年一月から東京日野市に帰るので、部族民通信のサイバー活動を再開いたします。
一月一日時点ではここ、さる田舎に居住していますが、なんとも空っ風が冷たい県です。渡来部が「オワタ」市と言ったが、これは間違い。もう少しだけマシな名を持つ市です。

さて、
昨年10月から渡来部須万男(部族民通信の創設者)がyoutube活動に入り、何とかサイバー空間での活動を維持していました。そして本年からは投稿子が参入できるのでBlog、ホームサイト、youtubeのネット劇場を3本立てで興業する計画たてています。Blog、ホームサイトでは懸案だった「親族の基本構造」を取り上げます。
それというのも、

期間工員で日勤すること半年余、朝ボシを仰いで朝に出勤し、夕には一番ボシを背に宿舎に帰る。夜は梅ボシなめてもたくあんで、ご飯を食ったら、本を読むしか時間がつぶせない。だから親族…を読み続けていた。するとわかったのですよ、レヴィストロースが伝えたい真の主題が。文化の始まりが規則、規則の初めが「近親婚の禁止」この本当の意味が。それは…これ以降はblogのお楽しみに。

この地では夕餉の主菜がウメボシとタクアン。


タクアンをこれだけヒネさせるには赤城おろしの空っ風がないとできない、ゼーゴモンは自慢する

本年も皆様のご訪問を楽しみにしています(蕃神)
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