鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

花文八重出雲図鐔 信家 Nobuie Tsuba

2011-11-16 | 鍔の歴史
花文八重出雲図鐔 (鍔の歴史)


花文八重出雲図鐔 信家

 信家の鐔の文様は、複雑に見えて意外と簡潔である。図柄に秘められた意味も直截的。良く例として採られることのある、運は天にあり具足は質屋にありなどは、洒落気もストレートである。文字を図柄として採り入れる趣向は尾張鐔などにもみられる。
 この鐔では、鎚目の効いた鉄地を打返耳に仕立て、表には花文を毛彫にて施し、裏には鏨強く文字を切り施している。耳はなだらかに変化して打ち返した際の皺も観察され、鋤き残し耳とは異なる古法そのままの地に仕上げている。ここに花文の毛彫がかかって自然な働きとなって視覚に訴えくる。もちろん裏の文字は力強く逞しく、大きな魅力だ。
 文字も迫力あるのだが、信家の鐔の文様とは、強い鉄の地鉄があってこそのもので、文様は主題ではなく地鉄の魅力を高める要素。鉄地そのものが、信家が表わした主題である。