酔漢のくだまき

半落語的エッセイ未満。
難しい事は抜き。
単に「くだまき」なのでございます。

ジャスコな話2 小学校の頃 再び

2007-07-18 11:35:18 | 塩竈小学校の頃の話
サンスターが出した「スパイ手帳」はブレイクしたアイティムでした。小さな鏡(反射を利用した信号用)ペン先でこすると文字が浮き出るペン、水に流して消えてしまうメモ用紙(証拠隠滅用?)など、皆持っていて、僕らの必須携帯用品でした。
放課後、僕らは通称「女郎山」に集合し、塩釜信号灯台(女郎山山頂に高い塔が1本と北浜に短い塔が1本対になって立っていて、塩釜港に入港する際、高い塔の赤い光と北浜の短い塔の赤い光が上下に一直線に並べば、船が無事航路からずれることなく、港に入港できる仕組みでした。「馬離し島」の信号所兼監視所を過ぎれば、この信号灯台が塩釜港への道しるべとなっていたのでした)の下で、スパイ手帳を使った探偵ごっこをしておりました。
「んで、隠れる場所さぁきめっぺ。暗号は浮き出るペンで書いておくからっしゃ」
「廃寺(本当に不気味なお寺跡がありました)の中さいったらいいべ」
僕らの遊びが佳境に入っていたとき、海風と共に、けたたましいサイレンの音が街中から聞こえてきました。
「なんだべ、火事かや」
「んでも煙見えねぇべ」
僕ら、塩釜でも高台におりましたものですから、煙は見えるはずでした。今でも、塩竈市内を一望できる位置です。
「ちょっと、いつもと違わねぇか」
本当に、塩竈中の消防車、パトカー、救急車が一斉に走り出したそんな音でした。
(一年後、それでは済まない電車事故はありましたが、僕の記憶では、2番目のサイレンの音だった事は確かです)
灯台のそばに大きな松の木があり、そこに登っていたわたなべ君が何かを見つけたようでした。
「ジャスコ工事現場にいっぱい車止まってとぉ!。あっ救急車もたくさんいっぺ!」
「んで、行ってみっぺ」
僕らは、女郎山から小松崎方面へまず走り、北浜の階段(市立北浜保育所のところ)を駆け下り、北浜2丁目の交差点を渡りました。かきの専門店「松木牡蠣店」の横から一気にジャスコ建設現場まで向いました。新河岸川の橋を渡ろうとしたときには野次馬でごった返しておりました。そして、いたるところにロープが張られ、通行禁止の表示がされておりました。
「何あったのかや?」
「こっからみぇねぇおん、わかんねぇべっちゃ」
僕らは本当にただならない事故が起きたに違いないと、誰しもが思っていたとき、隣にいたおばちゃん達が口々にこう言っているのが、耳に入りました。
「工事現場の足場が落ちて、崩れたんだとっしゃ。んで、車が下敷きになったんだとっしゃ。まだ人助けられねぇでいるんだおん」
僕らは、目の前でこんな事が起きているなんて考えもしませんでした。
みつどめ君が、「あっちさぁ回れば見えっかもしゃねぇど」と言いました。
「んで、あっちさぁ行ってみっぺ」
僕らは新河岸川沿いに走り、本塩釜(昔の)駅へ着き、商店街方面へ走り、貨物駅へと向いました。貨物駅から北浜2丁目へ、丁度逆方向から、見ようとしたのでした。結構、野次馬がいたものの、間をすり抜け、事故現場方面へ目をやると、本当に信じられない光景が目に飛び込んできました。それを見た瞬間、僕らは恐ろしさのあまり、言葉が出ませんでした。
相変わらず、けたたましいサイレンの音が響いております。
ジャスコ建設現場脇交差点の信号つき電柱が斜めに傾き、鉄の板がパイプと一緒に道路に散乱し、ペシャンコになった自動車がその下敷きになっている光景でした。
「車が板みてぇだべ」わたなべ君がようやく口を開きました。
消防署の人達が懸命に車の中を覗いております。
瓦礫をどける小型のクレーン車がようやく現場に到着したようでした。
「あっ車、1台でねぇべ、前の方さもう一台あっぺ」
車を押しつぶしていた瓦礫が少しずつ片付けられていくにつれ、つぶれた車が見えてきました。本当にペシャンコでした。で、その時、消防の人が大勢一台目の車に集まったかと思ったら、何かを引きずるような格好をし始めました。
「なんか出てくっと」
「人でねぇかや」
「生きてればいいなや」
僕らの位置からははっきり見えないので、どんな作業をしているのかは、回りにいる人達の動きで推察するしかありませんでした。
その時です。メガホンをもった消防隊員の人が僕らの方に向ってこう言っておりました。
「まだ、足場が崩れる危険があります。皆さんここから下がって下さい」
僕らはおまわりさんの誘導に従い、この現場を後にしました。
まだ、まだサイレンはなっておりました。
「なんか買っていくべ」
「そうすっか」
北浜の菅原商店(今も健在)で、ラムネを買いました。
普段饒舌な僕らではありましたが、事故の生生しい現場を見た後です。誰一人話しはじめる奴はおりませんでした。僕らは店前にあるベンチに座って(森永ラクトアイス看板つきの)黙ってラムネを飲んでおりました。
その時、ひとりのばっぱが買い物に入って来ました。店番をしているおばさんとたった今起こった事故の話しを始めました。
「だれ、車さぁ人乗っていてたんだおん。二人死んだんだとや。まんずこぇかったんなや」
「そばさぁいたのすか?」とお店のおばさん。
「後ろ振り向いたら、すんげぇ音ばして、煙あがったんだん。腰ぬかしたっちゃ」

「エツジの言った通りになったなやな」
「んだっちゃ、だれ、本当に落ちっと思わねぇちゃ」

家に帰り、母にそのことを話しました。母は「市川紙店」で買い物をしていたそうです。家に帰ってニュースを見るまでは、大きな火事でもあったのかと思っていたそうです。
翌日、新聞の地方版の一面は昨日のジャスコ塩釜店工事現場の足場落下事故の報道でした。やはり車2台が下敷きになり、死者が出たと報道しておりました。また、下敷きになった車のすぐ後ろにいたタクシー運転手の談話も載っておりました。改めて、事故の恐ろしさを知りました。

ジャスコはその後、事故の事も忘れたように、建設が進みました。で、オープンの日を迎えます。前日には、やはりエツジの注意がありました。

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