2017年 2月4日付日経朝刊の「春秋」からです。
「ほめたたえるために生れてきたのだ。ののしるために生れてきたのではない。否定するために生れてきたのではない。肯定するために生れてきたのだ」――。「冬に」と題した谷川俊太郎さんの詩である。けれども、この詩の中には冬という言葉が一度も出てこない。
▼景色から色彩が消える季節は、意識がおのずと外ではなく自分の心の内側へと向かう。静寂が包む雪の日なら、なおさらだ。何のために生きているのだろう。己がなすべき善きこととは何だろう。自分の本当の居場所はどこだろう。ふと問いかけ、やがて考えるのをやめ、また自問する。そうこうするうち冬は過ぎていく。
▼家具の名産地で知られる北国、旭川に近い5つの町でなら、答えは簡単に見つかるかもしれない。「君の椅子」という制度があるからだ。地元で赤ちゃんが生まれると、子供用の木製椅子が自治体から贈られる。「生まれてくれてありがとう。君の居場所はここにあるからね」。買えば5万円もする立派な旭川家具である。
▼計画が始まり今年で10年になる。地域社会に祝福され、用意されていた一脚の椅子と共に暮らして育つ子供たちは、他者への愛と自信に満ちた大人になるに違いない。谷川さんの詩はこう続く。「死ぬために生れてきたのではない。生きるために生れてきたのだ」。人の命を大切にしない者が暴れる世界は、まだ冬の中だ。
感動しました! 加除する余地の無い洗練された文章であり、古い切り抜きを発見し、そのまま掲載させて頂きました。
「人事管理雑感カウンセリング・・・」のブログタイトルに、驚きましたが、心のリフレッシュをさせていただきたいと思います。
今後ともよろしくお願いいたします。
「曲がり角の向こうに」を楽しく拝読しております。
こちらこそ宜しくお願い致します。