代表的なカウンセリング理論の概略をみてきましたので、これらの理論を実際のキャリア
カウンセリングの場でどう適用していくのか?またその限界について考えていきたいと思い
ます。当シリーズで取り上げた以外にも多くの理論が存在するわけですがキャリアカウンセ
リングに最も関係ある有効な理論や技法を3つあげるとしたら①特性因子論的カウンセリ
ング②来談者中心的カウンセリング③行動的カウンセリングでしょう。
1.特性因子論的カウンセリング
カウンセラーはまず、さまざまな心理検査等を用いてアセスメントを行い、クライエン
トの諸特性を正確に分析し診断結果と職業・職務のもつ要件とのマッチングを視野におき
ながら、キャリア問題に関するカウンセリングを行います。伝統的な、キャリア選択を簡
便に、またシステマチックに行うこのカウンセリングの実際的有効性は現在も高く評価さ
れて、一般的に幅広く活用されています。
しかしこの特性因子論にもとづくキャリアカウンセリングは①指示的である②カウンセ
ラー中心であり、カウンセラーの技術に重点がおかれており、カウンセラーの権威や責任
が大きくなりがちである③クライエントの心理的・情緒的側面が軽視されがちである。等
の問題点や批判が存在しています。
2.来談者中心的カウンセリング
クライエントの話を積極的に傾聴しながらクライエントをありのままに受容、共感的に
理解しながら信頼関係を築き、クライエントの成長力に深い信頼をよせながら非指示的
カウンセリングをを行い、問題解決の支援を行うことをそのねらいとします。クライエン
トを人間的に尊重しその主体性を大切にするある意味で理想的なカウンセリングで、すべ
ての技法に共通するベースに存在するものとして、その存在感には現在でも大なるものが
あ理ます。
しかしながら一方で、クライエント理解のための客観的な情報、判断材料の収集とその
実際的活用を欠くという弱点をもつために、キャリアカウンセリングの具体的問題解決が
十分機能しがたい面もあり、おのずから限界も存在します。
3.行動主義的カウンセリング
学習理論(人の行動はそのこうどうを学習したことから形成されており、環境要因や
遭遇した出来ごとに刺激を受け、行動がおこり、強化され、この一連のプロセスが繰り返
されるものである)をその基盤としており、情報の収集、目標の策定、具体的行動計画、
効果測定などを行う点に関しては、非常に行動科学的、客観的・論理的であり、大変分か
りやすく 具体的で、短期間にカウンセリングの効果をあげることができる大きなメリッ
トをもっています。
一方カウンセラーは指示的、主導的であり、有効な情報提供をしながら、助言・指示を
あたえ、あるときは積極的にカウンセラーがリードしていくカウンセリングです。
*折衷的カウンセリング
以上主な3つのカウンセリング理論を、キャリアカウンセリングに適用する場合の特性
を、簡単に述べましたが、もっとも効果的な運用としては
①まずカウンセリングの原点となる基本姿勢を来談者中心的カウンセリングにおき
②クライエントとその抱える問題内容、状況に応じて、その他のさまざまな技法を柔軟に
活用し、幅広い情報収集と診断、助言・指導、情報提供をおこなう
といった折衷的なカウンセリングがキャリアカウンセリングには求められるのです。
出所: 宮城まり子 キャリアカウンセリング
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