![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/14/a3/c2e8633c64e248e0597cf9aa9eade7f3.jpg)
キャリアカウンセリングは(カウンセリングの源流でもあるのですが)20
世紀初頭に米マサチューセッツ州ボストンのフランク・パーソンズによる職業
指導運動によって始まったとされています。
当時のアメリカは産業革命によって社会環境が激変し、ヨーロッパ各地から
多くの移民も入ってきていました。
急激な経済成長と 人口の都市部への集中により 過密で劣悪な労働環境のな
か 個人の適性など考慮されることなく、従業員は機械的に仕事を割り振ら
れ、こなすだけでした。
しかし、それによって退職者が続出し生産も停滞しました。そこで人々を支
援し、このような事態を改善するために、「職業指導の父」といわれている
パーソンズが「丸い釘は丸い穴に」というスローガンのもと職業指導運動を起
こしたのです。
パーソンズはコーネルで工学を修めたのち、文筆業のかたわら教師、鉄道技
師として働き、弁護士、政治家、ソーシャルワーカー、大学の学長といった多
彩な経歴を持っています。彼はまた博愛と奉仕精神の持ち主で、困っている人
々の手助けとなることを何よりも喜びとしたそうです。
1905年 ボストンの恵まれない若者達に職業選択や就職のアドバイスを始
める。
1907年 職業指導事務所を設立し、翌年職業指導局を正式に開設し、
適材適所を理念とし、職業指導を行う。
1909年 「職業の選択」を執筆。
「 職業の選択(Choosing a Vocation)」 は、パーソンズが翌年に重い
病で亡くなるまでに残りの全精力を振り絞って執筆したキャリアカウンセリン
グの原典です。
その冒頭で次のような職業選択の要点を述べています。
①手当たり次第に探すのではなく、自分にふさわしい職業を選択するのが
望ましい。
②選択する時には、自分に正直、慎重に自己分析し、かつ指導をうけること。
③幅広く多くの職業分野を調べ、就きやすい職業や偶然みつけた仕事で妥協
しないこと。
④職業情報を有し研究している専門家の助言を受けることが望ましい。
⑤自己分析は紙に書き出すことが必要である。
今では当たり前のことのように思われる理論ですが、当時はどのように職業
を選ぶべきかの理論も、実践の助けとなるテストも、職業指導に関する専門書
などの情報源も一切無い時代です。当時では非常に画期的なこの理論は人々の
職業選択に大きく役立ったに違いありません。
そしてさらに賢明な職業選択に必要な次の3つの要素を挙げています。
①適性、能力、興味、希望、資源、限界およびそれらの原因を含めた自分自身
を明確に理解する。
②さまざまな職種に関して、有利な点、不利な点、成功に必要な条件、給与、
出世の見込み、将来性、保障などについて調べる。
③ ①②で把握した事柄の関連性に関しての合理的に推論する。
パーソンズはこの③の機能をカウンセリングと考え、そこに「職業指導カウンセラー
(Vocational Counnselor)」という言葉を用いました。ここではまだ「キャリア」という
言葉は用いられておらず、職業(Vocation)と表現されています。
これらは、現代もアメリカだけではなく世界中で、キャリア支援の実践的な指
針の基幹的理論として生き続けています。