大家さんと僕 これから 矢部太郎 著 新潮社
『大家さんと僕』の完結編。完結編も4コマ漫画で、大家さんと矢部さんの漫才のようないつもオチがある掛け合いが楽しく描かれていました。この本の中で、私が好きだなあと思った箇所がいくつかありました。一つ目は、大家さんがいつも矢部さんに会ったら「ごきげんよう。」と挨拶をされるので、どう返事したらいいかわからなかった矢部さんが調べた結果、「ごきげんよう。」とお返しの挨拶をしたらいいということがわかり、実践しようとして身構えていたら、大家さんは「ごきげんよう。」と挨拶されずに、中国語の番組に出ておられた矢部さんの影響か、「ニーハオ。」と挨拶されたときのくだりです。矢部さんのリアクションはどんなのだったのかなと想像したらホントにおもしろいなあと思いました。二つ目は、大家さんに猫の柄のカップをプレゼントされたら、矢部さんからもらわれたものを全部飾ってありますというくだりです。矢部さんの写真と一緒に矢部さんにそれまでにもらわれたプレゼントが大家さんの部屋の家具の上に大切に飾ってあって、矢部さん曰く、「亡くなってるぽい。」と書かれていたのには思わず笑ってしまいました。三っ目は、二日に一度、大家さんと年齢が近い同じ方がおられる美容室で、洗髪されておられるときのくだりです。洗髪中、気持ちが良すぎて寝てしまうことが多いということで、洗髪されていた美容室の方も洗髪をしてもらっていた大家さんのお二人ともが寝てしまっていたと描かれていて、リラックスしすぎやろっと突っ込みが入れられていました。四つ目は、矢部さんの後輩芸人の「のーちゃん」が大家さん家の庭の草むしりに応援で来てくれたときに大家さんと意味不明な言葉でもお互いそれなりに会話していたということが描かれていたところです。五つ目は、矢部さんの1作目の『大家さんと僕』の最初の単行本が有名になって賞をもらわれたときに、矢部さんの前にすでに大家さんのサインをもらわれていたというエピソードを紹介していたくだりです。矢部さん以上に人気者になられていた大家さんを自然に讃えている矢部さんの人柄も素敵だなあと思いました。上品で博学でかわいい大家さんと優しい矢部さんの友だち未満、恋人未満のような素敵なご関係を永遠に彷彿させる、思わず微笑んでしまう幸せな気分にしてくれるような前回の『大家さんと僕』以上にほんわかさが全編に渡って漂っていました。電車の中で読み終えました。