TULIP DIARY

届くといいな やさしい風に乗って

絶望書店

2020年07月11日 | 読書日記

絶望書店 頭木弘樹 編 河出書房新社

「夢をあきらめるな」という言葉が世の中に満ちています。夢は叶えるもの、いつかは夢はかなうなどなど、励ましの言葉、勇気を与える言葉ですし、それはそれで素晴らしい言葉のひとつなのでしょう。でも、世の中の多くの人は夢が叶わなかった人生を生きているはずだとこの本では書かれていました。夢のかなえかたの本は世の中にたくさんあるでしょうが、夢の諦め方の本が1冊でもあったらいいのにと思った作者の話がこの本のあとがきに書かれていました。作者は、20歳のときに難病になられ、13年間、闘病生活を送られたそうです。入院されていたときに、ベッドの上で読まれていた本は、「夢を持つことは素晴らしい」、「夢をあきらめないで」、「信じていれば夢はかなう」といったものばかりで、これらの本を読むととてもきつく感じられ、そのときの夢をあきらめる気持ちの寄り添ってくれるような本があってもいいのにと思われたのがこの本を書かれたきっかけだったようです。この本は、夢をあきらめなければいけない人に寄り添ってくれるような、救いになるような物語や話を紹介したいと集められています。このような心に寄り添ってくれるような「救い」を描くのは文学だけにしかできないことだと作者は強調されていました。この趣旨で集められたこの本の中で紹介されていた話の中で、私が一番印象に残ったのは、山田太一さんのエッセイ「断念すること」でした。可能性に次々と挑戦していくということだけでなく、人間にできることが無限ではないという無力さ、はかなさに気づき、心を平安を保つこと、心の持ちようが大切なのだと書かれていたのには目からうろこのような内容の文章でした。ベートーヴェンの耳が聞こえなかったときの気持ちや友人に送った手紙などが紹介されている「希望よ、悲しい気持ちでおまえに別れを告げよう」を読むと、ベートーヴェンが耳が聞こえなくなったときの気持ちがよく伝わってきたお話も心に沁みました。図書館でだいぶん前に予約して通勤途中の電車の中で読み終えた本でした。

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あきらめた夢を思い出す

2020年07月11日 | ひとりごと

絶望書店を読んで、夢をあきらめたことがどれだけあったか、思い出してみました。一番最初に思いついたのは、最初につきたいと思っていた職業を断念したことでした。その職業に付けるようにと、最初の頃はけなげに努力し続けていたのが今では懐かしいです。今付いている職業は一番なりたかった職業ではないのですが、自分の性に合っていたかと思うのでそれはそれでよかったのかもしれないなあと思っています。2番目に思い出したあきらめた夢としては、行きたかった大学に入れなかったので、あきらめて違う大学に行ったことでした。もう1年浪人していたらもしかしたら希望していた大学に入れてたかもしれないけれど、お金がたくさん要ることなどいろいろ考えてそれほど行きたくなかった大学に行ったことが、人生を振り返るとそもそも間違っていたのかもしれないなあと思います。でも希望していた大学も何が何でもそこでなければいけなかったこともなく、その当時の自分の考え方がしっくりいってなかったことが一番いけなかったことだったのだと今ではそう思います。職場で一流の大学を卒業している方々と会って、よく思うのですが、自分はほかの人とは違うんだというプライドの意識が一生くっついてしまっていつも人を下に見ているような方々も多々あったので、そういった意識を持たずに済んだことが今ではよかったかなあと思います。3番目は、今の自宅です。両親がこの自宅で店をするために店舗付き住宅を買うことを決め、移り住みたいと言われて、その家を見に行ったときでした。それまで住んでいた家の隣の騒音に悩んできただけに、隣とくっついていない一戸建ての家ならどんな家でも大歓迎でしたが、その家は隣とくっついていた2戸建てのうちの一戸でした。このとき、いやと言えば、両親はどう思ってどう判断しただろうと考えると自分の本当の気持ちを言えなかったです。一戸建ての隣家の騒音に悩まなくてもいい家に住みたいと希望していた気持ちを封印しました。住み移ったときの隣人は3度変わって、3度目の隣人の騒音が相当だったので、当時は辛かったですが、今は実家に住まわれているので空き家になっていて、今は静かな自宅です。隣人がいつ戻って来られるかわからないのが恐怖です。自分のたわいない人生の中にも今までにあきらめた夢を思い出したらいろいろとありました。確かに夢を叶えるように頑張ることが大切と書かれている本がたくさんありますが、誰にでも夢を諦めることが人生においては多々あることだと想像します。この本に書かれていたような絶望感でどうしようもない状況下で、諦めることでもっと違う世界に行こうとしている心の持ちようが素晴らしいなあと思いました。心を平穏に保って乗り越えて行くそれぞれの人々の人生に幸多くあれと願います。

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