「国辱だ」水着で中国旗に寝そべったアイドル“炎上”…著名人狩りの実態
12月7日15時12分配信 産経新聞
日本で活動する中国出身アイドルの1枚のグラビア写真が、中国でバッシングの標的になっている。水着で中国国旗に寝そべるカットが「国家を侮辱してい
る」というのだ。利用者が2億5000万人を超す中国のネット社会では、これまでも五輪選手や著名人らが非難の的にされ、謝罪に追い込まれたり、個人情報
をさらされる被害を受けている。愛国心に名を借りた中国「網民」(ネットユーザー)の“暴走”がとまらない。(桜井紀雄)
【写真】国籍選択で「裏切り者」「売国奴」扱い…女優コン・リーさん ■「神聖な国旗をけがした!」…網民らが猛反発 中国で騒動の的になっているのは、杭州出身のアイドル、ローラ・チャン=中国名・陳怡=さん(21)。 チャンさんは、中国の人気オーディション番組に出場したのをきっかけにスカウトされ、昨年5月に来日。NHKの「テレビで中国語」のレギュラーを務めたほか、多くのバラエティー番組に出演し、今秋にはドラマデビューを果たしたアイドルだ。 北京五輪もあって、グラビアアイドルとしても引っ張りだこで、各雑誌のグラビアにも登場したが、学習研究社(学研)発行の月刊誌に掲載された1枚の写真が今回、非難の対象となった。 写真は、紺の競泳用水着を着たチャンさんが日本と中国の国旗を敷いたソファに寝そべって笑顔でポーズを取ったもの。健康的な印象を受けるが、写真がネットで中国に流出し、論議を呼んだ。 中国の国旗が腰の下敷きになっているため、「国旗を尻に敷いて扇情的写真を撮るとは、国旗をないがしろにしている」とネット上で批判が殺到したのだ。 ネット上の騒ぎを新聞など中国メディアが紹介し、騒動を知らなかった人の怒りも増長させた。 《彼女の行為は神聖な国旗をけがした》《中国国旗は無数の革命の先人たちが命に代えて守ってきたものだ》…。中国紙にはこうした「網民」らの声とともに「著しく原則を逸脱している」との専門家の意見も載った。 これらの記事が大手ニュースサイトに転載され、《われわれの国旗を金もうけに使うのは許せない》とそれに対する新たな書き込みを生む負の拡大再生産が続いている。 ■「国旗法違反?」…アイドル側は困惑 騒ぎは法律論争にまで飛び火した。 中国の法律家の1人は中国紙の取材に、中国の「国旗法」には「商標や広告に使ってはならない」「燃やしたり汚したり破損させ侮辱してはならない」との規 定があるとした上で、「中国では刑事責任が問われるが、日本の雑誌となると、彼女の法的責任を追及できないのではないか」との見方を示した。 ネットでは、《個人の自由じゃないか。彼女を責めるべきではない》との意見も書き込まれたが、それに対して1000件もの反対意見が殺到。膨れあがった怒りの声にかき消された。 あるサイトには、「恥だ」36・1%▽「国旗をないがしろしている」31・5%▽「こっけいだ」15・6%との網民への調査結果まで掲載された。 写真はもともと、8月発行の雑誌に掲載されたものだった。それが在日中国人が「中国では知られていないアイドル」として、ネットに写真を転載したのが、本国に伝わり、法律論争まで引き起こす皮肉な結果を招いたようだ。 この騒ぎにチャンさんの所属事務所では「騒動は承知しているが、出版社の企画に沿って撮影したものであり、ノーコメントとさせていただきたい」としている。 写真を掲載した学研側は「北京五輪直前ということで、五輪を盛り上げるため、日中の友好をテーマに企画しました。中国出身のチャンさんの持ち前の明るさを前面に押し出したつもりですが…」と戸惑う。 「発行からこれだけたってからの予期しない事態に残念というほかありません」(学研)。当事者だけではなく、日本人であれば、こんな事態を誰が予想できただろうか。 ■旭日旗ファッションの女優も強烈なバッシング 「愛国心をあおる国旗という話題に、アイドルというネット世代が最も食いつきやすいキーワードがそろい、ここまで広がることになった」 ネット事情に詳しく中国のネット炎上に関する著書もある中国在住のライター、山谷剛史氏はこう指摘する。 「この手の話題は、アクセスも増えるため、どこのポータルサイトもこぞって掲載したがる」とサイト運営側の事情にも触れた。 似たケースは過去にもあった。 有名女優のヴィッキー・チャオ=中国名・趙薇=さん(32)が日本の旭日旗をイメージするデザインの服を着た写真が2001年、ファッション誌に掲載さ れたところ、批判が殺到した。チャオさん側は「雑誌の要望に応えただけ」としたが、テレビに映像を流さないといった女優生命の危機に立たされ、結局、「歴 史認識の浅さを痛感し、反省する」と謝罪した。 台湾のアイドル、レイニー・ヤン=中国名・楊丞琳=さん(24)もテレビ番組で03年、日中戦争の期間を問われ、「11年」と回答。司会者から「8年」と正され、「たったの8年」と答えたことから中国で非難が相次いだ。 「私の前世は日本人」といった日本びいきの発言もあり、CDなどの不買運動に発展。「彼女は南京事件の死者を『たった数十万』と発言した」と歪曲(わいきょく)した話題がネットでくすぶり続け、昨年、北京で涙ながらに謝罪する事態に追い込まれた。 最近でも映画「紅いコーリャン」や「覇王別姫」で知られる大物女優、鞏俐(コン・リー)さん(42)が夫と同じシンガポール国籍を選択したところ、ネット上で「裏切り者」「売国奴」といったバッシングが巻き起こっている。 ■「人肉検索」で執拗な攻撃…個人情報の公開も チベット騒乱や聖火リレー妨害、四川大地震、北京五輪…。今年は中国人の愛国心をあおるニュースが続いた。 五輪では、アテネで金メダルを獲得し、英雄視されていた陸上百十メートル障害の劉翔選手(25)が途中棄権し、ネットで大バッシンされたことは記憶に新しい。 チベット騒乱をめぐっては、米国の大学で、中国人女子学生がチベット支持派と中国人学生の対立回避を呼び掛けたところ、ネットを通じて中国国内でも「売国奴」と非難が起きた。中国の実家の住所がネットでさらされ、「売国奴を殺せ」と実家の壁に落書きされた。 「人肉検索」。集団で個人情報をたどり、ネットで公開する行為を中国でこう呼ぶ。 人肉検索の恐怖は四川地震後にも吹き荒れた。被災地復興のための寄付をしなかったり、寄付が少額だった企業経営者や著名人は情報がネットにさらされ、攻撃の的になった。 ネットで不適切な書き込みをした女子学生も個人情報を公開され、休学に追い込まるなど、網民による目に見えない“集団リンチ”が拡大し続けている。 「80後」。中国で1980年以降に生まれ、改革開放期に育った世代をこう称する。教育の影響もあり、ほかの世代に比べても愛国的発言を好む傾向にあるとされる。「この世代とネット世代が重なる」と山谷氏は指摘する。 ネット利用者が2億5000万人を超し、世界一のネット大国となった中国だが、ネットが普及したのはここ数年のことだ。 ユーザーが若い世代に集中していることもあり、「日本のユーザーに比べて一体となってあおる傾向が強いうえ、愛国的話題になると、沸点が低い」(山谷氏)。 「80後」は一人っ子政策で過保護に育ったとされるが、四川地震では、被災地に大挙してボランティアに駆け付け、政府を驚かせた。ネットは地震の惨状を世界に発信し続け、閉ざされた中国のイメージに変化をもたらせた。まさにもろ刃の剣だ。 巨大化した中国ネットは、一大勢力となった網民らは、どこに向かおうとしているのか。グラビア問題にとどまらず、日本人も無関係ではいられない時代が訪れようとしている。 【関連記事】 ・ 韓国の殺人ネットの恐怖、芸能人相次ぎ自殺 後追いも続発 ・ 【衝撃事件の核心】ネット中傷で自殺した韓国人気女優…絶望の先に見たものは ・ 「加油!」は迷惑?中国選手抗議、ネットで論争 ・ 菊地彩香、プリクラ原因でAKB48を解雇 ・ 大分・西川のブログ炎上…謝罪文掲載 |
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