水木しげる先生の守護霊は、幼い頃たくさんのお化けの話をしてくれた「のんのんばあ」です。
そして背後霊は『月よりの使者』。
指導霊が「山ン本五郎左衛門」だそうです。
「山ン本五郎左衛門」とはいかなる人物でしょうか。
備後の国に稲生平太郎という気丈で剛毅な若者がおりました。
ある晩に隣に住む権八という力自慢と百物語を語り合ってから比熊山のたたり石に
印をして帰るというとんでもない約束をしたのです。
くじ引きで負けた平太郎が雷のとどろく豪雨の中、蓑笠姿で比熊山に向かい
たたり石に石で傷をつけてしまいました。
その日から平太郎宅には、様々な怪奇現象や魑魅魍魎の類が跋扈するようになりました。
友人や、腕の立つ人が夜一緒に泊まり成敗しようとしても
それらの幻術や奇妙な現象に恐れをなし、すぐさま逃げ帰ってしまう始末。
けれど最後まで気丈に戦った平太郎の前に姿を現したのは
人をおどかすことを生業とする魔王「山ン本(さんもと)五郎左衛門」でした。
この親玉が多くの妖怪を操り怪奇現象を演じてきたのでした。
よく頑張って戦った平太郎に褒美として山ン本五郎左衛門は悪妖怪の通力を封じる
小槌を渡したのでした。
平太郎は江戸で「妖怪大戦争」の話をして大評判になり、寛政九年(1798年)
平太郎は「妖怪と戦った武士」として江戸で大ブームをまきおこしました。
そして妖怪研究家の平田篤胤が「稲生物怪録」として書き残しました。
「 水木しげる ・木槌の誘い」より