見過ごせない 捏造検事の不起訴処分
(日刊ゲンダイ2012/4/19)
そこには大きな力が動いている
検察という組織はつくづく「ワル」だ。26日に判決が出る「小沢裁判」で、捜査報告書を捏(ねつ)造(ぞう)していた田代政弘検事(45)が市民団体から「虚偽有印公文書作成・同行使容疑」で刑事告発されていた問題で、検察当局が「不起訴処分」の検討に入ったと報じられた。小沢起訴の決定打となった捏造なのにお咎(とが)めナシ。こんなデタラメ捜査がよくぞ許されているものだ。
今回の決定をするに当たり、検察は田代を任意聴取したものの、犯意を大目に見てやった。田代が「石川議員が勾留中に話した内容と記憶が混同」と繰り返したため、刑事責任を問うのは難しい、と判断したという。つまり、田代の言い分を「丸のみ」したわけで、大甘もいいところだ。証拠改ざん事件で実刑が確定した元大阪地検特捜部検事の前田恒彦受刑者(44)のケースと一体どこが違うのか。この決定は疑惑だらけだ。
「前田受刑者は最高検の調べに対し、ずっと『パソコン操作を誤った』と説明したが、結局、起訴され、さらに上司の部長、副部長も起訴された。田代検事の場合、捜査報告書は裁判で証拠能力が争われる検察官調書とは違う――との見方もありますが、小沢元代表を強制起訴した検察審査会が有力な判断材料としたのは間違いないのです。『記憶の混同』なんて言い訳に『ハイそうですか』なんていい加減過ぎますよ」(司法ジャーナリスト)
市井の国民であればギュウギュウ締め上げるくせに、“身内”の検事ならユルユルなのか。そもそも、検察当局は初めからヤル気ナシの姿勢がアリアリだった。
前田受刑者は不正が報道された直後に即、逮捕されたのに対し、昨年12月に捏造が明らかになった田代は4カ月間も野放し状態。捜査したのも、告発状が提出された最高検ではなく東京地検だ。これじゃあ、本当に任意聴取したのかさえ怪しい。
「田代検事が全てを明かせば、証拠改ざん事件と同様に芋ヅル式に当時の上司が捕まる可能性が出てくる。検察審査会を恣意的に利用したことも暴露されるかもしれません。そうなると特捜部解体どころじゃ済まない。総長だけでなく、法相のクビまで及ぶことになり、検察組織は壊滅です。検察幹部は田代検事を『処分するが、悪いようにはしない』と必死に口止め工作していたのではないか」(元検事の弁護士)
こんな声が出ているのだ。01年の「佐賀市農協背任事件」では、主任検事(当時)を務めた市川寛弁護士(46)が法廷で“恫(どう)喝(かつ)”取り調べを証言しようとしたところ、幹部から「偽証を勧められた」という。組織防衛のためなら、ウソはもちろん、法を犯すのもヘッチャラ。それが検察の実態だ。
市川弁護士が自身の経験を踏まえてこう言った。
「誰が『陸山会事件』の捜査を指示し、ウソの捜査報告書を求めたのか。検察内部ではとっくに犯人は分かっていると思います。26日の判決の前にきちんと処分するべき。検察に自浄能力があるなら、検察審をだますアイデアを思いついた犯人を絶対に裁かなければなりません」
就任当初、「改革」に強い意欲を示していた笠間治雄検事総長は最近、退官をほのめかしているそうだ。ウヤムヤ
(,mokeihikiさんの許可を得て転載しました)