世界穀物在庫減へ 米国干ばつ、熱波で 12年度見通し (2012年07月13日)
米国農務省(USDA)が11日発表した7月の農産物需給推計報告で、世界の穀物の2012年度の期末在庫率(全消費量に占める割合)の見通しが19.3%となることが分かった。前年度より0.8ポイント低下し、国連食糧農業機関(FAO)が定めていた安全在庫水準(17~18%)に迫りつつある。在庫を増やすため米国は主要穀物の作付けを増やしたが、中西部など主産地が干ばつと熱波に見舞われ、作柄が悪化したためだ。高止まりしている飼料価格のさらなる上昇も懸念され、世界の食料需給の不安定さがあらためて浮き彫りとなった。
・飼料価格上昇も
同報告は米国で今年収穫するトウモロコシの生産見通しを3億2900万トンとし、前月見通しを12%下方修正した。大豆の見通しは8300万トンで、同5%引き下げた。トウモロコシや小麦、米など12年度の世界の穀物在庫数量も前月見通しから6%下方修正し4億5000万トンとした。http://www.agrinews.co.jp/uploads/fckeditor/2012/07/13/uid001010_201207131352294266d988.jpg
日本の農水省食料安全保障課は「品薄懸念で国際相場は高止まっており、今後の日本の飼料価格が上昇する可能性もある」と予想。また大豆については米国の在庫率が10年度で6%、11年度で5%と年々下がり、12年度の予測が4%となったことを受けて、「食料の在庫率は最低でも年間総供給量の1カ月分に当たる8%は確保しなければならず、極めて低い水準だ」と指摘する。
一方、国際穀物価格指標となるシカゴ商品取引所のトウモロコシと大豆の価格は、このところ減産見通しを背景に伸びている。10日の取引では大豆が1ブッシェル(約27キロ)16.49ドルと前月の14ドル台から急伸。トウモロコシも1ブッシェル(約25キロ)7.61ドルと1カ月で4割程度上昇した。
〈解 説〉 予想上回る作柄悪化 天候次第 一層の減産も
米農務省が11日に発表した米国産のトウモロコシと大豆の作柄予測は、業界予想を上回る形で悪化した。今後も主産地で干ばつが続けば、一層の減産と混乱を招きそうだ。10年以上、世界のパンかごとも言われる米国中西部は、順調な作柄を続けてきたが、天候に左右される農業の宿命からは逃れられない。
穀物の国際相場の環境は、この1カ月でがらりと変わった。国連食糧農業機関(FAO)の国際穀物価格指数は3月をピークにじりじりと値を下げていた。今年6月の穀物価格指数は、昨年4月の高値から17%安まで下落し、6月初めにローマで話を聞いたFAOのエコノミストの一人は「当面値上がりする要因は見当たらない」と楽観的な見通しだったが、米国の熱波と干ばつで事情は一変した。
米国メディアによると6月半ば以降の猛暑は各地で記録破りだという。40度を超える高温と水不足は、トウモロコシの作柄に決定的な影響を与える受粉期を直撃した。生産減を予測してシカゴのトウモロコシ相場は1カ月前より4割程度上昇した。今後の天候によってはさらに価格が上昇する恐れもある。やはり減産確実の大豆も値上がりしている。
伝統的に米国のトウモロコシは、値上がりすると需要全体の半分を占めた国内飼料向けが減って需給が均衡してきた。しかし、現在は4割近くがバイオ燃料に回る。法律でガソリン添加が決められている他、各地に建てたエタノール工場の稼働を考えると簡単にトウモロコシの需要を減らすことはできない。
1988年以来という猛暑被害に襲われた米国の穀物産地。逼迫(ひっぱく)するトウモロコシをめぐり、食用・飼料向けとバイオ燃料向けの奪い合いが始まるかもしれない。
米国農務省(USDA)が11日発表した7月の農産物需給推計報告で、世界の穀物の2012年度の期末在庫率(全消費量に占める割合)の見通しが19.3%となることが分かった。前年度より0.8ポイント低下し、国連食糧農業機関(FAO)が定めていた安全在庫水準(17~18%)に迫りつつある。在庫を増やすため米国は主要穀物の作付けを増やしたが、中西部など主産地が干ばつと熱波に見舞われ、作柄が悪化したためだ。高止まりしている飼料価格のさらなる上昇も懸念され、世界の食料需給の不安定さがあらためて浮き彫りとなった。
・飼料価格上昇も
同報告は米国で今年収穫するトウモロコシの生産見通しを3億2900万トンとし、前月見通しを12%下方修正した。大豆の見通しは8300万トンで、同5%引き下げた。トウモロコシや小麦、米など12年度の世界の穀物在庫数量も前月見通しから6%下方修正し4億5000万トンとした。http://www.agrinews.co.jp/uploads/fckeditor/2012/07/13/uid001010_201207131352294266d988.jpg
日本の農水省食料安全保障課は「品薄懸念で国際相場は高止まっており、今後の日本の飼料価格が上昇する可能性もある」と予想。また大豆については米国の在庫率が10年度で6%、11年度で5%と年々下がり、12年度の予測が4%となったことを受けて、「食料の在庫率は最低でも年間総供給量の1カ月分に当たる8%は確保しなければならず、極めて低い水準だ」と指摘する。
一方、国際穀物価格指標となるシカゴ商品取引所のトウモロコシと大豆の価格は、このところ減産見通しを背景に伸びている。10日の取引では大豆が1ブッシェル(約27キロ)16.49ドルと前月の14ドル台から急伸。トウモロコシも1ブッシェル(約25キロ)7.61ドルと1カ月で4割程度上昇した。
〈解 説〉 予想上回る作柄悪化 天候次第 一層の減産も
米農務省が11日に発表した米国産のトウモロコシと大豆の作柄予測は、業界予想を上回る形で悪化した。今後も主産地で干ばつが続けば、一層の減産と混乱を招きそうだ。10年以上、世界のパンかごとも言われる米国中西部は、順調な作柄を続けてきたが、天候に左右される農業の宿命からは逃れられない。
穀物の国際相場の環境は、この1カ月でがらりと変わった。国連食糧農業機関(FAO)の国際穀物価格指数は3月をピークにじりじりと値を下げていた。今年6月の穀物価格指数は、昨年4月の高値から17%安まで下落し、6月初めにローマで話を聞いたFAOのエコノミストの一人は「当面値上がりする要因は見当たらない」と楽観的な見通しだったが、米国の熱波と干ばつで事情は一変した。
米国メディアによると6月半ば以降の猛暑は各地で記録破りだという。40度を超える高温と水不足は、トウモロコシの作柄に決定的な影響を与える受粉期を直撃した。生産減を予測してシカゴのトウモロコシ相場は1カ月前より4割程度上昇した。今後の天候によってはさらに価格が上昇する恐れもある。やはり減産確実の大豆も値上がりしている。
伝統的に米国のトウモロコシは、値上がりすると需要全体の半分を占めた国内飼料向けが減って需給が均衡してきた。しかし、現在は4割近くがバイオ燃料に回る。法律でガソリン添加が決められている他、各地に建てたエタノール工場の稼働を考えると簡単にトウモロコシの需要を減らすことはできない。
1988年以来という猛暑被害に襲われた米国の穀物産地。逼迫(ひっぱく)するトウモロコシをめぐり、食用・飼料向けとバイオ燃料向けの奪い合いが始まるかもしれない。