胡瓜漬け 祖母の手見えし 七回忌
夏になると、ぬか漬けが食卓には欠かせない。
子供の頃の朝ごはんは、炊き立てのごはんに、のりの佃煮、みそしる、昨晩のおかずの残り物、それに胡瓜のぬか漬けだった。
育ち盛りの餓鬼の頃は、うまいともなんとも思えなかった。
腹が膨れれば良かったのだ。
しかし、祖母の味は何かと考えれば、ぬか漬けとみそ汁ということになるだらう。
あたり前すぎる味覚ほど失ったとき体全体が呆然としてしまうのだ。
この夏から自分でぬか漬けを始めた。
手を鼻につけると、ほんのりとぬかの匂いがする。
暗い台所でぬか床をかき回している祖母を思い出す。
その祖母が亡くなって六年が過ぎた。
お墓参りにいきたくなった。