Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

夏休みの始まり

2013-09-13 01:00:00 | 雪3年2部(グルワ発表~知れば知るほど)
空は、抜けるような青。夏休みが始まった。



休みといっても、平日朝9時から夕方の5時まで、雪の予定は事務補助のバイトで埋まっている。

幸いにも助手さん達は皆顔見知りの人ばかりで、いきなり初対面の人達に囲まれてドギマギすることもなかった。

助手さん達も雪のことはよく知っていたので、挨拶も快く返してくれた。



しかし、雪には気がかりのことが一つあった。

それは‥。

「‥‥‥‥」



遠藤さんの様子が、どうにもおかしいことだった。

朝、ちょっと挨拶しただけでこの表情である。

遅刻したわけでもないのに‥。何でだろ‥?



挨拶しても顰め面、何もしてなくてもこちらを睨んでくる。

元々気難しい人だというのは承知の上だが、理由もナシに邪険にされるのは、気持ちの良いものではない。

2ヶ月間腹をくくらねば‥。



遠藤さんが常にピリピリしているので、初日から雪はミスらないようにずっと緊張しっぱなしだ。

バイトはまだ始まったばかりだというのに、もう既に疲れ始めている‥。






そして先日英語の塾を申し込みに行ったところ、なんと受付で授業料が無料だと言われた。



これには雪も驚いた。

すぐに青田先輩に連絡すると、電話越しの先輩は言った。

「ああ、俺がかわいがってる後輩だって言っといたから、タダにしてくれたのかもな。

たまにそういうサービスしてくれるんだよ。今回も気を利かせてくれるとは思わなかったけど‥」




先輩は、とにかくそんなことは気にせず勉強に励むと良いと言った。

今度塾へ、彼の方から連絡しておくとまで言ってくれた。


あの電話から数日経ったが、それから先輩からの連絡は無い。




キーボードを叩く音が、室内に響く。

雪の勤務態度は真面目そのものだが、少し離れた席から嫌な視線を感じる‥。



とにもかくにも、少し気がかりなことも勿論あるけれど、学期中よりも気持ちに余裕が持てる気もする。

雪は遠藤さんが放つ負のオーラを気にしつつ、目の前の仕事に没頭した。





そんな赤山雪の様子を、遠藤修はじっとりとした視線を送って観察していた。



なぜこの女がこの仕事をする羽目になったのか‥。

遠藤は先日掛かって来た青田淳からの電話を思い出していた。





青田淳の名前が、遠藤の携帯画面に久々に点滅する。

遠藤は恐る恐る通話ボタンを押した。ビクビクしていることを悟られぬように、威厳ある口調で「何か用か」と電話に出た。



青田淳は開口一番、聞きたいことがあると言った。それは夏休みの事務補助員のアルバイトの件だった。

遠藤は思わず、青田自身が希望しているのかと思い、そう問い質してしまった。



間もなく青田淳が否定したので、遠藤は自らの浅はかさをすぐに後悔したのだが。


遠藤はコホンと咳払いをしてから、事務補助員のアルバイトはすでに内定者が決まっていると告げた。

脳裏に、秀紀の顔が思い浮かんだ。

その答えに、青田淳は懐疑的な返事を返した。「内定者ですか?」

「曽我助手からまだ決まってないと聞きましたけど?遠藤さんの個人的な判断ということですか?」



遠藤はギクリとした。図星を突かれた彼が口ごもると、青田淳は言葉を続けた。

「実は紹介したい子が一人いるんですよ。

履歴書持ってそちらへ行くと思うんで、一度考えてみてもらえませんか?」




遠藤は歯をギリリと噛んだ。

そして内定者が居ると言ったにも拘わらず、自分の意見を通してくる青田淳に苛ついた。

心の中にわだかまっているものが、また口を吐いて出た。

「あの件はもう解決した筈だ!何でまた俺にそんなことを?」



事務室には誰も居ない。遠藤の上ずった声だけが響いている。

”あの件”のことを言及した遠藤であったが、青田淳は思いがけないことを聞いたかのような言葉を返してきた。

「はい?何を言っているんですか?

ただ仲の良い子が働けるか聞いてるだけなのに、俺何かいけないこと言いました?」




遠藤はもう言葉を返せなかった。

否定すればするほど墓穴を掘るし、肯定すればどんな手に出てこられるか分からない。

青田淳はその後、「一度会ってみて違うと思えば断ってもいいですから」と言ったが、

遠藤にそんな選択権は無かった。

そのことは、青田淳も重々承知で言っているに違いなかった‥。






彼の恋人、秀紀が座るはずだった席に、そういう経緯でこの女が座っている。

遠藤はとにかく何もかも気に食わなかった。青田淳の紹介で入って来たというだけで、彼女の名前すら耳障りだ。

ふと、とある記憶が蘇ってきた。

まだ学期中のある日、事務室へ寄った赤山雪を、青田淳は下で彼女が現れるのを待っていた。



ブラインド越しにそれを見ていた遠藤は、その後こちらへ振り向いた彼の視線に、慌てて顔を引っ込めたのだった‥。






遠藤は二人の関係性を訝しがった。思い返してみれば、学科生から度々二人の噂を聞いたことがある。

もしや、と遠藤は思った。

もしや、青田を利用して自分を脅そうとしているのではないかと‥。




もう負のオーラがメデューサのように立ち上っている。

雪は彼から送られるあからさまな敵対心をビシビシと感じて、身動きが出来なかった。

さっきからメールが携帯に何通か来ていたが、見ることも出来ない。



多忙といえど、もう夏休みに入ったことだし友人達と連絡を取っておきたいところだ。萌菜とも、聡美とも。

‥そして青田先輩とも。



雪は携帯電話を見ながら、あれから音沙汰の無い青田先輩のことが気にかかった。

こうして働き口が出来たという報告や、お礼も兼ねて食事をご馳走するという約束も保留になっている。

雪の脳裏に、先輩から最後に送られてきたメールの文面が思い浮かんだ。

どうせ同じ科目なんだから。そんなに気を使わなくても大丈夫だよ。

もうすぐ夏休みだな。楽しんでな^^




あのメールのあとで、またしつこく聞いてみるのも微妙な気がして、雪は一歩踏み出せずにいた。

PCの前に座りながら、雪はぼんやりとこれまでのことを振り返る。

‥考えてみたら、今まで先輩にお世話になったのも一度や二度じゃないのに、私無反応すぎたような?



頭の中に、今まで先輩から受けた恩恵の数々が思い浮かんだ。

一緒に受けた授業で手伝ってもらった課題、苦しかった時に連れ出してくれたケーキ屋さん、

    

貸してもらったサブノート、紹介してくれたアルバイト、そしてetc‥‥。

       

他にも彼からもらったものは数えきれなかった。

しかしそれらに対する自分の記憶を辿ってみると、お礼というお礼をしていないではないか。

もしかしてそれで‥。今までの私の無礼な態度を見かねて、これを最後に手を切ったのか?



考えてみればもらってばかりで、実際に雪から何かをしてあげたことは一度も無かった。

代価を望んでいたわけではないだろうが、好印象でないことは確かである。

またあのメールの文面が頭を掠める。

どうせ同じ科目なんだから。そんなに気を使わなくても大丈夫だよ。

もうすぐ夏休みだな。楽しんでな^^




だから返信の余地のない文面なんだ‥。

やっぱり学期終わりを最後に自分から手を切ったんだ‥。

   

雪は「まさか」と思いながらも、その可能性を打ち消せないでいた。

何度も挙動不審にその身をよじる雪を見て、遠藤さんがその勤務態度に声を荒げた時だった。







視線の先に、思いがけない人物が居た。



最初雪は、思い悩むあまり幻覚が見えたんだと思い、目をこすった。



しかし再び視線を上げた先には、やっぱり彼が居たのだ。



そこには屈託のない笑顔を浮かべる、青田先輩がいた。


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<夏休みの始まり>でした。

ついに事務補助のバイトが始まりましたね。

遠藤さんは疑心暗鬼すぎてわけが分からなくなってしまって可哀想です。

というか、秀紀兄さんは平日9時ー17時のアルバイトしてる暇はないんじゃ‥。


次回は<ここに居る理由>です。

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