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雪の通うA大学の近くには、数多くの学習塾が建っている。
その中の最大手がSKK学院塾であり、河村亮はそこでモデル兼補助講師として働いていた。
パンフレットやポスター等に亮の顔が載り、それを振り返って見て行く学生達も少なくない。
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しかし実際はというと、雑用係として働かされる日々が続いていた。
今日も亮は散らかった幼稚部の教室の片付けを言いつけられ、そのカオスな部屋を見て、亮は頭を抱えた。
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毎日毎日キリが無いと愚痴をこぼしながら、散らばったパズルやブロックを片付ける。
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すると、とあるおもちゃの前で亮の手が止まった。
無意識に眉を顰める。
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ピアニカだった。
白と黒の鍵盤は、昔は見飽きるほどだった。
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亮はおそるおそる、それに向かって左手を伸ばした。
人差し指で、鍵盤を弾く。
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しかしそれは下にへこむばかりで、当然音は出なかった。
そんな亮を見て、子どもたちが一斉に寄ってきた。
「ちがうよー!チューブをはめて息を吹いたら音が出るんだよ!」「トーマスのバーカ!stupid!」
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子どもたちは寄ってたかって亮をバカにする。
その中の女の子の一人が、亮に一曲リクエストをした。
「トーマス!”純情マッチョ”弾いて」 「なんだそりゃ?」
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そんな女の子に、「そんなもんトーマスが弾けるわけないだろ」と男の子がたしなめにかかった。
「見るからにピアノなんて弾けなさそうじゃんか」 「そっか~」
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男の子の言葉にカチンと来て、そしてその子の言葉にすんなり納得した女の子に、また亮は苛ついた。
今にも子どもたちをぶっ飛ばしたい衝動を堪えながら、亮はいつまでもバカにされ続けたのだった‥。
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![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3f/d0/99cd0dabfb9df1b6e438e558a824c10e.jpg)
いつの間にか陽は傾いて、空には綺麗な夕焼けが広がっていた。
カラスの鳴き声が聞こえる頃、子どもたちは一斉に帰って行った。
「トーマスバイバ~イ!」 「I love you!」
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なんだかんだ言って、子どもたちには愛されている亮だった。
そんな亮の後ろから、経営者の男性が笑顔で声を掛けてきた。
「やぁ河村君!仕事は順調かい?」
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彼は嬉しそうにこう言った。
亮をモデルにしてからというもの着々と生徒数は増え、隣のPJ学院塾にも大差をつけて勝つことが出来たと。
これからも頑張ってくれたまえと亮を労い、亮はそれにニヤッと笑って鼻を高くした‥。
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そんなSKK学院塾の前の道を、とある男が一人歩いていた。
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彼が向かう先は、SKK学院塾の隣にあるPJ学院塾だ。
慣れた動作でエレベーターのボタンを押し、目的の講座の受付まで歩く。
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オープンクラスに参加したい旨を伝えると、受付の女性はにこやかにその流れを説明した。
男は躊躇うことなくそれに同意する。彼は以前ここの塾に通っていたのだった。
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お名前を頂戴してもよろしいでしょうか、と言われ男は口を開いた。
「横山翔です」
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横山が帰って来た。
夏休みが明ければ彼は復学する。
とある思惑を抱えて、横山は水面下で着々とその準備を進めている‥。
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<彼らは塾に居る>でした。
女の子が亮にリクエストした曲はこちら、「純情マッチョ」↓
파리돼지앵 - 순정마초 (뮤직비디오 버전)
韓国のテレビ番組「無限挑戦」で発表され、話題になった曲だそうです。
ピアノ、難しそうな曲!でも全盛期の亮なら軽く弾きこなしちゃうんだろうなぁ。
横山が通うのは、本家版では「日本語講座」日本語版では「韓国語講座」になっていました。
このへんも考えられているんですね~♪
次回は<友達とは>です。
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