西条和夫の欲しいもの。
それは青田淳に対抗できる、強力な後ろ盾だった。
「くっそ体操服ねーよ」「ニコリンまた超怒んじゃね?」

体育教師のアダ名を口に出しつつ、城崎達は舌打ちをして顔を顰めた。
そんな彼らを見て、すかさず西条が声を掛ける。
「あ、俺の貸しましょうか?」「お?マジ?」
「ちょ、待ってて下さい!」

「どうぞ!」「これM?」「そうっす!」

「コイツいい奴じゃねーか」「ハハハ」

西条はその後ろ盾を手に入れるべく、城崎仁の兄のグループと、接点をとり続ける。
「てかなんでお前俺らとつるんでんの?お前まだ二年だろ?」

煙草の煙を燻らせながら、城崎は西条に向かってそう言った。
西条は頭に手をやりながら、自分がここに居る理由を話し出す。
「あ‥それは‥」

「最近ムカつく奴がいて‥なんか色々ウゼーんすよね。
ムカつくからクラスにも居たくねーし、クラスメートも皆ガキくせーし‥」

それを聞いた城崎は、西条に向かってこう言った。
「シメっか?」

願ってもない展開に、西条は思わず生唾を飲み込んだ。
巨大な後ろ盾が、ようやく手に入るかもしれないー‥。
「マジすか?」「おお。一体誰がー‥」
「こんにちは、先輩方」

しかし彼らが会話を続けるより先に、その人物は彼らに声を掛けてきた。
皆その声のする方を、一斉に振り返る。

彼は、城崎達に向かって鉄壁の笑顔を浮かべ、言葉を続けた。
「うちのクラスの仁の、お兄さんですよね?俺、仁のクラスメートなんです」


突如現れた青田淳。西条は目を丸くして彼を見ていた。
城崎は立ち上がりながら、淳を友好的なムードで迎える。
「おお!えっと‥青田淳‥だよな?名前合ってっか?」「はい、以前集会の時にお会いしましたよね」
「あーそうだそうだ、仁が副級長でコイツが級長」「へ~マジか!ハハハ!」

淳の登場で、皆はワイワイと盛り上がった。
暫し目を丸くしていた西条は、堪らず城崎に声を掛ける。
「あ、あのっ‥」

しかし城崎は西条の方を見もしないまま、
手をシッシッと軽く振って西条をいなした。

城崎は淳にばかり声を掛け続ける。
「お前背ぇ高ぇなー」

彼らとやり取りを重ねる淳が、不意に西条の方を向いた。
意味深で曖昧な笑顔を浮かべながら。

西条は淳のその表情を見て、思わず顔を顰めた。
あと一歩のところで後ろ盾を手に入れ損なったことを、見透かされたような気がするー‥。


河村亮はヘッドホンで音楽を聴きながら、ゴキゲンで中庭を歩いていた。
するとそんな彼の背後から、一人の男がドンとぶつかる。
「うおっ!ビビった!!」

亮はヘッドホンを外すと、西条に向かってギャンギャンとがなり立てた。
「テメェ!目ン玉ついてねーのか?!
オレの存在に気づかんとは‥シックスセンス皆無かよ!」

しかし西条は振り向きもせず、そのままスタスタと歩いて行ってしまった。
無視かよ‥と呟きながら亮は、額に青筋を浮かべる。


するとふと、目に留まる光景があった。
亮は眉を寄せながら、見覚えのある人物の背中をそこに見つける。
「あっれー?」

三年のヤンキー御一行‥と、淳?

優等生の淳には、まるで似つかわしくない不良グループ。
なぜ淳がそこにいるのか、亮には全く分からない。

なんでまたあんな奴らと?タチ悪ぃのに‥。アイツが付き合うタイプじゃなくねぇ?

友人も、彼女だって、淳はいつも同じような優等生タイプとばかり付き合っている。
そんな淳がどうして三年の不良グループと‥?

色々合点のいかないことばかりだったが、とりあえず亮は彼らから視線を外した。
再びヘッドホンを付け直す。
ま‥親同士が知り合いなのかもしんねーし、オレが口出すことじゃねーか‥

そして亮はそのまま、その場を後にした。
微かな閊えを心の中に抱えながらも。

そしてその後、西条和夫は事あるごとに淳に突っかかり続ける。



そしていつだって淳は言い返さず、亮は西条に楯突いた。
現在の亮は淳に、あの頃のことをこう続ける。
そして アイツはずっとお前の気に障り続けた

さざ波は幾度も打ち寄せ、淳をすり減らす。
徐々に彼の侵してはならない領域まで、波は侵食して行った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<亮と静香>高校時代(1)ー西条のエピソード(4)ーでした。
西条が淳の名前を出す前に、城崎の前に姿を現すお化け淳‥。
この頃から間の良さはピカイチのようですね。
この西条編は淳と亮が高校二年の時の出来事なので、
西条編が終わり次第記事をそちらの順番に置き換えます。ですのでブログトップからは見れず、
<河村姉弟>カテゴリに時系列順で入りますので、よろしくお願いします。
次回は<亮と静香>高校時代(1)ー西条のエピソード(5)ーです。
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それは青田淳に対抗できる、強力な後ろ盾だった。
「くっそ体操服ねーよ」「ニコリンまた超怒んじゃね?」

体育教師のアダ名を口に出しつつ、城崎達は舌打ちをして顔を顰めた。
そんな彼らを見て、すかさず西条が声を掛ける。
「あ、俺の貸しましょうか?」「お?マジ?」
「ちょ、待ってて下さい!」

「どうぞ!」「これM?」「そうっす!」

「コイツいい奴じゃねーか」「ハハハ」

西条はその後ろ盾を手に入れるべく、城崎仁の兄のグループと、接点をとり続ける。
「てかなんでお前俺らとつるんでんの?お前まだ二年だろ?」

煙草の煙を燻らせながら、城崎は西条に向かってそう言った。
西条は頭に手をやりながら、自分がここに居る理由を話し出す。
「あ‥それは‥」

「最近ムカつく奴がいて‥なんか色々ウゼーんすよね。
ムカつくからクラスにも居たくねーし、クラスメートも皆ガキくせーし‥」

それを聞いた城崎は、西条に向かってこう言った。
「シメっか?」

願ってもない展開に、西条は思わず生唾を飲み込んだ。
巨大な後ろ盾が、ようやく手に入るかもしれないー‥。
「マジすか?」「おお。一体誰がー‥」
「こんにちは、先輩方」

しかし彼らが会話を続けるより先に、その人物は彼らに声を掛けてきた。
皆その声のする方を、一斉に振り返る。

彼は、城崎達に向かって鉄壁の笑顔を浮かべ、言葉を続けた。
「うちのクラスの仁の、お兄さんですよね?俺、仁のクラスメートなんです」


突如現れた青田淳。西条は目を丸くして彼を見ていた。
城崎は立ち上がりながら、淳を友好的なムードで迎える。
「おお!えっと‥青田淳‥だよな?名前合ってっか?」「はい、以前集会の時にお会いしましたよね」
「あーそうだそうだ、仁が副級長でコイツが級長」「へ~マジか!ハハハ!」

淳の登場で、皆はワイワイと盛り上がった。
暫し目を丸くしていた西条は、堪らず城崎に声を掛ける。
「あ、あのっ‥」

しかし城崎は西条の方を見もしないまま、
手をシッシッと軽く振って西条をいなした。

城崎は淳にばかり声を掛け続ける。
「お前背ぇ高ぇなー」

彼らとやり取りを重ねる淳が、不意に西条の方を向いた。
意味深で曖昧な笑顔を浮かべながら。

西条は淳のその表情を見て、思わず顔を顰めた。
あと一歩のところで後ろ盾を手に入れ損なったことを、見透かされたような気がするー‥。


河村亮はヘッドホンで音楽を聴きながら、ゴキゲンで中庭を歩いていた。
するとそんな彼の背後から、一人の男がドンとぶつかる。
「うおっ!ビビった!!」

亮はヘッドホンを外すと、西条に向かってギャンギャンとがなり立てた。
「テメェ!目ン玉ついてねーのか?!
オレの存在に気づかんとは‥シックスセンス皆無かよ!」

しかし西条は振り向きもせず、そのままスタスタと歩いて行ってしまった。
無視かよ‥と呟きながら亮は、額に青筋を浮かべる。


するとふと、目に留まる光景があった。
亮は眉を寄せながら、見覚えのある人物の背中をそこに見つける。
「あっれー?」

三年のヤンキー御一行‥と、淳?


優等生の淳には、まるで似つかわしくない不良グループ。
なぜ淳がそこにいるのか、亮には全く分からない。

なんでまたあんな奴らと?タチ悪ぃのに‥。アイツが付き合うタイプじゃなくねぇ?

友人も、彼女だって、淳はいつも同じような優等生タイプとばかり付き合っている。
そんな淳がどうして三年の不良グループと‥?

色々合点のいかないことばかりだったが、とりあえず亮は彼らから視線を外した。
再びヘッドホンを付け直す。
ま‥親同士が知り合いなのかもしんねーし、オレが口出すことじゃねーか‥

そして亮はそのまま、その場を後にした。
微かな閊えを心の中に抱えながらも。

そしてその後、西条和夫は事あるごとに淳に突っかかり続ける。



そしていつだって淳は言い返さず、亮は西条に楯突いた。
現在の亮は淳に、あの頃のことをこう続ける。
そして アイツはずっとお前の気に障り続けた

さざ波は幾度も打ち寄せ、淳をすり減らす。
徐々に彼の侵してはならない領域まで、波は侵食して行った。

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<亮と静香>高校時代(1)ー西条のエピソード(4)ーでした。
西条が淳の名前を出す前に、城崎の前に姿を現すお化け淳‥。
この頃から間の良さはピカイチのようですね。
この西条編は淳と亮が高校二年の時の出来事なので、
西条編が終わり次第記事をそちらの順番に置き換えます。ですのでブログトップからは見れず、
<河村姉弟>カテゴリに時系列順で入りますので、よろしくお願いします。
次回は<亮と静香>高校時代(1)ー西条のエピソード(5)ーです。
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