その日河村亮は青田淳に、気になっていたことをさりげなく聞いた。
「お前、仁の兄貴達と仲良いの?」 「ううん。なんで?」

二人は並んで歩きながら会話を続ける。
「いや、この前見かけた時仲良さそうに見えたからよ。仁は良いヤツだけど、兄貴達はタチ悪そうじゃんか~」
「仁の兄貴だから挨拶しただけだよ。親同士も知り合いだし」

その淳からの返答は、あらまし亮が予想していたものだったが、一応軽く釘を刺しておくことにした。
「仲良くしてんじゃねーぞ?」「してないってば」

そして亮は、ぶっきらぼうに話を終わらせる。
「ならいーや。売店いこーぜ」

亮はブツブツと西条和夫についての文句を言いながら、淳の隣を歩いた。
「てか西条のヤツひつけーんだよなぁ。
まるで夏の蚊みてーにプンプンプンプン‥。なんとか駆除出来ねーかな」
「気にしないのが一番だよ」

二人は西条について話をしながら、売店へと歩を進める。
そして同じ頃、城崎兄のグループと西条和夫は、いつもの場所にたむろって会話していた。
「クソ、センター試験前なのに担任が遊ばしてくんねー」

彼らの足元に落ちた、幾本もの煙草の吸殻。
煙と共に不満も吐き出しながら、彼らは窮屈な今を嘆く。
「担任の野郎、ネカフェにまで押しかけて来やがって‥」「マジうぜー」

「センターだからって縛り付けたら逆にストレス溜まるっつーのによ!」「なー」「ですよね!」
「ストレス発散する場所作ってくれるわけじゃねーのに、うっせーよ」

そのグループの中で、一番ストレス過多なのはやはり城崎仁の兄のようだった。
素行の悪さによる担任からのマークに加え、厳格な父からの目もあるらしい。
「前にクラブ行ったのオヤジにバレてクッソ困ったっつーの。今度捕まえたら24時間監視するってよ」
「あ、そういや◯◯区にある飯屋、超良いってよ。中坊にも酒売るって」「え?あそこまだ捕まってねーの?」
「卒業前に焼き肉でお祝いっしょ」「それいいっすね!」

「てか正直、ワインより焼酎じゃね?はー‥先公ども、酒飲んだらピーチクパーチク‥」
「もーいーや。女の子達呼ぼーぜ」「もうとっくに連絡つけたっつーの」

酒に煙草に女の子‥。西条は相槌を打つしか出来ない。
するとそんな西条に向かって、城崎が言葉を掛ける。
「てかお前なんで教室帰んねーんだよ。長居しすぎじゃね?」
「ああ、帰るッス帰るッス!」

城崎はすぐに仲間の方に向き直ると、会合の計画の続きを進めた。
「んじゃその◯◯区の店行くか」「いつにする?」「後で決めよーぜ」「誰呼ぼっかなー」
「決まったら連絡下さいね!」

西条は去り際にそう約束を取り付けると、教室へ帰る為その場に立ち上がった。
城崎達は会話を続けている。

ようやく自分もこの先輩達の仲間になることが出来たと、西条の胸は充足感でいっぱいだった。
青田淳に対抗出来る後ろ盾が、今度こそ手に入るのだと。

西条は上機嫌で廊下を歩いた。
これよこれ♪こういうこと♪

そんな西条の姿を見た河村亮は、隣に居る副級長の仁に話し掛ける。
「アイツ最近あんま教室に居なくね?」
「兄貴が結構アイツにかまってやってるらしい。
ずっとツルンでんのかな?分かんねーけど」

二人は怪訝そうな面持ちのまま、その場を後にした。
城崎達を探す西条は笑顔を浮かべながら、廊下の角を曲がる。

するとそこに、城崎と青田淳の姿があった。二人は親しげに会話する。
「よぉ!淳!CD、サンキューな。お前んちには何でもあんのなー」「いえいえ」

親密そうな二人の姿を見て、西条は思わず口をあんぐりと開けて固まった。
彼にとっては想定外の現状だ。

すると淳は廊下の角に西条の姿を見つけ、ニコリと微笑む。

淳と城崎は会話を続けている。
西条はすぐに踵を返し、二人の元から立ち去った。
「あ、そういや仁から聞いたけど、お前一年の◯◯から
告られたらしーな?あの子可愛いよなー」「仁がそんなことを?」

西条の心は苛立った。
中庭に転がっていた空き缶を蹴飛ばし、大きな声で叫ぶ。
「クソッ!!」

それからというもの、西条和夫は常に淳のことを睨んでは苛立っていた。
そんな西条の姿を、亮はじっと観察している。
わざと見せつけやがって‥!あの野郎‥!

ウッゼェ‥

ウゼェんだよ!

見かねた亮が、西条と淳の間に割って出てサインを送る。
見てんぞコラ

西条は舌打ちをしながら、
アイツもムカつく!と顔を顰める。

西条和夫と青田淳の間には、常に小さなさざ波が立っていた。
そして彼がその侵食に耐えかねた頃、一つの事件が起こる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<亮と静香>高校時代(1)ー西条のエピソード(5)ーでした。
酒に煙草に女に‥絵に書いたようなヤンチャですね‥仁のお兄さんたちは‥
そして淳が城崎に何のCDを貸したのか気になるところです。
次回は<亮と静香>高校時代(1)ー西条のエピソード(6)ーです。
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「お前、仁の兄貴達と仲良いの?」 「ううん。なんで?」

二人は並んで歩きながら会話を続ける。
「いや、この前見かけた時仲良さそうに見えたからよ。仁は良いヤツだけど、兄貴達はタチ悪そうじゃんか~」
「仁の兄貴だから挨拶しただけだよ。親同士も知り合いだし」

その淳からの返答は、あらまし亮が予想していたものだったが、一応軽く釘を刺しておくことにした。
「仲良くしてんじゃねーぞ?」「してないってば」

そして亮は、ぶっきらぼうに話を終わらせる。
「ならいーや。売店いこーぜ」

亮はブツブツと西条和夫についての文句を言いながら、淳の隣を歩いた。
「てか西条のヤツひつけーんだよなぁ。
まるで夏の蚊みてーにプンプンプンプン‥。なんとか駆除出来ねーかな」
「気にしないのが一番だよ」

二人は西条について話をしながら、売店へと歩を進める。
そして同じ頃、城崎兄のグループと西条和夫は、いつもの場所にたむろって会話していた。
「クソ、センター試験前なのに担任が遊ばしてくんねー」

彼らの足元に落ちた、幾本もの煙草の吸殻。
煙と共に不満も吐き出しながら、彼らは窮屈な今を嘆く。
「担任の野郎、ネカフェにまで押しかけて来やがって‥」「マジうぜー」

「センターだからって縛り付けたら逆にストレス溜まるっつーのによ!」「なー」「ですよね!」
「ストレス発散する場所作ってくれるわけじゃねーのに、うっせーよ」

そのグループの中で、一番ストレス過多なのはやはり城崎仁の兄のようだった。
素行の悪さによる担任からのマークに加え、厳格な父からの目もあるらしい。
「前にクラブ行ったのオヤジにバレてクッソ困ったっつーの。今度捕まえたら24時間監視するってよ」
「あ、そういや◯◯区にある飯屋、超良いってよ。中坊にも酒売るって」「え?あそこまだ捕まってねーの?」
「卒業前に焼き肉でお祝いっしょ」「それいいっすね!」

「てか正直、ワインより焼酎じゃね?はー‥先公ども、酒飲んだらピーチクパーチク‥」
「もーいーや。女の子達呼ぼーぜ」「もうとっくに連絡つけたっつーの」

酒に煙草に女の子‥。西条は相槌を打つしか出来ない。
するとそんな西条に向かって、城崎が言葉を掛ける。
「てかお前なんで教室帰んねーんだよ。長居しすぎじゃね?」
「ああ、帰るッス帰るッス!」

城崎はすぐに仲間の方に向き直ると、会合の計画の続きを進めた。
「んじゃその◯◯区の店行くか」「いつにする?」「後で決めよーぜ」「誰呼ぼっかなー」
「決まったら連絡下さいね!」

西条は去り際にそう約束を取り付けると、教室へ帰る為その場に立ち上がった。
城崎達は会話を続けている。

ようやく自分もこの先輩達の仲間になることが出来たと、西条の胸は充足感でいっぱいだった。
青田淳に対抗出来る後ろ盾が、今度こそ手に入るのだと。

西条は上機嫌で廊下を歩いた。
これよこれ♪こういうこと♪

そんな西条の姿を見た河村亮は、隣に居る副級長の仁に話し掛ける。
「アイツ最近あんま教室に居なくね?」
「兄貴が結構アイツにかまってやってるらしい。
ずっとツルンでんのかな?分かんねーけど」

二人は怪訝そうな面持ちのまま、その場を後にした。
城崎達を探す西条は笑顔を浮かべながら、廊下の角を曲がる。

するとそこに、城崎と青田淳の姿があった。二人は親しげに会話する。
「よぉ!淳!CD、サンキューな。お前んちには何でもあんのなー」「いえいえ」


親密そうな二人の姿を見て、西条は思わず口をあんぐりと開けて固まった。
彼にとっては想定外の現状だ。

すると淳は廊下の角に西条の姿を見つけ、ニコリと微笑む。

淳と城崎は会話を続けている。
西条はすぐに踵を返し、二人の元から立ち去った。
「あ、そういや仁から聞いたけど、お前一年の◯◯から
告られたらしーな?あの子可愛いよなー」「仁がそんなことを?」

西条の心は苛立った。
中庭に転がっていた空き缶を蹴飛ばし、大きな声で叫ぶ。
「クソッ!!」

それからというもの、西条和夫は常に淳のことを睨んでは苛立っていた。
そんな西条の姿を、亮はじっと観察している。
わざと見せつけやがって‥!あの野郎‥!

ウッゼェ‥

ウゼェんだよ!

見かねた亮が、西条と淳の間に割って出てサインを送る。
見てんぞコラ


西条は舌打ちをしながら、
アイツもムカつく!と顔を顰める。

西条和夫と青田淳の間には、常に小さなさざ波が立っていた。
そして彼がその侵食に耐えかねた頃、一つの事件が起こる。
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<亮と静香>高校時代(1)ー西条のエピソード(5)ーでした。
酒に煙草に女に‥絵に書いたようなヤンチャですね‥仁のお兄さんたちは‥

そして淳が城崎に何のCDを貸したのか気になるところです。
次回は<亮と静香>高校時代(1)ー西条のエピソード(6)ーです。
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