![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2d/15/4c7f587c17eb5bf009da2766b78830bb.jpg)
西条和夫はその日も、苛立ちながら廊下を歩いていた。
あの宿敵、青田淳のことを考えながら。
まぁ良いさ‥。いくら青田といっても、先輩達にまで手は出せねーだろ。
どうにかして俺も‥
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/67/c9/2eb2b15da43916514504469e3082eb90.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3b/ec/6741e35d866c2af152e1eddff217d07f.jpg)
先日見掛けた、淳と城崎が親しそうに会話をしていた場面‥。
そのことを考える度に、西条の心は焦りと苛立ちに歪んだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/28/4c/23a4f3291dd55e35a6ace461472f3fa5.jpg)
どうにかして青田淳を出し抜ける方法はないものか‥。
そんなことを考えている最中、西条は後ろから声を掛けられる。
「西条」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2a/c8/ffb4094d952d90d5a2633773bac34e36.jpg)
気配もなく名を呼ばれ、西条は思わずビクッと震えた。
振り返ると、あの男が自分の方を見ている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/18/97/8b015b54961546735698b7a0f1e881c9.jpg)
西条はジャケットを整えると、眉を寄せて淳と相対した。
「何だよ?」
「担任の先生から雑用言い渡されたんだ。行こう」
「はぁ?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2a/0f/c3db09a2179f2fe97b841df558fb43cd.jpg)
突然の淳の申し入れに、西条は顔を顰めて言い返した。
「んだよ、何で俺がお前と?」
「さぁな。お前と俺の仲が良くないってこと、知ってるんじゃない」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/56/3d/eaddafecd7262f6f4c63d1a395a65a01.jpg)
淳はそっけなくそう言って、そのままスタスタと歩いて行った。
西条はその疎ましい背中を、煩わしさと共に睨んでいる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/56/9b/fa1cdecdcd3bd4474e9fc0c23ca79d63.jpg)
「その前にお前に話がある」と西条は淳に言った。
淳は頷いて、二人はそのまま外へ歩いて行く。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/24/ba/8d5a7db7259d7c2f9e22029854a3eaa3.jpg)
河村亮は淳に声を掛けようと片手を上げかけたのだが、
西条が一緒に歩いているのを見てそれを止めた。
「あれ?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/36/95/57e28d79040339c984c5da73283e1fe4.jpg)
なんだ?どうして二人が‥雑用?つーかなんでよりによって西条?
てか外出の許可取ったってこと?
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![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/13/65/a4cf9acc39b3c6618f79bc725fa669fc.jpg)
亮の頭の中に、こんな方程式が思い浮かんだ。
先生からの用事で外出
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/body_run.gif)
↓
トッポギ食べに行ける
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/kirakira.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0b/d7/69071583176e908b8c2829f5633df321.jpg)
亮の頭に浮かんだ、そんなサボリの方程式。
亮は淳を追いかけながら、一目散に駆けて行った‥。
「おいっ!一緒に行くっ!てかソイツじゃなくてオレを連れてけっつーの!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/07/ce/b8f87628618c819a001ca7f4c00e0fcb.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4d/b3/31962c5ad2b22df7687fdb1dbcdde802.jpg)
西条と淳を追いかけて、亮は裏口の近くまで走り出た。
やがて彼らの背中を見つけた亮であったが、一つの疑問が頭の中に湧く。
あれ?何でそっちに?裏口もう過ぎてっぞ?
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6f/96/be1b7ae67b8f0e6e1007eb01ec8dba91.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6f/5e/9783cdf9e2f3f9bcaed0d9766b358552.jpg)
あちらの方向には特に何も無いはずだ。
なぜあんな所へ二人して消えて行くんだろう‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/60/20/4160d82113e23d2f540931098c1e76eb.jpg)
すると二人が向かった辺りから、何やら言い争う声が聞こえて来た。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5a/d5/73a099a0d3fbb07919767e73e6535380.jpg)
亮はハッと思い当たる。
ケンカか?!
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/26/ee/55b7297d1a03c63815effccfb02b1619.jpg)
亮は、西条を殴る淳の姿を想像した。
だよな、淳もいい加減我慢の限界‥
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/72/18/9c825aca805a062bd89d1739ae6fb9c2.jpg)
そう思いながら亮は、踵を返そうとした。
我慢を重ねた幼馴染の爆発を、そっと知らぬふりしてやろうと。
しかし次の瞬間、ハッキリと西条の声が聞こえてきたのだった。
「お前一体何企んでんだよ?!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/11/6a/636ec9ccb8b28571e926db518e735096.jpg)
亮は建物の陰から、二人の会話にそっと耳をそばだてる。
「ガキみてぇな真似は止めろ!男のくせによぉ、人をからかってー‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3f/c3/dcfa12cdb6390cf0c0398aab7b20b4a5.jpg)
「どういうこと?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/73/9f/1a454fdbcdcccac9be48a5fe0e005667.jpg)
西条の主張に、淳はまるで身に覚えがないというかの様な態度でそう返した。
西条は続ける。
「お前がわざと俺の前で先輩達と仲良さそうにしてっこと、
気づかないとでも思ったんか?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/41/1d/6110f4eeaf0a40f2955ae66cee9d26fe.jpg)
ムカつく、と言いながら西条はずっと思っていたことを口に出した。
しかし淳はそれを聞いて動揺することなく、ケロッとした顔でこう聞き返す。
「ダメなのか?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/45/a7/6cf242e9de7c1f4619491f96ce78ee32.jpg)
「俺が先輩達と親しくしたらダメなのか?皆で仲良くした方が良いじゃないか」
「お、俺とお前が?!頭大丈夫か?!
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/m_0152.gif)
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淳のその言葉に、むしろ西条の方が動揺してしまった。
淳はケロリとした体で、小首を傾げながら言葉を続ける。
「ふぅん‥一緒に遊んだらいいじゃないか。
明後日、◯◯区にある店に皆が集まることは知ってるよな?」
「◯◯区‥?明後日‥?」
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淳の口から出たどこか聞き覚えのあるそのワードを、西条は反復した。
淳は西条のことを真っ直ぐ見つめながら言う。
「あれ?知らない?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/70/f3/bd919022ba4ad2af4bc2ff046c27e951.jpg)
「あそこにある焼肉屋に来いって、先輩達からメールが来たろ?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/31/69/928ab2c774c844fe83c3490efd58c91e.jpg)
西条の鼓膜の裏に蘇るのは、つい先日その話をしていた城崎達の会話だった。
んじゃ◯◯区の店行くか。 いつにする? 後で決めよーぜ。 誰呼ぼっかなー。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2d/e8/3f69699327a43f0b653a25fa9eb84469.jpg)
決まったら連絡下さいねと、西条はあの日城崎達にそう言ってその場を後にした。
けれど今現在、彼らから連絡はまだ来ていない‥。
「西条は呼ばれてないの?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/05/00/a937ee73235bab9445a9cef9d92508e2.jpg)
思わず絶句した西条に向かって、淳は核心を突く言葉を無邪気なトーンで続けてくる。
「それじゃあ、西条も行く?行きたいならさ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0c/80/04c26e565bf164a584d0231c464f55b5.jpg)
ピキ‥
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/m_0152.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/62/a8/d150f06c31e2e09d3072c700657f225d.jpg)
まるで誘われなかった自分を憐れむかのようなその淳の態度に、西条は苛立った。
ふざけるなと声を上げながら、思わず淳の肩を強く叩く。
「んな汚ねぇ手に乗るかよ!お前何様のつもりだ?!」
「どうしたの?気を使ってあげたのに怒るなんて」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/04/95/55dfaa1c48545f20f5d91628071b3507.jpg)
西条の口元がヒクヒクと引き攣った。
「は?怒る?誰が?
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/m_0152.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/28/16/faaf1341e3461d0c15421879c13562e9.jpg)
西条からの質問に、「あ、そうだ」と言って淳が切り返す。
「どうやらお前は口が軽いらしいから言っとくけど」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/62/89/1f1972ee054c250ca60a9277db6bf893.jpg)
「はぁ?!
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/m_0152.gif)
「あそこは先輩達が前から飲酒してた店だから、無闇に人に喋るんじゃないぞ。
どうせお前も後で遊びたくなるだろうしな。変に口を滑らせたら店も営業停止になっちゃうし、
良いことなんて何も無いだろう?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4e/2c/2b612e2a22aa4ae6ff4e90cab8b07ba7.jpg)
淳はそう一息で言うと、サッと西条に背中を向けた。
「雑用、行きたくないんなら一人で行くよ。それじゃな」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/39/fd/f03114f0354c502e50a0ab7e5f8e076c.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/64/df/26c5ce2b6d7a4a388eb0394c97ba76e3.jpg)
そして淳は去って行った。
西条は今起こった出来事を思い返し、腸が煮えくり返る思いがする。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/44/8f/1ce60346c01cdd26b10a26139702de3d.jpg)
「クソがっ!!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/50/10/37d2689575cbac36d30fb5687df04399.jpg)
その一連のやりとりを、河村亮は建物の陰から全て見聞きしていた。
しかし胸中はモヤモヤと曇り、どこか腑に落ちない思いでいっぱいだった。
んだぁ?三年のヤンキー達と仲良くねーんじゃなかったのか?
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6e/3f/fcf3e046baaf72123e13bafe253f25e7.jpg)
亮は一人思案に暮れる。
ぜってーそんなとこに行くようなヤツじゃねーのに‥
今になって遅咲きの思春期突入?あ、でも親同士が知り合いなんだっけ?
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0b/9d/c8d01fd5cc78284506d536991070584a.jpg)
フム、と考えてみる亮。
しかしやはり考え直し、そのままくるりと背を向けた。
まぁ‥オレが口出す問題じゃねーわな。
自分で決めたらいいさ。会長には内緒にしといてやんよ
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/13/5e/d5c0f28fa0c8b0a6724925e1d9c52c27.jpg)
頭ではそう決めたものの、やはり気になるのが人の常‥。
亮は何か割り切れない思いを抱えていた。
いやでも‥うーん‥
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1d/00/f28fd6f7d2fb2ce9eb302cf0fb1b30b5.jpg)
暫くその場でもう一度考えたが、考えれば考える程まとまらない。
最後には亮の大きな声が、木々の間に響いて消えた。
「あーもう!知るかっ!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2e/6d/7c1b2fb7c45b2f1d5fd4590d9487d197.jpg)
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<亮と静香>高校時代(1)ー西条のエピソード(6)ーでした。
少し長めの文量になりました。
着々と淳が西条を罠に嵌めていきますね。
しかし亮さん、サボってトッポギ食べに行くとか‥笑
韓国の高校生の間では買い食い=トッポギなんでしょうかね。
日本で言うとなんだろう‥屋台で買い食い‥たこ焼き的な?
文化の違いが面白いですね^^
次回は<亮と静香>高校時代(1)ー西条のエピソード(7)ーです。
西条のエピソード、いつまで続くのか‥。
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