Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

<亮と静香>高校時代(1)ー西条のエピソード(8)ー

2015-05-11 01:00:00 | 河村姉弟2<西条編~おかしな子供>
「くっそーーー!!兄貴のせいで俺まで門限早まって、

監視までつけられたじゃねーかよぉ!狂っちまうっつーのマジで!」




亮のクラスの副級長、城崎仁は叫んでいた。そんな仁の話を、亮はジュースを飲みながら耳を傾ける。

「ふーん」

「西条のヤツのせいで‥。あ~ムカつくぜマジでー。あの野郎、前は兄貴の仲間に入りたくてヘコヘコしてたくせによぉ!

なんでチクるような真似すんだよ!くそっ」


「そんで先生たちが店に押し入った時に、運悪く仁のお兄さんだけ捕まったと」

 

仁は兄の不運と事件による自分への余波を思い、その場で地団駄を踏んで悔しがった。

しかし亮にとっては所詮他人事。「運悪ぃのなー」と軽く受け流す。



「あん時職員室で聞いたヤツが全部情報流して、兄貴とその仲間達が西条をボコったってわけ」

仁は、西条が兄達に殴られることになった顛末を話し出した。亮はじっとそれを聞いている。

「西条のオヤジがうちの家に文句言えるレベルじゃねーから丸く治まったけど‥、

危うく兄貴、留置場行きになるとこだったぜ」
「ふーん」



「てか西条マジふざけてんよ。アイツ、兄貴じゃなくて淳が酒を飲みに行ったからチクったんだってよ。

マジで頭おかしいんじゃねーか?三年と淳っていったら三年も捕まるに決まってんじゃんかよ」




「兄貴達の仲間に入れてもらえなかった腹いせだってバレバレだっつーの」

「‥だよな」「しかも今回のことまで淳のせいにしやがって‥マジイッてるって」



「俺と淳がクラス代表で見舞いに行ったら、淳に向かって

「なんでお前行かなかったんだ」って大騒ぎ」


「なんだその八つ当たり。自分がチクったくせに」



ふぅん、と亮はそれに相槌を打ちながら、微かに胸が騒ぎ出すのを感じていた。

仁は事件に関するファクターを一つ一つ明らかにしていく。

「兄貴から聞いたけど、淳は初めから行くとは言ってなかったらしい。

メール履歴に「すみませんが行けません」ってメールも残ってた」




心の中がざわめく。

思い出すのは、西条のせいで職員室に呼び出された淳の姿。

「あなたが横領してるって聞いて‥」



淳に対する常日頃の西条の態度。

「偉そうに金出せだの言いやがって何様かしらねーけどよー」



クラスメートが西条に対して思っている心の内。

「西条のことだから、あの性格のせいで三年をムカつかせて殴られたんだろ」

「いつかこんなことになると思ってたよ」「青田にも無駄に突っかかってたもんなー」




そしてあの日、西条に向かって言った淳の言葉。

「無闇に人に喋るんじゃないぞ」



「俺も呼ばれたんだ」「お前は行かないのか?」



「西条も行く?」「お前と俺の仲が良くないって知ってるんじゃない」



巧みな言い回し。確実な証拠となる発言は何も無い。

亮は再度心の中で思う。

‥そうだ。確かに「行く」とは言ってねぇ。


そして先ほど目にした、口元に浮かぶ微かな嘲笑ー‥。





ふぅん‥



数々のファクターが、全て一つの線で繋がっているような感覚を亮は微かに覚えた。

心のどこかで感じる、じわりと漏れる毒。仁も微かにその毒を感じる。

「でもちょっと話が無理矢理すぎねぇ?」



「んな嘘一発でバレんじゃん。西条ってそこまでバカだったっけ?」

「ヤツは仁の兄貴達と仲良くしたがってたからな」

「淳の話によると、「自分は行けないから西条だけでも行って来たら」って言ったんだって。

けど西条の言い分としては、淳は西条に「行け」って言ったわけじゃなく、「淳自身が飲みに行くって言った」ときてる」




じわり、じわりと毒が漏れる。

この事件は偶然ではなく、誰かがもたらした必然であるかのように、うまく出来過ぎているのだ。

「おい亮、お前何か知らねぇ?」

「え?」



「マジで淳が酒飲みに行こうなんて誘ったわけじゃねーよな?」

「でも青田が最近急に仁の兄貴達と仲良くなったのは事実なんだ」



仁と友人は亮に質問を投げかけた。

この事件において最も疑われることのない、その当事者のアリバイについて。

「あの日淳がどこにいたか知ってるか?」「教室には居なかったよな」

「二人の言い分が噛み合わねぇから、どっちが正しいのか分かんねーんだ」



おそらく毒は回り出す。

亮が見聞きした西条と淳の会話を今口に出せば、きっと確実にー‥。




「あ‥」




しかし亮は選択した。

真実を話さずに、毒が回ることの無い未来を。


「おいおい、淳がどんなヤツかってのはよく知ってんだろ?

仁、お前の兄貴だから仲良くしてたってだけで、一緒に酒飲みに行くなんてー‥」




亮は思った。

ここで自分が下手なことを言えば、淳の分が悪くなるー‥。

「そういえば前の集会ん時、淳は兄貴と会ったんだったな」

「つーかオレ見たんだよ。西条と淳が口喧嘩してんの。そん時確かに淳は行かねえっつってたよ」

「やっぱりかー!だよなぁ、淳に限って!」



毒が回り出さぬよう、その為の予防線まで亮は張った。

「「西条が行きたいなら行けば」とか言ってたっけな?」



オレが片をつけてやると思いながら、亮は淳を庇う小さな嘘を吐いた。

そしてその嘘は、淳の常日頃の人間性を証拠として、立派な真実として仁達を納得させる。

「やっぱり西条のヤツ、淳に因縁つけたくてしゃーねーのな」

「それじゃ青田はまた罪もねーのに担任に呼び出しくらったってわけか」

「そーゆーこったな」



西条と上級生達の事件を受け、職員室に呼び出された淳はこう言ったと言う。

「先輩達に誘われましたが、当然断りました。

先輩達が罰を受けるんじゃないかと思って、言えなかったんです。すみませんでした」




淳の言葉を仁が反復し、「アイツは義理堅い男だ」と言って笑った。

仁の友人も、亮もつられて笑う。



笑顔の裏で、亮は思った。

淳のヤツ、自分でもここまで事が大きくなるとは思ってなかったんか?



さらりと発された、あの台詞。

西条も行く?



そうだよな、確かに自分が”行く”とは言ってなかったけど‥。

西条”も”か‥。




亮はフッと笑いながら、その意味深な言葉をそれ以上気にすることを止めた。

毒は心の中に押し込めて、苦労の多い幼馴染を慮って。

ま‥わざとか言い間違ったのかは知らねーけど‥。

たまにはお人好しのカモは止めて、ストレス発散ってとこかねww




亮はククッと笑いながら、そのまま教室まで歩いて行った。


西条和夫に関する事件は、これで幕を閉じることになる。

真実は闇の中に葬られ、毒だけが閉じ込められたまま、亮の中にこびりついた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<亮と静香>高校時代(1)ー西条のエピソード(8)ーでした。

これで西条のエピソードはおしまいです。

しかし淳は、人を陥れる才能ありすぎですねぇ‥。

子供の時も高校生になってからも、”線を超えた”者に対する制裁が半端ないですね。

頭が切れすぎる不幸、という印象を受けます。


さて次回はタイマン勝負からの続きですね。

<深い溝>です。

人気ブログランキングに参加しました
人気ブログランキングへ

引き続きキャラ人気投票も行っています~!

<亮と静香>高校時代(1)ー西条のエピソード(7)ー

2015-05-09 01:00:00 | 河村姉弟2<西条編~おかしな子供>
「あそこにある焼肉屋に来いって、先輩達からメールが来たろ?」



西条と淳がこの会話をした翌日、小さな事件が起こった。

西条が廊下を歩いていた河村亮の足を引っ掛け、「青田の子分野郎」と絡んだのだ。



日頃の鬱憤も相まって亮は切れ、思わず拳を振るった。





翌日。

その日、河村亮は青田淳のことが気になって仕方がなかった。



授業に集中しようとしても、やはり気になってしまう。

亮は何度も前方の席に座る淳の背中に目をやった。

 

先生の声など耳に入って来ない。亮は一人心の中でその疑問を呟いた。

今日って‥その集まる日なんじゃねーのか?



一昨日淳は、確かにこう言っていた。

「ふぅん‥一緒に遊んだらいいじゃないか。

明後日、◯◯区にある店に皆が集まることは知ってるよな?」




そして今日が、その日なのだ。

しかし亮はやはり自分には関係の無いことだと、自らに言い聞かせて心を誤魔化す。







時刻は十一時を指し、体育の時間になった。

淳に変わった様子は無い。






一時。昼食。

亮はやはり淳を度々窺ってみるが、変わった様子は無い。






そして更に時間は流れ、下校前の掃除の時刻になった。

亮はモップの柄にもたれかかりながら、モヤモヤとした思いを抱え続けていた。



自分には関係ない、と何度繰り返してみても、晴れない胸の内‥。



結局亮は意を決して、淳に聞いてみることにした。

「淳ー‥」



するとその亮の声を聞いたクラスメートが、淳の席の辺りを指さしてこう言った。

「青田探してんの?もういねーけど‥」



淳の席は既に空席だった。亮は眉を寄せて不思議に思う。

早くね?掃除もしねーで?



級長の淳が、掃除もせずに下校するなどいつもならあり得ない。

亮の胸中がザワザワと騒ぐ。

そしてその後ろでは傷だらけになった西条(昨日亮にやられた傷だ)が、同じく淳の席を睨んでいた。



西条は意を決したように頷くと、パッと踵を返して何処かへ向かった。

亮は西条の存在に気づき、「あん?」と声を掛ける。



しかし西条は振り向きもせずに歩いて行ってしまった。

亮は舌打ちをしながら「んだぁ?と苛立った。



しかし今は西条を気にしている場合ではない。淳のことを考えるべきだ。

なぜ淳は、掃除もせずに居なくなってしまったのかー‥。



亮の頭の中に、遅咲きの思春期を楽しむ淳の姿が浮かんで来た。

うう‥



飲酒、喫煙、女遊び‥。

いくら遅咲きの思春期といっても、これはちょっといただけない。亮は堪らず駆け出した。

「ったくよぉ!一応ちょっくら探さねーと!いくらなんでもそれはちょっと間違‥」



そう言いながら廊下を走る亮。

しかし角を曲がりかけた時、いきなり探していた人物に出くわした。

「どわああああーっ!」



「な‥なんだぁ?!」



突然亮からそう言われた淳は、キョトンとその場で立ち止まった。

二人は目を丸くして、暫し互いの姿を凝視する。

 

亮は人差し指で淳を指しながら、大きな声でこう問うた。

「お前なんでここにいんの?!」「え?」



淳は不思議そうに小首を傾げながら、自分がここに居る理由を話し出した。

「なんでって‥。雑用に行って、帰る途中だよ。

終わったら帰宅するつもり」
「はぁ?!」



まだその理由が理解しきれていない亮。しかし淳は平然と問い掛ける。

「一緒に行く?これ重くてさ」 「??」



亮の胸中がモヤモヤと曇る。そのまま二人は並んで歩き出した。

「え‥雑用って何の?てか掃除は?」「明日の一限に使う資料だって。今持って行って欲しいって先生が」

「てかなんでそれをお前一人に‥」

「別に俺一人ってわけじゃないさ。もう一人連れて来いって言ってたから、一緒に行こう。

掃除はしなくていいってさ」
 「お?おー‥」



行かねーことにしたってことか?と亮は、その平然とした淳の顔を見ながら考えた。

鼓膜の裏に、一昨日耳にした淳の台詞が過る。

”俺も呼ばれたんだ” ”西条も行く?”



淳は確かにそう言った。亮はその意味を考え直して合点が行く。

そっか‥自分が「行く」とは言ってねーわけだ



そんじゃアイツが一方的にムカついてたってワケか。

くく‥ウケるww
 



淳の巧みな言い回しに、西条も亮も勘違いをさせられていた。

亮は含み笑いを漏らしながら、淳の持っていた資料を半分持ってやる。

「手伝ったら何か奢ってくれるか~?」「分かったよ」



そうして二人は雑用を済ませ、共に帰宅した。



そして翌日、教室に西条の姿は無かった。










その時の淳の横顔を、亮はハッキリとその眼で見ていた。



そしてその眼を疑ったのだ。



亮は淳から目を逸らすと、一人思案に耽った。

いや‥元々仲悪かったんだから、嘲笑もあり得るか‥。

西条のことだから、あの性格のせいで三年をムカつかせて殴られたんだろうし‥。

それでも先輩達を裏切るってのは予想外だったな




周りではクラスメートが各々好きなようにお喋りを続けている。

「青田にも無駄に突っかかってたもんなー」「いつかこんなことになると思ってたよ」



亮は再び、淳の方へと視線を送った。

現在の亮はこの時のことを思い出し、こう回想している。

<あの時、気づくべきだったんだ>と。


「まーアイツ元から性格悪かったからなぁ」「何かやらかすと思ってたよ」



淳は何も言わずに前を向いていた。

その後姿を見ながら、亮はとあることに思い至る。

そういやあの先輩、仁の兄貴じゃなかったっけ?



そして亮は友人らと共に、城崎仁の嘆きを聞くことになるのだった。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<亮と静香>高校時代(1)ー西条のエピソード(7)ーでした。

日本語版では切れ切れにしか分からなかった西条事件が、今回時系列で描いてあるのでようやく流れが掴めた感じですね。

あと、ブログ記事を本家版と日本語版を混ぜて構成してみました。ちょっと読みにくいかな~^^;


次回は<亮と静香>高校時代(1)ー西条のエピソード(8)ーです。

ようやく西条編、ラストです!


人気ブログランキングに参加しました
人気ブログランキングへ

引き続きキャラ人気投票も行っています~!

<亮と静香>高校時代(1)ー西条のエピソード(6)ー

2015-05-07 01:00:00 | 河村姉弟2<西条編~おかしな子供>


西条和夫はその日も、苛立ちながら廊下を歩いていた。

あの宿敵、青田淳のことを考えながら。

まぁ良いさ‥。いくら青田といっても、先輩達にまで手は出せねーだろ。

どうにかして俺も‥


 

先日見掛けた、淳と城崎が親しそうに会話をしていた場面‥。

そのことを考える度に、西条の心は焦りと苛立ちに歪んだ。



どうにかして青田淳を出し抜ける方法はないものか‥。

そんなことを考えている最中、西条は後ろから声を掛けられる。

「西条」



気配もなく名を呼ばれ、西条は思わずビクッと震えた。

振り返ると、あの男が自分の方を見ている。



西条はジャケットを整えると、眉を寄せて淳と相対した。

「何だよ?」

「担任の先生から雑用言い渡されたんだ。行こう」

「はぁ?」



突然の淳の申し入れに、西条は顔を顰めて言い返した。

「んだよ、何で俺がお前と?」

「さぁな。お前と俺の仲が良くないってこと、知ってるんじゃない」



淳はそっけなくそう言って、そのままスタスタと歩いて行った。

西条はその疎ましい背中を、煩わしさと共に睨んでいる。



「その前にお前に話がある」と西条は淳に言った。

淳は頷いて、二人はそのまま外へ歩いて行く。



河村亮は淳に声を掛けようと片手を上げかけたのだが、

西条が一緒に歩いているのを見てそれを止めた。

「あれ?」



なんだ?どうして二人が‥雑用?つーかなんでよりによって西条?

てか外出の許可取ったってこと?


 

亮の頭の中に、こんな方程式が思い浮かんだ。

先生からの用事で外出



トッポギ食べに行ける




亮の頭に浮かんだ、そんなサボリの方程式。

亮は淳を追いかけながら、一目散に駆けて行った‥。

「おいっ!一緒に行くっ!てかソイツじゃなくてオレを連れてけっつーの!」








西条と淳を追いかけて、亮は裏口の近くまで走り出た。

やがて彼らの背中を見つけた亮であったが、一つの疑問が頭の中に湧く。

あれ?何でそっちに?裏口もう過ぎてっぞ?

 

あちらの方向には特に何も無いはずだ。

なぜあんな所へ二人して消えて行くんだろう‥。



すると二人が向かった辺りから、何やら言い争う声が聞こえて来た。



亮はハッと思い当たる。

ケンカか?!



亮は、西条を殴る淳の姿を想像した。

だよな、淳もいい加減我慢の限界‥



そう思いながら亮は、踵を返そうとした。

我慢を重ねた幼馴染の爆発を、そっと知らぬふりしてやろうと。

しかし次の瞬間、ハッキリと西条の声が聞こえてきたのだった。

「お前一体何企んでんだよ?!」



亮は建物の陰から、二人の会話にそっと耳をそばだてる。

「ガキみてぇな真似は止めろ!男のくせによぉ、人をからかってー‥」



「どういうこと?」



西条の主張に、淳はまるで身に覚えがないというかの様な態度でそう返した。

西条は続ける。

「お前がわざと俺の前で先輩達と仲良さそうにしてっこと、

気づかないとでも思ったんか?」




ムカつく、と言いながら西条はずっと思っていたことを口に出した。

しかし淳はそれを聞いて動揺することなく、ケロッとした顔でこう聞き返す。

「ダメなのか?」



「俺が先輩達と親しくしたらダメなのか?皆で仲良くした方が良いじゃないか」

「お、俺とお前が?!頭大丈夫か?!



淳のその言葉に、むしろ西条の方が動揺してしまった。

淳はケロリとした体で、小首を傾げながら言葉を続ける。

「ふぅん‥一緒に遊んだらいいじゃないか。

明後日、◯◯区にある店に皆が集まることは知ってるよな?」


「◯◯区‥?明後日‥?」



淳の口から出たどこか聞き覚えのあるそのワードを、西条は反復した。

淳は西条のことを真っ直ぐ見つめながら言う。

「あれ?知らない?」



「あそこにある焼肉屋に来いって、先輩達からメールが来たろ?」



西条の鼓膜の裏に蘇るのは、つい先日その話をしていた城崎達の会話だった。

んじゃ◯◯区の店行くか。 いつにする? 後で決めよーぜ。 誰呼ぼっかなー。



決まったら連絡下さいねと、西条はあの日城崎達にそう言ってその場を後にした。

けれど今現在、彼らから連絡はまだ来ていない‥。


「西条は呼ばれてないの?」



思わず絶句した西条に向かって、淳は核心を突く言葉を無邪気なトーンで続けてくる。

「それじゃあ、西条も行く?行きたいならさ」



ピキ‥



まるで誘われなかった自分を憐れむかのようなその淳の態度に、西条は苛立った。

ふざけるなと声を上げながら、思わず淳の肩を強く叩く。

「んな汚ねぇ手に乗るかよ!お前何様のつもりだ?!」

「どうしたの?気を使ってあげたのに怒るなんて」



西条の口元がヒクヒクと引き攣った。

「は?怒る?誰が?



西条からの質問に、「あ、そうだ」と言って淳が切り返す。

「どうやらお前は口が軽いらしいから言っとくけど」



「はぁ?!

「あそこは先輩達が前から飲酒してた店だから、無闇に人に喋るんじゃないぞ。

どうせお前も後で遊びたくなるだろうしな。変に口を滑らせたら店も営業停止になっちゃうし、

良いことなんて何も無いだろう?」




淳はそう一息で言うと、サッと西条に背中を向けた。

「雑用、行きたくないんなら一人で行くよ。それじゃな」

 

そして淳は去って行った。

西条は今起こった出来事を思い返し、腸が煮えくり返る思いがする。



「クソがっ!!」



その一連のやりとりを、河村亮は建物の陰から全て見聞きしていた。

しかし胸中はモヤモヤと曇り、どこか腑に落ちない思いでいっぱいだった。

んだぁ?三年のヤンキー達と仲良くねーんじゃなかったのか?



亮は一人思案に暮れる。

ぜってーそんなとこに行くようなヤツじゃねーのに‥

今になって遅咲きの思春期突入?あ、でも親同士が知り合いなんだっけ?




フム、と考えてみる亮。

しかしやはり考え直し、そのままくるりと背を向けた。

まぁ‥オレが口出す問題じゃねーわな。

自分で決めたらいいさ。会長には内緒にしといてやんよ




頭ではそう決めたものの、やはり気になるのが人の常‥。

亮は何か割り切れない思いを抱えていた。

いやでも‥うーん‥



暫くその場でもう一度考えたが、考えれば考える程まとまらない。

最後には亮の大きな声が、木々の間に響いて消えた。

「あーもう!知るかっ!」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<亮と静香>高校時代(1)ー西条のエピソード(6)ーでした。

少し長めの文量になりました。

着々と淳が西条を罠に嵌めていきますね。

しかし亮さん、サボってトッポギ食べに行くとか‥笑

韓国の高校生の間では買い食い=トッポギなんでしょうかね。

日本で言うとなんだろう‥屋台で買い食い‥たこ焼き的な?

文化の違いが面白いですね^^


次回は<亮と静香>高校時代(1)ー西条のエピソード(7)ーです。

西条のエピソード、いつまで続くのか‥。



人気ブログランキングに参加しました
人気ブログランキングへ

引き続きキャラ人気投票も行っています~!

<亮と静香>高校時代(1)ー西条のエピソード(5)ー

2015-05-05 01:00:00 | 河村姉弟2<西条編~おかしな子供>
その日河村亮は青田淳に、気になっていたことをさりげなく聞いた。

「お前、仁の兄貴達と仲良いの?」 「ううん。なんで?」



二人は並んで歩きながら会話を続ける。

「いや、この前見かけた時仲良さそうに見えたからよ。仁は良いヤツだけど、兄貴達はタチ悪そうじゃんか~」

「仁の兄貴だから挨拶しただけだよ。親同士も知り合いだし」



その淳からの返答は、あらまし亮が予想していたものだったが、一応軽く釘を刺しておくことにした。

「仲良くしてんじゃねーぞ?」「してないってば」



そして亮は、ぶっきらぼうに話を終わらせる。

「ならいーや。売店いこーぜ」



亮はブツブツと西条和夫についての文句を言いながら、淳の隣を歩いた。

「てか西条のヤツひつけーんだよなぁ。

まるで夏の蚊みてーにプンプンプンプン‥。なんとか駆除出来ねーかな」


「気にしないのが一番だよ」



二人は西条について話をしながら、売店へと歩を進める。


そして同じ頃、城崎兄のグループと西条和夫は、いつもの場所にたむろって会話していた。

「クソ、センター試験前なのに担任が遊ばしてくんねー」



彼らの足元に落ちた、幾本もの煙草の吸殻。

煙と共に不満も吐き出しながら、彼らは窮屈な今を嘆く。

「担任の野郎、ネカフェにまで押しかけて来やがって‥」「マジうぜー」



「センターだからって縛り付けたら逆にストレス溜まるっつーのによ!」「なー」「ですよね!」

「ストレス発散する場所作ってくれるわけじゃねーのに、うっせーよ」



そのグループの中で、一番ストレス過多なのはやはり城崎仁の兄のようだった。

素行の悪さによる担任からのマークに加え、厳格な父からの目もあるらしい。

「前にクラブ行ったのオヤジにバレてクッソ困ったっつーの。今度捕まえたら24時間監視するってよ」

「あ、そういや◯◯区にある飯屋、超良いってよ。中坊にも酒売るって」「え?あそこまだ捕まってねーの?」

「卒業前に焼き肉でお祝いっしょ」「それいいっすね!」



「てか正直、ワインより焼酎じゃね?はー‥先公ども、酒飲んだらピーチクパーチク‥」

「もーいーや。女の子達呼ぼーぜ」「もうとっくに連絡つけたっつーの」



酒に煙草に女の子‥。西条は相槌を打つしか出来ない。

するとそんな西条に向かって、城崎が言葉を掛ける。

「てかお前なんで教室帰んねーんだよ。長居しすぎじゃね?」

「ああ、帰るッス帰るッス!」



城崎はすぐに仲間の方に向き直ると、会合の計画の続きを進めた。

「んじゃその◯◯区の店行くか」「いつにする?」「後で決めよーぜ」「誰呼ぼっかなー」

「決まったら連絡下さいね!」



西条は去り際にそう約束を取り付けると、教室へ帰る為その場に立ち上がった。

城崎達は会話を続けている。



ようやく自分もこの先輩達の仲間になることが出来たと、西条の胸は充足感でいっぱいだった。

青田淳に対抗出来る後ろ盾が、今度こそ手に入るのだと。




西条は上機嫌で廊下を歩いた。

これよこれ♪こういうこと♪



そんな西条の姿を見た河村亮は、隣に居る副級長の仁に話し掛ける。

「アイツ最近あんま教室に居なくね?」

「兄貴が結構アイツにかまってやってるらしい。

ずっとツルンでんのかな?分かんねーけど」




二人は怪訝そうな面持ちのまま、その場を後にした。

城崎達を探す西条は笑顔を浮かべながら、廊下の角を曲がる。



するとそこに、城崎と青田淳の姿があった。二人は親しげに会話する。

「よぉ!淳!CD、サンキューな。お前んちには何でもあんのなー」「いえいえ」

 

親密そうな二人の姿を見て、西条は思わず口をあんぐりと開けて固まった。

彼にとっては想定外の現状だ。



すると淳は廊下の角に西条の姿を見つけ、ニコリと微笑む。



淳と城崎は会話を続けている。

西条はすぐに踵を返し、二人の元から立ち去った。

「あ、そういや仁から聞いたけど、お前一年の◯◯から

告られたらしーな?あの子可愛いよなー」
「仁がそんなことを?」



西条の心は苛立った。

中庭に転がっていた空き缶を蹴飛ばし、大きな声で叫ぶ。

「クソッ!!」





それからというもの、西条和夫は常に淳のことを睨んでは苛立っていた。

そんな西条の姿を、亮はじっと観察している。

わざと見せつけやがって‥!あの野郎‥!



ウッゼェ‥



ウゼェんだよ!



見かねた亮が、西条と淳の間に割って出てサインを送る。

見てんぞコラ



西条は舌打ちをしながら、

アイツもムカつく!と顔を顰める。




西条和夫と青田淳の間には、常に小さなさざ波が立っていた。

そして彼がその侵食に耐えかねた頃、一つの事件が起こる。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<亮と静香>高校時代(1)ー西条のエピソード(5)ーでした。

酒に煙草に女に‥絵に書いたようなヤンチャですね‥仁のお兄さんたちは‥

そして淳が城崎に何のCDを貸したのか気になるところです。


次回は<亮と静香>高校時代(1)ー西条のエピソード(6)ーです。


人気ブログランキングに参加しました
人気ブログランキングへ

引き続きキャラ人気投票も行っています~!

2部完結 単行本♪

2015-05-04 15:21:37 | 日記
皆さんこんにちは♪

久しぶりの不定期更新‥

というのも、さきほど単行本が届いたのですーー



7巻表紙は雪と先輩、2部42話~49話

8巻表紙は雪と蓮、2部50話~58話

9巻表紙は雪と静香、2部59話~67話ですね。これで2部完結です。

7巻と9巻末に2部特別編の記事がそれぞれ入ってました。

加筆修正は特に‥なかったような‥(どうでしたかCitTさん?!)

2部60話の雪の部屋着が突然半ズボンになるところ↓



なども特に修正されず‥

前回の単行本には描き下ろしがついていてすごく良かったですが、今回は特になし‥

Webと一緒だな‥という感想です

グッズはこちら↓



淳と亮のポストカード、そしてスンキウサギのステッカー‥(テンボルの歌詞つき‥)

(久々のテンボル↓)



うう~んま‥いいか‥


2部、久々に読むと絵が3部とは違ってまた良いですね^^

しかし完結までコミックで出すとなるとあと何セット買わねばならぬのか‥ぐぐ‥


ではこのへんで‥!

明日一時更新の記事もよろしくお願いします~