あまりの美しさに去り難く、二泊してしまった地、萩。
関東地方からの、修学旅行の定番コースである、山陰山陽だが、
正直、まだ生まれて十数年の高校生に、
その良さは、
あまりわからないのではないだろうか。
個人差はあれど、
自然遺産や寺社仏閣など理解するには、
知識や経験が、やはり少々足りないし、
何より、刺激を求める年頃には、
歴史上の偉人の足跡より、
旅行中の、意中の異性の足跡の方が、
ずっと気になるものだ(笑)
かくいう私もその節は、
『広島の夜はどこへ踊りに行くか』で、頭がいっぱいだったものだし、
(嗚呼、バブルよ彼方!)
だから再びその地を踏んだとき、
これほど魅了されるとは、正直思ってもいなかった。
ゆったりと風通し良く、道行く人を見守る、明るい静かな町。
穏やかにきらめき抱き、
行き交う漁船や、彼方を映す海。
...高校生の私には、見えなかった風景が、
狂おしいほど今は、美しく、はっきり見える。
『年をとるって悪くない』
そう、思わせてくれる町。
修学旅行の思い出も、もちろん悪くはなかったけれど、
時を経て、失うもの、得るもの。
遠く、思いを馳せるに相応しい地、萩。
小さな町が、未来を見据えて学び、造り、送り出したものが。
人生も半ばを過ぎて、ようやく、
『ここ』へ繋がっていたと気づかせてくれるのである。
恵美須ヶ鼻造船所跡で見かけた、三少年と仔犬。
彼らもこの美しい故郷を、離れてしまう日がくるのだろうか。