「ここ。『何がやりたい店なんだかさっぱりわかんない」ってさ。みんな言ってるよ」
...店を始めたばかりの頃。
とあるお客様が鼻で笑いながら、そう言ってきたのを覚えている。
なぜ、その人が、
わざわざ客として金を払ってまで、
そんなことを言いに来たのかは、今でもわからないが。
とにかく、新参である我々に対して好意的でないのは、
明らかに伝わってきた。
飲み屋街として、
勢いが落ちつつはあっても、歴史のある町で。
新店が出来れば、
すぐに情報が伝わる頃であったのも、
そんな洗礼を受けた理由のひとつだったのかもしれないが...
対するゴンザの『答え』があまりに意外だったので、
相手もどうしていいのかわからない様子になった。
曰く、
「何がやりたいのかなんて、僕にだってわからないんだから、
他人にわかるわけがないじゃないですか」
と。
...あれから10年。
『何がやりたい店なんだかさっぱりわからない』
と我々を指して言っていた人々が、
今どうしているかはわからないが、
実は、我々自身も未だ、
ある意味、何がやりたいかわからずにいる。
やりたいことは毎日変わり、
新しい日々は勉強で、
その時々にやれること、やらなければならないこと、
求められることは違ってくると、
やればやるほど思うからだ。
もし、
「これです!」
「これでいい」
と、答えを出してしまったら、
我々はきっと、大切なものを失うだろう。
ただ、来て下さる皆様に楽しんで頂くための原動力と、
自分たち自身への疑問を。
一年。
また一年。
...そして十年。
店を守るために、ある意味図々しくなり、
時に敵を作ることもあるが。
これからも『やりたいこと』を追い求めて、
楽しく仕事が出来たらと思う。
ちなみにここ数日、
ゴンザが目指しているのは、
『自分で育てた天然酵母で完璧なカンパーニュを焼くこと』である様子。
...まあ頑張れ(笑)