高校時代の友人二人と飲みに行き、別れた帰り、近くを通りがかったので母、妹を拾い、ゴンザと4人、食事をしに行った。私を迎えに来る前に、パチンコで勝ったというゴンザをスポンサーにワイワイと、しばし楽しい時間を過ごす。
時間はすでに深夜過ぎ。
店を出たときには、もう3時も近かった。
母と妹の家はそれぞれそこから車で数分。
楽しい気分のまま、母を先に下ろし、残った妹を送る。心弾む時間を惜しむ、心地よい疲れ。
と、妹の家の数十メートル手前。お喋りに夢中になっていた私は、ゴンザがかけた急ブレーキで前方にあるものに気付いた。
今、我々が走っている一方通行の路地。数メートル先で車道の真ん中にひとかたまりになった仔猫たち。ライトとブレーキの音に驚き蜘蛛の子を散らすように逃げてゆく。
しかし、中の1匹がすぐに引き返し、今まで彼らがいた路地の真ん中、そこに黒くうずくまった物体にしきりにすり寄っている.....。
ふいに私達の胸をよぎる嫌な予感。
そこには。
たぶん、車に轢かれたのだろう。
まだ乳離れして間もないであろう仔猫が横たわっていた。
私と妹はゴンザに車を停めてくれるよう頼み、二人、様子を見に行く。
もしかしたら、まだ轢かれたばかりかもしれない。
もしかしたら、まだ生きているかもしれない。
しかし、目に入ったのは無残な姿。
たぶん、苦しむ間もなかっただろう。
血にまみれた体を抱き上げれば、まだとても温かい.....。
おそらく、この子が轢かれてから数分も経っていないのだろう。この仔猫を轢いたドライバーが、そのことに気づいたのか気づかなかったのかは、答えがわかったところで虚しすぎるであろうから考える気にもなれないが、兄弟が死んでしまったことを理解出来ない仔猫たちがこの子を起こそうとして、だから影は大きくなり、私達は見過ごすことなく、この小さな身体の影を見つけることが出来たのだ。
哀しい出会い。
ならば。何が出来るのか。
私は一体、何をすればいいのか。
私は仔猫を抱いたまま車に乗り込み、妹の家で棺代わりの靴箱とドライフードを貰いうけ、まだ温もりの消えない小さな体をそこにそっと納めた。これからの道行きにひもじい思いをしないためのドライフードと、その煙が導き手となるよう、妹が持ってきてくれた線香を添えて。
そして.....なす術もなく、すぐそばにある交番に小さな亡骸を運んだ。
すると、2人いたおまわりさんは翌日すぐにしかるべきところへ連絡することを約束してくれ、血のついた私の手を見て
「良かったら手を洗って行ってください」と、洗面所を貸してくれた。
私とゴンザは頭を下げ、「このまま静かに扱ってあげてください」とお願いして、その場をを辞した。
いつも。いつの時にも。
人間は.....私達は無力だから。
きっと夜が明けたら。
小さな亡骸はどこかの過程で粗雑に扱われ、その行方は誰も知ることがないものになるのだろう。
ならばせめて.....。
時はお盆。
願わくば、つかの間の里帰りを終えた、心優しき死者の御霊が不運な仔猫の命と寄り添い、あちらへと導いてくれますよう。
どうか.....どうか。
時間はすでに深夜過ぎ。
店を出たときには、もう3時も近かった。
母と妹の家はそれぞれそこから車で数分。
楽しい気分のまま、母を先に下ろし、残った妹を送る。心弾む時間を惜しむ、心地よい疲れ。
と、妹の家の数十メートル手前。お喋りに夢中になっていた私は、ゴンザがかけた急ブレーキで前方にあるものに気付いた。
今、我々が走っている一方通行の路地。数メートル先で車道の真ん中にひとかたまりになった仔猫たち。ライトとブレーキの音に驚き蜘蛛の子を散らすように逃げてゆく。
しかし、中の1匹がすぐに引き返し、今まで彼らがいた路地の真ん中、そこに黒くうずくまった物体にしきりにすり寄っている.....。
ふいに私達の胸をよぎる嫌な予感。
そこには。
たぶん、車に轢かれたのだろう。
まだ乳離れして間もないであろう仔猫が横たわっていた。
私と妹はゴンザに車を停めてくれるよう頼み、二人、様子を見に行く。
もしかしたら、まだ轢かれたばかりかもしれない。
もしかしたら、まだ生きているかもしれない。
しかし、目に入ったのは無残な姿。
たぶん、苦しむ間もなかっただろう。
血にまみれた体を抱き上げれば、まだとても温かい.....。
おそらく、この子が轢かれてから数分も経っていないのだろう。この仔猫を轢いたドライバーが、そのことに気づいたのか気づかなかったのかは、答えがわかったところで虚しすぎるであろうから考える気にもなれないが、兄弟が死んでしまったことを理解出来ない仔猫たちがこの子を起こそうとして、だから影は大きくなり、私達は見過ごすことなく、この小さな身体の影を見つけることが出来たのだ。
哀しい出会い。
ならば。何が出来るのか。
私は一体、何をすればいいのか。
私は仔猫を抱いたまま車に乗り込み、妹の家で棺代わりの靴箱とドライフードを貰いうけ、まだ温もりの消えない小さな体をそこにそっと納めた。これからの道行きにひもじい思いをしないためのドライフードと、その煙が導き手となるよう、妹が持ってきてくれた線香を添えて。
そして.....なす術もなく、すぐそばにある交番に小さな亡骸を運んだ。
すると、2人いたおまわりさんは翌日すぐにしかるべきところへ連絡することを約束してくれ、血のついた私の手を見て
「良かったら手を洗って行ってください」と、洗面所を貸してくれた。
私とゴンザは頭を下げ、「このまま静かに扱ってあげてください」とお願いして、その場をを辞した。
いつも。いつの時にも。
人間は.....私達は無力だから。
きっと夜が明けたら。
小さな亡骸はどこかの過程で粗雑に扱われ、その行方は誰も知ることがないものになるのだろう。
ならばせめて.....。
時はお盆。
願わくば、つかの間の里帰りを終えた、心優しき死者の御霊が不運な仔猫の命と寄り添い、あちらへと導いてくれますよう。
どうか.....どうか。
生き死にはさけられないことです、
誕生は喜ばしいことですが、
死の旅立ちはどこか哀しい。
世に、生き物好きで、
自分でも飼育し、
きちんと面倒をみられる(最後まで)
人は多々あっても、
自分の手から離れたものにまで
心を配れる人は、
実際に行動に移せる人は
本当に少ないと思います。
私ならきっとできない
最後の看取りを
手ずからなさった
erima様とゴンザ様、
ありがとうございます。
ああ、むなしい、
それにしてもむなしいです……
別に、野良犬でも野良猫でも
そこんじょそこらにいても
いいと思うんですよ。
可哀相なことになりさえしなければ……
日本はたぶん、先進国でも文化国家でもない。
小さな動物さえ、守ってやれない社会は、
ただの野蛮人の集団です。
自然の摂理でいえば、病気や死は仕方のないこと。
けれど交通事故は違います。
もちろん、避けられない場合もあるでしょう。
でも.....。
私と妹が死んだ仔猫を抱き上げようとしている、
まさにその時でさえ、細い路地を猛スピードで走り
くる車の多いこと。
夜中だから子供の飛び出しもない、とでも思って
いるのでしょうか?
猫や犬が走り出てくる可能性など、考える価値も
ないということでしょうか?
想像力に欠け、理由もなく急ぎ、荒れる人間達。
虚しく、貧しい豊かさに絶望します。
遺された兄弟達の幸せを。
無事な猫生を、ただ祈ることしか出来ません。