卒業の時期、先日の朝日新聞・天声人語に「人生には影響を受けた師が一人はいる」
というようなことが書かれていました。
思い返してみても、残念ながら私には一人もいないのです。
生まれて間もなく父親を亡くし、兄弟・姉妹は一番近くて5歳上だったので
誰も相手をしてくれない。
母は夫に先立たれ、子育てのため 仕事に忙しい。
私は一人きりで育った気がするのです。
小さい時から”夢見る夢子”だったようで、
常に「これは私の本当の生活ではない。今に本当の両親が迎えに来てくれるはず」
などと考えているような子供でした。
近所の男の子たちと大暴れもしましたが、だいたいは家の中で生活していました。
家には誰もいなくて、必然的に書斎に閉じこもる生活でした。
そこには父や姉や兄の買った本がずらりと並び、デスクに広げて読みふけっていました。
考えてみたら、その本の1冊1冊が私を形作ってくれた気がするのです。
今の物事の考え方は、その時に身につけた基本ではないか、と思うのです。
親の考えから逸脱した世界に通用する考え方ができるのは、大量な読書の
賜物と考えています。
「人間はどうあるべきか」などはもちろん、情緒的な感じ方、文章の向こうにある景色・・
ひとり、書斎の中で感動した情景を今も思い出します。
家族の中で孤独を感じていましたが、私を作ってくれたあの環境に感謝しています。
『人生の師』というならば、”書斎の本”だったようです。
自分を作った思いが強いのか、むかしから一人でいるのが好きなので
群れて遊んだりできません。
覚めて見ていたりするのです。困ったものです。