時間がかかりましたが、よろけ織りを織っていました。
以前もよろけ織りをアップしましたが、織り上がった作品のみのアップでしたので、
今回はよろけ織りを詳しく書きます。
まず、織りを織るには糸を織り機に張ります。これを整経(せいけい)といいます。
綜絖(そうこう)という糸通しに通し、その後に筬(おさ)という道具に糸を通すのです。
この筬で糸を手前に寄せるのが『織り』です。
筬はだいたいステンレスでできていて、職人さんの手作りです。
こちらが希望した幅と長さに作ってもらいます。
下の筬が通常の筬です
これは5羽筬といい、糸が5本で1㎝幅になる筬です。
ちなみに、5羽筬は中細糸、4羽筬は合太糸が目安です。
次に、これがよろけ織りの筬です
通常は真っ直ぐなステンレスが斜めに入っています。 ここに糸を通します。
よろけ織りの筬の両端にビニールテープを張り、縦にメモリを入れます。
これは職人さんではなく、私の仕事です。つまり、私仕様のメモリを入れるのです。
私は両端に縦に1㎝幅で0~10までメモリを入れています(筬の端に数字のようなものが見えると思います)
さて、ここからがよろけ織りの真髄です(大げさ)
メモ帳を用意して、0の高さを10回(正の字で記す)織ります。次は1の高さで10回・・・
そうして10まで10回ずつ織っていくと筬の形に斜めに織り上がっていくという・・あ~ら不思議
じゃない、当たり前です。
その次は10から0まで下がって織ります。
そうすると曲線のある織りが織り上がります。
それがこれです。
赤い色はロッグウッドのミョウバン媒染
ベージュはシャリンバイの泥染め
紫はスオウの鉄媒染
パープルは紫根のもみだし
ロッグウッド×シャリンバイは4羽筬、スオウ×紫根は5羽筬で織りました。
1.ロッグウッドは中米の木ですが、日本には明治時代に持ってこられて、もっぱら黒色に染めるために用いられています。
これは4度目の抽出で赤い色だしをしました。それをミョウバン媒染にすることでより赤が出ました。
落ち着いた赤で大好きな色です。糸はシルク手紡ぎ練巻糸です。
2.シャリンバイは 時々 奄美大島へ泥染めに行くので、そこで染めました。
泥染めというのは下染めにピンクのシャリンバイか黄色のフクギに染めてから、
山中で泥に突っ込みます。
これはヘビ、ハブ、イモリとの戦いになり(笑)毎回 決死の覚悟です。(笑い事ではありません)
泥に何回突っ込んだかということで、当然 色の出具合も違うわけで、これはピンクを少し残したかったので
1回の泥染めです。もっと詳しく語ると(?)、ピンクと泥色は段染めにしています。(微妙にわかる程度ですが)
糸はシルクリング1000dです
3.スオウは原産はインド・マレーシアで、材料は染色店に売っています。
本来は貴人の着る紫色に使ったそうです。
これを鉄媒染することによって濃い紫色にしました。糸はシルク平巻糸1/6です。
4.紫根(しこん)は栽培が限られていてほとんど手に入らないものですが、今回手に入れました。
というのも、これは古くは聖徳太子しか身に着けられなかったという色なのです
現在は位の高い神官しか身に着けないと聞いています。
この紫根を酢酸とエチルアルコールを合わせたものに4日間浸けこみます。
これを40℃のお湯で薄めてソーダ灰を加えてPH6.5にして糸を入れ、ひたすら糸を繰ります。
この作業は火も使わず、20分ぐらいですが、1時間ぐらい経ったかと思うほど疲れます。
本来の色は群青色に近く染まり、1度目の染めは見事に色が出ましたが、
これは2度目の染めなので、パープルとなりました。これはこれでいいのです。(勝手に満足)
糸はシルク真綿スラブ糸1/7です。
マフラーは幅29㎝、丈は200㎝です。共に個展展示を予定しています。
というわけで、今回はよろけ織りの仕組みと染色について、です。