昨日(12月1日)は毎年銀座で開かれている『京都絞り展ー京都絞栄会』に行って来ました。
毎年ご案内をいただき、必ず作品を見せていただいています。
京都紋栄会とのご縁は平成20年(2008年)に遡ります。
この年、京都西陣織の山口伊太郎氏が37年間に渡って力を注いできた”源氏物語錦織絵巻”が
完成し発表されたのです。
それを観るためだけに私は京都相国寺の美術館へ向かいました。
まるで筆で描いたような錦織りに、ただため息でした。
2巡したでしょうか。
その後、おいしいものでも食べて1泊し、東京へ帰ろうかと思って玄関へ向かったときです。
階段があり、ポスターを見上げた時、そこには「東海道53次を京都絞りで再現!」と
ありました。
恐る恐る室内に入った私を待ち構えていたものは正面にドーンと下がっていた
『風神雷神』(俵屋宗達作)の大きな緞帳でした。それも総絞りだったのです!
床から天井まであるその大きさと緻密な総絞りに、圧倒されて言葉もありませんでした。
そこまで行く両側に”東海道53次”の版画が絞りで表現されて額に入り、
順番に並べてありました。
53枚を1枚1枚しっかりと見せていただき、『風神雷神』も間近で見せていただいている時、
絞りの職人さんが近づいて来て、今の時代に絞りを普及させていく苦労をお話してくれました。
後継者も少ないということでした。
さぁ、帰ろうかと廊下を歩いていると、今度は絞りで作ったバッグがずらりと並んでいて、
そのなかの1品に惹きつけられ、手に取ってみると「いいでしょう?」と件の職人さん。
見たこともない絞りの図柄にマチと底を革でしっかりと縫製していて「いいなぁ」と
思ったのですが、値段を見て「これは無理!」と思って置き、歩き始めたのですが、
どうしても振り返らずにいられず振り返ったら、職人さんが
「後ろ髪が引かれるでしょ?」と笑顔で仰るのです。
そうなんです!「後ろ髪が引かれる」・・これほどの出会いがあるでしょうか。
「これいただきます」と言ってしまった私。
カードを持ってきたので、そのまま別室でお会計をして買ってしまいました。
清算をしながら「世界でたった一つのバッグですから、良いお買い物ですよ」と
皆さんに言われ、なにかとても嬉しかったのを覚えています。
その時にご縁が出来て、以後、東京で作品展を開くときはご案内をいただくように
なりました。
そのたびにシルクの京都絞りのストールや、パラソルなどを買い求め、
夫には「カモだから」と言われていますが、気に入ったものを買っているのです。
一昨年は琳派が流行していて、夫と二人で観に行き、額に入った尾形光琳作『風神雷神』の
絞りの絵を買いました。 冬には必ず飾っています。
夫婦二人で”カモ”かもしれません。
今年は会の代表者の山岡氏が「東京での展覧会出動は今年限り、後は後継者に任せる」と
お手紙が来ましたので、出かけてご挨拶をしました。
京都へ行ったら会えるのですけど。
今年は2020年東京オリンピックが開かれるのを記念して、鳥獣戯画の”スポーツ編”と題して
かなりお遊び的な絞り展でした。
国宝の鳥獣戯画の絵を絞りにしたものは数年前に見せていただきましたが、これも圧巻でした。
今回は、原画と違うということで写真OKでしたので写してきました。
表彰式のカエルとウサギです。 授与者はサルです。
金・銀・銅のすべてを独占で国旗も日本が3つ。こうなればいいなぁということですね。
このすべてが絞りなのです。笑ってくださいということでしょうか。
笑ったところで、他の作品も見せていただきました。
着物を買おうとしている人がいたり、バッグやお財布、ストール、パラソルなど
相変わらずでしたが、私はまたもやバッグを買ってしまいました。
他に並んでいたものと段違いの絞りの技術が出ていて、今日買わなければいつ買うの?!
と心の声が叫ぶのです。
私は以前京都で買った例の”後ろ髪が引かれて買ったバッグ”を持っていたのですが、
山崎氏や職人さんたちから「あぁ、これぇ」と感嘆の声をあげられ、
皆さん「なつかしいなぁ」と触っていました。
大切に使っているので、今でもきちんとしていて「これ棚に並べましょうか?売れちゃうかも」と
私が言う冗談にみんなで大笑いしました。
すっかり冬の気候になった東京・銀座の街は、風も気持ちよく、買ったバッグを手にして
ご機嫌で帰りました。