※私たちは黙らない!2.11全国集会資料所収、「大日本帝国憲法・日本国憲法・自民党憲法改正草案比較表」(中島光孝弁護士作成)を、作成者の中島光孝弁護士のご厚意により掲載させていただきます。なお、中島弁護士からは次のようなコメントをいただいております。
「私が作成した憲法の比較表は,問題点をさぐる上で役にたつと思います。
関心のある方それぞれが,どこに問題があるかを考えるきっかけになればと思っています。」
大日本帝国憲法・日本国憲法・自民党憲法改正草案比較表①
■PDFファイル
http://www7b.biglobe.ne.jp/~hotline-osaka/kenpo-hikaku.pdf
2013年2月11日 中島光孝
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大日本帝国憲法 |
日本国憲法 |
自民党改正草案(2012年) |
コメント |
由来
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告文(こうもん) 皇朕レ謹ミ畏ミ 皇祖 皇宗ノ神靈ニケサク皇朕レ天壤無窮ノニヒノヲ承繼シヲ保持シテ敢テ失墜スルコト無シ顧ミルニノ進運ニリ人文ノ發達ニヒ宣ク 皇祖 皇宗ノ遺訓ヲニシ典憲ヲ成立シ條章ヲ昭示シ內ハ以テ子孫ノスル所ト爲シ外ハ以テ臣民翼贊ノ道ヲ廣メ永遠ニ遵行セシメ益ゝ国家ノヲニシ民生ノ慶福ヲ進スヘシ玆ニ皇室典範及憲法ヲ制定ス惟フニ此レ皆 皇祖 皇宗ノ後裔ニシタマヘル統治ノ洪範ヲ紹述スルニ外ナラス而シテ朕カニテ時ト倶ニ擧行スルコトヲ得ルハニ 皇祖 皇宗及我カ 皇考ノ威靈ニスルニ由ラサルハ無シ皇朕レ仰テ 皇祖 皇宗及 皇考ノヲリ倂セテ朕カ現在及將來ニ臣民ニ率先シ此ノ憲章ヲ履行シテラサラムコトヲ誓フクハ 神靈此レヲミタマヘ 憲法発布勅語 國家ノ隆昌ト臣民ノ慶福トヲ以テ中心ノトシ朕カ祖宗ニクルノ大權ニ依リ現在及將來ノ臣民ニ對シ此ノ不磨ノ大典ヲ宣布ス フニ我カ祖我カ宗ハ我カ臣民祖先ノ協力ニリ我カ帝國ヲシ以テ無窮ニ垂レタリ此レ我カ神聖ナル祖宗ノ威ト竝ニ臣民ノ忠實勇武ニシテ國ヲ愛シ公ニヒ以テ此ノ光輝アル國史ノヲシタルナリ朕我カ臣民ハ卽チ祖宗ノ忠良ナル臣民ノ子孫ナルヲ囘想シ其ノ朕カ意ヲシ朕カ事ヲシニ和衷協同シ益ゝ我カ帝國ノ光榮ヲ中外ニ宣揚シ祖宗ノ遺業ヲ永久ニナラシムルノ希望ヲ同クシ此ノ負擔ヲ分ツニ堪フルコトヲ疑ハサルナリ (上諭) 朕祖宗ノヲ承ケ萬世一系ノ帝位ヲ踐ミ朕カ親愛スル所ノ臣民ハ卽チ朕カ祖宗ノシタマヒシ所ノ臣民ナルヲ念ヒ其ノ康福ヲ進シ其ノヲ發達セシメムコトヲ願ヒ又其ノ翼贊ニ依リ與ニ倶ニ國家ノ進運ヲセムコトヲ望ミ乃チ明治十四年十月十二日ノ詔命ヲ履踐シ玆ニ大憲ヲ制定シ朕カスル所ヲ示シ朕カ及臣民及臣民ノ子孫タル者ヲシテ永遠ニスル所ヲ知ラシム 國家統治ノ大權ハ朕カ之ヲ祖宗ニ承ケテ之ヲ子孫ニ傳フル所ナリ朕及朕カ子孫ハ將來此ノ憲法ノ條章ニ循ヒ之ヲ行フコトヲラサルヘシ 朕ハ我カ臣民ノ權利及財產ノ安全ヲ貴重シ及之ヲ保護シ此ノ憲法及法律ノ範圍內ニ於テ其ノ享有ヲ完全ナラシムヘキコトヲ宣言ス 帝國議會ハ明治二十三年ヲ以テ之ヲ召集シ議會開會ノ時ヲ以テ此ノ憲法ヲシテ有効ナラシムルノ期トスヘシ 將來若此ノ憲法ノ或ル條章ヲ改定スルノ必要ナル時宜ヲ見ルニ至ラハ朕及朕カ繼統ノ子孫ハ發議ノ權ヲ執リ之ヲ議會ニ付シ議會ハ此ノ憲法ニ定メタル要件ニ依リ之ヲ議決スルノ外朕カ子孫及臣民ハ敢テ之カヲ試ミルコトヲ得サルヘシ 朕カ在廷ノ大臣ハ朕カ爲ニ此ノ憲法ヲ施行スルノ責ニ任スヘク朕カ現在及將來ノ臣民ハ此ノ憲法ニ對シ永遠ニ從順ノ義務ヲ負フヘシ 御名御璽 明治22年2月11日 内閣総理大臣 伯爵 黒田清隆 〈以下略〉
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朕は,日本国民の総意に基いて,新日本建設の礎が,定まるに至ったことを,深くよろこび,枢密顧問の諮詢及び帝国憲法第73条による帝国議会の議決を経た帝国憲法の改正を裁可し,ここにこれを公布せしめる。
昭和21年11月3日 内閣総理大臣 吉田茂 〈以下略〉
日本国憲法 日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。 日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。 われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。 日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。
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日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴く国家であって、国民主権の下、立法、行政及び司法の三権分立に基づいて統治される。 は、のによるやのをて発展し、今や国際社会において重要な地位を占めており、平和主義の下、諸外国との友好関係を増進し、世界の平和と繁栄に貢献する。 日本国民は、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り、基本的人権を尊重するとともに、和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する。 我々は、自由と規律を重んじ、美しい国土と自然環境を守りつつ、教育や科学技術を振興し、活力ある経済活動を通じて国を成長させる。 日本国民は、良き伝統と我々の国家を末永く子孫に継承するため、ここに、この憲法を制定する。
【教育勅語】(12の徳目のうち12番目のもの) 「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壤無窮ノ皇運ヲ扶翼 スヘシ」
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立憲主義は,権利の尊重・自由主義という目的のために統治権を分割し(権力分立),それを定めた憲法によって政治を支配するという原理である。立憲主義は憲法によって市民・人民・国民を支配するのではなく,公務員に対し義務を課し,市民・人民・国民が憲法を通じて公務員を支配するものである。 日本国憲法では,憲法を制定する主体が国民であり,国民が政府による戦争を起こさせないことを決意し,主権が国民に存することを宣言して,この憲法を確定するものであることが明確にされている(前文)。また,国民が憲法を通じて公務員を支配するものであることは,憲法の最高法規性の確認(97条)と公務員の憲法尊重擁護義務(98条)として具体化している。
しかるに,改正草案は日本国憲法の立脚点である立憲主義を否定するものになっている。 改正草案は「人類普遍の原理」を削除し,「日本の歴史,文化,伝統」という特殊性を強調し,「国と郷土を誇りと気概を持って自ら守る」こと,「和を尊ぶ」ことを国民に押し付けるものである。 さらに,憲法を尊重すべき者は第一に国民であるとし,国民が憲法を通じて公務員を支配管理するという日本国憲法の構造を逆転させ,公務員(政府)が憲法を通じて国民を支配するという明治憲法以前の憲法体制に戻そうとしている。
改正草案は,国民主権や普遍的な人権尊重と相容れない天皇中心主義,伝統主義を復活させるものであり,国旗国歌条項や政教分離原則の後退等も相まって神権主義の復活に道を開くものである。
明治憲法(1889年2月11日制定公布,1890年11月29日施行)が,天皇中心主義の統治構造を定めた。 教育勅語(1890年10月30日渙発,1948年6月19日廃止)が,天皇中心主義の国民道徳を定めた。 「官国弊社経費ニ関スル法律」(1907年)などが,神社神道を国教化した(国家神道)。 このような天皇中心主義が,市民・人民・国民の思想・良心・信教などの精神的自由を抑圧し,やがては「天皇の軍隊」(明治憲法11条)を暴走させることとなった。 「戦争の惨禍」(被害及び加害の両者を含め)はこのような歴史の結果であり,日本国憲法は,再び「戦争の惨禍」を起こさせないことを決意して,国民によって確定されたものである。
改正草案はこのような歴史を否定し,また人類普遍の原理も否定するものである。
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天皇
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大日本帝国憲法 第一章 天皇 第一條 大日本帝國ハ萬世一系ノ天皇之ヲ統治ス 第二條 皇位ハ皇室典範ノ定ムル所ニ依リ皇男子孫之ヲ繼承ス 第三條 天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス 第四條 天皇ハ國ノ元首ニシテ統治權ヲ總攬シ此ノ憲法ノ條規ニ依リ之ヲ行フ 第五條 天皇ハ帝國議會ノ協贊ヲ以テ立法權ヲ行フ 第六條 天皇ハ法律ヲ裁可シ其ノ公布及執行ヲ命ス 第七條 天皇ハ帝國議會ヲ召集シ其ノ開會閉會停會及衆議院ノ解散ヲ命ス 第八條 天皇ハ公共ノ安全ヲ保持シ又ハ其ノ災厄ヲ避クル爲緊急ノ必要ニ由リ帝國議會閉會ノ場合ニ於テ法律ニ代ルヘキ勅令ヲ發ス 此ノ勅令ハ次ノ會期ニ於テ帝國議會ニ提出スヘシ若議會ニ於テ承諾セサルトキハ政府ハ將來ニ向テ其ノ効力ヲ失フコトヲ公布スヘシ 第九條 天皇ハ法律ヲ執行スル爲ニ又ハ公共ノ安寧秩序ヲ保持シ及臣民ノ幸福ヲ進スル爲ニ必要ナル命令ヲ發シ又ハ發セシム但シ命令ヲ以テ法律ヲ變更スルコトヲ得ス 第十條 天皇ハ行政各部ノ官制及文武官ノ俸給ヲ定メ及文武官ヲ任免ス但シ此ノ憲法又ハ他ノ法律ニ特例ヲ揭ケタルモノハ各〻其ノ條項ニ依ル 第十一條 天皇ハ陸海軍ヲ統帥ス 第十二條 天皇ハ陸海軍ノ編制及常備兵額ヲ定ム 第十三條 天皇ハ戰ヲ宣シ和ヲ講シ及諸般ノ條約ヲ締結ス 第十四條 天皇ハ戒嚴ヲ宣告ス 戒嚴ノ要件及効力ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム 第十五條 天皇ハ爵位勳章及其ノ他ノ榮典ヲ授與ス 第十六條 天皇ハ大赦特赦減刑及復權ヲ命ス 第十七條 攝政ヲ置クハ皇室典範ノ定ムル所ニ依ル 攝政ハ天皇ノ名ニ於テ大權ヲ行フ
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第一章 天皇 第一条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。 第二条 皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範 の定めるところにより、これを継承する。 第三条 天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。 第四条 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。 2 天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。 第五条 皇室典範 の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を行ふ。この場合には、前条第一項の規定を準用する。 第六条 天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。 2 天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。 第七条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。 一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。 二 国会を召集すること。 三 衆議院を解散すること。 四 国会議員の総選挙の施行を公示すること。 五 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。 六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。 七 栄典を授与すること。 八 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。 九 外国の大使及び公使を接受すること。 十 儀式を行ふこと。 第八条 皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与することは、国会の議決に基かなければならない。
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第一章 天皇 第一条 天皇は、日本国の元首であり、日本国及び日本国民統合の象徴であって、その地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく。 第二条 皇位は、世襲のものであって、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。 第三条国旗は日章旗とし、国歌は君が代とする。 2日本国民は、国旗及び国歌を尊重しなければならない。 第四条元号は、法律の定めるところにより、皇位の継承があったときに制定する。 第五条 天皇は、この憲法に定める国事に関する行為を行い、国政に関する権能を有しない。 第六条 天皇は、国民のために、国会の指名に基づいて内閣総理大臣を任命し、内閣の指名に基づいて最高裁判所の長である裁判官を任命する。 2 天皇は、国民のために、次に掲げる国事に関する行為を行う。 一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。 二 国会を召集すること。 三 衆議院を解散すること。 四 衆議院議員の総選挙及び参議院議員の通常選挙の施行を公示すること。 五 国務大臣及び法律の定めるその他の国の公務員の任免を認証すること。 六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。 七 栄典を授与すること。 八 全権委任状並びに大使及び公使の信任状並びに批准書及び 法律の定めるその他の外交文書を認証すること。 九 外国の大使及び公使を接受すること。 十 儀式を行うこと。 3 天皇は、法律の定めるところにより、前二項の行為を委任することができる。 4 天皇の国事に関する全ての行為には、内閣の進言を必要とし、内閣がその責任を負う。ただし、衆議院の解散については、内閣総理大臣の進言による。 5第一項及び第二項に掲げるもののほか、天皇は、国又は地方自治体その他の公共団体が主催する式典への出席その他の公的な行為を行う。 第七条 皇室典範の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名で、その国事に関する行為を行う。 2 第五条及び前条第四項の規定は、摂政について準用する。 第八条 皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が財産を譲り受け、若しくは賜与するには、法律で定める場合を除き、国会の承認を経なければならない。
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立憲主義の否定,天皇中心主義の復活
天皇中心主義の復活,思想・良心・信仰の自由の否定 国旗国歌尊重⇒儀式の厳粛性の強化
天皇=親,国民=天皇の赤子の思想の復活
「式典」と「天皇」の結びつきの強化
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