12月、ひときわ忙しい!国も大阪府市も露骨なまでの市民無視政策にやはり一つひとつ声をあげていかなければならないのでしょうが、ったく忙しすぎる。これも21世紀市民の宿命か?
大阪ネット事務局員であり、教科書の会大阪の伊賀さんからのメールを転載します。お国が決める教科書ほど恐いことは、この前の歴史で散々知ったはずなんですけどね。
12月3日、大阪市教育委員会議において、市内8地区でそれぞれ選んでいた市立小中学校の教科書を全市で統一する方針を決めました。
その理由として
①採択地区がなくなることで、市内での転出入を行った児童・生徒が必ず同一の教科書を使用することが可能となるため。
②市内全体を校区とする小中一貫校へ進学や編入した場合にも、すべての児童や生徒が同一の教科書を使用することが可能となるため。
③教材研究の成果を共有することが容易となり教員の資質向上が期待できるため。
④採択地区を1地区に設定することで、採択権者が1つの地区の採択を適切に行うことが可能となるとともに、業務の効率化も期待できるため。としました。
従来の大阪市立小中学校の採択は、8採択地区で現場教員の意向を尊重しながら、それぞれの地域のニーズに合わせて教科書を選んできており、全国的にも民主的な手続きが一定取られてきました。今回の決定は、それを根底から破壊してしまう暴挙です。
■法律の趣旨や国の方針にも逆行
政令指定都市の教科書採択地区については、「義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律(以下無償措置法)」第16条で「区域又はその区域をあわせた地域に、採択地区を設定しなければならない」と定められています。16条は、無償措置法制定によって学校別から地区別に採択制度が変更される際、「指定都市の地域が広大で、その人口も最多三百数十万最小百数十万を有していることにかんがみ設けられた特例」であり、政令市が1採択地区では「他の都道府県における採択地区と著しく均衡を失するおそれがある」ため市内を分割して採択地区を設定することとし、設けられた条文です(福田繁・諸沢正道著 同法逐条解説)。今回の1地区化はこの16条を無視する行為です。
また、政府の行政改革委員会の意見書を受けて、「将来的には学校単位の採択の実現に向けて検討していく必要があるとの観点に立ち、当面の措置として、教科書研究により多くの教員の意向が反映されるよう、現行の採択地区の小規模化や採択方法の工夫改善についての都道府県の取り組みを促す」(「規制緩和推進計画の再改定について」平成9年3月28日)との閣議決定がなされ、以後毎年、採択地区の小規模化を求める閣議決定が行われています。
大阪市教委の今回の決定は、法の趣旨や閣議決定に真っ向から逆行するものであり、公正適正な教育行政とはとうてい認められません。現在の8採択地区は、法的にも国の方針にもかなったものであり、子どもたちへのきめ細やかな教育環境を保障するものです。 なにより、小学校11万6000人、中学校5万7千人の子どもたちに一種の教材で対応するのは、採択地区の「適正規模」を明らかに逸脱しており、巨大なマーケットを出現させて過当な営業競争を招くことは許し難いことです。
■採択地区の全市統合は、学校・教員の声を排除し、教育委員の独断採択に道をひらく
市内一律の教科書では、子どもたちや学校・地域の実情を反映したきめ細やかな教育は不可能になります。これまで大阪市で尊重されてきた教員の声も無視される可能性が高くなります。
すでに今年の市立高校の教科書採択で、来年度から各学校からの「選定」を事実上認めず、教育委員会による「お好み採択」を制度化することを決めました。今回の小中学校での採択地区の全市統合化は、まさに高校採択の延長線上にあるものです。
■市教委の狙いは、2015年中学校採択で「育鵬社版」を全市で採択すること
この採択地区変更の裏には、「つくる会」系教科書である「育鵬社版」の採択を有利に導く狙いがうかがえます。市内が1地区になると、地区の実情と関係なく教育委員の好みで教科書を選べる、教育委員を抱き込めば「育鵬社版」を採択しやすくなるからです。
2011年中学校採択の時には、橋下市長が代表を務める大阪維新の会・市議団が、大阪市教委に「教科書採択に関する申し入れ」を行い、「つくる会」系教科書を「最も改正教育基本法の趣旨に沿った内容」と評価していました。しかし、当時の教育委員の中に「つくる会」系の日本教育再生機構に近い人物は一人しかおらず、採択までには至りませんでした。
しかし、その後橋下市長が誕生してからは、教育委員を公募制にして自分の意に沿う委員を順次選んできました。現在では、橋下市長が公募で選んだ3名の教育委員が任命される事態となり、教育委員会議は、事実上橋下市長の意向で動く体勢が整ってきています。全国学テの学校別公開や今回の全市1採択地区化を短期間に行うことができたのは、このような背景があったからです。
このような状況を考えると、今回の全市1採択地区化は、2015年に「育鵬社版」を採択する布石としか思えません。もし、大阪全市で「育鵬社版」が採択されようものなら、その採択率は飛躍的に拡大することになるはずです。これは2011年全市1採択地区化されたのち「育鵬社版」が採択された横浜市の事例を見れば明らかです。
■大阪市教委に全市1採択地区化の撤回を求めてください。大阪府教委には市教委の決定を承認しないように要請をとどけてください。
大阪市教委は、12月中にも大阪府教委に採択地区の変更を申請すると報じられています。大阪府内の採択地区の設定は府教委に権限があるため、その後大阪府教委で審議されます。時間はありません。大阪市教委への撤回要請と大阪府教委への不承認要請を至急とどけてください。
◆抗議先
大阪市教育委員会 総務課企画グループ
TEL 06-6208-9013 FAX 06-6202-7052
メールは、以下のアドレスから入り「メール送信フォーム」へ
http://www.city.osaka.lg.jp/kyoiku/soshiki_list.html
◆要請先
大阪府教育委員会 教育総務企画課 広報・議事グループ
TEL 06-6944-8041 fax 06-6944-6884
メールは、以下のアドレスから入り「お問い合わせはこちら」へ
http://www.pref.osaka.jp/kyoikusomu/