不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Museo ferroviario nazionale

2011-02-08 18:48:11 | アート・文化

フィレンツェのVia San Galloにある
Palazzo Fenzi(フェンツィ宮殿)は
現在もフィレンツェ大学文学部の校舎として利用されています。
もともとはMarucelli(マルチェッリ家)の所有だった宮殿ですが
マルチェッリ一族が途絶えたときに売りに出され
当時羽振りのよかった銀行家・実業家である
Emanuele Fenzi(エマヌエレ・フェンツィ)が購入。
この建物の正面大扉の上には
今もフェンツィ家の紋章が付いているのですが、
蒸気機関車が描かれています。
大学に通っていたころ、
毎日その扉を通るたびにそれが気になっていて
受講授業の終わりに教授に尋ねたら
フィレンツェとリヴォルノ港をつなぐ鉄道を敷くときに
フェンツィがその建設権を落札し出資していることを記念して
蒸気機関車がつけられているのだと教えてくれました。
そのときにそのフィレンツェ-リヴォルノ間を繋ぐ鉄道は
イタリアで建設された最初の鉄道のうちの
ひとつだということも知りました。
フェンツィが落札したのは1838年ですが、
建設は40年代で、まずリヴォルノ-ピサが1844年に完成、
最終的にエンポリ-フィレンツェが完成し
全線開通したのは1848年。


1800年代前半にイタリア各地で
鉄道建設が始まっていたということになります。
そのうちのひとつで実際に最古の鉄道といわれるのは
意外にもNapoli(ナポリ)-Portici(ポルティチ)間。
現状の南北差から考えると
北イタリアで初の鉄道が敷かれていると考えがちですが、
統一前のイタリアは南部に王国があり繁栄を誇っていたのです。


Re Ferdinando II di Borbone
(両シチリア国王ブルボン家フェルディナンド2世)の命によって
建設されたナポリ-ポルティチ間の鉄道開通は1839年10月3日。


1860年のイタリア統一運動中に
シチリア攻撃のために編成されたガリバルディの率いる千人隊と、
ヴィットリオ・エマヌエーレ二世とカヴール率いるピエモンテーゼ軍が
そして両シチリア王国を倒し
1860年9月7日にナポリに入ったときに
ガリバルディは騎馬隊ではなく
ブルボン家が建設した鉄道を利用したのです。
イタリア統一のシンボル的な場所でもあるのです。


この鉄道路線はナポリ近郊の通勤・通学のために
現在も現役で利用されていますが、
この沿線のPietrarsaにはかつてイタリア統一のころには
イタリアでも最大を誇った鉄道製造・修復工場があり
1853年には600人を超える工員が従事していたといわれますが
その後統一イタリア政府は工場縮小を試みます。
やがて最後の蒸気機関車が引退すると
この工場も閉鎖されてしまいました。


その跡地に国立鉄道博物館があります。
1989年に建設され2007年に一部改装された博物館は
敷地面積36,000平方メートル、建面積14,000平方メートルで
十数台の機関車、客車、車両などをはじめ
鉄道マニアが喜ぶような展示物が数多く保管されています。
古い郵便貨車や犯罪人を収監して運んだ車両、
ファシズム時代のディーゼルカー、
サヴォイア王国の王家のメンバーが使ったという
ダマスク織の壁に金で覆われた天井の絢爛豪華な客車もあります。


しかし、実際にはあまり知られていないうえに
開館時間が短すぎることなどもあり
イタリア国内でも人気のない博物館のひとつ。
年間入館者数は16000人で
そのうち半数は修学旅行や社会科見学の学生。


イタリア統一150年記念に訪れてみたい博物館です。


Il Museo Nazionale Ferroviario di Pietrarsa
開館時間: 平日 8:30-13:30
休館日:土・日・祝日
入場料:5,00ユーロ
インフォメーション: +39-081-472003
アクセス:ナポリからサレルノ行きの列車で
Pietrarsa-S.Giorgio A Cremano駅で下車。