不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

L'Archivio della Bellezza

2011-02-15 19:52:38 | アート・文化

1890年に北イタリアのブルジョア階級に生まれた
Roberto Longhi(ロベルト・ロンギ)は
教養のある両親にも恵まれ、
特に小学校の教員であった母親が
3人の実子の子育てに専念してからは
家庭できちんと教育を受けた人で
幼少のころからレベルの高い文化に触れていた人でもあります。
故郷Alba(アルバ)の自宅の近所の教会に所蔵されていた
la Madonna di Barnaba da Modena
(バルナバ・ダ・モデナの聖母子像)や
アルバ市庁舎にあるil Concertino di Mattia Preti
(マッティア・プレーティの小コンサート)などの作品に触れて育ち、
美術への関心を高めたといわれています。
トリノ大学では卒業論文で
カラヴァッジョをテーマにし1911年に卒業。
生涯カラヴァッジョ研究の第一人者でもあり続けました。
その後活動の拠点をローマへ移し、美術史の研究を続けます。
時代の先端を行く画家たちとの交流も深く、
ボローニャ、フィレンツェの大学で教鞭もとり
またイタリアに数多くある美術専門誌
「La Voce」 「L'Arte」 「La Critica d'Arte」などの
出版にも関わった人物で
1900年代のイタリアを代表する重要な美術史研究家の一人。
1951年にミラノで初めてのカラヴァッジョ展を
実現させたのも彼でした。
1970年にフィレンツェで生涯を終えており、
遺言に従い彼の名を冠する財団がフィレンツェ郊外に設立され
彼の所有だったすべての芸術作品はここに寄付されています。


そのロンギ氏が1953年に各出版社での利用を目的に、
絵画、フレスコ画、彫刻などの芸術作品を写真に収めて
アーカイヴしていくことに取り組み、
フィレンツェに設立されたScala社が
そのアーカイヴを元にして投資・拡張し、
徐々に商業ベースにのせていって完成したものが
現在の世界最大の美術品アーカイブと称される
Scalagroupの膨大な美術作品のアーカイヴです。
アナログ、デジタルをあわせると
そのデータは500,000点にも上るといわれ、
スカラグループは現在も世界60カ国以上に
デジタルデータ化されたアーカイヴ・データを提供しています。


フィレンツェの隣町Bagno a Ripoliに
ほかの各種工場と並んでScalagroupの本社があり
データベースの保管庫としてだけでなく
出版社としての機能も果たしています。


最近では芸術作品と最新テクノロジーとの融合にも
積極的に取り組み
スマートフォンや電子書籍リーダー機器用の
アプリケーションなどの開発も行っており、
既に世に出回っているものもあるので
ご存知の方も多いかもしれません。


芸術作品や建築は
実物を観ることによって個々人が
それぞれの感性で大きな影響を受けるのは
どの時代になっても変わらないと思いますが、
デジタル化されて世界のどこにいても
高解像の実物に触れることができるようになるのも
決して悪いことではないような気がします。
そしてそんな試みがフィレンツェ郊外で進められているのも
ちょっとだけ嬉しかったりします。