山里に生きる道草日記

過密な「まち」から過疎の村に不時着し、そのまま住み込んでしまった、たそがれ武兵衛と好女・皇女!?和宮様とのあたふた日記

くらしに寄り添い里人が積み重ねてきた『里の時間』

2015-08-16 20:46:18 | 読書
 経済成長の陰で置き忘れた自然とともに生きる小さな各地の魅力を集めたルポだ。
 その朴訥な言葉を聞き漏らすまいと受け止める、芥川仁さんの文と里の静かな営みを切り取った阿部直美さんのカラー写真とが美しい。
 「都会は、玄関から一歩出っと金かかるべ。ここは一歩出っと、晩のおかずが採れるんだ」と語る77歳の老婆の言葉を見逃さない。

         
 芥川さんは、「ここらで経済的豊かさを止めにして、里に流れる時間に身を置いてみたらいかがだろう」と提案する。
 それは、小さな里を訪れてみて「自然と共に暮らすふつうの人々の幸せを守り続けることが大切と」知ったからだ。

                                      
 里に流れるゆるやかな時間は、経済優先で失った時空の「豊かさ」や幸せにあふれている。
 しかしいま、自然の破壊的変容といい、通り魔的な殺人事件といい、若者の幼稚的な行動・言動といい、財界人の志の低さといい、未来に希望が見えない現実がある。

                  
 だからこそ、置き忘れた大切なものを探す行為がひとり一人に課せられているのだ。
 皇軍はいつのまにか企業戦士となり、どういうわけか戦争を語らず、さらには過去を振り返らず、目先の実利に追われるようになってしまった。
 だからこそ、自然の中につつましく生きる人々から学ぶことがこれからの希望につながる。
 その意味で、芥川さんが里人から聞き取る謙虚な姿勢が輝く。
    (岩波新書、2014.10)

 
  
         
 
 
 
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