映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

バベル

2007年04月30日 | 映画(は行)

この映画では、メキシコ、モロッコ、東京、別々のストーリーが平行して進んでいきます。
それをつなぐものは一丁のライフル銃。
ただ、互いの地の人々は最後まで、顔を合わせることがない。
銃がつなぐ縁を、ドキュメンタリーのように、つなぎ合わせていく。


旧約聖書の物語。
人々が神に近づこうと天まで届く塔を建てようとした。
神は怒り、人々の言葉をばらばらにして、通じ合わなくしてしまった。
・・・それ以降私たちは未だに、それぞれの言葉を持ち、気持ちを通じ合わせることが出来ずにいる。
これは、それぞれの国の言葉の問題だけでなく、今や、同じ国の隣人、親子でさえも、言葉が通じない。
そんな状況を重ね合わせている。
気持ち、言葉。
そのまま伝えることは何と難しいのだろう。
神のなしたことだから・・・それはどうにもならないことなのだろうか。

             ************

心が離れ、ほとんど壊れかけているアメリカの夫婦。
モロッコを旅行中、妻がいきなり狙撃される。
病院もなく、ろくな手当も出来ないまま,瀕死の妻を励まし、本国の救援を待つ夫。
しかし、この事件が逆に2人の絆を確かなものにして行く。

             ************

モロッコの山の中でつつましく暮らす家族。
兄弟の少年たち。
兄はまじめで、兄らしく勤めようとしている。
弟は自由奔放。何でも要領がいい。
ある日コヨーテを撃つために手に入れたライフルを、練習のつもりでバスに向けて撃ってしまった。
アメリカの観光客にあたってしまったらしい。
テロではないかということで、国際紛争にもなりかねず、徹底した捜査が行われる。貧しくも平和だった家族に、いきなり襲ってきた難題。

            *************

モロッコを旅行中の両親に替わり、二人の子供たちの世話をしているメキシコ人の乳母。
メキシコで、息子の結婚式があり、2人の子供を誰にも預けることができず、やむなく、子供たちも引き連れてメキシコへ帰ることにする。
その帰路、甥が酔ったまま国境を越えようとして、トラブルとなり、国境を強行突破、警察に追われる身となってしまう。

          **************

東京。
聾者である高校生のチエコ。
母を自殺でなくしている。
耳が不自由であることで、人からは敬遠され、疎外感を感じている。
言葉では気持ちを伝える事が出来ない故に、直接に人と体のつながりを求めようとするチエコ。

さて、これら、それぞれの国のそれぞれの立場の人たち全てに、私たちは、共感を覚え、共に哀しむことができる。
人種、言葉や風習が違っても、同じ人間として、心のありようはやはり同じ。
だから、大丈夫。
きっといつか気持ちは通じ合えるのだ・・・と、この作品は語っているのではないかと思います。


菊地凛子さん、オールヌードでした。
体を張った演技という評判でしたが、なるほど・・・です。
あまりにも特殊な役でしたので、これからまた、他の作品ででもお会いしたいものです。


2006年/アメリカ=メキシコ/142分

監督:アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ
出演:ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、ガエル・ガルシア・ベルナル、菊地凛子

バベル
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ブラッド・ピッド.ケイト・ブランシェット.ガエル・ガルシア・ベルナル.役所広司.菊地凛子.二階堂智.アドリアナ・バラッサ
ギャガ・コミュニケーションズ

ラブソングができるまで

2007年04月29日 | 映画(ら行)

あの、ヒュー・グラントが歌って踊る!
かつてのポップスター、今は忘れられたアイドル。
細々とドサ周りで、昔のファン、今はおば様連中を相手に腰ふりダンスをして暮らしている。
・・・それがヒューグラントの役。
面白おかしく、宣伝されすぎてて、大好きなヒュー・グラント作品ではありながら、あまり期待はしていませんでした。
けれど、思ったほど、バカっぽい役でもなかった。
やはり彼アレックスは、過去の栄光にすがりたくてすがっているのではなく、どうすればそこから抜け出せるのか思い悩んではいるのです。


そこへ現れたのは、飛び切り明るいソフィー。
けれど、彼女もまた、過去の辛い経験のトラウマから、抜け出せずにいる。
そんな2人が心を寄せ合い、曲を作っていくのはなかなか楽しい。
ちょっぴりおかしくて、ちょっぴり切ない、まあ、及第点のラブロマンスだと思います。


ヒュー・グラントの歌もなかなかでしたねえ・・・、あの、いつも少し情けない目元が、好きなんです~。
80年代ポップスター現役時代フィルムの若作りの彼も、ステキです。

それから、スーパー歌姫、コーラというのも、結構よかったなあ・・・。
いくらなんでもお釈迦様の前で、あの、くねくねダンスはまずいでしょう・・・とは思いましたが。
思い切りエキゾチック。
それだけが売り。
だから、やっぱり意表をついて,あの曲はしっとり落ちついたラブソングで、マルだと思う。
そして、この曲”Way Back Into Love”はいいですよね。なんとなく、耳に残る。
カラオケ、デュエットに向きそう。

それからラスト前の、アレックスが苦手な歌詞をものともせず、ただただ、率直な思いでソフィーに語りかける曲、そこはじんときます。
ここは、映画の観客にも意外なエピソード。
にくいですねー。
エンドロールも、なかなか楽しめます!!

原題 MUSIC & LYRICS

2007年/アメリカ/104分
監督:マーク・ローレンス
出演:ヒュー・グラント、ドリュー・バリモア、ブラッド・ギャレット

ラブソングができるまで
ラブソングができるまで 特別版 [DVD]
ヒュー・グラント. ドリュー・バリモア. ヘイリー・ベネット. ブラッド・ギャレット. クリステン・ジョンストン
ワーナー・ホーム・ビデオ

6ステイン

2007年04月28日 | 本(その他)

「6ステイン」 福井晴敏  講談社文庫

6つの染み。6篇の短編集を総合した題名となっています。

どれも、福井晴敏カラー満載。
生死の狭間で傷つき悩みながら生きていく主人公たち。心がジンと熱くなります。
お勧めの一冊。

★夫と子供がいながら、仕事を持つ由美子。
たまに早く帰ることが出来たと思えば、床には子供がぶちまけた油の海。
在宅の仕事を持つ夫はと見れば、子供はそっちのけで仕事中。
人がこんなに忙しい思いをしてがんばっているのに、この状況は何!!
思わず、夫や子供に当たってしまう彼女。
・・・え? すごく身に覚えのあるこのシチュエーション。
でも、これって、ホントに福井晴敏?、
と、思わずそう思ってしまったのですが、そこにかかってきたケータイの呼び出しは、防衛庁情報局からのもの。
そう、彼女の職場がそれ。
そこからは紛れもなく、福井ワールド。
しかし、この、妻であり母であるという彼女の立場が、この物語に深くかかわってくるのです。
身柄を拘束された中国マフィア、ユイ・ヨンルウの尋問をすることになるのですが、彼の「母親は家に帰れ」という言葉に、仕事に徹しきれず、動揺してしまう。
母と子の絆をテーマに、ストーリーは進んでいきますが、しんみりした余韻が残るステキな話でした。
---「媽媽(マーマー)」

★また、これと次の短編「断ち切る」は続編となっていますが、こちらは、もと天才的スリの老人が主人公。
息子の嫁に邪魔者に思われながら所在無い毎日を過ごしている、という設定。
先の、短編との接点が終盤にあかされ、ほう!と、思わされます。

★始めは、どうにも食えない、したたかなバアサン。
しかし、その過去が明かされるうちに、元は評判の美人芸者で、昔愛した人をひたすら思い続けていることが解ってくる。
なるほど、そうしてみると、立ち居振る舞い、ちょっとしたしぐさに、まだ、かすかに残る色香。
女の強さと情の深さに魅せられていきます。
・・・これも印象に残る作品。
---「畳算」

★そして、ラストには、これがまた、福井さんの真骨頂。
経験豊富、百選練磨のくだけた初老のオジサンと、無口で硬質、ストイックな若者のコンビ。
この2人のやり取りがなんともちぐはぐでいて、楽しい。
こういう若い人、福井さんは好きだよなあ・・・と思ったら、
何と、あの如月行くんに、こんなところで会えるとは!!
---「920を待ちながら」

 


Q&A

2007年04月23日 | 本(ミステリ)

「Q&A」 恩田陸 幻冬社文庫

始め、この本は恩田陸に対するインタビューをまとめたものかと思ってしまいました。
そうではなくて、れっきとした小説の題名。
この本は、すべて会話だけで構成されています。
しかも、なんとも言えず、恐ろしい・・・。

まず、ここで起きる事件そのものが異様です。
ある大型スーパーで、突然パニックに襲われた買い物客が、いっせいに何かから逃げようとして、倒れ、積み重なり、挙句に死者69名、負傷者116名という大事故になってしまう。
ところが、なぜかその原因が不明で、この本は、この事故の当事者に証言を求めるインタビューの記録となっているのです。
少しづつ事件の全容が明らかになっていくのですが、結局最後まで憶測の域を超えることはありません。
しかし、誰かの、あるいは何かの組織の陰湿な意図がどうも見え隠れします。
人間のそのような意図も怖いし、誰もが簡単にただの群集と化し、火に飛び込む虫のように自ら災害の渦中に飛び込んでしまう、そのあたりが妙にリアリティがあって、非常に怖いです。
しばらく人ごみには近づきたくない感じです。

カルト教団のテロなのか、何かの実験なのか、単に偶然の積み重なりなのか。
また、そのときに見られた犬の不思議な行動。
廃墟と化したビルにまつわる都市伝説めいたうわさ。
血まみれのぬいぐるみを引きずる幼女のなぞ。
薄気味悪いエピソード満載です。
それぞれの話で、短編が出来るのではないかと思えるほど。
これが一つの小説というのは、すごく贅沢というかもったいないと思ってしまいました。


キッチン・ストーリー

2007年04月22日 | 映画(か行)

舞台は、1950年代のノルウェー。
片田舎に1人で住むイザックのもとに、スウェーデンの「家庭研究所」の調査員フォルケがやってきます。
独身男性の台所での行動パターンの調査、という事で、台所に監視台を置き、ただ、イザックの行動を記録するフォルケ。
決して会話したり交流したりしてはいけないという規則があります。
そう広くはない台所で、何の会話もなく、気詰まりな思いをしながら居る男2人。
なんとも、奇妙な構図です。
イザックはいかにも気難しそうな老人。
彼は調査を引き受けてしまったことを後悔しており、みはられることが嫌さに、寝室で料理をする始末。

ノルウェーとスウェーデンはすぐ隣国でありながら、車はノルウェーでは右側通行、スウェーデンでは左側通行、
先の大戦での立ち位地も微妙に違っていたりして、何とはなしの反目があるようです。
そんなこともあってか、必要以上に反目しているようにも見えるこの二人。
しかし、ほとんど変化のないのんびりした毎日を過ごすうちに、次第に2人の反目はとけ、うちとけ合っていくのです。
それは、規則破りではあるのですが、人間同士の心の交流を、何も妨げることなど出来ない。
これはごく自然なことでした。

とても静かな映画です。
何しろ始めの方は2人の会話は何もない。
けれど、イザックは、わざと台所の電気を消したり、二階から監視台のフォルケを覗き見してみたり。
フォルケはお弁当のゆで卵を食べようとして、塩がなかったので、イザックの台所のものをこっそり拝借してしまったり。
そこはかとないユーモアで、楽しませてくれます。

2人の交流はとうとう、フォルケの上司に知れることになり、調査員を下ろされることになるのですが・・・・

急展開とそして、なるほど~、と思わせるラスト。このように、じっくり見せてそして心温まる映画、派手なハリウッド作品もよいけれど、時にはこういうのもいいなあと、しみじみ思いました。

2003年/ノルウェー=スウェーデン/95分

監督:ベント・ハーメル
出演:ヨアキム・カルメイヤー、トーマス・ノーシュトローム

キッチン・ストーリー
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ベント・ハーメル,ベント・ハーメル
エスピーオー

新・地底旅行

2007年04月21日 | 本(SF・ファンタジー)

「新・地底旅行」 奥泉 光  朝日文庫

「新」とは何に対しての新なのか。
言うまでもなく、ジュール・ヴェルヌが1864年に発表した「地底旅行」ですね。

この本の舞台は明治42年(1909年)日本。
ヴェルヌ作中のリーデンブロック博士の残した記録を実在のものとしてそれに習い、地底旅行に旅立つということで、この物語はまさしく元祖あってのストーリーとなっています。

しかし、ヴェルヌの地底世界を踏襲しながらも、やはりそこに現れるのは紛れもなく奥泉ワールド。
文体は夏目漱石風。セピア色の時代色を感じさせます。

富士の樹海のなかに、その洞窟の入り口はあります。
この物語の舞台が現代でないのは、地底旅行という冒険が、現在ではあまりにも立派な装備がそろいすぎて、ちっともそのおどろおどろしさをかき立てないからに違いありません。
食料は乾パンと干し肉。
銅の水筒。
ゴム底の足袋。
油紙に包んだマッチ。ろうそく。
かろうじて懐中電灯はあったようだ。でも、無論十分な光量ではないでしょう。電池もすぐ切れるし。
このようないささか心もとない装備であるが故に、なぜか余計にわくわくとした冒険心を掻き立てられるような気がします。

さて、ところがこの探検隊のメンバーがなんとも心もとない。
主人公といいますか、この物語の語り手は画家の野々村鷺舟。
その友人、口先ばかりが達者な洒落者、富永丙三郎。
天才科学者、水島鶏月。
何しろ肉体派とは全くかけ離れたこの3人。
マジ???と、思ってしまうのですが。
彼らは、先に地底探検に出て、行方不明となっている理学者稲峰博士とその令嬢都美子を探すため、(そして、もしかしたらあるかもしれない伊達家の財宝を探すため)、長い地底旅行に旅立つのでした。
最後に1人加わったのは、稲峰博士宅で働いていた女中のサト。
この娘がなんと機転のきく働き者で、体力も根性も並以上。
もっとも頼りになるのでした・・・。

大変な苦労の末、たどり着いたところは・・・
地底に広がる海。
恐竜や恐竜人のいる島。
まさに、冒険ですねえ。
そして、更なる異世界へ行く方法が実はある。
これは読んでのお楽しみ・・・ということで。

この作品は、『「我輩は猫である」殺人事件』、「鳥類学者のファンタジア」と、わずかに接点を有していて、奥泉さん自身3部作といっています。
でも、この作品だけでも十分に楽しめます。
何しろ、おかしくて、ドキドキして、ファンタジックで、深遠。
このような作品に接する事が出来たことに感謝!


ブラックブック

2007年04月16日 | 映画(は行)

1944年。ナチス・ドイツ支配下のオランダ。
家族をナチスによって惨殺されてしまった、ユダヤ人歌手ラヘルはレジスタンスのスパイとして,ドイツ将校ムンツェに接近する。

さて、この作品は、ナチによるユダヤ人迫害、オランダ人によるナチへのレジスタンス。そんなところが主題となっています。
チラシには
1994年スピルバーグ「シンドラーのリスト」
2003年ポランスキー「戦場のピアニスト」
そして、2007年バーホーベンの「ブラックブック」
という風に並び称しているのですが、ちょっと違うかな・・・、と思います。
前者は、戦争と人間を考えさせられる、大変に重い作品。
然るに、こちらは、基本的にはエンタテイメントだと思います。サスペンス・エンタテイメント。
いえ、だから前者より劣るとは思っておりません。
この監督のポール・バーホーベンは、よく「バイオレンスとエロティシズム」の単語で評されるオランダ出身の監督。
23年ぶりに故郷に舞い戻って完成させた作品であるとの事。
まさに、彼の真骨頂といえましょう。
約2時間半弱。大変長いのですが、長さを感じさせない。
「いや~、何というドラマチック!!。これぞ、ストーリーだなあ・・・」と感嘆してしまったのです。

まず、この主人公ラヘルの次々訪れる不幸にも負けず突き進んでいく、強さと情熱。強い女性は大好きです。
ドイツ将校のムンツェは、そろそろ、ドイツの降伏も近いと読み、これ以上いたずらに犠牲者を増やすべきではないと考え、ひそかにレジスタンスと手を結ぶ。
演じるセバスチャン・コッホは,先日「善き人のためのソナタ」で、お会いしました!!
情報を引き出すために近づいたラヘルだったけれども、いつしか本当に愛してしまう・・・。この2人の運命は・・・?

さて、後半、「この中に、内通者がいる。アンフェアなのは誰か。」というフレーズが私の中で流れておりました。
この映画のもう一つの興味は、この、誰が裏切り者なのか、ということ。
誰も彼もが怪しい中、映画中では、ラヘルが裏切り者と仲間に誤解されてしまうという、恐ろしい展開になってしまいます。
このような映画は、普通ドイツの降伏で、ほっとして、メデタシメデタシとなりますよね。
ところが、ここでは、ラヘル自身「ドイツが負けるのがこんなに恐ろしいとは思わなかった」といったとおり、なんだかそこからがまた、ドキドキさせられ、怖いのです。
ドイツが負け、レジスタンスが一気に喝采を受け、英雄に祭り上げられる。
そこまでは当然かもしれません。
ところが、少しでもナチに加担したり、ナチを相手にいい思いをした女たちがひどい迫害を受けることになる。
はたから見ればラヘルも、ナチ将校とつるんで、うまい汁を吸っていた、そんな風に見えてしまうのです。
人間の心の尊さと醜さをもまざまざと見せ付けられます。
このあたりで、私は絶対にこのラヘルは誰かに殺されてラストになる・・・と、予感しておりました。
しかーし!本当のラストで、驚いた。
そういえばこの映画は冒頭、数年後のラヘルが、過去を回想するところから始まったのでした!
それをも忘れてしまっていたとは!
あまりにもストーリーに没頭していた・・・。
いえ、単にボケですかね。
では、ということは、始めに出てきたあの観光客の女性は、一緒に働いていた、あの彼女だったんですか??うーん、あなどれない。

表題の「ブラックブック」は裏切り者の正体とラヘルの潔白をあかす決定的証拠となった、あの黒い手帳のこと、ですよね。


2006年 /オランダ=ドイツ=イギリス=ベルギー/144分
監督:ポール・バーホーベン
出演:カリス・フォン・ハウテン、セバスチャン・コッホ、トム・ホフマン、ハリナ・ライン
ブラックブック [DVD]カリス・ファン・ハウテン.セバスチャン・コッホ.トム・ホフマン.ミヒル・ホイスマンHappinet(SB)(D)


オール・ザ・キングスメン

2007年04月15日 | 映画(あ行)


実在のルイジアナ州知事、ヒューイ・ロングをモデルにしているという作品。
実直な、下級役人であったウィリーが、州知事にのしあがる。
誰よりも正義感に燃え、汚職を憎む彼が、権力の座についたとたん、同じく汚職にまみれていく。

先日見た「ホリデイ」では、兄妹を演じたジュード・ロウとケイト・ウィンスレットがここでは、もつれた愛憎を持つ関係。
ジュード・ロウって、ロマンスでもシリアスでも、やっぱり絵になります。

この作品はあちこちに、人の心の深い穴がある。

何よりも汚職を憎み、正義感に燃えていたウィリーが、いつしか、自分自身汚職にまみれている。
自分の身を守るためには、汚い手段も辞さない。
始めは貧しい人々を守るはずだったことが、いつか、地位・名誉を守るための言い訳にしか過ぎなくなっている。

愛し求め合ったはずの2人が初めて体を合わせようとするときに、彼が拒む。
それは、何か、美しいものが壊れてしまいそうな、そんな気持ちだったのだろうか。
ただ、彼女にとってはそれが深い傷となって残っており、それが悲劇の元にもなる。

ウィリーが実の父親以上に敬愛する、高潔な判事。
その判事にも、後ろ暗い過去があった。
実は、このことの深い後悔が、その後の誰にも尊敬される判事への道をたどらせたのではなかったか。

ジャックは、初め、ウィリーの実直さに惹かれたはず。
いつしか、彼はもとの彼ではないと解ったはずなのに、どうして最後まで付いていったのだろう。
飛んで火にいる夏の虫・・・。
危険と知りつつ引き寄せられてしまう、ということか。
とうとう、ウィリーのために判事の暗い過去を掘り起こすことになってしまう。

さてとね、ストーリーはこのように重厚で、深いとは思うけれど、いまいちのめりこめない感じなのは、どうも、ショーン・ペンのせいではないかと・・・。
何というか、彼って、日本人には暑苦しすぎませんか?
ほかの映画の役を見ても、そう感じることが多いので・・・。
ファンの方には怒られると思うけど。
だから、ケイト・ウィンスレットと関係があったというくだりでは、ぞっとしてしまう。
うーん、単に個人的好みでしょうか・・・。
ジュード・ロウみたいにちょっとニヒルに構えてる感じが、やっぱり好きだなあ。

2006年/アメリカ

オール・ザ・キングスメン
オール・ザ・キングスメン コレクターズ・エディション [DVD]
ショーン・ペン,ジュード・ロウ,アンソニー・ホプキンス,ケイト・ウィンスレット
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

禁じられた楽園

2007年04月12日 | 本(ホラー)

「禁じられた楽園」 恩田 陸  徳間文庫

恩田陸の作品を揚げればキリがありませんが、一番最近読んだものの紹介ということで・・・。
「幻想ホラー」と、この本の帯では称しています。
恩田陸の物語では時々出てくる迷宮が、そこにあります。
若き天才芸術家、烏山(からすやま)響一。
その怪しい魅力に、引き寄せられるように、熊野の山奥を訪ねることになる、登場人物たち。
熊野は、古来より日本の一種の霊場のような場所ですね。
その山奥に、いくつもの山をそのまま利用しつくられた、プライベートミュージアムがある。
テーマパークのようなその場所は、どんどん人を呼び寄せ、収益を上げるというようなことは、全く考えていない。
いったい何のためにそんなものが・・・。
謎は最後の最後に明かされることになります。

さて、注目すべきはその、野外美術館ですね。
断崖絶壁にかけられた透明アクリル板の橋。
私なら、もうそこでギブアップです。
でもそこはほんの入り口。

原色モザイクの丘。
よく見るとそれはたくみに遠近感を利用して作られた大きなドームの中の投影映像。

ゴムのカーテンの迷路。
微妙にゆがみ、たわみ、めまいをおこしそうになる。

はるか果てまで、全てレンガの石段で埋め尽くされた丘、また、丘。

などなど・・・。
このように書くと、それは何かしら、一度は行ってみたい体験型テーマパークのように感じられますが、
このストーリーの怖いところは、その道を行く人の、もっとも恐怖を感じること、感じたことが、さらに傷を押し広げるように、執拗に繰り返し繰り返しリアルに再現されてしまうのです。
だから体験する恐怖は、個人個人で異なる。
う~ん、私なら何でしょう。
幸い平凡な人生?を送っておりまして、そこまでの大きなトラウマやら、恐怖を感じたことがないかな・・・。
というか、そもそも、そんな人物は、この山には招かれるはずもないのでした・・・。

最後には意外な展開があり、思いがけないエンディングとなるのですが、ちょっとそこは出来すぎのような気もします。

それにしても、実際時々いますよね。
一種近寄りがたいオーラというか雰囲気を持つ人。
この本では、「日本人離れというより人間離れ」と表現していますが、人間離れして爬虫類や獣に近づいちゃう人もいるので、それもちょっとちがうかな。

とりあえず、カラスの絵のなかに入り込みそうな気がしたときには、気をつけることにしましょう。


グイン・サーガ113/もう一つの王国

2007年04月09日 | グイン・サーガ

え~また、おじゃまします。

出ましたねー、隔月刊の、新作が。この、表紙のグインが一段とマッチョですねー。

この本が出るたびに、えっ、あれからもう2ヶ月たったの?と驚いてしまいますね。

そうですね。続きが早く見たいと思ってはいても、2ヶ月というのは意外と早い。

さて、どうなの、今回は?

出ましたよー、鉄人28号!

いやそれを言うなら、ガンダムじゃない?何しろ、現に名前はガンダルだし。

そういう問題か?

こいつはいったい何者なんだろうねえ・・・、まともな人間とは思えないねえ。単なるバカでもなさそうだし。

そうだよねえ、この巻の最後に出てくる意外な人物の意外な正体を考え合わせると、実は訳アリの人物なのかねえ。

グインはひたすら戦わずに逃げようというポーズだけど、これは絶対に戦いもせずに別れるなんて事ないよねー。

そうだよねー。実は私は戦闘シーンってあんまり興味なくて、さっさと終わって欲しいんだけどさ、栗本さんは、好きだよねえ・・・。

それから、タイスの地下水路の話が出たときから嫌な予感がしたんだけど・・・。

そうそう、やっぱりそこに入り込むことになったですね。うわー。気色わるいっ!暗くて、じめじめで(じめじめじゃなく、水そのものだって!)得体の知れない虫やら何やらがうじょじょ。非業の最期を遂げた不気味な死体がごろごろ。変な音やらうめき声やら・・・た、耐えられません。

グインはいつもこんなところにはまり込む運命なのよ。

はあ、でもグインなら絶対何とかなる。というか、何とかならないと最終巻になっちゃうもんね。

んで、最後に出てきた意外な人物はどうよ。

イヤー。ホント、意外でしたね。何しろ、当の栗本さんも驚いていてくらいだし。とっくに、過去の人かと思っていた。

こういうサプライズが、このストーリーを長続きさせる秘訣なんだよ。

そしてまた、予感では、グインがタイスをおさらばするだけでは済まない。

というと?

この地の腐りきった体制をそのままでは去らないということですよ。きっと、グインは根こそぎぶっこわす!!

ははあ、なるほど。別の跡継ぎもいたわけだしねえ・・・。

さて、ご正解は、2ヵ月後のおたのしみ~。

「グイン・サーガ114/もう一つの王国」 栗本薫 ハヤカワ文庫


ブラッド・ダイヤモンド

2007年04月08日 | 映画(は行)

1999年、アフリカ、シエラレオネ。
そう聞いてもどこにあるのか解らないという程度の知識が少し恥ずかしくなりました。
アフリカ西部の国です。

当時、政府軍と反政府軍であるRUFとの内紛で、国内は、混乱状況。
つつましく漁師をしていたソロモンはある日突然RUFの襲撃を受け、家族と離れ離れとなり、ダイヤモンドの採掘場へ連行され、働かされます。
そこで採れたダイヤモンドは、ディカプリオ扮するアーチャーのような密売人により、武器と交換されるのです。
せっかくのダイヤも国を豊かにすることにはならず、武器となってますます国を荒廃させることにしかならないというこの悪循環。
兵士ではないごく普通の人々は、いつどこで銃撃戦に巻き込まれたり、連れ去られたりするかわからず、おびえつつ過ごし、また、家や家族を失い、難民となってしまうのです。

この映画では、ソロモンが100カラットもあるピンクダイヤを発見し、ひそかに、隠します。
このダイヤにソロモンは家族の運命を、密売人であるアーチャーは自由を、ジャーナリストのマディーは真実を賭けることになり、物語は進行していきます。
アーチャーがソロモンに寄り添い、彼の息子を探す協力をするようになるのは、無論、もともとはそのピンクダイヤを手に入れるため。
しかし次第に彼の目的はソロモンを助けること自体に変化していくのです。
それは、何の打算もなく、ただ愚直にひたすらに、家族を守り息子をとり戻そうとする、ソロモンの姿に圧倒されたからに他なりません。
ソロモンはアーチャーに問います。
「ダイヤが手に入ってお金が入ったら、結婚して、子供を作るのか?」
「いや、そんなことは考えていない」
「それじゃ、なんの意味もないじゃないか」。
確かにその通りだと、納得するアーチャー。
いつしか忘れていた、本当の生きる意味を教えられるような気がするのです。

この映画のもう一つの問題提起は、少年兵の存在。
ソロモンの息子、ディアは、RUFに連れ去られ、少年兵に仕立てられます。
無理やり銃を持たせ、洗脳し、使い捨てのコマとする。
今現在もなお、世界中で20万人もの少年兵がいるといいます。

そして、もう一つ圧倒されたのは、これらの内紛で大量の難民が発生。
この映画中の「WFP国連世界食糧計画」による難民キャンプには、100万人の難民が収容されていました。
ちょっと、想像が付きません。
100万人といえば日本でも大都市ひとつ分。
これだけの食料や水の供給だけでも気が遠くなるように思いますが、現実に、このWFPが機能していたということで、
片や、兵器をばら撒き、ダイヤを搾取。
片や人助け。
欧米、いえ日本もですかね、やることが矛盾に満ちています・・・。

このように、社会問題をテーマとしながらも決してお説教にならず、登場人物に寄り添ってストーリーを見守ることが出来るというのは、やはりなかなかの傑作というべきでしょう。
レオ様は、ディパーテッドとこの作品で、すっかり単なるイケメン俳優から肉体派になりましたね・・・。
ジャイモン・フンスーは実際アフリカ生まれだそうです。
「グラディエーター」とか、「イン・アメリカ/3つの小さな願いごと」に出演。
ああ、そういえば・・・、なかなかいい役をやっていたのでは?
ジェニファー・コネリーも意志の強い凛としたジャーナリスト役、なかなかすてきでした。

ブラッド・ダイヤモンド [DVD]
レオナルド・ディカプリオ,ジャイモン・フンスー,ジェニファー・コネリー,カギソ・クイパーズ,アーノルド・ボスルー
ワーナー・ホーム・ビデオ

2006年/アメリカ/143分
監督:エドワード・ズウィック
出演:レオナルド・ディカプリオ、ジャイモン・フンスー、ジェニファー・コネリー


「テアトル東向島アカデミー賞」

2007年04月07日 | 本(エッセイ)

本日は本の紹介です。
「テアトル東向島アカデミー賞」 福井晴敏著 集英社文庫

私の敬愛する福井晴敏さんが営んでいる自宅のホームシアター「テアトル東向島」。
そこで選出されるアカデミー賞受賞作の紹介。

・・・と、こういう内容です。
つまりは、映画レビューですが、さすが物書きのプロ。
数知れない映画遍歴、基礎知識、社会的考察力、
そして何よりも、自己の確固とした思考及び嗜好が表れており、
このようなブログを続けようとしているものにとっては、
こんな文章が書きたいものだ・・・と、
見本にしたくなってしまうのでした。

そのラインナップを見てみると
ジュラシック・パーク、羊たちの沈黙、ターミネーター、バットマン、未知との遭遇、マトリックス、プライベート・ライアン、スパイダーマン、ガメラ・・・・・
私も、嫌いではありませんがこの方向性は、なかなかのものです。


そもそも、この本の「ウリ」は、
「世の男性が本当に好きなのは、このような作品群であって、
恋愛映画や、アート系のミニシアターに付き合っているのは彼の本当の姿ではない、と女性に知らしめること。」とし、
彼のハートを射止めるなら、このような映画に付き合うのも手だよ・・・
といっております。
まあ、これはちょっとした、福井氏のユーモアで、
やはりこれは、彼の映画好きの発露の結果としての本である、と素直に見たほうがよいでしょう。
しかし、こんな(失礼!)作品の話でありながら、妙に引き込まれ、
私が見ていないものについては、是非見なければ!と、思わせる力と勢いに満ちています。映画好きの方は是非ご一読を。

さて、もともと福井氏の作品群は、
どれも始めから映像化を意図したような印象的な場面でつながれています。
そもそも、軍隊だの、兵器だの、全く興味のない私が、
わくわくしてほとんどの作品を読破し、次作を待ち焦がれているというのも、多分、このためだと思うのです。
ただ、映画というよりは、アニメ的かなあ、と、思っていました。
そして、この本には、しっかり自作
「ローレライ」、「戦国自衛隊1549」、「亡国のイージス」の紹介もあります。


私は「ローレライ」しか見ておりませんが、
原作をこよなく愛したものとしては、失望・・・としかいえません。
多分、女性読者は、皆そうだと思います。
あの長大なストーリーを2時間にまとめるのは、やはりムリがあったと思います。
この本の中で、福井氏は言っています。
「状況を後退させ、ドラマを前面に立てた。そのため、タイトルから「終戦の」がはずれた。戦争映画ではなく、ばらばらな個人が一致団結した瞬間に生まれる奇蹟を描いた映画になった。」
そうですね、その方向は納得できるし、望むところでもあり・・・、
では何が問題かというと、
そのドラマとして寄り添う人物が、
私の望む人物ではなかった、ということです!
フリッツの存在自体を抹消!! そんなばかな~!


やれやれ・・・、気を取り直して、そのうち「亡国のイージス」の映画も見たいと思います。

さて、この本の最後には福井氏の最大お勧め「ブレイブハート」に触れています。
彼は20代半ば、どうしようもない閉塞感に襲われていた頃、この作品に出会い、
「個人の中に眠る熱が事態を動かし、世界さえ変え得るという”現実”を思い出させてくれた」、といいます。
その後すぐに彼は江戸川乱歩賞をめざして小説を書き始めた。
いわばこれは人生を変えた一本ということになります。
こんな劇的な映画との出会い、残念ながら私にはそこまでの出会いはありませんが、
(というよりはそこまでの感性がないのかもしれない・・・)
単に暇つぶしではない、何かがそこにあるのだと、思い続けたい気がします。


アンフェア the movie

2007年04月02日 | 映画(あ行)

あれ、何で突然対談形式なんですか?

それがねー、ちょっと突っ込みを入れてみたくなりまして、お相手してもらおうかしらん、と。

はあ、ではまず、この映画を見に行った動機などをどうぞ。

はいはい。これは、テレビシリーズの映画化ですね。
私はテレビは見てなかったのですが、先日、秦建日子の原作本「推理小説」を買いまして、これがなかなか面白かったのと、「ハケンの品格」で、篠原涼子のファンになっちゃったので。

うん、それで。


本では、この雪平夏見さん、超過激な性格、いつも酔っ払って全裸で寝込んで、寝起きははなはだよくない。部屋は信じられないほど散らかり放題。しかし、ムダに美人。と、このようなユニークな設定なのです。多分、テレビシリーズではそうなんでしょうね。

そう、この過激な性格が楽しくて、サクサク読めちゃったよね。


この映画は、それを見ていることを前提に作られているようで、そのような前フリは一切なし。だから、テレビを見てなくて、初めてこの映画を観たという人には、そこまで過激でユニークな存在ということがわからなくて、ちょっと物足りないんじゃないかなあ。

いやいや、テレビも見てなくて、いきなりこの映画をみる人なんて、そういるもんじゃないでしょ。かったるい人物紹介を省いただけですよ。

そうかなあ。あーでも、江口洋介はかっこよかった。

でしょう。前からファンだもんね。

でもねー、ジュード・ロウ見た直後だったので、そのよさは半減だったです。

そりゃ、あんたの都合だって。

この映画の眼目である、内通者は誰なのか・・・誰も彼もが怪しいという状況が、結構スリルあります。

そうでしょう。もともと、推理小説好きなんだから、文句ないじゃん。

椎名桔平も好きなので、このテロリスト役もかっこよかったよ~。

ほら、だから、いうことないじゃん。いったいどこがご不満?

えーとですね、その、椎名さんは、もともと、警察の裏金問題を摘発しようとした正義感ある人なんだよね。その人が、東京都民の大多数を死なせるような細菌兵器を本気で使うでしょうか。

そりゃー、8億円奪うのが目的であって、本気で細菌ばら撒く気はなかったということでしょう。

それにしては実にリアルに準備してあったじゃない。フリだけでもよかったんじゃない??? 

あのね、この作戦は色々筋立てが元からあるわけですよ。本筋では、篠原がいてもいなくても、江口が細菌爆弾を発見して、解除することになっていたんだよ。

えー、そうなんですか?

そうなんでしょう。いくら、あのような非道な警察上層部でも、8億円を惜しんで、都民を見殺しにするはずがないと、踏んだんだな。もしかすると、ほっておいても、寸前で停止する仕組みだったのかもしれない。それに合わせて、江口が線を切断したんだな。

そういえば、妙に間合いを計っていたような・・・。いや、そもそもそのような危険な細菌を、こんな都心の病院で保管というか研究?していたというのは問題じゃないですか。どっか人里はなれた山の中とかならいざしらず。しかもその血清はほんのわずかしかない。その細菌をばら撒いたら、自分たちも感染するということを想定していた様子がない・・・。なんか、あまりにもずさんじゃないですか。次々に仲間内で裏切りあってるし。

いや、防護服、ちゃんとあったでしょ。まあ、始めから、細菌は使う気がなかったんだから、ポーズですよ。で、とりあえず、皆実行までは、結束したフリして、せっせと己の役割を演じていたわけね。

じゃーさ、あの、カオルって人が、殺されなかったのはなぜ?あれだけ、派手に撃ち合ってバンバン人が死んでるのに、何でわざわざ生かして拘束しておくわけ?

それはね、彼はやっぱり、椎名の息がかかった人物なんだな。で、最後の最後に何かあった場合のコマとして、あそこでああいうスタイルで生かしておいたということで。

え~。ほんとかなあー。でもまあ、椎名さんだから許しちゃう、ということで。

なんのこっちゃ。

アンフェア the movie [DVD]
篠原涼子
ポニーキャニオン
アンフェア

2007年/日本/112分
監督:小林義則
出演:篠原涼子、椎名桔平、江口洋介


ホリデイ

2007年04月01日 | 映画(は行)

気楽なラブストーリーと思ってさほど期待して見に行ったわけではないのですが、これがまた、予想外に極上のラブロマンスでした。


それぞれ大失恋の痛手を受けた、アマンダ(キャメロン・ディアス)とアイリス(ケイト・ウィンスレット)。
ホーム・エクスチェンジということで、ロサンジェルスとロンドンの自宅を2週間交換し、それぞれ全く見知らぬ土地で休暇を過ごすことにするのです。
この2人は、積極的で失恋しても泣けない強い女を実践してきたアマンダと、
いじいじと思い悩む泣き虫のアイリス、性格も対照的。
全く知らない土地で、これまでのしがらみも切り捨てて、独りになってみると、確かに案外気持ちが切り替わるものかもしれません。
そしてまた、これまで出来なかった冒険も出来てしまう。
映画的には、それぞれの家出先で、新しい恋人にめぐり合うのは定石ではありますが、これがまた、飛び切り上質なんだなあ・・・。

片や、ジュード・ロウですよ!
私は、もともと彼のファンですが、この度また、認識を新に、素敵だなあ・・・と思ってしまいました。
どの角度から見ても、笑っても深刻な顔でも、泣いていても、絵になるんだなあ・・・。映画スターになるために生まれてきたって感じです。ふう。
彼はアマンダに気を引かれているように見えながらも、なぜか彼に付きまとう女性の影・・・。
しかも、2人も。
やっぱり、ただのプレイボーイなのかな・・・。
そう思わせておいて、後でわかる事実は・・・と、ここは、お楽しみです。

もう1人のほうは、ジュード・ロウと比べちゃ気の毒ですが、ジャック・ブラック。
まあ、どちらかといえば三枚目。
でも、楽しくてあったかそうで、実際に恋人にするならこっちって感じですね。


それぞれ恋に落ちるのはもう予定調和ですけど、2週間限定のこの出会いが果たしてどのような結末につながるのか。
それが気になってもう、最後まで目が離せなくなってしまうのでした。


ロンドン郊外のアイリスのかわいいコテージ、アマンダの豪華でスタイリッシュな家、どちらもステキです。
また、彼らの会話が飛び切りおしゃれです。

そして、アマンダが映画予告編製作を仕事にしているという設定のため、この作品には「映画」についての様々な話題がちりばめられています。
何と、ダスティン・ホフマンがひょっこり登場したりする。
映画好きにとってはこれも楽しい。


とても幸せな気分になってしまう映画でした

ホリデイ [DVD]
キャメロン・ディアス,ナンシー・メイヤーズ,ケイト・ウィンスレット,ジュード・ロウ,ジャック・ブラック
ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
ホリデイ

2006年/アメリカ/135分
監督:ナンシー・メイヤーズ
出演:ジュード・ロウ、キャメロン・ディアス、ケイト・ウィンスレット、ジャック・ブラック

 

<しょうもない追記>
さて、このような思い切りロマンチックな映画を観たとしましょう。
映画館を出て、トイレによる。
鏡を見る。
そこには、まぎれもない東洋人の、くたびれたおばさんが・・・。
どっと、現実にもどりますね。
やはり、銀幕の世界は遠い夢・・・ですね。