映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「張り込み姫 君たちに明日はない3」 垣根涼介

2012年04月30日 | 本(その他)
“リストラ”イコール“クビ”ではなくて

張り込み姫: 君たちに明日はない3 (新潮文庫)
垣根 涼介
新潮社


                   * * * * * * * * * 

リストラ面接官村上真介、「君たちに明日はない」シリーズ第3弾です。
リストラ請負業という真に今日的な仕事を勤める村上真介。
企業の方針に従い、人員削減に向けて多くの社員に面接し、
退職をすすめるという、嫌な立場の仕事です。
時には憎まれて、お茶を引っ掛けられたりもする・・・。
しかし、です。
彼の人間観察はなかなか鋭くて、
対象者の色々な仕事に対する思いを探るのはなかなか楽しいのです。
この本には4篇が収められていますが、その中の一つ。


「みんなの力」
自動車ディーラーのメカニックを勤める宅間がターゲットです。
さて、とても気に入った話なので取り上げたのはいいのですが、
考えてみると私、ここに出てくる用語がちんぷんかんぷん。
クルマのことなど何もわからない私。
変なこと書いていましたら、お許しを・・・。
宅間は、とにかくクルマが好きで大事なのです。
だから修理の依頼などにも非常に丁寧で責任を持った対応をします。
そのため、個人的に彼を指名してくる客も多い。
けれど、会社にとってはそれは余計なこと、というのです。
修理内容の相談はフロントに任せて、ただ言われた通りのことだけすればいい、と。
けれど、宅間はじっくりお客と向き合って、
予算や安全性、耐久性などを相談したい。
でも現実は、そこまでクルマにこだわりを持つ人はほんのひとにぎりで、
大多数はクルマなどただ走ればいいと思っているという現実も見え隠れ。
このまま無理に会社に残っても、不本意な仕事しかできそうにない。
いっそ自分で工場を持ちたいけれども、そんなお金はどこにもない・・・。
そんなとき、これまで宅間にお世話になっていたクルマ好きのみんなが立ち上がる。
まあ、彼らにとって、宅間が仕事をやめてしまうと非常に困るというのが一番の理由ではあるのですが。
これも、みんなでお金を出し合う、なんてことではなくて、
格安の物件を探したり、資金計画を立てたり、と、
彼らの出来る範囲での協力というのが、気持ちいいのです。
必ずしも自分の好きなことを仕事にするのがいいとは言えないかも知れないけれど、
でも羨ましく思います。
仕事に情熱をかけられて、人の輪も生まれて。
そんなやりがいのある仕事につけたら、幸せですよね・・・。


さて、これらのことは、実は真介のあずかり知らない所で進行するのですが、そういうのもユニークです。
リストラとは決して「首切り」の意味ではない。
「再構築」が元々の意味ですよね。
人生の再構築。
仕事の意味の再構築。
その岐路を描くこのストーリーは、だから面白い。


今作は真介の年上の彼女、陽子さんの出番がやや少なかったのが残念でした!


→「君たちに明日はない」


君たちに明日はない (新潮文庫)
垣根 涼介
新潮社


→「借金取りの王子 君たちに明日はない2」


借金取りの王子―君たちに明日はない〈2〉 (新潮文庫)
垣根 涼介
新潮社


「張り込み姫 君たちに明日はない3」垣根涼介 新潮文庫

満足度★★★★☆

アリス・クリードの失踪

2012年04月29日 | 映画(あ行)
“愛”の不思議さ、不確かさ



                     * * * * * * * * * *

冒頭、二人の男が黙々と何かの準備を始めます。
工具や備品を調達し、ある部屋を改装。
何やら犯罪の臭いがします。
会話はないまま、二人は一人の女性を拉致。
その部屋に運び込み、猿ぐつわをした上ベッドにくくりつける。

クールで無駄のない、計画的犯行。
その手口はプロの技と思えます。
さて、その女性アリス・クリードをベッドにくくりつけ、監禁し、
裕福な父親に初めのコンタクトを取って一息ついたところから、
ようやく二人の会話が始まります。



中年で指図をしている方がヴィック。
若いほうがダニー。
ここまでは冷静沈着に見えたのですが、それなりの緊張感が見て取れます。
やがて、ダニーとアリスが実は恋人関係にあったということがわかるのですが・・・。
登場人物は最後までこの3人だけ。
そして、舞台もこの監禁部屋の他に2ヶ所ほどしかありません。
ストーリーは、単なる誘拐劇ではなく、
この3者の心理サスペンスへと様相を変えていきます。
特に、ダニーの真実はどこにあるのか。
先が読めなくて全く目が離せません。



この作品、犯罪が成功すればいいとか、
アリスが無事解放されればいいとか、
そういう感情は全然起きないのです。
この三人の誰にも特に感情移入もできないし、犯罪を憎む気も起こらない。
にもかかわらず、です。
どうしてこんなにも気になって目が離せなくなってしまうのか。
全く不思議な作品です。
そこには「愛」があるのですが、
けれどこの「愛」というものの不思議さ。不確かさ。
自分でもよくわからないし、心と実際の行動は必ずしも一致しない。
この極限状態で、これらがくっきりと浮き彫りになります。
これこそがリアルな「愛」のストーリーなのかも知れません。



ラストでアッと思うのは、この作品名。
「アリス・クリードの誘拐」ではなく、
「アリス・クリードの失踪」なのですね。
なるほど。納得、納得。

「アリス・クリードの失踪」
2009年/イギリス/101分
監督:J・グレイクソン
出演:ジェマ・アータートン、エディ・マーサン、マーティン・コムストン

おとなのけんか

2012年04月27日 | 映画(あ行)
子供そっちのけ、おとなのバトル



                  * * * * * * * * * *

この作品、登場人物は二組の夫婦で、4人のみ。
舞台となるのも夫婦の家の室内だけ、
そしてリアルタイムで会話が続きます。
この作りでピンと来るのですが、これは舞台劇を映画化したものですね。
ヤスミナ・レザ舞台劇「大人はかく戦えり」。



子供同士の喧嘩を解決するため、2組の夫婦が顔を合わせるのです。
はじめはおずおずと言葉を選び、
お互いの気分を害さないようにと、努めて理性的に話が進みます。
ところが、次第にそれぞれの本性があらわになり、互いに言いたい放題、
しまいにはそれぞれの夫婦間にも不協和音。
なんともみにくく悲惨な会見となっていきます。
おとなといっても、結局子どもと変わらない。
いえ、子どもよりも始末が悪いでしょうか。
これまでのその人の考え方・生き方がさらけ出され、その事への中傷までもがあからさま。
やっている本人たちはたまったものではありませんが、
しかし、これを他人事としてはたから見ている分には、非常に面白い!!
79分という短さもありまして、
言葉の応酬に呆れているうちにあっという間に幕になってしまいました。



特に私は、ケイト・ウインスレットから目を離せないでいました。
彼女と夫は加害者の方の少年の親で、まあ、一応お詫びに来たのですよね。
だから緊張するし、居心地も悪いし、できるだけ早く切り上げたい。
それで何度も彼らは帰りかけて、エレベーターの前まで行ったりするのですが、
そのたびに議論が再燃。
その都度何度もコートを脱いだり着たりする彼女が可笑しいし、
ついに具合が悪くなってしまうシーンにはこちらもびっくり。
それでもなお、今度はお酒をがぶがぶ飲んでしまうというのがまたすごい!!!
結局双方、父親はこの会見には気乗りがしないところを、
奥さんに責められて同席したというのも見えてきます。
終いには男同士なんだか気があって、
お酒や葉巻を分けあったりするのですが、
しかし、女同士は全く気が合わない。
どうなんでしょ、ここはリアルなんでしょうかねえ・・・?



この作品、肝心の子供はオープニングとエンディングに、遠景があるだけです。
子供そっちのけの、大人のバトル。
非常に皮肉ですが、
いやしかし、面白い。
でも、救いなのは、結局彼らは暴力には訴えません。
そこで踏みとどまれたのは、さすがに“おとな”なのか・・・。


「おとなのけんか」
2011年/フランス・ドイツ・ポーランド/79分
監督:ロマン・ポランスキー
原作:ヤスミナ・レザ
出演:ジョディ・フォスター、ケイト・ウインスレット、クリストフ・ワルツ、ジョン・C・ライリー

「みちのく迷宮 高橋克彦のミステリー世界」 高橋克彦

2012年04月26日 | 本(その他)
高橋克彦ファン必読の書

みちのく迷宮: 高橋克彦のミステリー世界 (光文社文庫)
高橋 克彦
光文社


                * * * * * * * * * *
 
この本は、著者自ら選定した「謎解き」を醍醐味とする傑作短編6編に、
著者の「ミステリー」観が浮かび上がる解説や評論等を収録した
読み応えのある内容になっています。
第15回日本ミステリー文学対象受賞記念企画によるもの。


収録短編は「百物語の殺人」、「かすかな記憶」、「歌麿の首」等、
おなじみの塔馬双太郎シリーズや記憶シリーズもあり、うれしいラインナップです。
記憶シリーズは、「記憶」というものの不思議さ不確かさに加えて怖さもあり、結構好きなのです。
また、ミステリーも好きなのですが、
私としては「総門谷」や「竜の棺」の伝奇モノも欠かせません。
スケールが大きくて、ゾクゾクします。
一向に眠くならず、興奮冷めやらず夜な夜な読みふけった記憶が。
残念ですが、それ系は長編作となっているので、この短編集にはありません・・・・。


この本の中で、著者の本の書き方は、
あまりきちんとプロットなどを立てず、どんどん書き進めてしまう、とあります。
思いつくままどんどん書いて行ったら、
いつの間にか勝手に伏線ができていたり、 当然のように結末に行き着いたり。
私が著者の作品で好きなのは、そのいきいきとした会話文なのですが、
これも、登場人物が勝手に好きなことを語り始めるとか・・・。
よく、栗本薫さんも言っていました。
自動書記のようなもので、物語が勝手に浮かんでくる、と。
天性のストーリーテーラーとはそういうものなのかも知れません。


それからこの本で面白かったのは、著者の年譜。
生まれた時から作家になるまでのことが結構細かに記されています。
昭和22年岩手県にて誕生。
お父上はお医者さんなんですね。
弟さんが後を継いで医師となった、と。
ちょうど思春期の14歳~16歳くらいのあたりでしょうか。
生霊を見る、とか、自宅の風呂場で守護霊に頭をなでられるとか、自分のドッペルゲンガーを目撃、
などという体験の記載があります。
このあたりの話は、何かで読んだ記憶がありますが、本当のことだったんですね・・・。
それから、20歳の頃、札幌に住んでいたことがあるそうで、
それは知らなかったので驚きました。
そこで、予備校仲間と遠出した帰りの列車で、後に奥様となる女性を見初める、と。
短い間でしたが札幌に住んだことにも意義があったようで、喜ばしいことであります。
24歳の頃、ある編集長に「本当に小説家になりたいのなら10年書くのをやめなさい。」と言われたエピソード、
またその後の話など、驚きに満ちていますが、
結局著者が初めて書いた長編小説「写楽殺人事件」で江戸川乱歩賞を受賞したのが36歳のとき。
人生色々・・・です。
高橋克彦ファン必読の一冊でした。

「みちのく迷宮 高橋克彦のミステリー世界」高橋克彦 光文社文庫
満足度★★★★☆

昼下がり、ローマの恋

2012年04月25日 | 映画(は行)
3組の男女の恋模様。あなたが共感するのはどれ?



                    * * * * * * * * * *


ローマのアパートに暮らす3組の男女の恋模様を、オムニバス形式で語ります。


まずは「若者の恋」。
仕事でトスカーナを訪れたロベルトは、
土地の娘ミコルに誘惑されて関係を持ってしまいます。
土地の人はみな大らかで、こんなところの生活も悪くないなと彼は思う。
けれども問題はローマにいる彼女。
そろそろ結婚を考えていた二人なのです。
さあ、どうする!!
ロベルト役はリッカルド・スカマルチョで、
「あしたのパスタはアルデンテ」に出演していました。
さすがにこの濃い顔は覚えていた!!
それにしても、今時は離れていてもオンラインで顔を合わせながら話ができるので、
嘘をごまかすのも、なかなか大変。


お次は「熟年の恋」。
人気キャスターのファビオ。
積極的な女性エリアナと浮気をしてしまうのですが、
実はこの女性には問題あり。
殿方、うかつな浮気は身を滅ぼしますぞ。
それにしても、ファビオのカツラをすぐに見破り剥ぎ取ったエリアナ。
そして彼女の“プレイ”には笑ってしまいました。


最後が「老年の恋」で、ロバート・デ・ニーロの出番です。
心臓の手術をしたばかりのアメリカ人エイドリアン。
アパートの管理人オーグストの娘ビオラと出会います。
パリ帰りの彼女は父親とそりが合わず、彼女の相談に乗るうちに・・・。
恋に年齢は関係なし、ということで。
ロバート・デ・ニーロを見ていると、年齢を重ねた男のシワもいいもんだなあ・・・と思えてきます。
これがそこらのおじさんなら犯罪??と思うかもしれない年齢差。
それが美しくロマンに見えてしまう、映画の恐ろしさ・・・(?)
ま、いいか・・・。

2011年/イタリア/126分
監督:ジョバンニ・ペロネージ
出演:ロバート・デ・ニーロ、モニカ・ベルッチ、リッカルド・スカマルチョ、カルロ・ベルドーネ、ミケーレ・プラチド

バビロンの陽光

2012年04月23日 | 映画(は行)
二人が探す“息子”は、砂漠の中のひと粒の砂



                  * * * * * * * * * *

2003年、イラク北部クルド人地区。
サダム・フセイン政権崩壊後3週間後のストーリーです。
砂漠の中の一本の道を老女と少年が歩いています。
戦地に出向いたまま戻らない息子を探すため、
老いた母が、孫アーメッドを連れて長い旅に出たところ。
まずは兵士が収容されたという刑務所を目指します。
バグダッドは多くの建物が崩壊し瓦礫の街と化し、あちこち火の手が上がっている。
けれど人々の営みは慌ただしく、刑務所の地へ向かうバスも満員。
クルド語しか解さなく地理もよくわからない老女が、
息子に会いたい一心で過酷な旅を続けます。
けれど、この心細げな二人連れに、
行き交う人は心を留め、手助けがあったりします。
お祖母さんは、自分を傷つけた人を許すようにと、アーメッドに説きます。
生活環境、宗教、言葉、あらゆる面で違っていても、人々の感情は皆同じ。
今さらながら、強くそう思います。
空爆の下に、どんな人々がいて、どんな生活をしているのか、
私たちはそれを想像することを忘れてはなりません。



二人は刑務所までの旅のつもりが、いつしか共同墓地をめぐる旅になってしまいます。
墓地というのは言い過ぎで、本当は単に多くの死体が打ち捨てられた場所。
身元もわからない多くの屍がブルドーザーに掘り起こされているのです。
二人が探す“息子”は、この砂漠の中のひと粒の砂にしか過ぎず、
無数の同様の人々とその家族が悲しみをたたえてそこにあるのでした。
まさにこれは巡礼の旅。
私には老女の諦念と祈りが同じ意味を持つように感じられます。
そしてこの旅で見せる少年の成長にも目を見張ります。
はじめの方は、まだ我が儘な子ども。
けれど、終盤にはお祖母さんを守るナイトです。
金銭的にもすごくしっかりしていて、ちょっぴり笑える場面も。



伝説のバビロンの空中庭園を一度見てみたいと少年は思っていたのです。
でも陽の差し込むその美しい庭園とは、
天国の事なのかもしれませんね。
多くの国が共同制作として関わったこの作品。
大切にしたい作品です。

バビロンの陽光 [DVD]
ヤッセル・タリーブ,シャーザード・フセイン,バシール・アルマジド
トランスフォーマー


「バビロンの陽光」
2010年/イラク・イギリス・フランス・オランダ・パレスチナ・アラブ首長国連邦・エジプト/ 90分
監督・脚本:モハメド・アルダラジー
出演:ヤッセル・タリーブ、シャザード・フセイン、バシール・アルマジド

最高の人生をあなたと

2012年04月22日 | 映画(さ行)
熟年離婚の危機は



                 * * * * * * * * * *

舞台はロンドン。
老年に差し掛かる建築家アダムとその妻メアリーの夫婦のあり方を描くドラマです。


子供たちは皆独立し、夫と二人暮らしになったメアリー。
鏡に映る自分に年齢を感じます。
多分若いころにはとても美しくて、男性の視線をいつも感じていたのでしょうね。
でも今は、メアリーとすれ違っても男性は誰も振り返ったりせず、
「まるで透明人間になったみたい」と彼女は感じます。
目も霞むし体力もない。
あるとき、記憶が一部すっぽ抜けるに至り、彼女は決心するのです。
もう若いころと同じようには暮らせない。
どんどん老いていく今後に向けて生活スタイルを考えなおそうと。
一方、夫のアダムはまだまだ現役の建築家。
しかし、華々しい設計で脚光を浴びたのは過去のことで、
周りからはもう古いと思われていることも薄々感じています。
でも、まだまだ諦めたくない。
自分の老いを認めたくないのです。
若いスタッフとともに、新たな設計に挑戦しようとする。
さて、このように老いを迎えるに当たって二人の考えは正反対。
互いにこの食い違いは受け入れがたく、ついに別居。
そうして熟年離婚へと向かっていきますが・・・。



メアリーの姿はもう数年先の私の姿。
他人ごとでなく、すごくリアルに感じてしまいました。
首筋にスカーフなど巻きたくなってしまう心境、よくわかります。

私はまだ経験がありませんが、
電車などで若い人に席を譲られたりしたら、すごくショックですよね。
それでまあ、やはり世間的定年の60歳くらいで、ライフスタイルを見直すというのは大事なことだと思います。
今作は夫婦間の見解の相違が問題となりますが、
私の見るところ、このお二人の間にはちゃんと愛があって、
どうも、そう危機的には感じられないのです。
本当に離婚だ!という話に進んできて、嘘でしょーと思ったくらい。
だからこそ、ラストが取ってつけたようには感じなかったわけで、それはそれでいいのかな?



さて、今作中でアダムの建築会社では、これまで飛行場など交通の拠点のデザインを中心にしてきたことになっています。
けれども今、そういう需要は殆どなく、
新規に老人ホームのデザインをするという会社の方針が出ました。
でもアダムはそれが気に入らないのです。
それで密かに美術館のコンペに応募をしようというわけ。
けれども私は、この老人ホームのデザインをもっと真剣に考えて欲しかったですね。
確かにそこにはこれまでの発想から離れた未知のアイデアが眠っているように思われるのです。
若い人が減り、老人ばかりがどんどん増えていくという状況は、日本も欧米も同様なんですね。
「老人だけを囲い込まないで、いろいろな年代の人と混在してほしい」とか、
「毎日遊んで暮らすなんてまっぴら、年をとっても人の役に立ちたい」とか、
作品中でもお年寄りの意見が出ていました。
私は美術館より、そういうことをきちんと追求して欲しかったなあと、
つくづく思い、ちょっと残念でした。



「最高の人生をあなたと」
2011年/フランス・ベルギー・イギリス/90分
監督:ジュリー・ガブラス
出演:イザベラ・ロッセリーニ、ウィリアム・ハート、ドリーン・マントル、ケイト・アシュフィールド

LEGEND コンサートツアー2012「希望の歌~CHE SARA ~」

2012年04月21日 | コンサート
スタイリッシュな面々にオペラ開眼

                    * * * * * * * * * *
                   
さて、私には初めてのLEGENDのコンサート。
私は人の声は最大の楽器であると常々思っていまして、
だから歌が好きなのです。
特に、ハーモニーの美しいユニット。
ゴスペルも大好き。
けれど未だ足を踏み入れていないのが「オペラ」なんです。
オペラといえば太っちょのおじさんおばさんを連想してしまい、
どうにも情感あふれすぎで暑苦しい・・・
(失礼!)
いえ、私の中のイメージなのでご勘弁を・・・。
けれども、このLEGENDという5人のユニット、気になっちゃいました。



公式サイトの紹介文より
東京を中心にオペラ、コンサートなどで活躍する国立音楽大学出身の若手オペラ歌手が一同に会し、2005年12月結成。
2006年5月に行なわれた初コンサートは
「これまでのクラシックコンサートの印象を打ち砕く、躍動感あふれる公演」として大絶賛を浴びる。
メンバーはそれぞれ渡伊の経験やコンクール受賞のほか、
数々のオペラやコンサートに出演するなど、実力・経験ともに豊富であり、
年々、クチコミだけでその規模を拡大して行っているコンサートも、
ほとんどの公演が完売になるなど、好評を博している。
また、彼らのライフワークは、「平和への祈りを人々に歌で届けること」。
結成からこれまで広島や長崎をはじめ、国内外の平和のイベントに無償で参加し続け、その歌唱を披露している。



・・・というわけで、若くスタイリッシュな彼らに、おばさんとしては興味を持ったわけでして、
まあ、不純な動機ではありますが、
2012年4月19日、勇んでこの度のツアー初日という札幌コンサートホールKitaraへ。



いやそれが、素晴らしかったですね。
これは言ってみれば、子供向けのオーケストラ入門企画「ファーストコンサート」のオペラ版みたいなものですね。
耳に馴染みのある曲が多いし、この5人の個性も私達を飽きさせません。
朗々と響くテノール、バリトン。
その声量は、さすが“オペラ”です。


私は、Time to say goodbyeが好きでした。
曲名だけではピンと来ないかも知れませんが、あの映画「アマルフィ」に使われた曲です。
そうして、様々な曲を堪能した第1部が終わり、
第2部は「伝説歌劇団~希望の歌~」。
ミュージカル?音楽劇? 
いや、つまり“オペラ”なのか。
とにかく、楽しい歌を挿入しつつ進行するコメディ劇です。
特に、我が札幌出身の内田さんのキャラには笑ってしまいました。
(お願いだから、癖にならないでね。)
いつの間にやら、「ブラボー!!」と叫ぶのも快感になり、
ラストは、広い場内隅から隅まで出没し、駆けまわりつつ歌う彼ら、
やはりさすが若い!!
(と言っても30は過ぎていると思われますが)
あっという間に時が過ぎて終演になってしまったのでした。
帰り道もしばらく余韻に浸り・・・。
なんだかハマってしまいそうです。
12月にまた札幌でコンサートがあるそうで。
ぜひまた行きたいと思います!!

CHE SARA
ソニー・ミュージックダイレクト
ソニー・ミュージックダイレクト

「7人の敵がいる」 加納朋子

2012年04月19日 | 本(その他)
向かうところ敵だらけ。小学生の母も大変です。

七人の敵がいる (集英社文庫)
加納 朋子
集英社


                     * * * * * * * * * *

ワーキングウーマンの子育てにまつわる「お勤め」奮闘記です。
子育てをしつつ仕事を持つ女性にとって、保育園通いの終了が一区切り。
しかし、保育園の送り迎えが済めば楽勝・・・、とはならないんですねえ、これが。
この物語は、山田陽子の一人息子陽介が小学校に上がった初めての懇談会から始まります。
いきなり始まる、PTAの学級役員決め。
いつでも言いたいことをズバズバ言って、
あたりを押し倒して前進する「ブルドーザー女」と仕事上でもいわれている陽子。
ここでもその調子でまくし立ててしまいます。

「仕事を持っていて役員なんて絶対に無理。」
「そんなことはヒマな専業主婦がやればいい。」
挙句には、「PTAなんて必要なんですか。」

たちまち空気が凍りつきます。
仕事で敵を作るのは平気な陽子ですが、
「モンスター・ペアレント」と囁かれ、
息子の陽介に肩身の狭い思いをさせるのではないかと心配で、
後になり後悔することしきり。

しかし難題はPTAだけではなく、学童保育の父母会、自治会役員・・・
次々と振りかかる「お勤め」。
ただでさえ仕事に忙しいというのに・・・。



私も、ワーキングウーマンの一人ですので、この物語にはかつてのPTA役員にまつわる苦い思いやら何やら、
わーっと思い出してしまいました。
役を決めるときのあの重い空気。
本当に嫌なものです。
こんな小説になるくらいなので、日本全国共通なんですね。
4月の年度初めの同じような時期に、
どこでもそんな光景が繰り広げられているのかと思うと、恐ろしいくらいです。

仕事をしているからには「責任」もあるので、
専業主婦の方からすれば「休みを取ればいい」なんていいますが、そう簡単に休めるものではありません。
ただでさえ、子どものいろいろな行事や病気で休むことも多いですし。
―――というのが、当時の私の思いでした。
でも今、実際に働くお母さんは多いですし、
だからといって専業主婦の方にだけ押し付けるのはやはり間違っているというのは、わかります。
平日の行事にお父さん方の姿を見るのは珍しくない昨今ですが、
PTAの役員となるとめっきり男性の姿が減ります。
まだまだ子育ては女の仕事という意識は根強いですね。
今作中でも、「男性の協力で、女性の負担はもっと減らせる」と強調してあるのですが、
まだ現実は厳しそう。

こういうことは、今の私のように、その時期がすぎれば忘れ去ってしまう。
・・・だからすでに実態に合わない方法なのに、いつまでもそのまま続いているのでは・・・
という著者の指摘がありました。
そして、これからに向けた提案も。
私とて、学童保育の父母会などでは、バザーに取り組んだ楽しい思い出もあったりします。
学校や地域、全てひっくるめたトータル的な運営が出来ればいいのかもしれません。


さて、ミステリの作家らしく、この作品にはひとつ大きな秘密があります。
ちょっとびっくりしましたが、陽子さんをもっと好きになりました。



「7人の敵がいる」 加納朋子 集英社文庫
満足度★★★☆☆

ファミリー・ゲーム/双子の天使

2012年04月18日 | 映画(は行)
双子の入れ替わり騒動劇

                     * * * * * * * * * *

カリフォルニア、ナパのワイナリーオーナーの父を持つ少女ハリー。
ロンドンのウエディングドレスデザイナーの母を持つ少女アニー。
この二人が、サマーキャンプで出会いました。
ところが、初対面の二人はなんと瓜二つ。
何かと反発しあう二人だったのですが、次第に打ち解けていくうちに重大なことに気が付きます。
なんと二人は、お互いがまだ生まれて間もない頃に別れた同じ両親を持つ双子だったのです。
二人はまだ見ぬお互いの父・母に会うために、お互いが入れ替わって帰宅することにしました。
そして二人が立てた計画は・・・。


今作、原作はエーリッヒ・ケストナー「二人のロッテ」。
ディズニー作品らしく、ほのぼのとした仕上がりになっています。
「ふたりのロッテ」は、私も子供の頃、胸を弾ませて読んだ記憶があります。
思いがけない出会いと真相、そしてロマン。
女の子にはたまらないストーリー。
その頃は少女漫画でも、生き別れた双子の少女の物語なんていうのがよくあったような気がします。
でもたいていは、どちらかがお金持ちのお嬢様で、
もう片方が超貧乏だったりするのですが、
このストーリーはどちらも裕福です。


都会と田舎の違いこそあれ、執事がいたり乳母がいたりする家庭で、
二人は父母のデートのためにクルーザーを借り切ったりします。
(これはお祖父さんのお金で、とのことでしたが・・・)。
ロマンもいいけれど、双方ともにセレブで人生の成功者であり、
庶民感覚からちょっと遠い・・・。
そこのところが、今時どうなのかなあ・・・と、若干僻みっぽく思った次第。
リーマンショックも知らず、まだゆとりのあったアメリカの作品なわけです・・・。


まあそれはともかく、ストーリー自体は大変楽しい。
おじゃま虫の父親の婚約者とか、執事と乳母のLOVE。
そしてなんともじれったくヤキモキさせられる二人の父と母。
最後の最後までイライラさせられること請け合い。
当然結果は言わずもがなですが、
さてこの家族、どちらに住むのでしょうね・・・? 
また喧嘩になりそう。


DVDでは題名が「ファミリー・ゲーム」だけになっています。

ファミリー・ゲーム [DVD]
ナンシー・マイヤーズ
ブエナ ビスタ ホーム エンターテイメント


「ファミリー・ゲーム/双子の天使」
1998年/アメリカ/127分
監督:ナンシー・マイヤーズ
原作:エーリッヒ・ケストナー
出演:デニス・クエイド、ナターシャ・リチャードソン、リンジー・ローハン、エレイン・ヘンドリックス

アーティスト

2012年04月17日 | 映画(あ行)
古きを訪ねて新しきを・・・



                   * * * * * * * * * *

第84回アカデミー賞作品賞・監督賞等5部門受賞作。
モノクロにして無声といういかにも地味な作りでありながら、
映画というものの原点、そして映画の楽しみの原点を思い起こさせる作品です。


舞台は1927年ハリウッド。
当時まだ無声映画しかなかったわけですが、
ナマのオーケストラ演奏があったりして、これはこれで結構贅沢ですよね。
映画の入場料はいかほどだったのでしょう?
スター俳優ジョージ・バレンタインが、
駆け出しの女優ペピー・ミラーを見初めてスターへと導きます。
しかし、ちょうど映画産業は無声映画から音声の入ったトーキーへと移行していきます。
無声映画に固執し続けるジョージは次第に落ちぶれ、忘れ去られていくのですが、
一方ペピーはトーキー映画でスターダムへと駆け上がっていく。
けれど、ペピーの胸中にはジョージが・・・。
ジョージのタキシードの袖に自らの腕を通して愛撫するペピーのシーンがとても素敵でした。
(でもこのシーンは、過去の無声映画の再現だそうで・・・。)



舞台も手法も古典的ではありますが、
このドラマのシチュエーションは多分に今日的と思えます。
というのも、ジョージはプライドばかり高くて、自らの窮地から立ち上がれない。
女性を守る“ナイト” や“ヒーロー”からは程遠いですね。
しかるにヒロイン、ペピーは、
明るくたくましく意欲的で、行動的。
まさに現代女性。
まさしく、今元気なのは女性とお年寄り。
そうそう、そして犬も!!
ジョージの運転手氏も、ちゃんと自分の新たな生きる道を見つけましたしね!
ペピー、運転手、愛犬。
ジョージはこんなに暖かい目に見守られているのに、全く不甲斐ないことで・・・。



それにしても、服装や髪型だけで、随分時代の雰囲気が出せるものですよね。
ジャン・デュジャルダンは、ちょっとクラーク・ゲーブルの雰囲気にも似ています。
ベレニス・ベジョのまばゆいくらいに活き活きした可愛らしさにも魅了されます。
なぜかその場のキラキラ感は、下手なカラー作品よりよほど印象深い。
そして、やっぱり私としてはジャックラッセルテリアのワンちゃんに花丸。
健気な犬ですよねえ・・・。
こんな犬と暮らしたい・・・。


この作品、最後の最後に初めて人の声や音が入るんですよ。
それは、ついにジョージもトーキーを認め、受け入れたと、そういう意味があると思いました。


今作は声が入らないから、余計に一生懸命画面に見入ってしまいます。
CGや3D。
映画の技術は比べ物にならないくらい進歩したけれども、
映画の面白さとそれは別物ということです。
時には紙芝居並みの画面からでも私たちは多くの感情を引き出されることがある。
今後もますます様々な表現が混在するようになる。
それはそれでいいのではないかなあと思う次第。


それにしてもです。
春の休日、日中。
アカデミー作品賞受賞作にして、この上映館はガラガラでした・・・。
そこまで地味ですかね? 
映画ファンとしてはちょっぴり寂しい気がしてしまいました。


「アーティスト」
2011年/フランス/101分
監督・脚本:ミシェル・アザナビシウス
出演:ジャン・デュジャルダン、ベレニス・ベジョ、ジョン・グッドマン、ジェームズ・クロムウェル

「彼女らは雪の迷宮に」芦辺拓

2012年04月15日 | 本(ミステリ)
外側の世界も忘れずにね

彼女らは雪の迷宮に (祥伝社文庫)
芦辺 拓
祥伝社


* * * * * * * * * *

雪深い谷底の山荘に招かれた6人の女たち。
いわゆる「雪の山荘」という、ミステリにはつきもののシチュエーションのこの作品。
けれども著者は、それを逆手にとって、非常に凝った展開を見せてくれます。
おなじみの弁護士兼名探偵の森江春策と
その助手新島ともかのシリーズ。


6人の女たちがとある山中のホテルに招待されてやってくるのですが、
その山荘が振るっています。
私設ロープウエイでたどり着くその山荘は、
なんと山頂ではなく谷底にあるのです。
折しもドラマチックに吹雪模様。
しかも従業員は誰も姿を現さない。
このような不気味な状況で、事件が起こらないわけがないではありませんか!!
そして案の定、彼女らの姿が一人、二人と消えていく・・・。


はじめの方で、森江春策が新島ともかに、
「雪の山荘」など、クローズドサークルと呼ばれるミステリの講釈をする場面があります。

もし君がほんまにそういった事件に関わることがあったとしたら、
閉じられた円の中だけを見るのではなく、
その補集合、つまり外側の世界をも忘れずにね。
仮に雪に閉ざされた山荘ならば、
そこでの出来事を常に全体との関わりの中で考えたほうがいい。

この物語は、まさに、外の出来事を抜きに語れない作品なのでした。
元気なゴールデン・レトリーバーの"金獅子"に久しぶりに会えたのも嬉しかった!!


「彼女らは雪の迷宮に」芦辺拓 祥伝社文庫
満足度★★★☆☆

リバー・ランズ・スルー・イット

2012年04月14日 | 映画(ら行)
喜びも憂いも家族の絆も・・・・

                       * * * * * * * * * *

「モンタナの風に抱かれて」に引き続き、
ロバート・レッドフォード監督作品といきましょう。
(制作年は前後してしまいましたが)
今作もモンタナ州が舞台です。
このモンタナへのこだわりは、もしかすると監督の出身地?と思ったのですが、そうではありませんでした。
(監督はカリフォルニア出身)。
つまりは“大自然の懐に抱かれた”というイメージが、監督にとって非常に強い土地なのかもしれません。



20世紀初頭のモンタナです。
厳格な牧師の家の兄弟二人。
真面目な兄ノーマン(クレイグ・シェイファー)と自由奔放な弟ポール(ブラッド・ピット)。
こうくれば、お決まりの兄弟間の相克という話になりますが、
でも、この二人は非常に仲がいい。
小さい頃から暇さえあれば二人で川へ出かけ、釣りをします。
それもフライ・フィッシング。
お父さん譲りの素晴らしい腕前。
光り輝く川面にしなやかに曲線を描く釣り糸が美しい。
二人の子供の頃のエピソードがいくつか紹介されたのち、
大学を卒業したノーマンが久しぶりに故郷へ帰ってきたところから、いよいよ物語の幕開けです。


とても仲の良い兄弟ながら、お互いがお互いを羨んでいるのが見て取れます。
兄ノーマンは、人懐っこくていつも人の輪の中心にいるポールが眩しい。
ポールは思い切りが良くて大胆。
しかし時としてハメを外しすぎ、喧嘩で警察の厄介になったり、怪しげな女性と付き合ったり、賭け事で借金をしたり・・・、
そういう危なっかしい面もあるのです。
一方、兄ノーマンの方はさほど社交的ではなく、
付き合っている彼女に「面白くない」と言われたりします。
でもポールは、堅実な兄の方が父に期待されていると思う。
この兄弟が互いを見るときには、だからちょっぴり表情が複雑なのです。
その細やかな描き方がとてもいいですね。


この作品、実は思いがけなくもショッキングな出来事で幕を閉じるのですが、
ラストシーンはそれからまたさらに数十年。
同じ川で釣りをする老いたノーマンの姿が映し出されます。

“行く川の流れは絶えずして、しかも元の水にあらず・・・”

方丈記ではありませんが、
人の世はどんどん移り変わって行くけれども、川は変わらない。
喜びも憂いも、家族の絆も別れも・・・、
川の水と同じようにどこかへ流れ去り、また新たな営みがどこかで生まれていくのでしょう。
そんな無常感が漂う、秀逸なラストなのです。


また、やはり若きブラピが素敵ですよね~。
いるだけで華があって、人懐っこそうで、
だけど時々人を寄せ付けない厳しい表情をうかがわせる。
線は細すぎず、適度に筋肉質・・・・すなわちセクシー。
惚れ直します♡。
ところでまた、子供時代のノーマンを演じているのが、ジョセフ・ゴードン=レビットなんです。
びっくりですね。
こういう面からも見逃せない作品と言えそうです。

リバー・ランズ・スルー・イット [DVD]
ブラッド・ピット,クレイグ・シェーファー,トム・スケリット
パイオニアLDC


「リバー・ランズ・スルー・イット」
1992年/アメリカ/124分
監督:ロバート・レッドフォード
原作:ノーマン・マクリーン
出演:スティーブン・シェレン、クレイグ・シェイファー、ブラッド・ピット、ジョセフ・ゴードン=レビット

モンタナの風に抱かれて

2012年04月13日 | 映画(ま行)
熟年の、けれどもみずみずしいラブストーリー

                   * * * * * * * * * *

今作の原題は“THE HORSE WHISPERER” 馬にささやく人。
馬の治療といいますか、馬の精神的ケアをするという珍しい人物が、ある雑誌に紹介されたのです。
それがモンタナのトム・ブッカー(ロバート・レッドフォード)。
その雑誌に目を止めたのがアニー(クリスティン・スコット・トーマス)。
彼女の娘グレースは乗馬中の事故で片足を失い、
またその馬ピルグリムもひどく人間不信で荒れた馬になってしまっています。
グレースは心を閉ざし、生きる意欲も失っている。
アニーは馬と娘が同じ心の傷で同じ窮地に落ち込んでいると思い、
もし馬が落ち着いた心を取り戻すことができるなら、
娘の心も回復するのではないか・・・と、
一縷の望みをいだいて、トムのもとへやって来るのです。


さて、地理に疎い私は、モンタナ州がどこなのかもよくわからなかったので、調べました。
アメリカ北西部、カナダと国境を接しています。
有名なイエローストーン国立公園があります。
どこまでも続く雄大な大自然。
ニューヨークからの道のりは確かにはるか遠いです。
この作品、167分と長さもたっぷり。
それはこの雄大な土地では時間もゆったりゆっくりと過ぎるような・・・、
そういう表現でもあると思います。
牧場での母子の生活がとても丁寧にゆっくりと描かれています。
そしてその時の流れがとても心地よい。
都会人の感傷かもしれませんが、私もそんなモンタナの風に吹かれて癒されてみたい・・・。
北海道に住んでいてこんなことを言うのは変かな? 
その雄大さにおいては、北海道でもとてもかないません・・・。


私はこの作品、公開時に劇場で見ているのですが、
13歳の少女グレース役がスカーレット・ヨハンソンだったなんて、
この度初めて知りました!!
あのぽってり唇で一目でわかりました。
あの時、将来この子が大女優になるなんて、想像もできませんでしたから・・・、
だから映画は面白い。
そしてこの作品、馬と少女が癒される作品という印象を持っていましたが、
この度見なおしてみれば、これは立派なラブストーリーではありませんか。
記憶というのも、いい加減なものです。
(私だけか・・・?)
今作時点のR・レッドフォードは62歳ということになるでしょうか。
熟年の、けれどもみずみずしい恋のストーリーですね。
氏の初の監督兼主演作品です。

モンタナの風に抱かれて [DVD]
ニコラス・エヴァンス
ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント


「モンタナの風に抱かれて」
1998年/アメリカ/167分
監督:ロバート・レッドフォード
出演:ロバート・レッドフォード、クリスティン・スコット・トーマス、スカーレット・ヨハンソン、ダイアン・ウィースト、クリス・クーパー