レトロ感たっぷりの探偵冒険譚、童心に返って楽しもう
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舞台は、第二次世界大戦を回避した日本。
1949年。
・・・つまり、戦後の民主化がなくて、華族制度がそのまま継続されている。
極端な格差社会となっている日本。
それが、その延長上の現代ではなくて、
1949年というところが、またにくいのです。
昭和のレトロ感たっぷり。
このような解説を加えつつ、オープニングは、
東京ならぬ、「帝都」を上空からゆっくり映し出していきます。
まずは貧困層というか、庶民の住居地と思われるつつましいたくさんの家並み。
そこから工業地帯を経て、ビルの立ち並ぶ上流階級層の地域。
そこにひときわ高くそびえるのは
帝都タワー(東京タワーじゃないですね。それができたのはもう少し後。)と、このストーリー上の重要な場所、羽柴財閥の高層ビル。
なんだか、ここのシーンを見ただけでワクワクしてしまうのです。
これぞ、パノラマ。
さあ、何が始まるのでしょう・・・!
もともとは、こんな子供だましみたいな映画、見ないつもりだったんですよ。
でも、金城武には惹かれます。
先日TVの番組でも、本人が出演してPRしてましたし・・・。
まあ、たまにはいいか・・・というつもりで見たのですが、見事にハマりました。
子どもだまし結構。
この際、子どもに返って手放しで楽しんでしまおう、という気になりましたね。
さて、主人公の遠藤平吉(金城武)はサーカスの曲芸師。
あるとき怪人20面相の罠にはめられ、
自分が20面相として指名手配されることになってしまった。
とうとう逮捕されてしまった平吉でしたが、
なじみの泥棒長屋の人たちに助け出され、そこで、泥棒修行をすることになる。
ここのシーンがまたいいんですよ。
修行として、とにかくまっすぐ突き進むことというのがある。
家の壁をよじ登り、建物から建物に飛び移り、鉄塔を乗り越えて・・・。
初めはやっとなんですが、次第に身も軽くスピーディになってくる。
カッコイイ・・・。
みとれます。
羽柴財閥の令嬢葉子(松たかこ)や、その婚約者である名探偵明智小五郎(仲村トオル)と知り合い、その力をかりて、
いつか自分を陥れた怪人20面相に復讐をすると誓う。
松たか子演じるお姫様も、いいキャラなんです。
世間知らずなんだけれど、なにか、夢をもってやり遂げたいという気持ちがある。
正義感が強くて無鉄砲。
それと、やや、天然ボケっぽいところが相まって、いい味になっている。
それに引き換え、この明智小五郎は、とりすまして、なんだかいけ好かない奴のようにも思えるのですが・・・。
果て、さて・・・。
これ以上語るのはやめておきましょう。
ここでの金城武の起用は大成功でしたね。
もう、スパイダーマンやバットマンに負けないくらいかっこよかった・・・。
それと、この世界観がなんとも言えずいいです。
その頃、科学の進歩が私たちを幸せに導くという夢を持てた時代・・・。
そんな背景が郷愁を呼ぶ。
ここにものすごい巨大なマシンが登場します。
これも、コンピューターなどないので、操作盤が、アナログ式なんですよ。
いいでしょう・・・。
また、この極端な格差社会というのも、
ちくりと現代を風刺しているあたりがにくいです。
お正月にはぜひお勧めです。
2008年/日本/137分
監督:佐藤嗣麻子
出演:金城武、松たか子、仲村トオル、國村隼、高島礼子