映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「きのこのき きになるきのこのきほんのほん」新井文彦

2018年10月30日 | 本(解説)

きのこは、つまり「花」

きのこのき きになるきのこのきほんのほん
新井 文彦
文一総合出版

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そもそも「きのこ」ってなんなの?
きのこの基本(きのこの「き」)がすべて分かる入門書。
著者とっておきの美しいきのこ写真も多数収録。

誰でも楽しめるよう、形や色といった"見た目"に注目
きのこが生える場所や季節など観察に役立つ情報も紹介
図鑑や写真集にはのっていないきのこネタもたっぷり

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引き続き新井文彦さんのきのこの本。
この度の薀蓄。
きのこの本体は地中に張り巡らされている菌糸で、
私達が見ているきのこはそのほんの一部の「子実体」に過ぎない。
子実体は胞子を飛ばすためにできる。


私達の気づかない地中で、本当はいろいろなことが起こっているのでしょうね。
以前はきのこの分類と言えば、見た目の形状で行われたわけですが、
最近はDNAで行うそうですよ。
そうすると、全く異なる形をしていても、実はとても近い種類だったりすることがあるそうです。
研究すればするほど面白そうだなあ・・・。
さてこの本は本当に「きのこのきほん」が描かれていまして、
服装や持ち物などきのこの観察のための心得まで載っています。
色別に分けたきのこの写真も美しく興味深い。
そうだ、この次は羊毛フェルトできのこをチクチク作ってみようかしら・・・?

図書館蔵書にて
「きのこのき きになるきのこのきほんのほん」新井文彦 文一総合出版
満足度★★★★☆


ヒトラーと戦った22日間

2018年10月29日 | 映画(は行)

死の匂いに満ちた物語・・・

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第二次世界大戦下、ナチスによるソビボル絶滅収容所で実際にあった出来事の映画化です。



現ポーランドにあるソビボル収容所に多くのユダヤ人が送り込まれ、
ガス室で大量殺戮が行われていましたが、
一部、使役のために生き延びている人々がいました。
そんな中で、密かに脱走を計画するグループがあったのですが、
その計画を牽引するリーダーがいなかったのです。
そんなところへ、ソ連の軍人アレクサンドル・ペチェルスキーが収容者として送られてきます。
やがて彼をリーダーとして収容者全員の脱出を目指す反乱計画が動き始めます。

全編に渡って死の匂いが立ち込めているようで、見るのが辛かった・・・。
もちろんユダヤ人収容所のことが描かれている作品は
これまでにも多く見ているのですが・・・。
本作はまだ少しのんきに構えている裕福なユダヤ人たちの載った列車が
ソビボルの駅に到着するところからはじまります。
貴重品などの入ったカバンを預けて、シャワーを浴びるからと全裸になって案内された部屋は・・・。
そんなところが詳細に描かれているのが辛い。
そしてどうしても思ってしまう。
ドイツ兵たちはこんなことを毎日のように見て、平気だったのか、と。
毎日のようだからこそ、すでに神経が麻痺してしまっていたのかもしれません。
ユダヤ人をほとんど家畜のように扱う、その後の数々の描写にも、目を背けたくなります。
そしてユダヤ人たちは諦めながらも、憎しみを少しづつ蓄積していくのですね。



脱走者が出るとその後、ペナルティとして全く無作為で残った者たちが殺されてしまうのです。
自らは脱走に加担したわけでもないのに。
その事があったので、アレクサンドルらは、
全員が一斉に脱出する計画を練らざるを得なかったわけです。



計画の手順の始めは、主なドイツ兵幹部を一人づつ誘い出して、殺害していく。
軍人ではない民間人が殺人を犯すわけで、これはなかなか心理的ハードルも高いのですが、
そこには蓄積された憎しみがある。
ここの描写も、自由のため、正義のためという高ぶりはなく、
やはりただその死の匂いにたじろぐばかり・・・。
いづれにしても戦争に正義なんかない。
つくづくそう思わせる作品ではありました。



ちなみに、ソビボル収容所にはユダヤ人、ユダヤ系のソ連兵の捕虜、ロマなど
20万人~30万人が送り込まれたそうです。
そこに10万もの差があるというのも恐ろしいですよね。
とにかくきちんとた管理などされていなかったというか、
証拠隠滅されてしまったということなのか。
人一人の尊厳など全くありません。
そして1943年10月にこの反乱が起こりますが、
600名が反乱を起こし、脱走に成功したのが300名。
(残りの半数は死亡?)。
ところがその脱走に成功した者たちも、地元の人に捉えられたり殺されたりで、
結局終戦まで生き残ったのは50~70名とのことです。
このことは作中ではなく、エンドロールの中で文字で示されるのみですが、
あまりにもリスクの大きい脱出劇ではありました。
しかしでは、何もしなければ良かったのかと言えば、そういうわけでもなかったのですね。
いすれにしても救い難く、血の匂いに満ちた物語・・・。


<シアターキノにて>
「ヒトラーと戦った22日間」
2018年/ロシア・ドイツ・リトアニア、ポーランド/118分
監督・脚本:コンスタンチン・ハベンスキー
出演:コンスタンチン・ハベンスキー、クリストファー・ランバート、フェリス・ヤンケリ、ダイニュス・カズラウスカス、マリア・コジェーブニコワ

歴史発掘度★★★★★
満足度★★★.5


パラサイト・イヴ

2018年10月28日 | 映画(は行)

ミトコンドリアが明確な意志を持てば・・・

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瀬名秀明さん原作によるこの本は、当時すごく話題になって売れたのですよね。
そんな懐かしさもあって見てみました。

大学薬学部に所属する生物学者の永島(三上博史)は、ミトコンドリアの研究をしています。
彼によれば、人間の細胞中にあるミトコンドリアは、
言ってみれば人間の細胞にパラサイト(寄生)しているようなものだ、と。
10億年前、はじめて人類に寄生したその最初のミトコンドリアがあったはずで、
いわば“イヴ”のようなもの。


さて、彼には結婚一年になる妻・聖美(葉月里緒奈)がいるのですが、
何やら体に異変が現れている様子・・・
と思う間もなく事故で脳死状態となってしまいます。
そこで、聖美の腎臓は麻理子という少女に生体移植され、
そしてまた、肝臓は密かに永島に渡されます。
そして永島は聖美の肝臓からミトコンドリアの培養を始めるのです。
やがて、麻理子と聖美のミトコンドリアに異変が・・・。

一応ホラー作品ですが、一番怖かったのはカタツムリに寄生するという寄生虫の話。
その寄生虫はカタツムリのツノ(というか、目?)を変形させて、
鳥が好んで食べる幼虫そっくりにしてしまうというのです。
やがて寄生虫がカタツムリを滅ぼすという恐ろしい生態の話が、
いつかミトコンドリアが私達人類を滅ぼすのではないか・・・
という恐ろしい運命を予感させるわけですね・・・。


そんな想像が一番恐ろしかっただけで、後はどうということはありません。
永島が妻を愛するあまり、ほとんどマッドサイエンティストに変貌していく・・・
というところまではまあ許せる。
けれどラストの笑えるほどのセンチメンタリズムはどうもいただけない・・・。
テンポも良くないし・・・。
あ、脚本は君塚良一さんでした。
約20年前・・・やはりまだ若かったんですね・・・。

パラサイト・イヴ [DVD]
瀬名秀明,君塚良一
フジテレビジョン

<WOWOW視聴にて>
「パラサイト・イヴ」
1997年/日本/121分
監督:落合正幸
脚本:君塚良一
原作:瀬名秀明
出演:三上博史、葉月里緒奈、中嶋朋子、別所哲也、大村彩子、稲垣吾郎


「森のきのこ、きのこの森」新井文彦 

2018年10月27日 | 本(解説)

きのこの生える場所の違いって?

森のきのこ、きのこの森
白水 貴
玄光社

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本書は、森に生えるきのこのビジュアルブックです。

150点を超える掲載写真は、きのこのかわいらしさや美しさに加え、
現代の日本では貴重な人の手がほとんど入っていないような
森の雰囲気を同時にお楽しみいただけます。

きのこを生態環境別(針葉樹、広葉樹、虫から生える冬虫夏草など)に語るエッセイ、
きのこガイドのほか、きのこ女子によるコラムなど?
森ときのこの魅力がたっぷり詰まった一冊になります。

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きのこフェチの私、こんな本を読んでみました。
読むというよりも、写真を眺めるという感じですけれど。
この本の著者、新井文彦さんは糸井重里さんのインターネットサイト・ほぼ日刊イトイ新聞で
「きのこの話」を連載中です。
北海道の阿寒湖周辺や東北地方の白神山地、八甲田山周辺を中心としたきのこ類の紹介をしています。
ひたすら不思議で美しいきのこを愛でるだけでも十分なのですが、
きのこについて解説もちゃんとしてあるので、少し真面目に読んでみましたよ。

認識を改めました、きのこの分類について。
大きく3つに分けられ、本巻でもその区分ごとに紹介があります。
★まず、枯れ木や倒木に生えるきのこ。
木材腐朽菌。
枯れ木や倒木の分解に貢献しています(シイタケ、マイタケなど)。
これがなければ森は倒木だらけ。

★地面に生えるきのこ。
これは地面から生えているようで実は地中の樹木の根とつながっていて
お互いに栄養のやり取りをしている。
つまり共生関係にあってこれを菌根菌という。
この菌根菌類は人工栽培が難しいそうで、マツタケとかヤマドリタケ(ポルチーニ茸)など、
天然物を採るしかないので高い!というわけ。
地面に生えるものは、他に落ち葉から生えるものもあります。

★その他多種多様なものから生えるきのこ
生きた木に寄生するもの・・・つまり分解するのではなくて
ただ養分を横取りするわけですね。
ナラタケなど。ひどくなると木が枯れてしまいます。
虫に寄生するもの(冬虫夏草)とか、他のきのこに寄生するものまでいろいろ・・・。

それぞれのきのこが特定のところから生えているのはわかっていましたが、
正しくこのような違いがあるなど今まで考えたこともなかった。
・・・はい、ぼ~っと生きてました!
この方の著作はまだ他にもあるので、引き続き見るつもりです。

図書館蔵書にて
「森のきのこ、きのこの森」新井文彦 玄光社
満足度★★★★☆


日日是好日

2018年10月26日 | 映画(な行)

良い一日一日を重ねて行けば・・・

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エッセイストの森下典子さんが、25年に渡り通った茶道教室での日々を綴った
エッセイ「日々是好日 『お茶』が教えてくれた15のしあわせ」を映画化したものです。

本当にやりたいことが見つけられずにいた20歳大学生の典子(黒木華)。
母に勧められた茶道ですが、あまり乗り気ではなかったところ、
いとこの美智子(多部未華子)が乗り気で、共に通うことになります。
決まりごとだらけのお茶の世界。
一見おっとりの武田先生(樹木希林)ですが、
さすがにお茶の稽古では凛として厳しさも垣間見せます。
週に一度のお稽古が続き、季節が移り行き年月も移り変わって・・・。
就職や失恋、大切な人の死。
常に典子の人生とともにお茶はある。



いつの間にか考えずとも手が動き、水の音とお湯の音の違いを感じるようにもなっている。
そしてまた、何がやりたいのかもわからなかった典子は、
出版社のアルバイトからフリーのライターへ。
それで生活が安定したわけではないけれど、
自分の進むべき道が見えて、足取りもしっかりしています。
とにかく日々続けること。
毎日毎日が同じように見えたとしてもその良い日を重ねていけばきっと答えが見えてくる
・・・そんなことを言いたいのかもしれません。

樹木希林さんの最後の出演作ですね。
彼女こそは「日々是好日」をモットーに生きてこられたように思えます。
体調の悪さなど感じさせないお茶の先生としての佇まい。
もちろん何の役をやってもピカイチの樹木希林さんですが、
このような役で幕を閉じることができたのは幸いなことだと思いました。



<シネマフロンティアにて>
「日日是好日」
2018年/日本/100分
監督・脚本:大森立嗣
原作;森下典子
出演;黒木華、樹木希林、多部未華子、原田麻由、鶴見辰吾
お茶の世界の奥深さ★★★★☆
樹木希林さんを偲ぶ★★★★★
満足度★★★★☆


星ガ丘ワンダーランド

2018年10月24日 | 映画(は行)

母に対する双方の思い

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星ガ丘駅で働く温人(はると)(中村倫也)は、幼い頃母に捨てられたという過去があります。
そんな彼は駅の落とし物の管理を担当。
落とし物を見てはその持ち主をどんな人物可想像し、そのイラストを書いているのです。
そんなある日、家を出て再婚していた母が自殺したとの知らせが・・・。
自殺というのが信じられない温人でしたが、
警察には「家族ではないから、事件の詳しい捜査内容は教えられない」と言われ、傷ついてしまいます。
そんな温人のもとに、母の再婚相手の連れ子、七海(佐々木希)が訪れて・・・。

子供の頃の温人が母と別れてからおよそ20年。
その時街にあった遊園地の「星ガ丘ワンダーランド」は、
今はすっかり寂れて営業も停止し、近く撤去が予定されているのです。
そうした長い時間を、温人は「母のない子」のまま過ごしてきた・・・。
死なれたのよりもなおつらそうです、「捨てられた」という感覚。



一方、義理の母を受け入れた七海とその弟・雄哉(菅田将暉)は、
義母のことを好きではあったのですが、
それでもやはりどこか本当の母ではないというところにわだかまりを持っていたのです。





双方の喪失感と違和感。
ここではその当の母本人の心情はついに明かされないまま逝ってしまったわけで、
兄弟たちの永遠に満たされないという思いが、切ない・・・。



ただ、双方のそんな思いが、わずかに共感を呼びぬくもりを感じさせるというところがいいですね。
例によって、何の予備知識もなく見始めて、
主人公が中村倫也さんだったので、驚きました。
えーと3年前の作品ですか。
おなじみの“マーくん”とはずいぶんイメージが違いますが、
さすが“カメレオン俳優”といわれるだけあります。
こんな頃からもう主役をやっていたんですね。
私の認識が遅れすぎ・・・?
しかも、けっこう豪華キャスト。
今、拾い物の作品ですよ。

「星ガ丘ワンダーランド」スタンダード・エディション [DVD]
中村倫也,新井浩文,佐々木希,菅田将暉,杏
キングレコード



<WOWOW視聴にて>
「星ガ丘ワンダーランド」
2015年/日本/111分
監督:柳沢翔
出演:中村倫也、新井浩文、佐々木希、菅田将暉、杏、木村佳乃
母を思う度★★★★☆
満足度★★★★☆


「御子柴くんの甘味と捜査」若竹七海

2018年10月23日 | 本(ミステリ)

お菓子に振り回される御子柴くん

御子柴くんの甘味と捜査 (中公文庫)
若竹 七海
中央公論新社

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長野県警から警視庁捜査共助課へ出向した御子柴刑事。
甘党の上司や同僚からなにかしらスイーツを要求されるが、
日々起こる事件は、ビターなものばかり。
上田市の山中で不審死体が発見されると身元を探り(「哀愁のくるみ餅事件」)、
軽井沢の教会で逃亡犯を待ち受ける(「不審なプリン事件」)。
『プレゼント』に登場した御子柴くんが主役の、文庫オリジナル短篇集。

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本作の主人公とも言える御子柴くんは「プレゼント」という作品でデビューしたそうなのですが、
うーん、どうも読んでいないようです。


長野県警から警視庁捜査共助課へ出向しているという御子柴くんは
殺人事件の解決へ向けていい仕事をするのですが、どうも最後の最後で納得がいかない。
そんなときに、長野県警でかつて一緒に組んで捜査をしていた小林警部補と電話で話をする。
すると彼は御子柴くんの話を聞いただけで、スルスルと事件解決してしまう。
おおよそそんなパターンの短編集です。
「プレゼント」の方を読めばわかるのでしょうけれど、
つまり小林警部こそがこのシリーズの名探偵役(警察なのに名探偵というのは変か?)だったのですね。
今度読んでみよう・・・。

さて本作のユニークなのは、あま~いお菓子が沢山登場するところです。
御子柴くんが特に甘いもの好きではないんですよ。
長野から東京へ出向してきている彼は、いつも上役などから頼み事をされてしまうのです。
長野の名物の〇〇を入手して送ってほしいとか、
逆に東京のどこそこでしか売っていない〇〇というお菓子を買って送れとか・・・。
忙しいのに冗談じゃない、と思いながらもつい従ってしまう。
ところがそれを上役へのゴマすり、出世のためと人には思われているフシがあって、
くさってしまう御子柴くん。
・・・などという設定がまた面白い!
東京のお菓子はともかくとして、
長野すなわち信州のお菓子はどれも美味しそう・・・。
私も御子柴くんに買って送ってほしい!!

またこの御子柴くんのプロフィールがなかなかいいのです。
もともと東京生まれ東京育ちなのに山の雄大さに憧れて長野県警入を果たしたのです。
本当は山岳救命の仕事に付きたかった。
しかし、ある事件で膝を怪我してしまい、登山ができなくなってしまうのですね。
登山は諦めたものの、でもやはり長野の自然は大好き。
東京で長野の山を恋しく思う・・・
まるでアルプスの少女ハイジみたいな心境をとても好ましく思う私でした。


「御子柴くんの甘味と捜査」若竹七海 中公文庫
満足度★★★★☆


億男

2018年10月22日 | 映画(あ行)

お金って何だ?

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佐藤健さん&高橋一生さんとくればもう、見ないわけには行きません!!

3000万円の借金をして失踪した兄に代わり、借金返済に追われている一男(佐藤健)。
そんな和夫に愛想を尽かし、妻子は家を出て現在別居中。
そんな一男に、宝くじ3億円が当選!! 
借金返済と家族の修復を夢見る一男ですが、
その大金の使い方に戸惑い、大学時代の親友、九十九(つくも)(高橋一生)にアドバイスを求めることにします。
九十九は起業して億万長者となっていたのです。
ところが、どんちゃん騒ぎのパーティーで酔いつぶれ、一男が目覚めると、
九十九は3億円とともに姿を消していた・・・!!
一男は九十九の行方を求めて、彼のことを知っていそうな人々の間を訪ね歩きます。

本作のテーマはズバリ、お金って何だ?
いきなり誰かが宝くじをあてて大金持ちになったとする。
周りの人は妬みでどんどん変わっていくし、そんな人々の変わりようを見れば当人も変わってしまう。
そんな話はよく聞きます。
本作の中で虚をつれた1シーン。
ある人が一男に100万円やるから好きな馬に賭けてみろといいます。
一男が好きな番号を適当に選んだ馬が大当たり。
万馬券で一瞬にして1億円を稼いでしまった。
男は次に、ここでやめたらチャンスが台無しだ、
今度の馬も絶対に勝つから全額賭けてみろ、と。
本来小心な一男はもうここでやめたいと思ったのですが、
強引な男に負けて、儲けた全額を賭けてしまうのです。
しかし結果は負け。
また一瞬にして1億円を失ってしまうのです。
ところが、男は言う。
冗談だよ。
最初から馬券なんか買っていない。
君の頭の中でお金が行ったり来たりしただけ。
その行ったり来たりしたお金って、一体何なんだ?
全く、「お金」という正体不明のもののために、心は天国と地獄を行き来。
おかしなことですね。



一男はこんなふうにいろいろな人に会いながら、お金についてを学んでいく。
最近キャッシュレス化が進んでいて、
ますますお金ってなんなのか、わかりにくくなってきそうです。
でも結局、物の価値は自分自身で決める、ということに尽きるのだろうなあ。
けれど、庶民感覚で言わせてもらえば、何も何億もほしいわけではない。
老後の生活の安心のためと、日々のほんの少しの贅沢、
ちょっとした旅行とか、ごくたまにごちそうを食べに行くとか・・・
それだけでいいと思っているわけで・・・。
ああ、でもきっと人は多くを持てば持つほど、貪欲になるものなのかもしれませんね。

ちょっとボーッとした一男君は、3億円を持ち逃げした九十九を恨みもせず、
「きっと何かよほどの事情があるに違いない」と思うだけ。
ほんと、お人好し。
まあ、そんなところがいいのですよね。





さて、一男と九十九の足して100のコンビは、意外にも大学の落語部で出会って親しくなったのです。
そのため落語のシーンもあって、でもコレが素晴らしくうまい!! 
そういえば今TVドラマで岡田将生さんも落語をやっていて、全く役者さんというのも大変です。
また本作では北村一輝さんと藤原竜也さんの怪演がナイス!でした。

砂漠にたたずむ、学生時代の二人。
いいわあ~♡

<シネマフロンティアにて>
「億男」
2018年/日本/116分
監督:大友啓史
原作:川村元気
出演:佐藤健、高橋一生、黒木華、池田エライザ、沢尻エリカ、北村一輝、藤原竜也
テーマのユニーク度★★★★☆
満足度★★★★☆


ライフ

2018年10月21日 | 映画(ら行)

リプリーにいてほしかった・・・

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火星で未知の生命体が採取され、
世界各国から集められた6人の宇宙飛行士が、国際宇宙ステーションでその調査を開始しました。
生命体はみるみる成長し、やがて宇宙飛行士たちを襲いはじめます。
一人、また一人と命を失っていく・・・。
この生物を地球上へ持ち込んではならないと思い定める彼らは・・・。

「カルビン」と名付けられるこの生命体は、初めのうちはピラピラして少しカワイイ。
しかしあっという間に成長して、タコのような感じになっていきます。
宇宙ステーション内で、乗員が一人また一人と襲われ、犠牲になっていく・・・。
あれ、このストーリー、「エイリアン」とどこが違うの???
おんなじだなあ・・・。
まあ、しいていえば、どうにでもなれというヤケクソ的ラストか。
こちらにはリプリーのようなタフネスがいないのが辛い。



私、先日見た「クワイエット・プレイス」で、
あの怪物はどこから来たのだろう?と思ったのですが、
もしかすると、本作のような経緯があったのかもなどと想像してしまいました。



そうそう、宇宙ステーションの日本からの乗員が真田広之さん。
彼にはぜひ日本刀で怪物をぶった切ってほしかった。
・・・もしかすると余計分裂して増えてしまいそうな気もしますが。
残念ながら、主役ではない悲しさで、途中で退場です・・・(T_T)

まあそんなわけで、エイリアンを見たことがある方は、あえて見る必要はなさそうです。

ライフ [DVD]
ジェイク・ギレンホール,レベッカ・ファーガソン,ライアン・レイノルズ,真田広之,アリヨン・バカレ
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント



<WOWOW視聴にて>
「ライフ」
2017年/アメリカ/104分
監督:ダニエル・エスピノーサ
出演:ジェイク・ギレンホール、レベッカ・ファーガソン、ライアン・レイノルズ、真田広之、アリヨン・バカーレ
気色悪さ★★★★☆
満足度★★.5


「ねみみにみみず」東江一紀

2018年10月20日 | 本(エッセイ)

言葉の達人

ねみみにみみず
越前 敏弥
作品社

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翻訳家の日常、翻訳の裏側。
迫りくる締切地獄で七転八倒しながらも、言葉とパチンコと競馬に真摯に向き合い、
200冊を超える訳書を生んだ翻訳の巨人。
知られざる生態と翻訳哲学が明かされる、おもしろうてやがていとしきエッセイ集。

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この本は新聞の書評で見て、興味を持ちました。
著者東江一紀さんは「あがりえかずき」と読みます。翻訳家。
数々の名翻訳で著名の方ですが、2014年にすでに亡くなっていて、
この本は同業者である越前敏弥さんが、東江氏の残した文章をまとめたもの。


東江氏は沖縄出身ですが、北大出身。
学生時代のみ、この札幌で過ごされたようです。
そんなことでもなんだか親しみが湧いてしまいます。
が、この本に親しみを感じてしまうのはそんなことだけではありません。
何しろ文章にユーモアが溢れている。
いくつもの仕事を並行して引き受け、毎日毎日仕事に、そしてその締切に追いまくられる日々。
また、そこまでしながらも全く収入が少ない・・・と、ほぼ自虐ネタなのですが、
その語り口の軽妙さ、言葉遊びのユニークさやリズム感に惚れ惚れしてしまいます。
さすが、言葉にこだわりを持つ翻訳家・・・
この方の翻訳なら全然引っかかりなく読めそうな気がします。
・・・というのも、恥ずかしながらこの方の手がけた作品リストを見ても
私は読んだことがなさそうで・・・。
そもそも翻訳ものを読むこと自体が少ないので、お恥ずかしい限り。
というか御本人の没後にこんなことに気づくなんて申し訳ない・・・。

本巻の文章は1990年代からのものが載っているので、
ワープロからパソコンへ移り変わる、そんな時の様子も描かれていて、懐かしく思いました。
誰しもたどった道ですよねえ・・・。
はじめの頃のパソコンは、すぐにフリーズしたりして大変だった。


そして意外に思ったのは、東江氏は英会話が苦手だそうで・・・
(あくまでも本人の言い分ですが)。
文章の英語ならいいのだけれど、ネイティブとの会話などとんでもない!!ということで、
時折原作者が来日などして、翻訳者と対面の機会があったりすると、
必死で他に用事を作るなどして逃げ回っていたそうな・・・。
イヤでもその気持はわかります。
多くの日本人がそうですもんね・・・。
そうか、英会話がだめでも翻訳者になれるのか。
私も翻訳者に憧れたことがあって、でも全然しゃべれないので早々に諦めたのは早まったかも・・・?

さて、こんな東江氏の文章の一端なりともご紹介。
駄洒落というよりも、言葉遊びなんですね。
この本の題名自体もそうですが「寝耳に蚯蚓(みみず)」、
「執筆は父としてはかどらず」、
「冬来たりなば春唐辛子」
「訳介な仕事だ、まったく」、
「待て馬鹿色の日和あり」。

冬を味わいたいというところでは
「朝水道の水で顔を洗うときに気合が必要というか、
太郎の屋根に雪ふりつむというか、
あめゆじゆとてちてけんじやというか・・・」

フランクフルトの街は札幌の街とよく似ている、ということで
「中央駅から広い道路がまっすぐに伸びて・・・細長い帯状の公園と直角に交差している。
そう、大通り公園みたいに。
角にはオオドオリ・ヘップバーンの銅像が立っている。
というのはもちろんうそで、ゲーテの像があるんですね。」

これなど傑作中の傑作。
「え~ん、これはつまり、翻訳が悪いってことなのかよう、水曜、木曜。
 労力と情熱の対価が、あまりにも安いよう、木曜、金曜。
 これじゃあ生計を立てていくことができんよう、土曜、日曜。
というわけで、わたしに残されたのは月曜だけとなってしまった(意味不明)。」

東江氏の名刺に記された文では
「人は食っても、ネギは食えない。
ワープロは打っても、覚醒剤は打たない。
腹は割っても酒は割らない。
適量は常に、次の一杯」


いやあ、ホント楽しい!!

「ねみみにみみず」東江一紀 作品社
満足度★★★★★


リングサイド・ストーリー

2018年10月18日 | 映画(ら行)

イキイキと働く女に男は嫉妬する?

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カナコ(佐藤江梨子)と10年来同棲しているヒデオ(瑛太)は役者ですが、
7年前大河ドラマ出演を果たしたものの、
最近はオーディションにも落ち続けて、ほとんどカナコのヒモ同様の生活をしています。
そんな時、カナコが勤め先の弁当工場をリストラされてしまいます。
そこで、プロレス観戦好きのヒデオの勧めで、プロレス団体で働くことになります。
プロレスの裏方の仕事は思ったよりも楽しく、カナコは少しずつプロレスの世界に魅了されて行きます。
ヒデオは自分に関心が向かないカナコを、浮気をしているのでは?と誤解し、騒動が・・・。

はじめ私はカナコがプロレスやらK-1やらを始めるのかと思ってドキドキしてしまいましたが、
そうではなくてあくまでも裏方です。
でもこれが本当に面白いですよね。
普段私達の知らない世界でありながら、確かに、こういう仕事をする人がいなければ業界は成り立たない。
仕事をする楽しさが伝わります。



さてところが、先日見た「かごの中の瞳」という映画でもそうだったのですが、
夫は妻がイキイキと社会で活動しているのを見るのが面白くないらしい・・・。
特に自分自身に自信がないときには。
実際、ヒデオを見ているとあまりのダメ男ぶりに腹が立ってきます。
仕事を選んでいる場合ではないと思うのに、
「こんなつまらない仕事はイヤだ」などと選り好み。
仲間と飲めば偉そうだし、日がなパチンコ浸りだし・・・。

カナコと喧嘩したときには「出て行け」なんて言うけど、
ここはカナコが彼女のお金で家賃を払っている部屋。
全く、出ていくならあんたが出て行け!ですよ。
それなのにカナコは、荷物を持って実家へ身を寄せたりする。
なんでこんな男に愛想を尽かさないのかと、歯がゆく思うのですが・・・。

けれど、最後の方でカナコが自身の心情を吐露するところがあって、ホロリとさせられるのです。
つまり、彼女は私みたいに心は狭くない。
一見言いたいことを言って、ヒデオを突き放すようにするカナコでもあるのですが、
彼女の心は広く深い。
これぞ愛だろ、愛。

プロレスやK-1の舞台裏を見せながら、カナコのストレートな思いが、ほんのり心を温める・・・。
滅多にない舞台設定が楽しい一作。
瑛太さんは、ダメ男をやらせるとピカイチだな。

リングサイド・ストーリー [DVD]
佐藤江梨子,瑛太,有薗芳記,田中要次
オデッサ・エンタテインメント

<WOWOW視聴にて>
「リングサイド・ストーリー」
監督:武正晴
出演:佐藤江梨子、瑛太、有蘭芳記、田中要次、武尊、余貴美子
お仕事ストーリー度★★★★☆
満足度★★★★☆

 


クワイエット・プレイス

2018年10月17日 | 映画(か行)

ど、ど、どーするのよ、無音の出産シーン!?

* * * * * * * * * *


音に反応して人間を襲う「何か」の出現のために、人類は滅亡の危機に瀕している、
本作はいきなりそんなところから始まります。
こんな世界で、なんとか生き延びている一つの家族に焦点を当てます。
彼らは決して音を立てないというルールを守り、言葉は手話で、常に裸足で生活しているのです。
けれど全く無音というわけではありません。
風の音、木々のざわめき、水のせせらぎ、そうしたものは普通に聞こえる田園生活。
こんな中で常に緊張感を持って生活するのはかなり難しいでしょうけれど・・・。

でも「音を立てたら即死」というキャッチコピーの意味を、私達は冒頭間もなく思い知ることになります。
そしてこのときの事件が、この家族に影を投げかけることになります。
さてそんな中、妻が妊娠し、臨月を迎えます。



え~、ちょ、待てよー、と思いますね。
必死にこらえてなんとか出産時を無言で済ませるにしても、
赤ん坊の泣き声はどうするのよ、赤ん坊の泣き声こそは生きている証なのに・・・。
こちらの不安をよそに、出産シーンは最悪のタイミングではじまります。
もう、ヤダ~。
怖すぎる!!



世界中の混乱は想像に余りあるところではありますが、
本作はたった一つの家族にマトを絞ったところが良かったと思います。
家族だけで得体の知れない敵と対峙。
なんだか原始の世界に帰るようですね。
恐怖を乗り越えてなお一層強まる絆。
今家族がバラバラなのは世の中が平和すぎるせい・・・?



作中は、極めて僅かな音が聞こえるだけなのですが、
時折グワーンと大きな音が出る。
例えば机の上の何かが落ちたりするような音なのですが。
それが怪物の現れる前触れの恐ろしさもあるのですが、
それ以前に、急にボリュームの大きい音がするのにびっくりさせられるわけです。
ほんと、飛び上がりそうになってしまう。
カンベンして~・・・。

ところで、ここに登場する聴覚障害のある女の子、最近見た覚えがある・・・と思ったら「
ワンダー・ストラック」に出ていたのでした。
実際に聴覚障害のミリセント・シモンズさん。
またどこかでお目にかかりたいものです。

監督・脚本と夫役として出演しているのがジョン・クラシンスキーで、
妻役のエミリー・ブラントとは実際の夫婦。
なるほど、作品自体も家庭内作品。
でも面白かった。


<シネマフロンティアにて>
2018年/アメリカ/90分
監督・脚本:ジョン・クラシンスキー
出演:エミリー・ブラント、ジョン・クラシンスキー、ミリセント・シモンズ、ノア・ジュプ、ケイド・ウッドワード
ハラハラ度★★★★★
満足度★★★.5


「真実の10メートル手前」米澤穂信

2018年10月16日 | 本(ミステリ)

無表情、太刀洗万智の魅力

真実の10メートル手前 (創元推理文庫)
米澤 穂信
東京創元社

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高校生の心中事件。
二人が死んだ場所の名をとって、それは恋累心中と呼ばれた。
週刊深層編集部の都留は、フリージャーナリストの大刀洗と合流して取材を開始するが、
徐々に事件の有り様に違和感を覚え始める。
大刀洗はなにを考えているのか?
滑稽な悲劇、あるいはグロテスクな妄執
――己の身に痛みを引き受けながら、それらを直視するジャーナリスト、大刀洗万智の活動記録。
「綱渡りの成功例」など粒揃いの六編、第155回直木賞候補作。

* * * * * * * * * *

先日「王とサーカス」を読んで、すっかり太刀洗万智ファンになってしまった私は、
すぐにこの本を借りて読みました。
フリージャーナリスト太刀洗万智が活躍する短編集です。

6編が収められていますが、どれも、太刀洗万智の人とは違う視点がキレを見せる、
確かに粒ぞろいの作品。


冒頭の「真実の10メートル手前」のみが太刀洗万智自身の視点で語られていますが、
その他は皆、別の第3者の視点から語られています。
そうして見た太刀洗万智は、なんだか常に冷静すぎて若干冷淡のように見える。
感情を顔に出さず、謎めいてさえも見える。
けれど、彼女のものの考え方や行動原理を知るうちに次第に魅力を感じるようになります。
また何かの拍子にふっと口元が緩んで微笑みを見せることもあって、
そんな表情に、人々は虚を突かれた感じになってしまうわけですね。
こんな、謎めいた美女になってみたかった・・・。


「王とサーカス」での彼女と同様、
彼女はジャーナリストという自身の立場を常に自制的にとらえていることも伺えます。
報道が語ることを錦の御旗にはしない。
しかしときには若干冷酷とも思える判断をすることもある。
こんなふうに若干ひりひりする登場人物の思考回路は、
やはり米澤穂信さんのものですね。

「恋累(こいがさね)心中」は、高校生の男女が心中した事件を取材するというストーリー。
残された遺書によっても心中は間違いがないと思われるのに、
なぜ離れ離れの死となってしまったのか・・・。
別の事件を追っていた太刀洗の推理と本事件の交差が見事です。
私、短編集でも「満願」よりこちらのほうが好きだわあ・・・。


図書館蔵書にて
「真実の10メートル手前」米澤穂信 東京創元社(単行本)
満足度★★★★☆

 


フラットライナーズ(2017年)

2018年10月15日 | 映画(は行)

臨死体験とは

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1990年版「フラットライナーズ」のリメイク。
私は割と近年そちらを見ているので、この度ついでに、という感じで拝見。
医学生が臨死体験の実験を行うという設定はそのままです。

臨死体験を自分自身で体験してみようという医学生・コートニー(エレン・ペイジ)は、
他の4名の学生を集め、病院の地下で密かに実験を始めます。
自らの心臓を止め、数分後に皆に蘇生してもらうのです。
実験はなんとか成功。
その後コートニーは昔読んだ医学書の細部の記憶を蘇らせたり、
以前習ったきりのピアノ曲を弾いてみせるなど、超常的な力を発揮しはじめます。
それを見た仲間たちも、コートニーに引き続いて臨死体験に望みます。
しかしそんな時、コートニーは昔事故で亡くなった妹の姿を見かけるようになっていたのです・・・。

心臓が停止している学生たちの見るものは、それぞれです。
よく言われるように、川の向こうで懐かしい人が手招きをしていたり、神々しい光に包まれたりはしません。
むしろなにか底知れない恐怖に縁取られているようでもある。
それは彼らがこれまで生きてきた中で、最も気になっている自分の行い、
罪悪感にかられていることのかたちであることが次第にわかってきます。
そして主役と思っていたコートニーの意外な運命!! 
見ていても絶望的な思いにとらわれてしまいましたが・・・。

けれど因果応報がはっきりしていて、論理的に対処法が取られるところがわかりやすい。
でも、そのように理詰めではっきりわかりすぎるところが逆につまらなく、
ミステリ風味も損なわれていることも否めません。
何かわからないものはわからないままに・・・、そういうところも必要ではないかと。



それで考えてみれば本作での「臨死体験」というのはつまり、
その人の生涯で最も悔いが残ることを追体験したり、
傷つけた相手から呪われたりすることだというわけなのでしょうか・・・? 
それではあんまりだわ・・・という気がします。
そんなことがないように生きればいいのでしょうけれど・・・、
後ろめたいことの一点もない人生なんてありますかね・・・。



あ・・・でも1990年版の記事を読み返して気がついたことがあります。
臨死体験は本当はまだ続くのでしたよね。
それなのに彼らは無理やり途中で引き返してきてしまったから問題が起きたのでしたっけ・・・?
興味がある方は、こちらへ→「フラットライナーズ(1990年)」



1990年のオリジナル版で医学生を演じたキーファー・サザーランドが教授役で出演しています。

【Amazon.co.jp限定】限定フラットライナーズ (オリジナルカード付) [DVD]
エレン・ペイジ,ディエゴ・ルナ,ニーナ・ドブレフ,ジェームズ・ノートン,カーシー・クレモンズ
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント



<WOWOW視聴にて>
「フラットライナーズ(2017年)」
2017年/アメリカ/110分
監督:ニールス・アルデン・オプレブ
出演:エレン・ペイジ、ディエゴ・ルナ、ニーナ・ドブレク、ジェームズ・ノートン、カーシー・クレモンズ

ホラー度★★★★☆
満足度★★★☆☆


チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛

2018年10月14日 | 映画(た行)

チューリップ・バブルと妊娠と

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世界最古の経済バブルとも言うべき17世紀オランダでの
チューリップの高騰を背景としたドラマです。
フェルメールの絵画に着想を得ていますが、登場人物はフェルメールではありません。
けれど、その絵画を意識した全体のシックな色調がステキです。
でもストーリーはクラシカルとかオーソドックスとかではなくて、なかなかぶっ飛んでいます。
うん、面白い!

修道院育ちのソフィア(アリシア・ビカンダー)は、
親子のように年の離れた豪商コルネリス(クリストフ・ワルツ)と結婚。
ほとんどお金で買われたと同じような結婚ではありましたが、
夫には大事にされて、満ち足りた生活を送っています。
ただ、夫は男子の誕生を心待ちにしているのに、一向に妊娠の気配もありません。
このまま子供ができないと、修道院に帰されてしまうのでは?と不安なソフィア。
そんな時、コルネリスは夫婦の肖像画を無名の若き画家ヤン(デイン・デハーン)に依頼します。
そこで、ヤンとソフィアが恋に落ちてしまうのです。

さて一方、ソフィア付きのメイドのマリアは
屋敷に出入りする魚屋のウィレムと恋仲になります。
ところがウィレムは、ソフィアがヤンの家に行くのをみて、マリアと勘違い。
振られたと勘違いして海軍に入り、長い航海に出てしまいます。
わけも分からず取り残されたマリアは自分が妊娠していることに気づくのです・・・。

当時のことですから、私生児を生むなどということは身の破滅と同じ。
望んでも得られない妊娠と、呪わしい妊娠が交差して・・・
という思いがけない運びとなっていきます。
まさにストーリーらしいストーリーで、しかもチューリップ・バブルなどという背景が絡んでいるのもユニーク。
当時球根一つで邸宅一軒分の価値がついたりしたそうで・・・。
ソフィアがいた修道院でその球根を栽培しているというのがまたミソでしてね。
初めこんなちょい役をジュディ・デンチが?と思ったら、
その後でもしっかり登場する重要人物でした。



そして最も心打たれるのはこの豪商、コルネリスその人であります。
確かに、まるで買うようにして妻を得たわけですが、
彼の心の広さと言うか愛情はホンモノなのです。
彼は香辛料の輸入を生業をしているのですが、この度の狂乱のチューリップには手を出しません。
意外と堅実なのであります。

そうした彼が妻の裏切りを知った時・・・、
こんな時こそ人間性が問われるわけですが・・・。
人が悪い私は、まさかこういう結末が待っているとは思いもよりませんでした。
いいですよ~、本作。
おすすめです。
17世紀の運河のある雑多な町並み。
すごくいろいろな匂いが立ち込めていそうな感じです。
あの魚など、かなりイキが下がっていて、匂いがついていそうな感じ。
でもここのうちにはコショウなどのスパイスが豊富にありそうなのでなんとかなるのかも。
衣装とか、風習とか、いろいろと興味深く楽しめました。



<シアターキノにて>
「チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛」
2017年/アメリカ・イギリス/105分
監督:ジャスティン・チャドウィック
出演:アリシア・ビカンダー、デイン・デハーン、ジュディ・デンチ、クリストフ・ワルツ、ジャック・オコンネル

ストーリー性★★★★★
真の愛度★★★★★
満足度★★★★★