映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

お茶漬の味

2022年01月31日 | 映画(あ行)

昭和を振り返る

 

 

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小津安二郎監督作品。
ちょうどWOWOWで特集を組んでいたので、いくつかみてみましょうか、と。
あまり研究的に映画を見たりしない私なので、
恥ずかしながら小津作品、ほとんど見たことがありません。

 

地方出身の商社マン、佐竹茂吉(佐分利信)。
お見合いで結婚したのは上流階級の妙子(小暮実千代)。
2人は何かしっくりこないまま結婚して7・8年になります。
内緒で遊び歩く妻にも、夫は無関心。
お嬢様育ちの妙子はどこか田舎くささの残る茂吉が気に入らず、
鈍感だと思っているのです。

そんなある日、お見合いがイヤですっぽかしてしまった
姪・節子(津島恵子)のことについて、茂吉は言う。
「無理に結婚させても、自分たちのような夫婦がもう一組できるだけだ」と。
どこかうまくいっていない自分たちの関係をズバリと言われて、
妙子は傷ついてしまうのですね。
彼女は夫に口も聞かなくなり、ついには黙って神戸の友人のところに遊びに行ってしまう。
ところが、茂吉は急に海外出張が決まり、妙子に電報を打つのですが・・・。

 

見合い結婚でしっくりいかないままの夫婦。
それでも共に生活することでいつか2人の心は寄り添っていた・・・。
心のわだかまりを解きほぐすのはお茶漬けの味・・・。
そんな夫婦の機微を描く作品であります。

でも本作で面白いのは、この時代背景。
1952年。
私も生まれる前です・・・。

高層ビルなどなく、路面電車の電線が張り巡らされている東京の空。
お見合い結婚は当たり前ながら、若き姪の節子はそれに反発。
女性が近寄らないパチンコや競輪に飛びつく。
新しい時代の象徴みたいな子。
当時の人々の概ねの考え方がうかがえて非常に興味深い。

でも私が気に入らないのは、この家、
というか登場人物たちがあまりにも裕福であるということ。

この佐竹家、住み込みの女中さんがいて、
妙子はほとんど台所に入ったこともないようなのです。
そしてその台所にはなんと冷蔵庫がある!! 
私の家で初めて冷蔵庫を買ったのは、私が小学生の頃ではないかしらん。
ましてや、昭和20年代で電気冷蔵庫があるなんて、
庶民には遠く高嶺の花であったはず。
思い立てば、夫にウソをついてではあっても温泉に出かけてしまえるというリッチさ。
実際、家にいてもすることがないのだから、遊びに行くしかないですけどね。

当時本作を見た一般庶民は、夫婦の感情がどうこうよりも、
このリッチな生活にため息が出たのではないかなあ・・・
と思ってしまった次第。

 

あ、でも一つ興味深いセリフが。
妙子が夫のことを「亀」に例えて言います。

「妻は家で甲羅を干している亀しか見ていない。
でも亀は外ではうさぎと競争したり、浦島太郎を乗せたり、
意外と頑張っている。」

そもそも、女性が外に働きに行くという選択肢もない時代
だからこそのセリフかも知れないけれど、まあ、言いたいことは伝わります。

色々と考えるべきところの多い作品なのでした。

 

<WOWOW視聴にて>

「お茶漬の味」

1952年/日本/115分

監督:小津安二郎

脚本:野田高梧、小津安二郎

出演:佐分利信、小暮実千代、三宅邦子、津島恵子、鶴田浩二、笠智衆

 

時代性★★★★★

満足度★★★.5

 


「がん消滅の罠 暗殺腫瘍」岩木一麻

2022年01月29日 | 本(ミステリ)

代替医療の闇

 

 

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日本がんセンターの夏目医師と羽島博士は、
大手保険会社勤務の森川からまたも奇妙な事例を聞く。
住宅ローンのがん団信を利用した保険金詐欺を疑うものだった。

一方、埼玉県内では医師殺人事件が連続しており、
夏目のもとに刑事が話を聞きにやって来る。

さらには脅迫を受けているという政治家が、
「人間を人工的にがんにさせることができるのか」と訪ねてきて……。

人体という密室で起こす、前代未聞の犯罪計画の全貌とは?
背後には代替医療の闇が潜んでいた――。

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シリーズ第2作。

日本がんセンター医師・夏目の所に、
大手保険会社勤務森川から相談を持ちかけられます。
それが住宅ローンのがん団信を利用した保険金詐欺が疑われる案件。
前作同様に、がんを人為的に発生させたり、またそれを消し去ったりすることができるのか?
という問題になっていきます。

前作同様、その詳細までは実のところ私には理解が及びませんが、
現在の技術では必ずしも空想上だけのことでもなさそうなのが恐いです・・・。

本作、主張としてはがんの「代替医療」のことをいっています。
病院で保険が適用される通常のがんの治療も、
今はかなり研究が進み、早期発見できればその治癒率も相当高いものになっています。
ところが、高額で怪しげな健康食品や根拠のない治療法が未だに根強く、
そちらに頼るあまり、初期に通常の治療を受けていれば助かったはずの人が
命を落とす場合もある。
このような代替医療を野放しにしていることの危険性を言っているのです。

なるほど・・・。

がんを人為的に発生させるという前作の二番煎じのような部分は必要なのか?
と思ってしまったのですが、
代替医療については、軽々しく飛びつかないように、
肝に銘じることにする・・・という勉強にはなりました。
もっとも、そんな高額を投じるほどのお金は元々ないので心配ないと思うけど。

図書館蔵書にて

「がん消滅の罠 暗殺腫瘍」岩木一麻 宝島社

満足度★★★☆☆

 


モンタナの目撃者

2022年01月28日 | 映画(ま行)

最近の女子供はタフ!!

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森林消防隊のハンナ(アンジェリーナ・ジョリー)は、
過去に森林火災に巻き込まれた少年たちを救えなかったことがトラウマとなっています。
精神的にも不安定となり、山中の監視塔の在駐員という閑職に回されてしまいます。

そんなところに迷い込んできた一人の少年・コナー(フィン・リトル)。
彼は父親を目の前で惨殺され、その殺人者たちから逃げているところでした。
この少年を今度こそは守り抜くとハンナは決意したのですが、
そんなところに大規模の森林火災が迫ります・・・。

コナーの父は公認会計士で、とある重要人物の不正に気づいてしまった。
それが明るみに出ると多くの上層人物たちが被害を受けることになる。
ということで、二人の暗殺者が放たれたのです。

コナーの父を殺した後、
コナーの向かいそうな所へ先回りしたり、森林に火を放ったり、
自分たちを目撃した者も殺しまくる、とんでもない殺人鬼。
けれど彼らは一見何でもないサラリーマン風、というところが恐いです。

そんな彼らに立ち向かうのがハンナということで、まあこれは想定通り。
そしてもう一人、なんともたくましかったのが、一人の妊婦であります。

最近の映画作品はどれも女性が強いですが、
ついに妊婦まで銃を構えるのか。
かっこよかったです!!

楽しめます。

 

<Amazon prime videoにて>

「モンタナの目撃者」

2021年/アメリカ/100分

監督:テイラー・シェリダン

原作:マイケル・コリータ

出演:アンジェリーナ・ジョリー、ニコラス・ホルト、フィン・リトル、
   エイダン・ギレン、メティナ・センゴア

 

サスペンス度★★★★☆

女の強さ度★★★★★

満足度★★★.5

 

 


HOKUSAI

2022年01月27日 | 映画(は行)

ひたすら自分の絵を極める

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浮世絵師葛飾北斎の知られざる生涯を描きます。
そもそも、その人生の歩みは詳しいことがほとんど分かっていない北斎。
だからこそ、想像の余地がたっぷりあるということで。



食うこともままならない貧乏絵師、勝川春朗(柳楽優弥)。
後の葛飾北斎です。
写実を極めようとする彼は、確かに技術的には確かなものがあります。
自分の腕だけを信じる彼は、師匠のもとを飛び出して一匹狼。
しかし、当時の大手の版元、蔦屋重三郎(阿部寛)は言う。
なんのために絵師になったのか?と。

蔦屋が見出した歌麿(玉木宏)は、女性の絵を描かせれば随一で、
なんとも色香が漂う。
若手で一躍売れっ子となった写楽は、
誰にもまねのできない独創性で人々の度肝を抜く。
自分にしか描けない絵とは・・・? 
悩み落ち込む北斎がついに開眼するとき・・・。

本作はこの青年期の北斎を柳楽優弥さんが演じ、
後半、老年期を田中泯さんが演じています。

老年期、彼の絵はしっかりと彼独自のものとなり円熟しています。
妻は先に亡くなり、娘が彼の身の回りの世話をしている。
この、お栄さんが主役の物語もありましたね。

北斎はある日、卒中で倒れ、手が不随となってしまいます。
しかしまだ足下もおぼつかないうちに旅に出る。
そして旅から戻ってから書き始めたのが富嶽三十八景。
いやはや、すごいですね。
思うにこの旅が彼にとっては絶好のリハビリになったようで・・・。
このとき71歳。
なくなったのは90歳か・・・。
当時としては破格の長生きですね。

そして本作、北斎の青年期~老年期を通して、
時代背景として、幕府の庶民の娯楽への弾圧が描かれています。
質素を旨とする幕府が、派手なもの、享楽的なものを禁じたのですね。
そうした弾圧にも負けず、「自由」に芸術を極めようとする情熱、力。
これこそが今にも通じる心意気でございます。

世界をも魅了した、大波の向こうに浮かぶ富士山の絵。
やっぱりいいなあ・・・。

「HOKUSAI」

2020年/日本/129分

監督:橋本一

脚本:河原れん

出演:柳楽優弥、田中泯、阿部寛、永山瑛太、玉木宏

 

芸術を極める度★★★★☆

満足度★★★.5

 


21ブリッジ

2022年01月26日 | 映画(た行)

思わぬ巨悪に突き当たる

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2020年8月に43歳で急逝したチャドウィック・ボーズマン、最後の主演作です。

ニューヨーク、マンハッタンでコカインの強奪事件が起こります。
銃撃戦の末、警官8名が殺害されるという大事件に発展。

その捜査に当たるのが、デイビス刑事(チャドウィック・ボーズマン)。
彼の父は過去に警察官だったのですが、ある事件のために殉職しています。
そのこともあり、彼は人一倍正義感が強く使命感に燃えているのです。
そんな彼がこの度立てたプランは、マンハッタン島へつながる21の橋すべてを封鎖すること。
デイビスは2人組の犯人を封じ込め、追い詰めていきます。

と、ここまでで十分なサスペンスものなのですが、本作にはさらに奥がある。
そもそも、この2人組はこんな大それた犯罪を起こそうと思ってはいなかった。
ちょっとした量の麻薬を手に入れられれば良かった。
ところが意に反して、倉庫には山のようなコカインの山。
そしてその時にやって来た警官は、
どうも捜査や通報を聞いて乗り込んできたようではなかった・・・。

デイビスは、恐るべき巨悪をも暴くことになる・・・。

こんなことがあったらイヤだなあ・・・と、マジ思ってしまった。
頭が良くて根は善人そうな犯人像が魅力的でした。

<WOWOW視聴にて>

「21ブリッジ」

2019年/中国・アメリカ/99分

監督:ブライアン・カーク

出演:チャドウィック・ボーズマン、シエナ・ミラー、ステファン・ジェームズ、キース・デビッド

 

陰謀度★★★★☆

満足度★★★★☆


「自由研究には向かない殺人」ホリー・ジャクソン

2022年01月25日 | 本(ミステリ)

危険すぎる自由研究

 

 

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イギリスの小さな町に住むピップは、大学受験の勉強と並行して
“自由研究で得られる資格(EPQ)"に取り組んでいた。
題材は5年前の少女失踪事件。
交際相手の少年が遺体で発見され、警察は彼が少女を殺害して自殺したと発表した。
少年と親交があったピップは彼の無実を証明するため、
自由研究を隠れ蓑に真相を探る。
調査と推理で次々に判明する新事実、二転三転する展開、そして驚きの結末。
ひたむきな主人公の姿が胸を打つ、
イギリスで大ベストセラーとなった謎解き青春ミステリ!

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本国英国はもちろん、日本でも評価の高い本作。
楽しみに手に取りました。

イギリスの小さな街に住むピップは、「自由研究」の題材として
この町で5年前に起きた少女失踪事件に取り組むことにします。

自由研究といっても夏休みの宿題のアレではなくて、
「EPQ」という資格を得るためのものなんですね。
まず、こういう内容で研究を行いたいという申請を学校に出して、
承認を得てから始めるもののようです。

5年前の事件とは、当時美人で人気のあったジェイソン・ベルという少女が突然に失踪。
その数日後に彼女のボーイフレンドだったサリル・シンが
「僕がやった」というメッセージを残して自殺。
ということで、ジェイソン・ベルの遺体が見つかったわけでもないのに、
すっかり死んだことになり、サリルがその殺人犯という認識が
町中に広がってしまったのです。

そのために今もサリルの家族は町の人々から冷たい視線をあびせられ、
ほとんど村八分のような状態になっているのです。

ピップは当時サリルとは顔見知り、というか
むしろ彼女にとっては、いじめから救ってくれたヒーロー的な存在であったため、
今も彼が殺人犯だったとはとても信じられないのです。
だからこそ、本当は5年前に何があったのかを突き止めようとしたわけです。
この調査に当たっては、サリルの弟・ラヴィの協力を仰ぐことになります。

 

ピップは聡明で行動力に富んだ明るい少女。
この暗いトーンの事件に救いをもたらしています。
そしてラヴィも、町では差別待遇を受けてはいますが、
本来はユーモアに満ちた明るい性格なのです。
ピップのことを「部長刑事」と呼び、何かと応援、援助をしてくれます。
この二人の魅力が本作の魅力の半分くらいを占めているかもしれません。

でもそれにしても、この事件は確かに「自由研究」には向かない。
まさしく、サリルは犯人ではなく、
真犯人は素知らぬ顔をしてすぐ近くにいるわけですから・・・。

ピップは「調査をやめろ」という脅迫を受けることになるし、
真実を求めようとする余り、麻薬の売人の家に単身乗り込んだり、
とある家に不法侵入をしたり・・・。
全くハラハラさせられます。

 

そして、ようやく突き止めた真実のあとに、また別の秘密が現れたりする。
とにかくノンストップで読みふけりたくなってしまう作品であります。

 

「自由研究には向かない殺人」ホリー・ジャクソン 服部京子訳 創元推理文庫

満足度★★★★★

 

 


誘拐の掟

2022年01月23日 | 映画(や行)

生還不能の誘拐

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「96時間」以降、リーアム・ニーソン出演作品は割と見ている方だと思うのですが
(特別ファンというわけではありませんが)、
本作は見ていませんでした。

 

ニューヨーク市警の酔いどれ刑事だったマット・スカダー(リーアム・ニーソン)。
ある事件の後から、警察を辞め、酒を断ち、私立探偵として身を立てています。

1999年。
とある女性の誘拐事件発生。
犯人は身代金を奪い、人質を惨殺し変わり果てた姿で返します。
被害者の夫(ダン・スティーブンス)は麻薬の売人であるため警察にも届けられず、
スカダーに依頼が来ます。
復讐のため、犯人を捜し出して欲しい、と。

そしてそんな調査のさなかに、また新たに一人の少女が誘拐されます・・・。

1999年といえばコンピュータの2000年問題ということで、
データがすべて失われるのではないか、などと世界中が神経質になっていた時ですね。
スカダーはパソコンが苦手。
本作で彼と親しくなり、押しかけ助手になってしまう少年は、
自在にITを使いこなします。
こんな二人のコンビがなんともいい感じなのでした。

が、それにしてもこの犯人は、つまりサイコパス。
始めから人質を生きて返すつもりなどありません。
殺人を楽しめて、お金も手に入る、一挙両得ということで、味を占めていきます。
そして、麻薬の売人関係者の名簿を入手し、そこからターゲットを絞っているのです。
だから、警察への通報がなされない・・・。
恐い、恐い・・・。

最後に狙われた少女は赤いフードのついたコートを着ています。
まさにオオカミに狙われた赤ずきんちゃんなのでした。
ま、子供は殺されることはないだろうというお定まりが頭をよぎり、
少し安心でしたが。

過去の失敗に傷つきながらも、不屈の、強いおじさま。
リーアム・ニーソンのストーリーはやはり好きだなあ・・・。

 

<WOWOW視聴にて>

「誘拐の掟」

2014年/アメリカ/114分

監督:スコット・フランク

原作:ローレンス・ブロック「獣たちの墓」

出演:リーアム・ニーソン、ダン・スティーブンス、デビッド・ハーバー、ボイド・ホルブルック

 

サイコパス度★★★★☆

アクション度★★★★☆

満足度★★★★☆


黄色い涙

2022年01月22日 | 映画(か行)

お金はないが、夢だけはあった

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原作は、永島慎二さんの同名コミック。
実は1974年にテレビドラマ化されたことがあって、私、それをうっすら覚えているのです。
森本レオさんが出演していて、主題歌は小椋佳さんでした。
そんなこともあり、懐かしく思い本作を見て驚いた!! 
嵐の皆さんが出演していたとは!! 
それを知らずにこれを見ようとする人の方が珍しいのかも・・・。

 

舞台は1960年代、高度経済成長期の東京、阿佐ヶ谷。
まもなく東海道新幹線が開通し、東京オリンピックが開催されるというような頃です。
そんな時代の熱に反して、ただ黙々と売れない漫画を描く青年がいました。
そしてなぜか彼の6畳一間の部屋に転がり込んできた、同じくうだつの上がらない3名の青年。
彼らのひと夏の青春群像劇です。

 

流行には全く乗らない叙情漫画を描き続けるこの部屋の主が、二宮和也さん。

歌手を目指して自ら曲を作り、歌っているのが相葉雅紀さん。

画家を目指して油絵を描き続ける大野智さん。

小説家を目指し、なかなか進まない原稿用紙を前に苦悩する櫻井翔さん。

そしてこの4人の生活を応援するのが、米屋で仕事をしている勤労青年、松本潤さん。

 

彼らは自らの「芸術」を極めるため、もっと時間が欲しいと思う。
しかしとにかくお金がない。
質屋通い続きで、もう持って行く物もなくなってきた・・・。
しかしある仕事で少しまとまったお金を得た彼らは、
とりあえずこれを節約して使いながら、
ひと夏を思いっきり自分のやりたいことをしてすごそう、と相談がまとまります。
節約のために、自炊もする。
それまではすべて外食で、鍋も食器もなかったのです・・・。

 

それぞれに、絵を描き、歌を作り、構想を練り・・・、恋をして失恋もする。

単なるアイドル映画ではなくて、なかなか味のある作品だったと思います。
2007年作品、なるほど、みんな若いなあ・・・。
しかし、出演者がみなジャニーズなので、写真が入手できません!!

 

ちなみに、74年のテレビドラマ版の方を調べてみましたら、
出演者として森本レオさんの他に、下條アトムさん、岸部シローさんの名前がありました。
脚本は、本作と同じく市川森一さんです。

 

<WOWOW視聴にて>

「黄色い涙」

2007年/日本/128分

監督:犬童一心

脚本:市川森一

出演:二宮和也、相葉雅紀、大野智、櫻井翔、松本潤、香椎由宇、田畑智子、松原智恵子

 

昭和度★★★★★

ノスタルジー度★★★★★

満足度★★★★☆

 


僕を育ててくれたテンダー・バー

2022年01月21日 | 映画(は行)

不在の父と、いつもそばにいた叔父

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ピューリッツァー賞受賞ジャーナリストで作家のJ・R・モーリンガーが
2005年に発表した同名自叙伝の映画化です。

ニューヨーク州ロングアイランド。
J・R少年が母と共に実家に戻ってくるところから本作は始まります。

アメリカでは家を出た子供が実家に戻ってくるというのは、
日本よりも「負け犬」感が強いですね。
母はJ・Rが生まれてまもなく夫は家を出て行ってしまい、
シングルマザーとして頑張っていたのですが、
ついに家賃も滞納するようになり、実家に戻るしかなかった。
彼女はそのことをとても恥じているし、
両親(J・Rの祖父母)に愛されている実感もなかったので、
実家に戻ることは本当にどうしようもない最後の決断だったわけです。

でもその実家には、叔父や叔母、いとこたちもいてとても賑やか。
悪くはないけれど、ちょっとうるさすぎる・・・。
そんな中で、J・Rは、叔父・チャーリー(ベン・アフレック)の経営するバーで
多くの時を過ごしました。
叔父チャーリーと彼の友人でもあるバーの常連客の話を聞き、
バーにある多くの本を読んで、彼は少年~青年期を過ごします。

さて、J・R(タイ・シェリダン)は聡明で、奨学金を受けて大学の進学も果たします。
そして少年の頃に夢見た小説家になりたいと思う。
こんな彼の胸中にいつもあったのは彼の父親のこと。
父は声だけは良かったのでラジオのDJの仕事をしていて、
ほとんど会ったこともないのに、声だけは聴くことができました。
そして彼の名前は、その父の名を受け次いで「ジュニア」。
でも、実は父は、母を捨てたことでも分かるようにアル中のろくでなし・・・。
そのこともJ・Rは知っている。
だからこそ、父をどう捉えていいのか分からない。
そしてそれはどこか彼自身のアイデンティティをぐらつかせている・・・。

まあ本作は、そんな彼の自立への道のりなのです。

 

結局最後のある「事件」で、J・Rは一つの気づきを得るのです。
気づきというか、腑に落ちるという感じでしょうか。

父のことなんか関係ない。
自分はあの叔父のテンダー・バーで育てられたのだ、と。
このことは多分、誰か他の人から言われてもダメだったと思うのです。
ふと何気ない生活の中で、自分でストンと腑に落ちること。
そういうことってあると思うのですよね。
彼が納得するにはそういうことが必要だったのだと思います。
自分を考えるときに、実は「血」はあまり重要ではない。

J・Rが夢の中で、少年の自分に
「小説家になれていないじゃないか、くず男!」
と、小突かれるシーンがステキでした。

この家、祖父は大学を出ていて、叔父も頭は良かったけれどお金がなくて進学は断念。
でも叔父は独学で多くの本を読んで、いろいろなことを知っています。
母も本当は大学へ行きたかったけれど、やはりお金がなくて無理でした。
そしてJ・Rが奨学金を得てやっと大学に進むことができる。
貧しさの連鎖は今も変わらないですね・・・。
そこの所はもっといい制度があればいいのにと思います。

<Amazon prime videoにて>

「僕を育ててくれたテンダー・バー」

2021年/アメリカ/106分

監督:ジョージ・クルーニー

原作:J・R・モーリンガー

出演:ベン・アフレック、タイ・シェリダン、リリー・レーブ、クリストファー・ロイド

 

少年の成長度★★★★☆

時代性★★★★☆

満足度★★★★☆

 


「黒牢城」米澤穂信 

2022年01月20日 | 本(ミステリ)

祝!! 直木賞受賞

 

 

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史上初、4大ミステリランキング完全制覇!
第166回直木賞受作!!

本能寺の変より四年前、天正六年の冬。
織田信長に叛旗を翻して有岡城に立て籠った荒木村重は、
城内で起きる難事件に翻弄される。
動揺する人心を落ち着かせるため、
村重は、土牢の囚人にして織田方の智将・黒田官兵衛に謎を解くよう求めた。
事件の裏には何が潜むのか。
戦と推理の果てに村重は、官兵衛は何を企む。
デビュー20周年の集大成。
『満願』『王とサーカス』の著者が辿り着いた、ミステリの精髄と歴史小説の王道。

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先日、ちょうど本作を読み終えたところで、直木賞受賞のニュースが入りました。
2021年の超話題作。
最近単行本は、ほとんど図書館からの貸し出しを利用していますが、
この本はいつになったら順番が回ってくるのかも分からないので、
新年のお年玉購入でした。

米澤穂信さんとしては異色の歴史物、しかも私の大好きな一節、
黒田官兵衛が荒木村重に捕らえられ牢獄内にある時が舞台。
これはもう、読むしかありません。

 

織田信長に謀反し、毛利の援軍が来ることを期待して有岡城に立て籠もった荒木村重。
投降を勧めに来た黒田官兵衛を地下牢に押し込めてしまいます。

そんな中、城内で不可思議な事件が起こる。
村重は土牢の囚人・官兵衛のもとを訪れ、謎を解くよう求めます。

・・・というように、これはミステリ作品の形をとってはいるのですが、
そんなことは些細なことに思えるくらいに、しっかりとした歴史小説になっているのです。

 

意気盛んに籠城を始めた頃はまだ良かった。
けれど数ヶ月、1年・・・という時間の経過とともに、城内の人々の士気は下がっていきます。
特に、毛利の援軍は望めそうもないという認識が広まった頃からは・・・。

配下の者たちは、次第に怠惰になり、定められた規律も守られなくなってくる。
織田と通じる者がいるのかも、自分に謀反する者がいるのかも・・・、
村重は次第に疑心暗鬼に駆られます。
すべての判断を一人で背負うことの重圧、孤独。
こんなことを話す相手は官兵衛しかいない・・・。

 

一方官兵衛も、こんな所に押し込められてまで村重に尽くす義理などありませんから、
謎を解いても、素直な言葉では答を示しません。
謎めいたヒントを示すだけ。
そして彼は、この籠城の行き着く先を読んでいるようでもあります。
そして彼には、ある秘めた企みが・・・。

 

暗く湿った地下牢の格子の中と外で対峙する二人。
何やら鬼気迫る迫力があります。

すでにミステリを超えた人間ドラマ。
作家って、こんなこともできるのですねえ・・・。

 

私、ここはやはり、岡田准一さんと田中哲治さんを思い浮かべてしまいます。
大河ドラマファンなもので・・・。

 

「黒牢城」米澤穂信 角川書店

満足度★★★★★

 


最後の決闘裁判

2022年01月19日 | 映画(さ行)

正しい者には、神のご加護がある・・・?

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1386年、中世。
百年戦争さなかのフランス。
ジャンヌダルクが登場するよりまだ前のことですが、
フランス史上最後に行われた「決闘裁判」として事実に基づいている物語です。

決闘裁判というのは、二者の間で何かもめ事があったときに、
衆人環視のなか、その当人同士で決闘を行う。
正しいものには神のご加護があるはず、ということで
勝者は正義と栄光を得て、
敗者は罪人として死刑(というか、決闘で負けた時点ですでに死んでますが)。

さてそれで、ここでのもめ事とは。
騎士カルージュ(マット・デイモン)の妻マルグリット(ジョディ・カマー)が、
夫の旧友ル・グリ(アダム・ドライバー)に強姦されたという事件。
目撃者はナシ。
妻の話を聞いたカルージュの訴えに対し、ル・グリは無実を主張。
その決着は生死をかけた「決闘裁判」に委ねられることになります。

妻の潔白を晴らすために命がけで闘う騎士の物語。
と言えば単に美談ではありますが、実はそう簡単な話ではありません。

本作はまずその事件を3者の視点から、同じ出来事を順番に語っていきます。

まずは、カルージュ。
そして、ル・グリ。
二人は実際良き友はあったのです、以前までは。

カルージュは無骨そのものでプライドが高い。
しかし世渡り下手なために、損をすることが多く生活は豊かではない。

一方、ル・グリは世渡り上手で、女好き。
領主に気に入られて、カルージュが後を継ぐはずだった父の仕事を
ル・グリが後任になってしまった。
そりゃ恨まれますよね。
ただし、実務的に有能なのは確かのようでもあります。

こんな二人なので、同じ事柄に対しての思いはそれぞれ。
双方、自分の都合の良いように考える。
まあ、それは当然のことではありますが。

ところが、最後にマルグリットの視点で語るところで、様相は一変します。
カルージュは見栄っ張りで、妻その人よりも外聞が大事であるようです。
そして、ル・グリは常にモテモテなので、
女性に拒否されるということを考えたこともない。
すなわち、カルージュもル・グリも、
本当のマルグリットを見ようとしないという点では同じ穴の狢。

その底辺には、当時「女性の権利」などというものはなかった、ということがあります。
この裁判も、正確には「カルージュの財産(妻)が傷つけられた」
ということになります。

そして、これまで5年夫婦として暮してきて、夫婦には子供ができなかった。
しかしなんと、このたびの強姦で、彼女は妊娠してしまったのです。
当時、女性が絶頂に達したときに「妊娠」すると思われていたのです。
だから、妊娠したからには絶頂に達したのだろう。
すなわち、同意の上のことで、強姦ではない・・・と考える者多数。
ル・グリは、マルグリットは絶頂に達していたと、勝手に思い込んでいます。

そしてさらに、もしこの決闘裁判で夫カルージュが負ければ、
マルグリットは「偽証」していたということになり、
その罪で火あぶりにされるというのです。
そしてこのことをマルグリットはカルージュから聞かされていませんでした。

なんと身勝手な男の論理。
なんと女が生きるのに不自由なこの時代、この世界。

 

本作はマルグリットが語り始めることによって、非常に大きな問題提示をしたわけです。
確かにこれは、現代にも未だに通じるストーリーなのでした。

 

それにしてもこの最後の決闘シーン、実に迫力があります。
騎馬で、長い大きな槍を構えての一騎打ち。
最後には馬も傷つき、まさに肉弾戦となっていきますが、恐い、恐い。
どうでもいいから早く終わらせて、と思ってしまいました。
しかしこれはマルグリットの運命がかかっていることもあって、
まさに、息をのむ決闘シーン。

堪能しました。
内容も、映像も、実に圧倒される作品です。

<WOWOW視聴にて>

「最後の決闘裁判」

2021年/アメリカ/153分

監督:リドリー・スコット

脚本:ベン・アフレック、マット・デイモン、ニコール・ホロフセナー

出演:マット・デイモン、アダム・ドライバー、ジョディ・カマー、ベン・アフレック

 

決闘の迫力度★★★★★

女性の生きにくさ★★★★★

満足度★★★★★

 


ザ・スイッチ

2022年01月17日 | 映画(さ行)

バービー殺人鬼

* * * * * * * * * * * *

男女入れ替わりの物語・・・というのはよくあるのですが、
これはなんと女子高生と殺人鬼が入れ替わるというとんでもないストーリー。

家でも学校でも、気弱でさえない女子高生ミリー(キャスリン・ニュートン)。
ある夜、無人のグランドで母親の迎えを待っていた彼女に、
背後から指名手配中の殺人鬼・ブッチャー(ビンス・ボーン)が忍び寄ります。
鳴り響く雷鳴と共に、ブッチャーに「伝説の短剣」を突き立てられたミリーですが、
その時に、二人の体が入れ替わってしまった!
バービー人形みたいな美人の凶悪殺人鬼と、
気弱な乙女の大男が誕生。

24時間以内に入れ替わりを解かなければ、
二度と元の体に戻れないということが分かってきます。
ミリーはさらに殺人を続けるブッチャーを相手に、
自分の体を取り戻そうとしますが・・・。

ブッチャーは筋骨たくましい大男。
まさに無敵だったわけですが、入れ替わったミリーはか細い女の子です。
本物のミリーはいつも地味な服装なのだけれど、
ブッチャーの好みは派手で、しかもセンスは悪くない。
リカちゃんが本場バービーになっちゃった感じです。

とにかく、殺人鬼であることに変わりはないけれど、か弱い体なのはいかにも不利。
若干苦戦します。

一方、ブッチャーの体のミリーはなんとか親友2名に状況を説明し、
この大男の厳つい人物がミリーであることを信じてもらうことに成功。
友情はありがたいですね・・・。
そして普段は内気で消極的な彼女が、エネルギーに満ちた体を持つことによって、
何やら気持ちの方も強く前向きになっていく・・・。

そんなところがチョッピリ興味深い、トンデモ作品ではありました。

 

<WOWOW視聴にて>

「ザ・スイッチ」

2020年/アメリカ/102分

監督:クリストファー・ランドン

出演:ビンス・ボーン、キャスリン・ニュートン、アラン・ラック、
   ケイティ・フィナーラン、セレステ・オコナー

 

恐怖度★★★☆☆

コミカル度★★★☆☆

満足度★★★☆☆


鵞鳥湖の夜

2022年01月16日 | 映画(か行)

幻想的でもある、スラムの街で

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中国・フランス合作ということで、フレンチ風中華。
これがいいんだなあ。

 

中国南部、再開発から取り残された鵞鳥(ガチョウ)湖周辺。
ギャングたちの縄張り争いが激化しています。

刑務所を出て古巣のバイク窃盗団に戻ったチョウ(フー・ゴー)。
しかし、すぐに対立組織との争いに巻き込まれ、誤って警官を射殺してしまいます。
チョウはすぐに報奨金30万元付きで指名手配されます。
彼は彼にかけられた報奨金を妻子に残したいと思い、妻に会おうとするのですが、
警官と対抗組織が付け狙っているために、思うように動けません。

そんな時、見知らぬ女アイアイ(グイ・ルンメイ)が妻の代理として現れます。
鵞鳥湖の水辺で娼婦として生きるアイアイ。
彼女は自分がチョウのことを警察に通報し、
得た報奨金を妻に渡すと言うのですが・・・。

本作のロケ地となったのは、新型コロナウイルス発祥の地となった武漢だそうです・・・。

この、密集してごちゃごちゃした町の様子がなんとも言えません。
ほとんどがほの暗い夜のシーン。
迷路のような狭い路地、密集した集合住宅、ぼんやりともる灯り・・・。
雨に濡れた路面にあやしく反射する明り・・・。

夜祭りのダンスシーンがまたなんともいえないムードがある。
うるさすぎないんですね。
どこか現実感が薄れて、まるで幻想のようでもある。
これが日中なら、ただごみごみして薄汚い街なのでしょうけれど。

ちょっと阿部寛さんに似た感じのフー・ゴー、
ベリーショートがステキなグイ・ルンメイ、
素晴らしい中国ノワールを描き出してくれました。

最後のシーンの麺がヤケにおいしそうだったなあ・・・。
はたして、アイアイは信じるに足る女なのかどうか、
ぜひ、ご覧下さい。

 

<WOWOW視聴にて>

「鵞鳥湖の夜」

2019年/中国・フランス/111分

監督・脚本:ディアオ・イーナン

出演:フー・ゴー、グイ・ルンメイ、リャオ・ファン、レジーナ・ワン

ノワール度★★★★☆

満足度★★★★☆

 


「愛なき世界 上・下」三浦しをん

2022年01月15日 | 本(その他)

脳内ドラマが渦巻く

 

 

 

 

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恋のライバルが人間だとは限らない!
洋食屋の青年・藤丸が慕うのは〝植物〟の研究に一途な大学院生・本村さん。
殺し屋のごとき風貌の教授やイモを愛する老教授、
サボテンを栽培しまくる「緑の手」をもつ同級生など、
個性の強い大学の仲間たちがひしめき合い、植物と人間たちが豊かに交差する――
本村さんに恋をして、どんどん植物の世界に分け入る藤丸青年。
小さな生きものたちの姿に、人間の心の不思議もあふれ出し……
風変りな理系の人々とお料理男子が紡ぐ、美味しくて温かな青春小説。

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いつもながら三浦しをんさんの小説は、
冒頭からぎゅっと心をつかまれて物語に引き込まれてしまいます。
本作、「愛なき世界」という殺伐とした題名とは裏腹に、
実に愛に満ちた物語なのでした!!

洋食屋の見習い料理人・藤丸は、
デリバリーのため、すぐ近くの国立T大学の植物学研究室に出入りするようになります。
そしてそこの大学院生・本村に恋してしまう。

親しく話をするようになって少し経った時に、
藤丸は本村に告白するのですが、ことわられてしまうのです。
彼女の愛情は「植物」に向けられているので、人と恋はできない、と。

とはいえ、2人の関係は親しい知り合い、くらいのところで続いていきます。
藤丸は、ひたすら「シロイヌナズナ」を育て、研究に励む本村の応援団です。
気さくな藤丸は研究室の他のメンバーとも話をし、親しくなっていきます。
研究内容は全く理解できずとも、そのことをリスペクトし、
興味を持って話を聞こうとする、さっぱりとしたイイ奴なのです。
仕事も真面目で熱心だし。
オススメなのになあ・・・。

 

まあそんなわけで、本作、男女の恋愛はなくとも、友人愛、隣人愛、研究愛、
そして植物愛に満ち満ちていて、
なんだかほんのり幸せな感じのする作品なのであります。

三浦しをんさんは、本村の研究内容にかなり深く踏み込んでいまして、
その描写はかなり学習しないとできるものではありません。
正直私は読んでも、藤丸くんと同程度の理解しかできなかったのですが、
さすがT大の大学院ともなれば、
これが分からなければしょうがないというレベルなわけですね・・・。

 

さて、私は藤丸くんの「~ッス」という口調や、
本村に対して丁寧言葉を使うあたりで、
どうしても杉野遥亮さんを思い出してしまい・・・。
となれば、本村は杉咲花さん? 
いや、研究に夢中で恋している場合じゃないという感じは、本田翼さんか。
いやいや、私的好みで言えば、ちょっとほんわかさを入れて新垣結衣さんではどうか・・・
などと1人で脳内ドラマを繰り広げてしまいました。

いつかテレビドラマ化映画化になって欲しいです。
あ、松田教授は、松田つながりで松田龍平さんね。

 

「愛なき世界 上・下」三浦しをん 中公文庫 

満足度★★★★.5


ダンサー・イン・ザ・ダーク

2022年01月14日 | 映画(た行)

つ、つらすぎる・・・

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本作は、以前見ていて、とても印象深かったものです。
最近デジタルマスター版で劇場公開もしていたのですが、
見そびれてしまい、この度再視聴。

アイスランドの歌手・ビョークが主演、ミュージカル風の作りということで、かなり話題になった作品です。

アメリカの片田舎。
チェコ移民のセルマ(ビョーク)は、息子ジーンと二人暮らし。
つつましい暮らしながら、隣人たちの友情に包まれ、
生きがいのミュージカルを楽しみ、まずは平穏に暮していたのでした。
しかし、セルマは遺伝性の病で視力を失いつつあり、
息子ジーンも手術を受けない限り同じ運命をたどることになるのです。
セルマの視力も、もうほとんど全盲になる寸前。

セルマがアメリカに渡ってきたのは、息子の目の手術を受けるためで、
彼女は爪に火を灯すようにしてお金を貯めていたのでした。

そしてそんな時に、“事件”が起きます。

詳しいストーリーは覚えていなかったのですが、
途中まで見てくっきりと思い出しました。
そして前に見たときに「理不尽に過酷」な物語だと思ったことも。
まさしく、理不尽に過酷なのです。

移民のセルマですが、まずまずは良き隣人、友人たちに護られています。
勤め先の工場では彼女の目がよく見えないことを気遣う友人がいるし、
セルマのことを好きそうな男性もいる。
ミュージカルの教室でも彼女の歌やダンスを買ってくれる人がいる。
隣人は警察官で、息子の学校への送り向かいをし、放課後預かってくれたりもする。

ところが、良き隣人にも自分の都合というものはあって、
セルマがお金を貯めていることを知ってしまい・・・。

ほとんど目が見えないので線路を伝って職場に向かい、家に帰るセルマ。
そんな彼女に、これでもか、これでもかというように不幸が覆い被さってくるのです。

やりきれない不安、疲れ、苦しさ・・・
そのようなことを紛らわそうとするように彼女は空想のミュージカルに浸ります。
彼女を癒すのは彼女の脳内ミュージカルのみ。

辛い夜勤の仕事中。
法廷の場。
そして最後のステージは・・・。

 

工場の様々な騒音が次第にリズムを刻み始めて、ミュージカルシーンに入っていく、
そんな様子がとても印象的なのでした。
でも、よくあるミュージカルの花のようなメロディとは違って、
それは、つぶやきのようにもの悲しい・・・。

ストーリーをしっかり覚えていたら、見なかったかも、なんて思います。
あまりにも辛い話は、見るのにも覚悟がいるので。

 

<映画.comにて>

「ダンサー・イン・ザ・ダーク」

2000年/デンマーク/140分

監督:ラース・フォン・トリアー

出演:ビョーク、カトリーヌ・ドヌーブ、デビッド・モーマ、ピーター・ストーメア

過酷度★★★★★

ミュージカル度★★★☆☆

満足度★★★★☆(いや、苦しすぎて「満足」ではないけれど、作品のできという意味では・・・)