映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「歌うクジラ 上・下」

2011年03月31日 | 本(SF・ファンタジー)
宇宙の深淵で、老人は何を思っていたのか

          * * * * * * * *

これは先に電子書籍iPad版で販売され、話題になった作品。
私はハードを持っていませんので、このたび図書で読みました。
舞台は100年ほど先の日本。
そこでは凄まじい世界が繰り広げられています。

まず、「歌うクジラ」とは。
不老不死をもたらす遺伝子をさしています。
グレゴリオ聖歌の中の一つの旋律を繰り返しうたう
1400歳以上と思われるクジラが発見され、
その研究の中から不老不死の遺伝子が特定された。
大変すばらしいことのように思えますが、
しかし、この不老不死遺伝子の特典を享受できるのはほんの一握りの人々。
世界はこの一握りの人々を頂点とし、凄まじい階級社会が構築されていく。


少年アキラは、その最底辺、
性犯罪者の隔離施設のある新出島で生まれ育ちました。
彼は亡き父親の意志に従い、
ある秘密情報をヨシマツという最上層の権力者に届けるために旅に出ます。
この格差社会では、それぞれの階級はそれぞれの地域に隔絶されています。
裕福な状況を知らなければ不満も出ないだろうということなんですね。
だからアキラはこの島を今まで出たことも無かった。

しかし、なんというおぞましい世界でしょう。
上層の人たちと比べて下層階級の人たちの命のなんと軽いこと。
相当にえぐいシーンや、読みづらい部分
(あえて、正しい助詞を使わずに話す人々が登場するためです)があり、
実のところ読み始めて少ししてから後悔しました。
けれども次第にその圧倒的な筆力で描かれるこの世界から
目を離すことができなくなってくるのです。
幾度も命の危険にさらされながら、ようやくたどり着いたその最上層とは、
決してこの世の楽園ではなく・・・。


この世界は、現代日本が抱えるひずみがよりデフォルメされた形で投影されているのですね。
不老不死=幸せとは言えない。
それは少し考えれば解ることではありますが、
生きる意味を見失い精神は荒廃し・・・。
既に最上層が世界を動かす機能すら保てていない。
そんな中で少年アキラの存在が、
実にすがすがしく生命力に満ちて感じらます。


地球を見渡す宇宙の深淵に浮かび、老人は何を思っていたのか。
自らが作り出した失敗作の世界を破壊することを
実は願っていたのかも。
その姿は、深海でグレゴリア聖歌を繰り返し歌いつづけたクジラにも似て・・・。

命の秘密は秘密のままにしておきたいですね・・・。

歌うクジラ 上
村上 龍
講談社

歌うクジラ 下
村上 龍
講談社


「歌うクジラ 上・下」
満足度★★★★☆


華麗なる相続人

2011年03月30日 | 映画(か行)
製薬会社を取り巻く華麗なる陰謀

          * * * * * * * *

オードリー・ヘップバーン主演のサスペンス。
この作品、最近見た「ロビンとマリアン」の後の彼女の出演作で、
えーと50歳ですね。
確かに、50歳。
でもやっぱりさすがにきれいです。


世界的規模の製薬会社社長サム・ロフが事故死。
その娘エリザベスが大株主を受け継ぐこととなる。
他の株主たちもおおかたこの血族で、
それぞれにその財産を手にしたいと狙っている。
彼らとしては株を公開し現金を手に入れたいところ。
しかし、エリザベスは亡き父がこの会社を創立した頃の純粋な夢や志を知り、
会社経営を引き継ぐと宣言。
そんなおり、父の死は事故ではなく殺人だったこと、
会社の機密が何物かに盗まれていたことなどが解ってきます。
やがて彼女自身にも迫る危機。
さあ、裏切り者は彼らの中にいる。
それは一体誰・・・?


こういうのは、一番怪しくなさそうなのが真犯人と決まっていますが・・・
やはり・・・。
原作がシドニー・シェルダン。
監督がテレンス・ヤング。
音楽がエンリオ・モリコーネ。
そして、出演がオードリー・ヘップバーンを始めとする豪華キャスト、
ということで、当時たぶん鳴り物入りで公開されたのではないでしょうか。
でも、今見るとこれは、
まあ、普通のサスペンスドラマ・・・。
ただ、エリザベスが父親の若い頃過ごした街を訪ね、
彼の初心に思いを馳せるシーンがあったところは秀逸でした。
単に、女でも会社経営くらいできるのよ・・・と、息巻くのではなく、
父の意志を継ごうとしたところがいい。
製薬会社はお金を儲ける手段ではなくて、人々を救うためのものだ、と。


そうそう、最近の私のこだわり、
オマー・シャリフも株主の一人として出演しています。
彼は妻と3人の娘がいながら、愛人との間にも3人の息子がいて、
愛人に「お金をよこさなければ奥さんにバラす」と脅かされているという、情けない役。
3人ずつの息子・娘が皆同じような年頃で
似たような名前になっているというのが何とも愉快です。

華麗なる相続人 [DVD]
ベン・ギャザラ,ジェームズ・メイソン,オードリー・ヘプバーン,オマー・シャリフ,ロミー・シュナイダー
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン


「華麗なる相続人」
1979年/アメリカ/117分
監督:テレンス・ヤング
出演:オードリー・ヘップバーン、ジェームズ・メイソン、ロミー・シュナイダー、ベン・ギャザラ、オマー・シャリフ

ぼくのエリ 200歳の少女

2011年03月29日 | 映画(は行)
端整な映像と静謐な冬の世界、そしてヴァンパイアの悲哀



            * * * * * * * *

冬のスウェーデン、ストックホルム。
いかにも冷え冷えとした舞台です。
12歳オスカーは、学校ではいじめられっ子。
家では両親が離婚し、父親とはたまにしか会えない。
母親も仕事で忙しい。
そんな孤独な少年が、隣に越してきた女の子に興味を引かれます。
エリというその女の子は、
父親らしき人と暮らしているようなのだけれど、夜にしか姿をあらわさない。
周囲に受け入れられず孤独な二人が、
夜の公園で時々あって話をする内に、次第に心惹かれてゆく。
けれど、エリは言います。

「私が女の子でなくても、私のことを好き?」

その言葉の意味は次第にわかってくるのですが、
つまり彼女は、200年を生きているヴァンパイアなのでした。



ちょっとホラーとは思えない端整な映像と静謐な冬の世界。
けれど人の血をすすらなければ生きていけないヴァンパイアですから、
やはり残酷な殺害シーン、血まみれシーンはあるのです。
それでもなおかつ、日の光に、神に、
背を向け生き続けなければならないヴァンパイアの悲哀がじんわりこみ上げます。
この感じ、萩尾望都さんの『ポーの一族』ですね。
というか、『ポーの一族』にはやはり及ばないとは思いますが、
「トワイライト」のシリーズよりはずっと繊細な感情がうまく表されていると思います。



ラストシーンで私はようやく、
エリとあの父親のように見えていた中年男の関係を理解しました。
つまりは何十年後かのオスカーとエリの姿なのか・・・。


それにしても余計なことと思いつつ、
ついつまらぬ想像をしてしまいます。
エリはどのくらいの頻度で「食事」をするのでしょう。
みたところ、数日で一人くらい襲わなければ持たないみたいなんですよ。
こんなに同一地域で変な殺人事件が続くのでは、
警戒も厳しくなるでしょうし、
狩りは非常に難しくなりそうだ・・・。
いかに拠点を転々と変えようとも・・・。
しかも襲い方がいかにもずさん。
よく今まで無事でいたなあ・・・。
方針を変えて輸血用の血液を買ったが早いのでは?
・・・などと、これも下らぬ想像ですね。

ぼくのエリ 200歳の少女 [DVD]
カーレ・ヘーデブラント,リーナ・レアンデション
アミューズソフトエンタテインメント


「ぼくのエリ 200歳の少女」
2008年/スウェーデン/115分
監督:トーマス・アルフレッドソン
出演:カーレ・ヘーデブラント、リーナ・レアンデション、ペール・ラグナル、ヘンリック・ダール

アリゾナ・ドリーム

2011年03月27日 | 映画(あ行)
ビター・チョコレートのような・・・

             * * * * * * * *

ジョニー・デップが見たくて、選んだ作品。
あれれ? 
ところで、この監督はエミール・クストリッツァ、
ユーゴスラビア出身の監督さんで、
なんと同監督による「黒猫・白猫」を先日見たばかりではありませんか! 
しかも、私的には無残な結果の・・・。
ちょいと不安がよぎります・・・。
時々、こういう変な偶然が起こります。
そうです。
世の中はすべてつながっている。
梨木香歩さん的解釈。


この作品の冒頭は何故かアラスカ。
アリゾナのはずなのに・・・と、まずわき出る疑問。
イヌイットの男が魚のオヒョウの胃袋で息子に風船を作ります。
息子が飛ばしたその風船は、
遠くニューヨークの青年アクセルの元まで飛んで行く。
おお、ここで主人公につながるのか。
実はアクセルはアラスカでオヒョウを釣るのが夢。
大人になるにつれて、目が片側に寄って行くというその不思議な魚が、
彼の見果てぬ夢を誘う。


そのアクセルは、叔父の結婚式のためにアリゾナへ向かいます。
叔父は自動車販売の仕事をしていて、アクセルに後を継いでもらいたいと思っている。
けれどアクセルにその気は全くない。
夫を射殺した過去を持つ未亡人エレインと
義理の娘で自殺願望のあるグレースの家に転がり込みます。
始めは夫人の色香にふらっと来て、
そのエキセントリックな言動に舞い上がったアクセルですが、
次第に娘グレースの方に心惹かれていき・・・。
愛情なのか、憎悪なのか、
不思議な緊張感のある血のつながらない母娘。
そしてこの二人に翻弄される青年。
20年前の若きジョニー・デップが、
ナイーブでちょっぴりさめたこの青年役を好演しています。


自動車販売に夢をかける男。
空を飛ぶ夢に魅入られる女。
亀になりたいと願う女。
映画スターになりたい男。
この作中人物は皆それぞれに夢を持っているわけですが、
それはすなわち現在の自分自身に満足していないということなんですよね。
アメリカン・ドリームなんて、もうない。
そう気づくことが大人になることだとすれば、ずいぶん苦いストーリー。
そうです、これはビターなチョコレートのようなファンタジー。
何だか印象に残る作品です。
とりあえずは、この監督作品すべてに拒否感を持たなくて済みそうなので、よかった・・・。


ジョニー・デップが「シザー・ハンズ」で注目を浴びた後、
「ギルバート・グレイプ」などとほぼ同時期の作品ですね。
はい。
ステキです。
奇人変人でない、ナイーブな青年役のジョニー・デップ。

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デヴィッド・アトキンス
ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン


「アリゾナ・ドリーム」
1992年/フランス/140分
監督:エミール・クストリッツァ
出演:ジョニー・デップ、フェイ・ダナウェイ、リリ・テイラー、ビンセント・ギャロ、ジェリー・ルイス、ポーリーナ・ポリスコフ

クレアモントホテル

2011年03月26日 | 映画(か行)
人と人との心の結びつき



              * * * * * * * *

クレアモントホテルはロンドンの長期滞在型のホテルです。
ある日、一人の上品そうな老婦人が、
荷物をたくさん持ってこのホテルにやって来ました。
ホテルは思ったよりもボロで部屋も狭くてちょっとがっかり。
でも、彼女は当面ここで過ごすことにします。
このホテルに滞在しているのは、同じくお年寄りばかりで、
ディナーの時には彼女パルフリーに皆興味津々。
雰囲気はホテルというよりも老人ホームですね。
皆の関心は互いにどんな人が訪ねてくるかということ。
彼女もさっそく孫息子に電話をするのですが、
留守番電話になっていて、その後も連絡もよこさないし訪ねても来ない。
そんなある日、彼女は小説家志望のルードという青年と知り合います。
彼女が道で転んでしまったときに助けてくれたのです。
お礼にディナーに呼んだのですが、
ホテルの皆はこれが彼女の孫だと勘違い。
彼女はそれを否定することができなくなってしまい、
ルードにこのまま孫のフリをしてもらうよう頼むのです。



さて、このパルフリー婦人がどうして一人でこんな所にやって来たのか。
まずそれが一番の秘密。
彼女がこんなことを言うシーンがあります。

「私はこれまで誰かの娘として、妻として、母として生きてきた。
今度は私自身になって自立して暮らしたい。」

彼女は孫に連絡しようとしましたが、自分の娘には全く連絡を取りません。
この母娘の関係があまりうまくいっていないことを匂わせますね。
夫は若い頃に先立っており、必死に今まで生きてきた。
ふと、自分の人生を見つめ直したくなったのかもしれません。
一方、ルード青年は母親とうまくいっていない。
彼もまた孤独な毎日を過ごしていたのです。
いつしか二人は互いのことを大切に思う友人関係を築きます。

心と心が結びつくのには、年は関係ないですね。
次第にルードの孤独も癒されていきます。
また、パルフリー婦人にはルードに恋人ができても、
二人を邪魔しない分別があります。
若い恋人同士に昔の自分と夫の幸せな時を重ね合わせるパルフリー。
決して返らない時を思うと切なくなります。
老いるということは、自分の大切な物を少しずつ失っていくことなんだなあ・・・。
ルードを孫息子と思い込むホテルの人々のからさわぎをアクセントに、
生きること、老いることの意味をしっとりと描いた良作。


老人の出演者が多いためか、
この青年ルードの魅力が一層引き立ち、つい見とれてしまいました。
ルパート・フレンド。
ああ、「縞模様のパジャマの少年」で、ドイツ軍将校の役をしていた・・・。
あのときもステキと思ったのでした。
もろに私の好みかも・・・。

この作品2005年のもの? 
ずいぶん日本公開までに間が開いています。
というよりも、札幌にたどり着くまでに時間がかかったのか。
いずれにしても、公開されてラッキーでした。
こういう作品公開を手がけていただいている方々に感謝。

2005年/アメリカ・イギリス/108分
監督:ダン・アイアランド
原作:エリザベス・テイラー
出演:ジョーン・プロウライト、ルパート・フレンド、ゾーイ・タッパー、アンナ・マッッセイ


白猫・黒猫

2011年03月25日 | 映画(さ行)
猥雑で、生活感あふれ、そしてエネルギッシュ

            * * * * * * * *

ユーゴスラビアの田舎町。
滅多に見ない舞台です。
ここの登場人物たちはジプシーなんですね。
根が陽性でイカサマで音楽やダンスが大好き、
そしてたくましい生活力。
そういう雰囲気に満ちていました。

縦軸は若者ザーレとその恋人イダの恋の顛末。
ザーレの父マトゥコは一攫千金の夢を見ており、
新興ヤクザのダダンに列車強奪の計画を持ちかける。
しかしその計画はあえなく失敗。
マトゥコは息子ザーレとダダンの妹アフロディタの結婚を承諾させられてしまう。
そのアフロディタも、押しつけられた結婚なんてまっぴらと思っており・・・。
恋模様とヤクザ的義理人情模様がコミカルに描かれています。
その町の背景は、
いつでもその辺をアヒルや豚、山羊が歩き回っていてのどかきわまりない。
そんなところでお酒、麻薬、ダンス・・・、
あげくは銃も撃ち放題。
何とも猥雑で、生活感あふれ、そしてエネルギッシュ。


さてしかし・・・。
う~む、そもそも何でこの作品を選んでしまったのだったか。
この題名にひかれたせいもありますね。
確かに作品中のドタバタな出来事を黒猫・白猫があきれて見守っておりました。
しかし、私はジャンルをいとわず映画を見ているつもりでも、
何となく見ていないジャンルがあったんだなあ、と気づきました。
それがこの手のコメディというよりはドタバタ・・・。
面白いといえば面白いのですが、
何だか2時間損した・・・という気持ちの方が強い。

惨敗です。(T_T)

黒猫・白猫 スペシャル・エディション [DVD]
バイラム・セヴェルジャン,スルジャン・トドロヴィッチ,ブランカ・カティチ
キングレコード


「黒猫・白猫」
1998年/フランス・ドイツ・ユーゴスラビア
監督:エミール・クストリッツァ
出演:バイラム・セヴェルジャン、スルジャン・トロヴィッチ、ブランカ・カティク、フロリアン・アジニ

手をつないで

2011年03月24日 | インターバル
手をつないで・・・



               * * * * * * * *

3月11日。
我が札幌では、めまいのような不気味な揺れを感じました。
ニュージーランド、クライストチャーチでの災害があった後だったので、
怖さも感じましたが、
そのときに東北や関東地方で大変なことが起こりつつあるとはつゆ知らず・・・。


町が波に飲み込まれる悪夢のような映像がテレビで流れました。
家を失い、家族や友人を亡くした人たちの語る言葉に涙が流れました。
今もなお、電気が通じず寒さに震えている避難所の方々が大勢いらっしゃるのに、
何もできない自分が歯がゆく思われます。
まずは一日も早いライフラインの復旧を祈っています。
そうして、皆様が安心安全な“普通の”生活を取り戻せますように・・・。

さて私、この間、なにやら妙に気持ちがふさぎ意欲のない日がありました。
ほんの半日ほどのことでしたが、
人がこの度の災害を語る言葉を耳にするのも厭わしいという、
私には珍しい心境・・・。
自分が被災したわけでもないのに、この落ち込み様はなんなのだろうと思ったのですが。
ちょうど、その翌日でした。
新聞に精神科医、香山リカさんのコラムが載っていました。


まずは「私は、大丈夫」と自分に声をかけ、
安心させてあげて欲しいというのです。
私たちはニュース映像で、かなりリアルな災害の『疑似体験』をしているのです。
だから被災地にいる人にも匹敵するような心のダメージを受け、
トラウマが発生することもあり得るのだと。
眠れない、不安で胸がザワザワする、
気持ちが落ち込んで無気力になる、
人と話していてもやたらとイライラする・・・。
これらは既に心が深刻な傷を受けていることを意味する。
私の症状はまさにそれだったと思うのです。

実際の被災者や懸命な復旧活動をしている人のことを考えると、
とても自分は安全だ、なんて思えない、申し訳ない・・・、
そういう気持ちはわかるけれども、
でもあえて、まずは自分で自分を守ること。
そして力を蓄えて、「あなたの力が必要」といわれるその日に備えましょう、
と彼女は結んでいます。

とてもいい言葉でした。
やたらと悲観的になるのではなく、
ある程度冷静に自分の生活を守り、続けること。
それも大事です。
そもそもこの札幌で、何でカップメンやトイレットペーパーなんかを買いあさるのか、
全く意味がわからない。
皆さん、平常心を取り戻しましょう。


今の私にできるのは多少義援金に協力するくらいなのですが、
たとえば物流が遮断されているため、
北海道に荷物が入りにくくなっています。
でも、その不自由は被災地にいる方から見ればほんの些細なこと。
それよりはやはり被災地への救援物資の輸送を急いで欲しいですよね。
原発の事故処理に当たる人、
瓦礫の山で救援活動をする人、
道路の復旧工事をする人。
救援物資を運ぶ人。
医療に携わる人。
それぞれの人がそれぞれの立場で懸命にがんばっています。
そして私たち一人一人がいつもの仕事をすることが
私たち皆の生活を維持することにつながります。
皆で手をつないで、痛みを分け合って、がんばっていきましょう。


避難所の子どもたちの笑顔の写真に救われる思いがします。
子どもたちの笑顔は私たちにとって最高の宝ですね!



わんこ2

2011年03月23日 | 工房『たんぽぽ』
やっと、コーギー

            * * * * * * * *



まず先に、それぞれ出来上がったパーツです。
これをつなぎ合わせて、毛の色を植え付けていくと・・・



コーギー犬です。
なにしろ、始めからこれが作りたかったんです。


前から


後ろから

今までの試作品がかなりいい練習になりました。
いきなりこれを作ろうと思ったら、やはり無理だったろうと思います。

今回もキットを使いましたが・・・・
正直、キットの見本よりもホンモノに近いと思います。
やっぱり、わが家にいたのでイメージがはっきりしている。
模様の入り方などは我が家の亡き愛犬と同じにしました。
これでちょっぴり気をよくして、
また違うポーズのものに挑戦してみようかなあ・・・。


「きみはポラリス」 三浦しをん 

2011年03月22日 | 本(恋愛)
北極星が輝くところ

きみはポラリス (新潮文庫)
三浦 しをん
新潮社


               * * * * * * * *

三浦しをんさんの恋愛短編集。
人が人を好きになるとはどういうことなのか。
様々な人を思う気持ちの形がこの本に凝縮されています。
私が好きだったのは・・・


「森を歩く」
同棲中の"うはね"と"捨松"。
(なんてユニークなネーミング!)
捨松は風来坊で、ふらりと何日もいなくなったと思えばまたふらりと戻ってくる。
そんな彼が婚姻届けを「これ、書いて出しといて」と差し出して、
また消えてしまったりする。
冗談じゃない。
こんな何をやっているかも解らないヤツと結婚なんかするもんか。
実はうはねは、彼が麻薬の売人か何かではないかと疑っている。
ある日、誰かの電話を受けてまたふらりと出ていってしまった捨松の後を、
うはねは尾行するのです。
すると思いがけず電車はどんどん田舎の方へ向かい、
無人駅を降りてからは山に向かって歩き始める。
・・・さて、彼の目的は?
長く一緒に住んでいながら、相手の職業もよくわかっていなかった、うはね。
でもこの冒険で「でも、まあいいか。」とうはねは思うのです。
「この先どうなるかなんてだれにもわからないんだから、
捨松と行けるところまでは一緒に、
道もない森のなかを進んでみるのもいいだろう。」
ある人が大事にしていることを共感できること。
結婚という共同生活ではそれが一番大事なことかもしれません。


「優雅な生活」
こちらも同棲中の二人。
さよりと俊明。
さよりは職場仲間に影響され、玄米食やヨガなど「ロハス的」な生活を目指したいと思う。
俊明は全く乗り気ではなかったのですが、
ある日感情が爆発したサヨリの言葉に考えを改め、
以後は彼の方が積極的にロハス生活に取り組んでいく。
それがまた半端ではない。
暖房なし。
朝は乾布摩擦。
肉類は食べず、無農薬野菜に無添加調味料・・・。
あまりにも極端なので嫌になってきたさよりだけれど、
自分からいい出したことなので止めてとも言い出せず・・・。
これは別にロハス生活の勧めでも、それはダメという話しでもないのです。
ただ二人で共に暮らし、
毎日が生活の中に埋没していくことはちっとも悪いことでも怖いことでもない、
という気づきの物語なのですね。


この二作とも、男性キャラがすごくいいです。
三浦しをん作品には少女漫画に登場しそうな男子像が多くあるんですよね。
そういうツボを押さえているので、私は実に楽しく読ませていただいています。
ところで、こういう男子像を男性が見てどうなのかとは少し気になるところ。
「こんな奴、いるわけねえよ」なのか、
「うん、あるある、そういうこと・・・」なのか、
是非聞いてみたいところです。
よく少年漫画のオンナノコ像にも、
あまりにも男性から見ての理想像というのが見え見えのことがありますよねえ・・・。
それから、以前別のアンソロジーの中に収録されていた
「春太の毎日」がここにも収録されていますが、
これもやはりいい。


それから冒頭「永遠に完成しない二通の手紙」と
巻末「永遠につづく手紙の最初の一文」は
同じ登場人物、岡田と寺島のストーリーで、この配置もオシャレ。
いやはや、「恋愛短編集」の始めと終わりがこれですかい。
いえ。
別に意義はありませんが。


さてところでこの本の表題「きみはポラリス」という肝心の短編がないじゃありませんか。
このことは解説の中村うさぎさんもふれていますが、
「冬の一等星」という作品の中に、その秘密が隠されています。
ある少女が車の中で寝込んでいるときに、
それと知らずに車を盗んでしまった青年がいた。
二人は不思議な共感に結ばれて、しばらくそのまま同行するのですが・・・・・・・・。
八歳のそのときの経験が胸の中で一等星のように輝き続けている。
そんな「私」の物語。
はい、これはとてもいい作品です。

「きみはポラリス」三浦しをん 新潮文庫
満足度★★★★☆


トゥルー・グリット

2011年03月21日 | 映画(た行)
荒くれ男と少女、配剤の妙



           * * * * * * * *

この作品、ジョン・ウェイン主演「勇気ある追跡」(1969年)のリメイクだそうです。
リメイクものはあまりロクな結果にならないことも多いですが、
監督がコーエン兄弟、制作総指揮スティーブン・スピルバーグ
ということでよみがえったこの作品、さすがに見事です。



雇い人であるチェイニーに父を殺されたマティ・ロス(ヘイリー・スタインフェルド)。
14歳の少女です。
彼女は果敢にも父の仇を討とうとする。
お下げ髪の彼女は確かにまだ華奢で幼く見えるのですが、その言動は大人顔負け。
保安官を雇って、チェイニーの行方を捜そうとするのです。
そこで目をつけたのが隻眼の保安官コグバーン(ジェフ・ブリッジス)。
確かに腕はいいのでしょうけれど、大酒飲みで自堕落。
しかし渋る彼を何とかその気にさせました。
またそこに、別の事件でチェイニーを追っている
テキサスのレンジャー、ラビーフ(マット・デイモン)が加わります。
この三人での長く過酷な西部の旅が始まる・・・。



はじめ、マティはコグバーンに置いて行かれるのです。
それに気づいたマティはすぐに後を追う。
ところが大きな川辺でコグバーンは既に船で川を渡っている。
するとマティはなんと馬と共に川に飛び込んだ。
びっくりしますね。
何だかこの先の冒険を予感させるすごいシーンです。
ここまでは小理屈ばかり言う生意気なオンナノコ・・・という印象もあったのですが、
この思い切りの良さに、すっかり彼女が好きになってしまいます。
そしてコグバーンもこの時初めて彼女を見直したんですね。
やっとこちらの岸にたどり着いた彼女に、
コグバーンはひと言
「いい馬だな」。
こういうユーモアがいいんですよねー。



しかし、オンナノコが出てくるといっても、
決して甘すぎず、荒々しい西部劇です。
チェイニーは一人ではなく、お尋ね者ネッドの一味に合流しており、
追いついたとしても非常に危険です。
またコグバーンとラビーフも決して仲良くはなく、旅はついたり離れたり。
単純なストーリーではあるのですが、
なかなか、目が離せません。



荒くれ男と少女という配剤のバランスが絶妙で、
極上の西部劇に仕上がっています。
アカデミー賞10部門にノミネートというのにも納得。
ヘイリー・スタインフェルドはこれが映画初出演ということですが、
二大男優に負けないすばらしい存在感を出していましたね。
この先もまた、楽しみです。

「トゥルー・グリット」
2010年/アメリカ/110分
監督:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
制作総指揮:スティーブン・スピルバーグ他
出演:ジェフ・ブリッジス、マット・デイモン、ジョシュ・ブローリン、ヘイリー・スタインフェルド、バリー・ペッパー

17歳のカルテ

2011年03月19日 | 映画(さ行)
2大女優の競演



            * * * * * * * *

心が不安定なスザンナ(ウィノナ・ライダー)は
アスピリンを大量にのみ自殺を図るのですが失敗。
その後精神病院で過ごすことになります。
そこには様々な症状の女性たちがいて、
彼女たちとの交流を通しながら、心の落ち着きを取り戻していく、そういうストーリー。

中でもその病棟の患者のリーダー格リサ(アンジェリーナ・ジョリー)の存在感は圧倒的。
凶暴で、破滅的ではありますが、
どこか精神を病んでいるかと言えば、そのようには見えない。
それを言うと、このスザンナもその通りなのですね。
彼女自身、自分はこんな所にいる必要はないと思っている。
彼女の診断名は「境界性人格障害」。
情緒不安定で著しい衝動性がある、とされている。
でもこんなことは誰にでも時折あることです。
特に思春期の女性などには・・・。
異常と正常のボーダーなんて、どこにもありません。
心の揺れ幅がちょっと人より大きいだけ。


彼女の心に寄り添ってストーリーの進行を見守る私たちは、
はじめ、確かに彼女は正常の範囲にいる、
彼女の主張は間違っていない、と思えるのです。
でも、終盤、ある大きな事件があって、
そこで我に返ったスザンナを見ると、
やはり以前はどこか壊れていた、そういうふうに思える。

この演じ分けがすごいと思いました。
ボーダーはない。
けれども確かに、心の芯が定まっている状態と
そうでない状態の差はある。

全く同じ意味で、リサの精神状況の演じ分けもすばらしいのです。
先にも記したとおり、彼女は“正常”の範囲に思える。
けれど、やはりどこか壊れた部分がかすかに見え隠れする。
こういう微妙さを演じられるのはすごいですね。
今さらアンジーを見直してしまった・・・。
2大女優の競演といっていいかも。

17歳のカルテ コレクターズ・エディション [DVD]
ウィノナ・ライダー,アンジェリーナ・ジョリー,ジャレッド・レト,ウーピー・ゴールドバーグ
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント


「17歳のカルテ」
1999年/アメリカ/127分
監督:ジェームズ・マンゴールド
出演:ウィノナ・ライダー、アンジェリーナ・ジョリー、クレア・デュバル、ウーピー・ゴールドバーグ

ペーパー・ムーン

2011年03月18日 | 映画(は行)
詐欺師と女の子のロードムービー

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1973年のこの作品。
時代背景が1930年代なので、モノクロ作品で雰囲気を作っています。

詐欺師のモーゼは昔の恋人の葬儀に出向き、
その遺された9歳の娘アディを
親類の家まで連れて行くようにと押しつけられてしまいます。
人々は皆このモーゼこそが実の父親なのだろうと推測したようなのですが、
真実はモーゼにも解りません。
詐欺師と女の子のおかしなロード・ムービーの始まり始まり・・・。


さて、このモーゼの詐欺の手口がなかなか興味深い。
彼は新聞の死亡広告の出ていた家に赴きます。
亡くなった人から頼まれて聖書を届けに来たというのです。
少し前にご主人から特製の聖書を頼まれていた・・・と。
その聖書には奥さんの名前が刻まれている。
それは死亡広告でわかっているので、自分で印字したのです。
亡き夫からのプレゼント・・・と感激した奥さんは、
ちょっとくらい高くてもそれを買ってしまうという次第。
インチキですが、だまされた方も結構しあわせな気分になれる、
なかなかしゃれた詐欺ですよね。

さて、ところがアディにも詐欺の才能が・・・。
すっかり詐欺師の相棒に収まった彼女は、
相手の経済状況を一目で見極めて、
相手によって聖書の値段をつり上げたり、
時にはただにしてしまったり。
目をむくモーゼですが、次第に相棒として彼女を頼りにし始めます。
そんなとき、モーゼは巨乳の美女と知り合い、
旅を同行することになるのですが、
車の助手席を奪われてしまったアディは面白くない。
何とか、この二人を破局させようと・・・。


紙でできたつくりものの月のように、
本物ではない親子が、
本物以上に気持ちがつながっていく、
心温まるドラマです。

このライアン・オニールとテイタム・オニールは本物の親子。
本物の親子が偽物の親子を演じる、という趣向も、オシャレです。
ベッドの上でスパスパタバコを吸うテイタム・オニール。
今ならこんなシーンはNGかもしれません。
まるで少年のようでもあるおとなびた少女が愛らしい。

ペーパー・ムーン [DVD]
ピーター・ボグダノヴィッチ,アルヴィン・サージェント
パラマウント ジャパン


「ペーパー・ムーン」
監督:ピーター・ボグダノビッチ
出演:ライアン・オニール、テイタム・オニール、マデリーン・カーン、ランディ・クエイド


黄色いロールス・ロイス

2011年03月17日 | 映画(か行)
豪華キャストのオムニバス

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またまた、オマー・シャリフ関連で見たこの作品ですが、
何とも豪華キャストのオムニバスとなっています。
一台の黄色いロールス・ロイス。
この車の持ち主が次々と入れ替わっていくのですが、
時代を経て、3人の持ち主の恋愛をからめた情景が描写されます。


まず始めに、1930年。
この時できたてのピカピカ、ニューモデルの黄色いロールス・ロイスは、
ロンドンの国務大臣フリントンが彼の妻の誕生日祝いとして購入しました。
いかにも高級。
あこがれの的の車ですね。
上流社会の社交の場、競馬場の風景が出てきます。
「マイ・フェア・レディ」の一シーンを思い出しました。
それもそのはず、このフリントン氏を演じるのはレックス・ハリスンで、
「マイ・フェア・レディ」のヒギンズ教授じゃありませんか! 
・・・なるほど~、ですね。
しかし、この冒頭作は、一見しあわせなこの夫婦の心の溝がテーマ。
ちょっぴり苦いストーリーです。
お金があればしあわせとは限らない・・・か。


さてそれから数年後、今度はイタリアが舞台です。
アメリカから観光にやって来たのは
アル・カポネの配下パオロとその愛人メイ(シャーリー・マクレーン)。
観光に使うために、やや流行遅れのこの黄色いロールス・ロイスを購入しました。
ところが、パオロはボスの用事でいったん帰国しなければならなくなります。
のこされたメイは暇をもてあますのですが、
イタリアの大変気のいいイケメン青年ステファンと知り合いになります。
なんと、これがアラン・ドロンですよ。
とびきり若くてぴちぴちの!! 
うわあ・・・カッコいい、ステキ!! 
イタリアの男性は、女の人ならとにかく声をかけて誘うのが
エチケットみたいに思っていますよね。
このステファンも典型的なそのたぐいなのですが、
いつしか二人の思いは真剣なものに・・・。
でも、ギャングの情婦を横取り・・・となれば命の保証はありません。
正直、このメイさんは、はじめ多少おつむが足りなく思えたりするのですが、
彼女の最後にとった行動には泣かされます。
凛とした女性像がカッコいい。


さて、最後は1941年。
ユーゴスラビア。
もうだいぶくたびれてしまった黄色いロールス・ロイス。
この地をたまたま訪れたアメリカの上流夫人(イングリッド・バーグマン)が
持ち主となりました。
彼女はユーゴスラビアの青年ダビッチと知り合います。
これがオマー・シャリフ。
まってましたっ!! 
非常にきな臭い時代です。
彼は祖国にドイツ軍が侵攻しようとするのに対抗し、
レジスタンスの同志を募ります。
始めはやむなく彼に同行した夫人も次第に同調し、
かくして、ロールス・ロイスは戦火をくぐり、
荒くれ男たちを乗せて山道を走り回ることになる。
運転は、どう見ても免許を持っていそうにない、この夫人。
スリルありますよ~。


一台の車がたどる時代の変遷と男女の思い。
堪能しました。

黄色いロールスロイス [DVD]
レックス・ハリソン,ジャンヌ・モロー,イングリッド・バーグマン,シャーリー・マクレーン,アラン・ドロン
ワーナー・ホーム・ビデオ


「黄色いロールス・ロイス」
1965年/イギリス/122分
監督:アンソニー・アスキス
出演:レックス・ハリスン、ジャンヌ・モロー、シャーリー・マクレーン、アラン・ドロン、イングリッド・バーグマン、オマー・シャリフ、ジョージ・C・スコット

「生命の木の下で」 多田富雄

2011年03月15日 | 本(エッセイ)
好奇心から科学へ・・・

生命の木の下で (新潮文庫)
多田 富雄
新潮社


          * * * * * * * *

著者は、免疫学者であり、また文学にも造詣が深く、
創作能を書くなど活躍をされている方です。
ところが脳梗塞で半身不随と鳴り、壮絶なリハビリに努めたといいます。
この本はその病に倒れる以前のエッセイをまとめたもの。
解説の加賀乙彦氏は言います。

私は著者の病後と病前の異なった生活に、
精神の橋を架けるような本書の出現に、人間の不思議を見た。
健康であることは、普通の人間にとって当たり前の状態であるのだが、
重い病気にかかった人から回想すると、奇跡の様に思えるようだ。



本の冒頭は著者がアフリカやタイを旅する話から始まっています。
好奇心たっぷりで活動的なこの著者の生き様。
体を病んだとしてもその精神は変わらないはず。
まずは、著者の好奇心におつきあいして、アフリカの旅から・・・。


アフリカへの旅と言えば、先日読んだ「ピスタチオ」を思い出します。
ほらね、すべての事象はつながっている・・・と、
梨木香歩さんがほくそ笑んでいそうに思えてしまいました。
著者は、ニューヨークのメトロポリタン美術館で見た奇妙な両性具有の像に心惹かれ、
その像を作ったアフリカ奥地のドゴン族に会いに行くのです。
これぞ人類発祥の地。
最初に発生した人類の末裔の地こそ、ドゴン。
そう確信して。
ところが、アフリカ奥地のその地にたどり着くのはなかなか大変。
ほとんど冒険譚ですが、そこまでしても自分の目で確かめたい。
そういうところがやはり科学者だなあ、と感心することしきり。

また、アフリカのマリ共和国で、マラリヤ伝染の蚊の研究を続ける日系二世の方のこと、
タイの山岳民族の村が麻薬中毒でつぶれかかっているのを復活させたチームにいる日本人の話、
そういうことには驚かされました。
彼らは、なんのゆかりもないその地に根付き、地元の人のために奮闘している。
さしたる見返りもないというのに。
今の世の中、殺伐とした話が多いですが、
それでもこのように人のために尽くしている人がいるというのは、貴重なことです。
著者は、彼らの行動をこのように読んでいます。

私たち先進国の人間も、実は限りなく傷つき、
自力では回復できないほど病んでいたのである。
彼らが癒えることは、私たちも癒えることである。


そうですね、そういうことが原動力なんですね。
偽善であればすぐに折れてしまいます。

その他、見識深い著者の文章には、いちいち肯かされることしきり。
よい本でした。

「生命の木の下で」多田富雄 新潮文庫
満足度★★★★☆

ロビン・フッド

2011年03月14日 | 映画(ら行)
痛快英国時代劇

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ロビン・フッドは、何度も映画化されているので、いろいろなものがありますね。
先日ラッセル・クロウのロビン・フッドを見たことがきっかけで、
ショーン・コネリーの「ロビンとマリアン」も見ました。
今回は、ケヴィン・コスナー版のロビン・フッドです。
1991年作品。


ここで特異なのはロビンのお供に異教徒であるムーア人のアジームが付き添っていること。
これがなんと、モーガン・フリーマンです。
・・・ほら、なんだか見てみたくなったでしょう。
まず、ロビンはやはり十字軍遠征に加わってイギリスを離れていたのです。
しかし、ムスリム軍に捕らえられ、ほとんど処刑寸前というところで、
行きがかりでアジームも連れて脱出に成功。
アジームはロビンに助けられたことに恩義を感じて、
いつかきっと助けになるから・・・といって、
いやがるロビンに強引に付き従ってイギリスまでやって来ます。

この作品ではロビンは貴族の息子なのです。
しかし、懐かしい故郷に戻ってみれば、
父は殺され、屋敷も燃え落ちて廃墟になっている。
これは魔女に育てられたノッテンガムの代官の仕業。
彼はこれらの領地一帯を私有化し、住民を圧政の元に支配している。
このノッテンガム卿が
「ハリー・ポッター」のスネイプ先生ですっかりお馴染みのアラン・リックマンです。
この悪役ぶりもなかなか楽しいのです。

そこで、ロビンはシャーウッドの森にこもり、
農民たちを従えて、反乱軍を指揮することになる・・・と、
このあたりがロビン・フッドのロビン・フッドたるところ。
マリアンはロビンの親友の妹、
そして、獅子王リチャードの従妹でもあります。
そこで、ノッテンガム卿は王の血縁にあるマリアンと結婚し、
さらなる権力を手に入れようとマリアンを拉致。

こういう恋の横恋慕劇もありまして、
いろいろなシーンで楽しめてしまう作品です。
決して深刻な歴史物語ではなく、ファンタジー色もある痛快劇。
ロビンは結構大変な目に遭うシーンが多いのですが、
助けてくれるはずのアジームがちっとも助けてくれない。
さてさて、この結末もお楽しみ。
それから、この作品では、獅子王リチャードがフランスで命を落としたりせず、
ちゃんとイギリスに生還するのです。
その王がショーン・コネリーだったりする。
本当に、いろいろ見比べると楽しいですね!

ロビン・フッド 特別編集版 [DVD]
ケビン・コスナー,モーガン・フリーマン,クリスチャン・スレーター,メアリー・エリザベス・マストラントニオ,アラン・リックマン
ワーナー・ホーム・ビデオ


「ロビン・フッド」
1991年/イギリス/144分
監督:ケビン・レイノルズ
出演:ケビン・コスナー、モーガン・フリーマン、アラン・リックマン、クリスチャン・スレイター、ショーン・コネリー