映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

2020年06月29日 | 映画(さ行)

無味乾燥の毎日が変わる・・・

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原作は中村文則さん。
とあれば、何らかの不穏な物語であろうと、まず覚悟をきめて・・・。

大学生トオル(村上虹郎)は、ある夜河原で一丁の銃を拾い、持ち帰ります。
その銃を手に入れたことで、彼は言い知れぬ高揚感を憶えます。
冷め切った日常の中で、トオルは緊張感やスリルを味わうために、
その銃を持ち歩くようになる・・・。
特に誰かを殺したいなどとは思っていない。
しかし、銃を持つからには撃ってみたい、そんな気持ちも高まってくるのです。
そしてある夜、何者かに傷つけられ瀕死の猫を、
「早く楽にしてやるため・・・」と自分を納得させながら、銃殺。
その数日後、突然トオルの元に刑事(リリー・フランキー)が訪ねてきますが・・・。

本作、モノクロ作品なのです。
トオルは、毎日を味気なく感じていて、何をしても面白いとは思わない。
合コンで知り合った彼女は乱暴で淫らに扱い、
学内で知り合った彼女(広瀬アリス)とはプラトニックにすごそうとする。
全くの気まぐれです。
ただ適当に、無味な日々を過ごしている。
そうした生の実感のない彼の日常が、モノクロ画面で表されているのです。
彼がこんな風になってしまったのは、彼の生い立ちに問題がありそうではあるのですが、
さほど詳しくは描写されません。



さてところが、衝撃的なラストで、画面は一転してカラーに。
真っ赤な血が飛び散ります。
色のなかったトオルの心が色を取り戻す。
こんなことで生の実感を取り戻すとは・・・!

なんとも気まぐれで衝動的な青年を、村上虹郎さんが魅力的に演じています。

続編というか姉妹編というか、「銃2020」という作品が近く公開になるようです。

 

<WOWOW視聴にて>
「銃」
2018年/日本/97分
監督:武正晴
原作:中村文則
出演:村上虹郎、広瀬アリス、岡山天音、リリー・フランキー、村上淳

銃の魔力度★★★★★
青年の孤独度★★★★☆
満足度★★★.5

 


めんたいぴりり

2020年06月28日 | 映画(ま行)

めんたいこ秘史

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辛子明太子を日本で初めて製造・販売した「ふくや」の創業者・川原俊夫をモデルとした物語。
2013年に放送された同名テレビドラマの劇場版でもあります。

昭和30年代、戦後最大の引揚港であった福岡。
焼け跡となっていた中洲で食料品店「ふくのや」を開業した海野俊之(博多華丸)。
彼はこの地の山笠祭りと同じくらいに、明太子作りに情熱を傾けています。
大陸生まれ・大陸育ちの海野夫妻(妻・富田靖子)は、
釜山でよく食べていた明太子の味が忘れられないのです。
俊之は試行錯誤をかさね明太子の味を改良していきますが、
そもそもこの地では元からなじみのない食べ物なので、
街の人たちにはなかなか受け入れられません。
そんなあるとき、俊之は息子の同級生である英子の境遇を知り・・・。

明太子のルーツは朝鮮でありましたか・・・って、考えてみればまさに当たり前の感じですが。
とにかくこの、俊之さんのお人柄が凄いのです。
底なしのお人好しといいますか、台風で住むところを失った人を家に呼んでごちそうする。
返してもらうあてがほとんどなさそうな人にもお金を貸す。
明太子が少し評判を呼び売れるようになれば、
その作り方を惜しみなく他の業者にも教える・・・。
こんなだからこの家はちっともお金が貯まりません。



でもこうした俊之の考え方は、戦争体験が元になっていたのです。
兵役で飢えて多くの仲間を失い、命からがら帰ってきた。
だから今は、誰でもおいしいものをお腹いっぱい食べてほしいという気持ち。
同様の体験をした人は多くいると思うのですが、
その気持ちを貫き、実行する人はそう多くはいませんよね。



明太子に隠された秘密。
とても面白く拝見しました。
文句を言いながらも、この夫を理解し、賛同する奥さんも立派!!
無性に明太子でご飯をわしわしと食べたくなります。
ご愛敬で、スケトウダラ役で出てくる大吉さんもナイス。

<WOWOW視聴にて>
「めんたいぴりり」
2019年/日本/115分
監督:江口カン
出演:博多華丸、富田靖子、斎藤優、柄本時生、でんでん、博多大吉

明太子秘話度★★★★☆
男の生き様度★★★★☆
満足度★★★★☆

 


野性の呼び声

2020年06月27日 | 映画(や行)

巨大なワンちゃんが愛おしい

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本作実は、公開時絶対に見に行こうと思っていた作品です。
公開日は今年の2月28日。
ちょうどその頃から新型コロナウイルスの感染が拡大しはじめ、私は映画館通いを自粛。
そしてじきに映画館自体も休業となってしまいました。
そんなわけで、とうとう見に行くことができなかった・・・。
それを今やっと見ることができたわけです。
(映画館は営業を再開していますが私はまだ行っていません・・・)

カリフォルニアの裕福な家で飼われ、わがままいっぱいに暮らしていた大型犬バック。
ある日突然さらわれて、ゴールドラッシュにわく極寒アラスカの地にやって来ます。
雪を見るのも初めてのバックは、恐る恐る雪の中に一歩を踏み出します。
そこでバックは郵便局員(オマール・シー)に買われて、ソリ犬の一員となります。
初めて「チーム」で仕事をする事を憶え、バックは生きがいを見出すのです。
郵便局員との相性もバッチリ。

ところが、ソリでの郵便運送の仕事が廃止されることになってしまい、つらい別れ。
次にバックを買ったのは金で一攫千金を狙うものの、
冬のアラスカのこともソリ犬のことも何もわかっていない傲慢な男。
まあ、そこではいろいろ面倒なことがあって、
次にバックはある孤独な男ソーントン(ハリソン・フォード)と出会い、
心を通わせるようになります。
ソーントンは息子を亡くし、妻とも別れ、生きる意欲をなくして孤独に生きていました。
友情を育んだソーントンとバックは、人里離れた山中で暮らすことになりますが・・・

巨大なワンちゃん、バックは実に気は優しくて力持ち。
いいなあ・・・。
バックの動きは、シルク・ドゥ・ソレーユの元メンバーが生身の体で演じ、
それをCGに置き換えるという、モーションキャプチャーで表されています。
だから本物の犬よりももっと人間にわかりやすい表情、動作をするのです。
もしかするとそれがわざとらしすぎて嫌だという方もいるかもしれません。
でも、私は好きですねえ・・・。
わかりやすくて結構じゃありませんか。

この巨体をむぎゅっとハグしてみたいです!!
犬の幸せとは、人と共にあることなのか、それとも野山で自由にあることなのか・・・
そんなテーマを潜ませつつ、冒険とスリルたっぷりの物語でした!!

<J:COMオンデマンドにて>
「野性の呼び声」
2020年/アメリカ/99分
監督:クリス・サンダース
原作:ジャック・ロンドン
出演:ハリソン・フォード、ダン・スティーブンス、オマール・シー、カレン・ギラン

ワンちゃんの愛しさ★★★★★
満足度★★★★★

 


「活版印刷三日月堂 雲の日記帳」ほしおさなえ

2020年06月26日 | 本(その他)

助力を得ても、この仕事を続けたいと思う

 

 

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小さな活版印刷所「三日月堂」。
店主の弓子が活字を拾い刷り上げるのは、誰かの忘れていた記憶や、言えなかった言葉。
仕事を続ける中で、弓子が見つけた「自分の想い」と、「三日月堂の夢」とは――。

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本巻ではいよいよ、三日月堂のこれまで動かすことができなかった
古い大型活版印刷機(平台)が始動をはじめます。
平台のことに詳しい悠生の力を借りて。


はい、前巻からなんとなく予感がありました。
弓子さんと悠生のこと。
本巻でのメインとなるのは、古書店店主・水上の本。
彼がこれまでに書店のリーフレットに寄せていたコラム「雲日記」の文章を厳選して、
一冊の本にしようと言うのです。
活版印刷で本を作るとなると、活字を拾って組むだけでもかなりの手間と時間を要する訳で、
到底弓子一人でできるものではありません。
しかも、水上は癌で余命宣告を受けており、何としても彼が存命中に完成させたい。
というわけで、三日月堂を取り巻く様々な人々の助力を得て、本作りが始まります。


そして弓子は思う。
自分はやっぱりこの仕事が好きなのだ。
本を作ることは、今後も続けていきたい。
でもそのためには悠生の力が必要だ・・・。


自分の仕事の方向と生きる方向が一致するというのは、
とても貴重で幸福なことだと思います。
ラストは、読んでいても思わずにやついてしまう、この二人らしい様子なのでした。


この作品は、様々な人がその都度主人公となって、外側から三日月堂の弓子を見る、
という構成がほとんどなのです。
しかし本巻の最終章はズバリ、弓子自身が語り手です。
それでストーリーとしては一応ここで一区切り。
でも続きの本も出ているので、まだ楽しめそうです。

本巻での三日月堂のお仕事。
★小口木版を交えた星座盤
★街の木のイラストマップ
★「雲日記」の本

「活版印刷三日月堂 雲の日記帳」ほしおさなえ ポプラ文庫
満足度★★★★★

 


ディリリとパリの時間旅行

2020年06月25日 | 映画(た行)

ベル・エポックのパリも良し。テーマ性も良し。センスがなお良し。

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19世紀末~20世紀初頭、ベル・エポック期のパリを舞台とした、とびきりステキなアニメです。
ニューカレドニアからやって来た少女ディリリは、
パリで出会った最初の友人オレルとともに、ベル・エポックのパリを楽しみます。
しかし、その時パリでは少女誘拐が多発しています。
二人はこの事件の真相解決に挑むことに・・・。

本作の邦題がちょっと疑問です。
物語の舞台がベル・エポックのパリというだけで、
ディリリがタイムトラベルをするわけではない。
まあ、時間旅行をしたかのように当時のパリの様子を楽しめる、
という意味ではあるのかもしれませんが。



ピカソ、モネ、ロートレック・・・
キュリー夫人、パスツール・・・
エッフェル塔、オペラ座、ムーランルージュ・・・
当時のトピック的人物や建物をめぐるのがなんとも楽しい!!

でも本作のテーマは、そういう当時の時代性を再現することの他にもう一つ。
ズバリ、性差や肌の色の違いで人を差別し、見下すことの
愚かさ、おぞましさ、それを言っています。
ディリリはニューカレドニアからやって来たのですが、
実は現地の人と白人とのハーフなのです。
そのため故郷においては「肌の色が明るい」と差別され、
ここパリにおいては「肌の色が濃い」と差別されるのです。
パリの街にはそんな風に彼女を見下す人もいますが、
オレルのように全く気にとめない者ももちろんいます。
そして、ここで起きている少女誘拐事件は、
女性の社会進出を快く思わない者たちの、まるでKKK団のような結社によるもので、
そこではなんともおぞましい行為が行われているのでした・・・。
自分とちがう者を、ただそれだけで差別し、見下し、
その存在すらを排除しようとする頑迷な者たち。
いつの世にもそういう者たちはいるのです。
ちょうど今、人種差別の問題がまた大きく取り上げられているので、
本作もぜひ多くの人に見てもらいたいと思いました。

さすがフランスの色使いが、ため息をつきたくなるほどにステキなのです。
重いテーマながら、冒険心をくすぐるシーンもあります。
少女ディリリの強い自尊心と勇気に涙が出そう。
まさに、大人が見るべきアニメです。

<WOWOW視聴にて>
「ディリリとパリの時間旅行」
2018年/フランス・ドイツ・ベルギー/94分
監督・脚本:ミッシェル・オスロ

ベル・エポック再現度★★★★★
差別のテーマ性★★★★★
満足度★★★★★

 


北の果ての小さな村で

2020年06月23日 | 映画(か行)

極北の地の人々や文化と、現代の暮らし

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グリーンランド東部、テニツキラーク、
人口80人の小さな村の小学校に赴任したデンマーク人教師、アンダース。
彼の体験を描く作品です。
本作は、サミュエル・コラルデ監督がこの地を気に入ってロケ地に選び、
その際、デンマークから新人教師が赴任すると聞き、
その青年を中心に据えて1年間の撮影に入った、という経緯でできたもの。
演じる教師も子どもたちも村人も、皆本人そのまま。
ドキュメンタリーとフィクションが融合したユニークな作品となっています。

赴任したてのアンダース。
子どもたちは言うことを聞かず騒ぎ立てるし、
村人は打ち解けず、自分を無視する。
故郷の父の期待に背いてまでここにやって来たものの、
全くうまく行かずに落ち込んでしまいます。
あるとき、一人の子どもが無断で休んだので、彼の家へ行ってみます。
すると彼は祖父と狩りに行っていたという。
学校よりも狩りが大事だと祖父は言うのです。
反発を覚えるアンダースですが、
しばらくこの村で暮らしていくと、だんだんわかってくるのです。



祖父が孫に教えていたのは、この厳しい自然の中で生きていく知恵、
そしてこの地の文化なのです。
孫は祖父と同じ狩人になりたいと思っている。
でも実のところ今は、アザラシの肉も毛皮もあまり高くは売れなくて、
狩猟で生計を立てるのは厳しくなってきています。
だから村の経済自体もなりたたなくなりつつある・・・。
子どもたちはやがてこの村を離れて都会の学校へ進む可能性が高い。
だからこそ、アンダースはデンマーク語を子どもたちに教えている。
けれどこの村で昔ながらの生き方をすることだってあってもいいし、それは大切なことでもある。
村の過去、文化、子どもたちの未来・・・。
いろいろと考えるべき事があって、都会人の単純な「教育論」では語れない部分がにじみ出てくる。
そんなステキな作品なのでした。



アンダースが村人たちと溶け込みはじめたのは、地元の言葉を覚え始めてからですね。
そりゃ、言葉の通じない人とは仲良くしたくてもなかなか難しいし、
都会風吹かした上から目線の人とは付き合いがたいですよね。



そして本作のもう一つの見所は、当たり前ながらこの極北の地の風景。
巨大な氷山の浮かぶ海、大雪原、オーロラ、シロクマの親子、鯨、犬ぞり。
何もかも素晴らしい・・・。
私は寒いのが苦手なので、住みたいとは思わないけれど・・・。
アンダース氏は今も村で教師を続けているそうです。


<Amazonプライムビデオにて>
「北の果ての小さな村で」
2018年/フランス/94分
監督:サミュエル・コラルデ
出演:アンダース・ビーデゴー、アサー・ザアセン

グリーンランドの大自然度★★★★★
村の文化を知る度★★★★☆
満足度★★★★☆

 


ボーダー 二つの世界

2020年06月22日 | 映画(は行)

人間の姿ではあるけれど、実は人間ではない異質な者

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「ぼくのエリ200歳の少女」原作者、ヨン・アイビデ・リンドクビストが、
自身の原作を元に共同脚本を手がけた北欧ミステリ。
本作はこの情報が結構貴重なのです。
人間の姿であって実は人間ではない異質なもの。
そういうものを描いているという点では同じなので、
この原作の情報を持っていれば、戸惑いは多少なりとも少なくて済みます・・・。

醜い容姿のため、孤独で疎外感を持っている税関職員のティーナ(エバ・メランデル)。
彼女は違法なものを持ち込む人間を嗅ぎ分ける特殊な力を持っています。
そのため、職員としては極めて優秀なのでした。
そんな彼女が、不審な旅行者ボーレ(エーロ・ミロノフ)と出会います。
どこか風貌が似ている感じがする二人。
ティーナはボーレに本能的な何かを感じ、
自宅の離れを宿泊先として彼に提供します。
やがて、この二人の秘密が明らかになる・・・。

ティーナが不審者を嗅ぎ分けるというのは、
麻薬の匂いを嗅ぎ分けるというのとはちがうのです。
人の恐れや怒りなど、ネガティブな感情を匂いとして感じとる。
彼女は社会の中には溶け込めないと感じていて、
森の中に一人でいるときが一番自分らしく自由と感じます。
そんな彼女のルーツが実は・・・というストーリー。



はい、ストーリーはいいと思うのです。
けれども、どうにもこうにも、美しくありません・・・、この二人が・・・。
見た目で人を判断してはいけない、
そういう良識を打ちのめされてしまうのがちょっとつらいです。
そしてこの二人の食事とか愛のシーンがまた、強烈というかショッキングというか・・・、
逃げ出したくなる感じ。
う~ん、評価は高い作品なのかもしれないけれど、
私は見なけりゃ良かったと思う・・・。

この二人を演じた俳優さんは双方れっきとしたステキな俳優さんで、
もちろん特殊メイク。
いやあ、良くできています。
作り物感がないから余計に悲惨な感じがするのです。
そして、お二人ともこの役のために20㎏の増量をしたのだとか。
効果ありすぎ。
私はてっきりボーレは狼男にでも変身するのかと思って見ていたのですが、
そうではありませんでした。
それよりももっと由緒ある(?)ものでした。
確かに強烈なインパクトのある作品ですが、好き嫌いはあるでしょう・・・。

<Amazonプライムビデオにて>
「ボーダー 二つの世界」
2018年/スウェーデン・デンマーク/110分
監督:アリ・アッバシ
出演:エバ・メランデル、エーロ・ミロノフ

グロさ★★★★★
満足度★★☆☆☆


「活版印刷三日月堂 庭のアルバム」ほしおさなえ

2020年06月21日 | 本(その他)

活版印刷には詩や短歌がよく似合う

 

 

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小さな活版印刷所「三日月堂」には、今日も悩みを抱えたお客がやってくる。
店主の弓子が活字を拾い刷り上げるのは、
誰かの忘れていた記憶や、言えなかった想い。
しかし三日月堂を続けていく中で、弓子自身も考えるところがあり…。
転機を迎える、大好評シリーズ第三弾!
ブクログ1位、読書メーター1位、第5回静岡書店大賞、第9回天竜文学賞、4冠!

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図書館の貸し出しが再開されて、やっと本作の続きを読むことができました。


今時、時代に逆行するとも言える活版印刷ですが、
この三日月堂の印刷品が人から人の手を渡り、
ささやかながらも、口コミで評判が広がっています。
そして人と人の輪もまたつながっていく。
そんなところが実に読んでいても心地よいのです。


本作では、弓子の亡きお母さんのことに触れられています。
弓子が物心つく前に亡くなってしまったお母さん。
それだから弓子にはほとんどお母さんの思い出がありません。
この度、そのお母さんの学生時代の友人と、
お母さんが詠んだという短歌のことが出てきます。
初めて自分の母親がかつて実際に「生きて」いたことを実感する弓子さん。
しみじみ来ます・・・。


そして、これまで動かすことができなかった古い大型の活版印刷機(平台)が
とうとう始動できそうなのです! 
そのことについては、次巻で詳しく語られていくことになるでしょう。
楽しみです!!

本作での三日月堂のお仕事。
★ミニシアターのイベントチケット
★故人を偲ぶ短歌のカード
★庭の植物のイラストカード
★八木重吉のミニ詩集(ただし別工房にて印刷)

「活版印刷三日月堂 庭のアルバム」ほしおさなえ ポプラ文庫
満足度★★★★☆

 


大いなる遺産

2020年06月20日 | 映画(あ行)

ドラマチックだけれど、やはり古風

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チャールズ・ディケンズ原作のこのストーリーは
これまでに幾度か映画化されているようです。
どれも見てはいませんでしたが・・・。
本作は中でも一番新しい2012年作品。
日本未公開ですが、キャストも豪華なので興味を持ちました。

 

19世紀イギリスの田舎町。
家族を亡くした少年ピップは、姉とその夫で鍛冶屋のジョーの家に引き取られ、
貧しい生活を送っています。
ある日、ピップは脱走した受刑者マグウィッチ(レイフ・ファインズ)を哀れみ、
密かに家の食料を持ち出して彼に与えます。
そしてまたある日、ピップは裕福なミス・ハビシャム(ヘレナ・ボナム=カーター)の屋敷に招かれるのですが、
そこで美少女エステラに出会い、好意を抱きます。
さて、年月は過ぎて、成長したピップ(ジェレミー・アーヴァイン)は
ジョーと共に鍛冶屋の仕事をしています。
ところが、ある匿名の人物から莫大な遺産の相続人に指名され、
その条件に従い、ロンドンへ行き、紳士としての生活を送るようになりますが・・・。


登場人物が時を超えた因縁に絡まれて、複雑な様相をなしていくストーリー。
誰もがなかなか強烈な個性を見せています。

★ピップの姉は、実の姉のはずなのですが、異様にピップに冷たく厳しく当たります。
彼女にとって弟は、ただの厄介者で、家族としての愛情はない。
・・・が、彼女はその後数年で病で死んでしまいます。
(悪いけど、ほっとしちゃう)

★その夫の鍛冶屋のジョーが逆に凄くいいヤツで、ピップを大切に思っています。
救われます。


★最も強烈なのは、ミス・ハビシャム。
彼女は若い頃、結婚式の直前に恋人にお金を奪われた上に逃げられた
と言う悲惨な経験があります。
そのあまりのショックから立ち直ることができず、
結婚の宴のテーブルセットやその時のケーキまでそのままにして、
自らはボロボロになったウェディングドレスをまとったまま、
薄暗い部屋で孤独に引きこもって生活しているのです。
その彼女が心の慰みに一人の少女を引き取って育てた。

★それがエステラですが、ミス・ハビシャムの偏った男性観のせいで、
感情を外に出さない異様に冷たい女性となってしまっている・・・。

★そして、脱獄犯のマグウィッチですが、
あのときピップが情けをかけてくれたことに強く感謝の気持ちを抱いています。
結局その後また捕まるのですが幸い死刑にはならずに済んだようで、
その後、一攫千金を手にする・・・!
(ここがどうもうまくいきすぎの感じ)

ともかく、このような人々に意外なつながりも見えてきて、
いかにもドラマチックなドラマとなっています。
しかし現代的に見ると、ピップが単に見知らぬ人から遺産を渡されてお金持ちになってしまう、
と言う下りは安直にすぎてなんだか納得できない。
そこはやっぱり、何らかの自分の努力の結果であってほしいのですが・・・。
まあでも、結局結果オーライでした!!

<Amazonプライムビデオにて>
「大いなる遺産」
2012年/イギリス・アメリカ/129分
監督:マイク・ニューウェル
出演:ヘレナ・ボナム=カーター、レイフ・ファインズ、ジェレミー・アーヴァイン、
   サリー・ホーキンス、ホリデイ・グレインジャー

ドラマチック度★★★★☆
満足度★★★☆☆

 


パーフェクト・プラン 完全なる犯罪計画

2020年06月19日 | 映画(は行)

最悪な道をたどっているようで・・・

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雪に覆われた町。
保険セールスマン・ミッキーは新たな顧客を取るため、
町外れに住む独居老人の家を訪れます。
そして老人が高額のヴァイオリンを所有していることを知りますが、
本人はそのことに気づいていないのです。
金に困っていたミッキーは、老人の外出中にヴァイオリンを盗み出そうとしますが・・・。

 

自分がはじめた犯罪、嘘。
次第にミッキーはそのことにがんじがらめになってしまい、
事は悪い方へ悪い方へと転がるばかり。
しまいには殺人にまで発展してしまうのです。
お金のために、盗みを働き、それを糊塗するためにまた人をだまし・・・
さらに大きくなっていく罪に恐れおののく・・・。
この行く末に待っているのは、ただ身の破滅のみ、と思えるのですが・・・。
しかし、なんと最後に大逆転、というか、思わぬ真相が現れます。

 

結局のところ、人をだまし罪を犯すことよりも、だまされる方がマシ。
よほどそのほうが平和な気持ちで生きて行ける。
そんな風にミッキーは感じたのではないでしょうか。
なんだかそんな一種爽快感のあるエンディングに、後味は悪くありません。

<Amazonプライムビデオにて>
「パーフェクト・プラン 完全なる犯罪計画」
2011年/アメリカ/93分
監督:ジル・シュプレッヒャー
出演:クレッグ・キニア、アラン・アーキン、ビリー・グラダップ、リー・トンプソン

詐欺度★★★★★
度ツボにハマル度★★★★★
満足度★★★★☆

 


きみと、波にのれたら

2020年06月17日 | 映画(か行)

ファンタジック&ダイナミック

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サーフィンが大好きで、小さな港町に越してきたひな子。
引っ越し早々火事が起きてしまったのですが、
それをきっかけに消防士の港(みなと)と知り合い、恋に落ちます。
二人は仲睦まじく、ハッピーさ満開。
ところが、港は海で溺れた人を助け、命を落としてしまうのです。
ひな子はショックで大好きだった海を見ることもできなくなってしまいます。
そんなある日、ひな子が二人の思い出の歌を口ずさむと、
水の中に港が現れたのです・・・!

湯浅政明監督のアニメ。
ひな子は、花屋でバイトをしていたのですが、
自分の本当にしたいことが何なのか、わかっていません。
港は、ひな子が海の上ばかりでなく、
社会の波を一人でうまく乗りこなすようになるまで見守る、と言ってくれたのです。

もちろんラブストーリーではありますが、女性の自立の物語でもある。
水の中の港に、また頼り切りになってしまうひな子ですが、
いつかはそこから卒業しなくてはならないわけで・・・、
そこが重要なところです。

水の中に現れる港は、言ってみれば幽霊みたいなものなのですが、
水の精とでも言いましょうか、水を操る力も持っているのです。
消防士だった彼の役割というのが、ここでも大きくものを言う。
ファンタジックで、ダイナミック。
なかなか楽しめました。

港が作るオムライスとか、卵サンドが実においしそう。
コーヒーも豆を挽くところからはじめるなど、なんとも手際が鮮やか。
こんなことを苦もなくやってみせる彼ですが、
後に妹が語るには、子どもの頃から母親が忙しく不在がちだったので、
港が一生懸命努力して得意になったのだ、と。
なんともカッコイイヤツだなあ、港。
始めの方に、ひな子が油がうまく回らないフライパンでオムレツを作ろうとして、
悲惨なものを作ってしまう、アルアルのシーンがあって、
だからこそ後の港の手際がより引き立つわけです。
そんなところも結構楽しめました。
声の出演陣が無駄に豪華!


「愛にできることはまだあるかい・・・♪」
とつい口ずさみたくなってしまったけれど、
あ、ちがった、この映画じゃなかった!!

<WOWOW視聴にて>
「きみと、波にのれたら」
2019年/日本/96分
監督:湯浅政明
脚本:吉田玲子
出演(声):片寄涼太、川栄李奈、松本穂香、伊藤健太郎

好男子度★★★★★
満足度★★★★☆

 


「新章 神様のカルテ」夏川草介

2020年06月16日 | 本(その他)

大学病院にて

 

 

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ベストセラーシリーズ。大学病院編始動!

 信州にある「24時間365日対応」の本庄病院に勤務していた内科医の栗原一止は、
より良い医師となるため信濃大学医学部に入局する。
消化器内科医として勤務する傍ら、
大学院生としての研究も進めなければならない日々も、早二年が過ぎた。
矛盾だらけの大学病院という組織にもそれなりに順応しているつもりであったが、
29歳の膵癌患者の治療方法をめぐり、
局内の実権を掌握している准教授と激しく衝突してしまう。
 舞台は、地域医療支援病院から大学病院へ。

* * * * * * * * * * * *


このシリーズ、本作を含めてもう5巻になっていたのですね。
好きな作品でしたが、私、2巻目までしか読んでなかったかと思います。
でもこの度、友人がこの本を貸してくれたので、中抜けで読みましたが、
さして不都合はなかったようです。

 

さて、常に職務に意欲的かつ真摯に取り組む内科医・栗原一止は、大学病院へ移り、
立場は大学院生ということで、薄給・重労働と、相変わらずブラックな環境で頑張っています。
医師としては9年目。
4年目や1年目、研修医などの後輩を指導する立場でもありますが、
当然ながら彼らからは信頼を得ています。
しかし、様々な医療小説にも表されているとおり、
大学病院というところはガチガチの組織で、
ただひたすら患者のためを思う一止の思惑にはいつも厚い壁が立ち塞がる。


本作にも様々な症状の患者が登場しますが、
中でもメインは29歳と言う若さで膵癌に冒された女性のこと。
既婚者で7歳の娘がいます。
実のところ治る見込みがない・・・。
それで彼女は最期まで家族と共にいたいと願い、在宅死を希望するのです。
一止は、極力その願いをかなえようとするのですが・・・。


私、先に上野千鶴子さんの「おひとりさまの最期」の本の中で、
在宅死のことをいろいろ学びまして、今でも希望すれば制度的には可能であるとわかっています。
でも、肝心の病院や医師が難色を示すというのも、本作を読んでよくわかりました。
良いテーマを取り上げてくれたなあ・・・と、しみじみしながら読みました。


友人たちや後輩、そして上司、様々な人々との関係性も、いつもながらいい感じです。
いや~なヤツと思っている人にも、それなりの思惑と正義があるのがいいですね。
ただ、いつも思うのは、奥さんのハルさんがいい人すぎて、
お人形のようで、どうにも存在感が薄いのです。
女はもっとズルくて腹黒いのですよ、夏川さん。


「新章 神様のカルテ」夏川草介 小学館
満足度★★★★☆

 


マザーレス・ブルックリン

2020年06月15日 | 映画(ま行)

母なしブルックリンっ子

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1950年代、ニューヨークを舞台とした探偵の物語。
エドワード・ノートン監督にして主演作品です。



ライオネル(エドワード・ノートン)は、チック症という障害がありながら、
驚異的な記憶力を持ち、探偵事務所で働いています。
事務所のボスはフランク(ブルース・ウィリス)。
フランクは孤児院にいたライオネルらを引き取り、事務所で仕事をくれたのです。
ライオネルにとっては人生の恩人であり、友人であり、信頼できるボスなのです。
ところが、そのフランクが何者かに殺害されてしまう。
ライオネルは、この事件の真相を探るために動き始めます。
そうして見えてきたのは、この大都会に暗躍する巨大な闇の権力・・・。

ライオネルの障害が、本作の大きな特徴を作り出しています。
緊張すると、とんでもない言葉を口に出してしまうのです。
それで一見は頭がおかしいヤツに見えなくもない。
でも、並以上に記憶力があり、頭も良くて、実に探偵向きなのでした。で
も、このハンデキャップのため、
これまでは探偵事務所の中でもあまり人と関わる仕事には就いていなかったのです。
しかし亡きボスのために、彼は動き始める。
何よりもボスは、ライオネルの力を信じていて、いつも励ましてくれていた、
そのことが彼を後押しする。

50年代のニューヨーク。
大きな公園の造成やら高速道路やらのために、
多くの人々が立ち退きを余儀なくされ、スラムも発生、
・・・そんな時代背景を反映していて、
まあ、実際にあったかもしれないような金持ち本意の街作りの思想が表されています。
いかにも50年代というような、人々のファッションや行き交う車、オフィスの様子。
完璧です!!

調査が進むうちに、何やら真相に近づいては来る。
が、それにしても何か欠けているピースがあるような気がする。
何やらすっきりしないもどかしい感じ・・・。
それがライオネルの思いですが、見ている私たちも同様です。
その最後の鍵はフランクが残していてくれた・・・!
灯台もと暗し、とでもいうそこのところが、良かった。

 

題名の「マザーレス・ブルックリン」は、
フランクがライオネルをよくそう呼んでいた呼び名。
「お母さんがいないブルックリンっ子」みたいな感じでしょうか。
いかにもこの2人の信頼関係が浮かび上がる感じですね。

<Amazonプライムビデオにて>
「マザーレス・ブルックリン」
2019年/アメリカ/144分
監督:エドワード・ノートン
原作:ジョナサン・レセム
出演:エドワード・ノートン、ブルース・ウィリス、ググ・バサ=ロー、
   アレック・ボールドウィン、ウィレム・デフォー

時代性★★★★☆
満足度★★★.5

 


Diner ダイナー

2020年06月14日 | 映画(た行)

自分自身も信じられない少女が

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蜷川実花監督作品は、どうも苦手感があってついためらってしまうのです。
あまりにもインパクトが強烈そうで、ちょっと近寄るのが怖いという感じでしょうか。
あれ?そんなわけで結局、今まで見たことがなかったようです💦

元殺し屋の天才シェフ、ボンベロ(藤原竜也)が店主を務める
殺し屋専用のレストラン「ダイナー」。
日給30万円の怪しいバイトに手を出したばかりに、
闇の組織に身売りされた少女オオバカナコ(玉城ティナ)は、
ボンベロに買われてウエイトレスとしてここで働くことに。
ダイナーには一癖も二癖もある不気味な殺し屋たちが訪れます。
気に入らないことがあれば、客同士でも店のものでも、
たちまち殺しあいが始まると言う物騒な場所。そ
してやがて、この闇の世界のボスの座を巡って、殺し屋たちの抗争が始まる・・・。

元殺し屋の天才シェフ?
殺し屋専門のレストラン?
まともに考えると確かに謎だらけのエグい設定ではありますが、
この世界には強烈なインパクトと不思議な魅力がある。

冒頭、カナコは自分が誰にも必要とされていない孤独を独白します。
誰にも必要とされない。
誰も信じられない。
それが故に、自分さえも信じられなくなってしまった・・・。
つまりはそれ自体がもう、殺し屋だらけの世の中にいることと変わらないのです。
たった一つ彼女が得意と言えそうなのが料理。
その一縷の望みにすがり、シェフに料理を教わりつつ、自分の居場所を見出していく。
案外これはオーソドックスなテーマの作品である訳です。


・・・なるほど、これに気をよくして、
食わず嫌いは止めて、他の蜷川実花監督作品にもチャレンジすることにしましょう!

<WOWOW視聴にて>
「Diner ダイナー」
2019年/日本/117分
監督:蜷川実花
原作:平山夢明
出演:藤原竜也、玉城ティナ、窪田正孝、本郷奏多、武田真治、斎藤工
インパクト★★★★★
エグミ度★★★★☆
満足度★★★.5

 


リズム・セクション

2020年06月13日 | 映画(ら行)

暗殺者への道

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日本未公開作品ながら、ジュード・ロウ出演に惹かれて拝見。

3年前、愛する家族を飛行機事故で失ったステファニー(ブレイク・ライブリー)。
そのため生きる気力を失い、ドラッグと売春で廃人寸前となってしまっています。
そんな彼女が、飛行機事故は単なる事故ではなく、
何者かによって仕組まれたものであることを知らされます。
彼女は元MI6のボイド(ジュード・ロウ)に厳しい訓練を受け、
戦闘能力を身につけ、犯人への復讐を誓います。

ごく平凡な穏やかな日常の中で成長していたステファニー。
そんな彼女がボロボロになり廃人同様になっている。
ブレイク・ライブリーの汚れ役、やつれようがなかなかリアルです。
こんな死んだも同様の女が、真相を知りたいばかりに
人里離れたボイドの元を、一縷の望みにすがって訪ねてくるのです。
しかし、ボイドの態度はいかにも辛辣。
そのあまりにも冷たい態度に、ステファニーは憎しみの炎を燃やして立ち向かっていく。
このヒリヒリした師弟関係が見所と言えましょう。


ステファニーは一応及第点の技量を身につけるのですが、
だがしかし、どうしても人を殺すことにためらいを憶えてしまう。
それがネックで、なかなか自分のすべきことを果たせないのです。
その優しさというか、人間性というか、そこを突き破るまでの物語でもある。
ではありながら、どうもそこのところがまどろっこしいというか、
アホのように見えてしまうのですね。
まさに命がけで訓練に励んで、そのあたりで覚悟はできていなかったのか。
昨今、テレビドラマや映画でクールな女スパイやら殺人者があふれているので、
今さらこんな「ためらい」を見せられても、なんだかなあ・・・としか感じない。
というのはこちらの心が殺伐としすぎなのかもしれませんけれどね。
いっそ、人を殺さないことで自分らしさを見出すと言う話ならそれでいい。
でも結局そうじゃない。
だからちょっと、なんか残念な感じのする作品でした。

 

ボイドがステファニーに自分の呼吸と銃の引き金を引くときのリズムの合わせ方を教えるシーンがあるのです。
「心臓の音はドラム、呼吸の音はベース」と。
これが題名の由来。
でも原作の「堕天使の報復」の方がしっくりきます・・・。

<Amazonプライムビデオにて>
「リズム・セクション」
2020年/イギリス・アメリカ、スペイン/109分
監督:リード・モラーノ
原作:マーク・バーネル「堕天使の報復」
出演:ブレイク・ライブリー、ジュード・ロウ、スターリング・K・ブラウン

暗殺者への成長度★★★☆☆
満足度★★★☆☆