映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

アシスタント

2023年09月29日 | 映画(あ行)

性加害を握りつぶす構図

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数百件のリサーチとインタビューで得た膨大な量の実話を元に、
フィクションとして完成させた作品。

名門大学を卒業したジェーン(ジュリア・ガーナー)は、
映画プロデューサーを目指して、有名エンタテインメント企業に就職しました。
業界の大物である会長のもと、ジュニア・アシスタントとして働き始めます。

アシスタントといってもつまりは雑用係。
必要な資料のプリントアウト、出張旅行の手配、
上司や来客が飲み食いしたものの後始末、掃除やゴミの始末も・・・。

でも、ジェーンは気づき始めています。
ここではハラスメントが状態化。
会長の意に背く様なことがあれば、
怒鳴り散らしけなされた上に、反省文を書いてメールで送るようにと言われる・・・。
チャンスをつかむためには会社にしがみついてキャリアを積むしかないと、
耐え続けますが、ジェーンはさらに会長の許されない行為を知ってしまいます・・・。

 

2017年にハリウッドを発端に巻き起こった#MeeToo運動を題材にしています。
つまり本作、私が先に見た「シー・セッド」を
別の視点から見たもの、と言っていいでしょう。

ここに登場する「会長」の実名は出てこないのですが、
映画プロデューサー、ハーベイ・ワインスタインを指すことは明らかです。

ジェーンは、特に会長に目をつけられて入社したわけではないようで、
しばらくは会長の悪癖にも気づいていませんでした。
後に男性の同僚が漏らします。
「きみは大丈夫だ。会長の好みではない」と。

本作はジェーンが体験したある一日だけを順を追って進行します。
早朝まだ暗いうちに、一番乗りで出社。
雑用でもいい、とにかく一生懸命働いて認められ、
本来やりたい仕事に近づきたいという思いにあふれています。

ただ、会長の横暴に、オフィス皆で耐えている感じには気づいている・・・。
この日、また別のアシスタントを入れることになったということで、
いかにも田舎出の若い女性がやってくるのですが、
ジェニーは彼女に高級ホテルを用意するようにと言われます。
ジェニーはその意味に気づいていく・・・。

誰もがその状況を薄々知りながら、
誰も咎めることができないし、もちろん止めることもできない。
それをすれば、職を失うことになる・・・。
このまま見てみないふりをすれば、
社会的にもステータスのある職場で、うまくいけば出世もできるかもしれない。
逆にそれを騒ぎ立てれば、どうなるか分からない、次の仕事さえ危うい・・・。
こんな状況で、「真実」を口にできる人がどれだけいるでしょう・・・。

たった1人の権力をにぎる人物のために、多くの人が複雑な心中を抱えながら、
知らないふりを続けていく
・・・ということの構図がとてもよく見える作品となっています。

被害者本人だけでなく、そういうことを
見聞きしたり感じたりする周囲の人たちの行動をこそ、変えていくことが大切。
この度のジャニーズの問題を、こういうことの規範として行ければいいなと思います。

 

<サツゲキにて>

「アシスタント」

2019年/アメリカ/87分

監督:キティ・グリーン

出演:ジュリア・ガーナー、マシュー・マクファディン、マッケンジー・リー、クリスティン・フロセス

 

性加害の構造度★★★★★

危機感度★★★★☆

満足度★★★★☆


四畳半タイムマシンブルース

2023年09月28日 | 映画(や行)

リモコンの行方

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森見登美彦さんのベストセラー小説「四畳半神話大系」と
劇団ヨーロッパ企画の人気舞台「サマータイムマシン・ブルース」がコラボレーションした
小説「四畳半タイムマシンブルース」をアニメ化したもの。

「サマータイムマシン・ブルース」は、実写映画化されたこともあって、私は大好きでした!

大学生「私」が暮らす、京都左京区の古びた下宿、下鴨幽水荘。
ある夏の日、唯一のエアコンのコントローラーが、
悪友・小津のために故障して使えなくなってしまいます。
そんなところへ、見知らぬ男子学生・田村が現れ、
25年後の未来からタイムマシンでやって来たといいます。
「私」はタイムマシンで昨日の夜に戻り、
壊れる前のリモコンを持ってくればいいのではないかと思いつきます。
しかし、小津たち悪友仲間が過去へ戻り、
勝手気ままに過去を改変してしまう。

そもそも、過去を変えるということは時空にひずみが生じ、宇宙の消失にまで繋がるのでは・・・?!
なんとか、つじつまを合わせ、過去と現在の齟齬が乗じないように悪戦苦闘する「私」たち。

・・・という大まかなストーリーに加えて、
「私」のマドンナ・明石さんへの儚い思いの行方も楽しめます。
そして、リモコンの壮大な時空の旅もまたよし。

アニメの雰囲気もまた、カンペキな森見登美彦ワールドを体現していまして、
言うことなし。

<WOWOW視聴にて>

「四畳半タイムマシンブルース」

2022年/日本/92分

監督:夏目真悟

原作(著):森見登美彦

原案・脚本:上田誠

出演(声):浅沼晋太郎、坂本真綾、吉野裕行、本多力、上田誠

 

SF度★★★★☆

森見ワールド度★★★★★

満足度★★★★☆


ひと夏の隣人

2023年09月27日 | 映画(は行)

引きこもりの二人

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有料映画チャンネルIMAGICA TV、イマジカBS開局20周年記念作品。

 

中2の赤石千織(山口まゆ)は、現在不登校で引きこもり中。
学校でのトラブルや両親の離婚などが重なり、相当のストレスを抱えていたようです。

そんな彼女が、窓から見える隣家に引っ越してきた男に興味を持ちます。
その男・鈴木(田口トモロヲ)も何か訳ありで、
引きこもって暮らしているようなのです。

鈴木が部屋で見ていた「愛の嵐」の映画をきっかけに、
2人は言葉を交わすように。
ただ黙って話を聞いてくれる鈴木に、千織は次第に心を開いていきます。

ところがある日、学校の担任が訪ねて来たのをきっかけに、
千織の鬱屈は爆発してしまいます。

 

自分は「普通」ではない、「特別な存在」なんだと思う千織。
この2人は映画の話をすることが多いのですが、千織はどの映画もけなしてばかり。
そんな彼女が唯一気に入ったのが「キャリー」で、
みんなからバカにされのけ者にされていたキャリーが、
最後に恐ろしい力を発揮するというところに共感したようです。

こんなエキセントリックというか、見ようによっては
あまりにも尖っていて独りよがりの彼女の言動を、
バカにせず正面から受け止めてくれる鈴木。
やさしいことは言わないけれど、だからこそ信頼できると感じる千織。
そんな鈴木が好きな映画は「マグノリア」。
この世はどんなことだって起こりうる。
鈴木はそう言うのです。

 

まあ、それにしても千織の担任は、実際最悪ですけどね。
不登校なんて何でもないと強がりを言う千織は、
でも実のところかなりストレスを抱え込んでいるのです。
鈴木と話をすることで少し和らいではいたものの、
担任のダメ押しでついに爆発してしまう!!
全く、ハラハラさせられます。

 

最後の決着は、鈴木の引きこもりの要因もからんで、なかなか見事でした。

最後に千織は「私はやっぱり普通」というのですが、
いやいや、私はどんな人だって「特別」であるべきだと思いますよ。
千織はやっぱり特別です!!

 

鈴木が大事に育てていたのは木蓮ですが、
「マグノリア」は木蓮のことでもありますね。

 

通常の映画検索では出てこない作品なのですが、
これはなかなかの掘り出し物です。

 

<Amazon prime videoにて>

「ひと夏の隣人」

2016年/日本

監督:杉山嘉一

脚本:工藤裕子

出演:山口まゆ、田口トモロヲ、西田尚美、斉藤陽一郎、松本妃代、清水尋也

 

引きこもり度★★★★☆

特別の少女度★★★★★

満足度★★★★☆


ファッション・リイマジン

2023年09月26日 | 映画(は行)

サステナブルなファッションへ

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ファッション業界に一石を投じるドキュメンタリー。

2017年4月、英国ファッション協議会とVOGUE誌は、
「Mother of Pearl」のクリエイティブディレクターである
エイミー・パウニーをその年の英国最優秀新人デザイナーに選出しました。

エイミーは大量消費が当たり前のファッション業界に危機感を抱いていました。
そのため、彼女はこの新人賞10万ポンドの賞金を元に、
「Mother of Pearl」をサステナブルなブランドに変革することを決意します。
デビューまで18か月。
このタイムリミットの中、エイミーと仲間たちは様々な困難に遭遇しながら、
理想の素材を求めて旅をします。

元々エイミーは環境活動家の両親の元で育ちました。
だからこそ、極力環境に負荷をかけない、サステナブルな
ファッションブランドを目指そうと考えたわけです。
ファッションがそんなに環境に負荷をかけているのか?と思いますよね。

今、途方もない量の洋服が生産、販売されているけれど、
そのうちの多くが一年以内に廃棄されている。

ナノプラスチックの海洋汚染が言われていますが、
それは化学繊維の被服を洗濯することで発生するモノがほとんどだそうです。
知らなかった!
また、ウールやコットンの自然素材の場合でも、
それを繊維にしたり染色したりする際に使う化学薬品も相当な量になります。

布を扱う多くの問屋も、その原材料がどこから来たものなのかよく分かっていない。

羊を飼う牧場。
綿花を作る畑。
そこから、糸となって、染色され、織物となる。
その間、何カ国もを渡り歩き、最後にはどこをどうたどって
ここに届いたのかも分からなくなってしまっている。

エイミーはその道筋をはっきり分かるものにしたいと思い、
まずは生産者の所から訪ね歩くのです。

このようなあげくにできあがった被服は、当然通常よりも価格が高くなります。
けれど、素性が知れて良質なモノを長く着るのはいいですね。
私も、できるならそうしたデニムなどを身につけてみたい・・・。

 

けれどファッションブランドでそうしたことに取り組んでいるのはごくわずか。
結局は、このエイミーのブランドも、大量消費の中の
ちょっと毛色の変わったものの一つにしか過ぎない・・・なんてことになってしまいそう。

もっと全体的な意識が変わらないとダメですね。
でも実際問題として、高級なモノは手を出しにくいし・・・。

作中でもほんの少し触れられていましたが、
とんでもなく安い賃金で女性たちが縫製作業に従事している国のこと・・・、
それだからわたし達はとんでもなく安いTシャツなどを手に入れることができる、
というような社会のひずみも知っていなければなりません。

もはや一国だけでなくて、地球上のすべてを巻き込んで、
こんなおかしなことがまかり通っているわけで。

いろいろ考えさせられるのでした。

 

<サツゲキにて>

「ファッション・リイマジン」

2022年/イギリス/100分

監督:ベッキー・ハトナー

出演:エイミー・パウニー。クロエ・マークス、ペドロ・オテギ

社会問題提示度★★★★★

満足度★★★★☆


ひみつのなっちゃん

2023年09月25日 | 映画(は行)

オネエのことは秘密

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元ドラァグクイーンのなっちゃんが急死します。
それで、なっちゃんに一方ならぬお世話になって同じドラァグクイーンの道に入った、
モリリン(渡部秀)、ズブ子(前野朋哉)、バージン(滝藤賢一)の3人が駆けつけました。

この3人は、なっちゃんが故郷の家族にゲイであることも、ドラァグクイーンであることも
隠していたことを知っていたので、あわててなっちゃんの自宅アパートに忍び込み、
証拠隠滅を図ります。
調度そこへ、なっちゃんの母・恵子がやって来て鉢合わせ。
3人はどうにかその場をごまかしますが、恵子から葬儀に参列するように誘われます。
やむなく、3人はオネエを封印して
なっちゃんの故郷・岐阜県郡上八幡の葬儀へ向かうことに・・・。

なっちゃんの家族といってもこの母親だけなのですが、
オネエのなっちゃんの持ち物、化粧道具やら女性の服装やら、
確かに見られればすぐにそれと分かる持ち物でいっぱいですよね。
3人はそれらを必死で隠して処分。
それだけならまだしも、はるばる郡上八幡まででかけて、
ごく普通の男性のフリをしなければなりません。
もっとも道中はその必要はないので、オネエ満開です。
このロードムービー感がまた楽しいのですが。

この郡上八幡という舞台がまた、なんとも雰囲気があっていいですよね。
私も一度だけですが観光で訪れたことがあって、好きな町です。
折しも郡上踊りがおこなわれるお祭りの日。

実は、ズブ子はお姉キャラそのままでテレビなどに出演し、
知名度もあり人気もあるのです。

そのおかげか、お姉キャラも今や特別に「奇異」なものではなく、
むしろ歓迎ムードすらある。確かに、
今はそういう時代になっていますよね。
けれど現実問題として、こんな風な日本情緒たっぷりの田舎町ではどうなのか・・・? 
そんなところも取り入れられた粋な作品だと思います。

本作はまた、オネエではない男性たちが、オネエの役を演じる。
そしてまたオネエなんだけど、オネエではないフリをするという演技が要求されるわけで。
そこのところが、さすがの滝藤賢一さん。
素晴らしかったです。

 

<Amazon prime videoにて>

「ひみつのなっちゃん」

2023年/日本/97分

監督・脚本:田中和次朗

出演:滝藤賢一、渡部秀、前野朋哉、カンニング竹山、松原智恵子

 

コミカル度★★★★★

ロードムービー度★★★★☆

オネエ度★★★★☆

満足度★★★★☆


「薔薇色に染まる頃」吉永南央

2023年09月23日 | 本(その他)

お草さんが誘拐犯!?

 

 

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コーヒー豆と和食器の店「小蔵屋」を営むお草は、
愛用していた帯留を一度は売ったものの、手放したことをずっと後悔していた。
そんなある日、それが戻ってきたと連絡がくる。
さっそく東京の店に向かうお草だが、
そこで、旧知のバーの雇われ店長が血痕を残して忽然と姿を消し、
どうやら殺されたらしいという話を耳にする。

その後、お草は、新幹線の中で何者かに追われている母子に出会い、
事態は思わぬ方向へ……。

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吉永南央さんの小蔵屋シリーズ、文庫最新刊。

本作はコーヒー豆と和食器のお店を営むお草さんと
その周囲の人々の出来事を綴ったものです。
舞台は北関東の地方都市、紅雲町。
というと情緒があってほっこりの物語を想像するかも知れませんが、
これが意外とシビア。
お草さん自身、結婚には失敗し、子供を幼いうちに亡くしているという
翳りを背負いつつ、高齢の今も店を切り盛りしています。
周囲で起こる事件めいたものも、現実的でつらいことが多い。
人の悪意と向かい合いながら、でも信頼できる人々にも囲まれつつ、
毎日を過ごすお草さん。

 

さて、本作はこれまでになくシビアで、
ほとんどサスペンスかハードボイルド仕様になっております。
ここまでのものは珍しいのですが。

というのも、本作、いきなりお草さんが、
ホームグラウンドである紅雲町を離れて、東京に向かうのです。
やはりお草さんにとって、住み慣れた町は安らぎの土地。

東京はそう遠くない所なので、ときおりお草さんも用事で出かけることはありました。
そんな時に、時々顔を合わせていた人物がユージン(ハーフらしい)。
初めての出会いは彼がまだ少年の頃。
明らかに父親から虐待を受けている様子のその少年を、
お草さんは気にかけながらもどうすることもできなかった・・・。
それから時は過ぎて、ユージンはガタイのよい青年になっていますが、
裏社会のボスらしい彼の父の言いなりで生きている様子。

その彼が、どうやら何らかの事件に巻き込まれて
亡くなってしまったらしい・・・。

そのユージンから託された遺言めいた言葉に従って、ある「仕事」をしたお草さん。
そしてその後、かねての予定通り新幹線で京都へ向かうのですが、
その時、何者かに追われている母子に出会い、彼女らの手助けをすることになってしまう。

母親は列車を降りて、追っ手に刺されて倒れてしまう。
残された少年を連れて、お草さんの逃避行が始まります。
しかし、なんとお草さんが誘拐犯と思われてしまい・・・。

 

わけの分からないうちに、容疑者として警察に追われる身になってしまうお草さん。
ひゃ~、なんという展開でしょう。
さすがに今まで、ここまでのはなかったですね。

サスペンス!

相当ビターです。

 

「薔薇色に染まる頃」吉永南央 文藝春秋

満足度★★★★☆


名探偵ポアロ ベネチアの亡霊

2023年09月22日 | 映画(ま行)

嵐のベネチアの夜

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ケネス・ブラナーが監督・制作・主演を務める名探偵ポアロシリーズ。
「オリエント急行殺人事件」、「ナイル殺人事件」に継ぐ第3作で、
今回はイタリアのベネチアが舞台です。

もう探偵は引退しようと思っていたポアロは、ベネチアに滞在しています。
ある日、死者の声を話すことができるという霊媒師のトリックを見破るため、
子供の亡霊が出るという謎めいた屋敷で行われる降霊会に参加することに。

嵐のその夜、集まった者の1人が非常に不可解な状況で殺害されるという事件が起こり、
ポアロがその謎の事件の真相究明に挑みます。

もとより古い陰気な屋敷。
その屋敷ではかつて陰惨なできごとがあったといううわさ。
嵐の夜。
ということで、前2作とは雰囲気が異なり、終始陰鬱。
ときおり鳴り響く大きな音にドキッとさせられます。

幽霊などという非論理的なものを信じないポアロではありますが、
どうもここでは勝手が違って、
不可思議なモノが見えてしまったり聞こえてしまったりする・・・。
実はそのことには理由があったワケなのですが。

ベネチアといえば穏やかな水辺を連想してしまうのですが、
確かに、こんな嵐の日だってあるわけですね。
しかも歴史ある町、建物。
その暗がりに何が潜んでいてもおかしくないような・・・。

時期は第二次世界大戦が終わった数年後というところ。
その影も、この物語には落ちていて、
この雰囲気だけで、私は十分楽しめた気がします。

まあやっぱり、恐いのは幽霊よりも人ですね。

 

<シネマフロンティアにて>

「名探偵ポアロ ベネチアの亡霊」

2023年/アメリカ/103分

監督:ケネス・ブラナー

原作:アガサ・クリスティ

出演:ケネス・ブラナー、カイル・アレン、カミーユ・コッタン、ジェイミー・ドーナン、ティナ・フェイ

 

陰鬱度★★★★★

満足度★★★.5


柄本家のゴドー

2023年09月21日 | 映画(あ行)

父と息子たち

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柄本佑さんと時生さんの兄弟が、父・柄本明さんを演出に迎えて挑んだ
舞台「ゴドーを待ちながら」の稽古場に密着したドキュメンタリー。

佑さんと時生さん2人は、「ET×2」という演劇ユニットを組んでいて、
2014年に「ゴドーを待ちながら」を上演しているのですが、
2017年、父・柄本明を演出に迎え、再び「ゴドーを待ちながら」の公演に挑みます。

ということで、2度目であれば楽勝なのでは?と思ったのですが、
しかし、そう簡単ではない!

「ゴドーを待ちながら」は、不条理演劇の代表とも言えるもの。
私もその題名だけは聞いたことがありますが、実際に見たことはありません。

ウラディミールとエストラゴンという2人の浮浪者が、
ゴドーという人物を待ち続けている、というだけのストーリー。
2人はゴドーに会ったことはなく、
たわいもないゲームをしたり、滑稽で実りのない会話を交わし続けます。

・・・ということで、会話の一つ一つをきけば、普通で、ありきたり。
しかし、そのつながり方、広がり方が一筋縄ではいかず、
結局何を言おうとしているのかよく分からない。
よく分からないから見る人それぞれの解釈があるようでもある。
なので、おそらく演出家によって、ずいぶん違うものになるのでしょう。

この兄弟は、父のダメ出しに苦しめられ続けます・・・。

多分、親子だからこそ、父は常よりももっと厳しくするのでしょうし、
息子たちも甘えは許されないことを骨身に感じている。
もっとこんな風にと、父は言ってはくれるのですが、
具体的にどうすればよいのかよく分からない。
いや~、しんどそうです。

それにしても、柄本明さんの芝居。
さすがベテラン、自己の確立したゴドーの解釈。
2人の息子は全く太刀打ちできない感じです。
こうした偉大な父のもと、今のうちに吸収できるモノは吸収してしまおう
ということで父に演出を依頼したようです。
こんな親子像、厳しいなあ~。

なんにせよ、圧倒されました。

<Amazon prime videoにて>

「柄本家のゴドー」

2017年/日本/64分

演出:山崎裕

出演:柄本明、柄本佑、柄本時生

 

父子対決度★★★★☆

満足度★★★★☆


そして僕は途方に暮れる

2023年09月20日 | 映画(さ行)

ダメ男の行く先

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シアターコクーンで上演された舞台を、
そのまま同じく三浦大輔監督とKis-My-Ft2の藤ヶ谷太輔さんで映画化したもの。

自堕落な生活を続けているフリーターの裕一(藤ヶ谷太輔)。
長年同棲している里美(前田敦子)がいながら、裏切って浮気をしてしまいます。
それに気づいた里美に問い詰められ、
裕一は話し合うこともなく、家を飛び出してしまう。

そんな調子で、親友の伸二(中尾明慶)、
バイト先の先輩(毎熊克哉)、
学生時代の後輩(野村周平)、
姉(香里奈)の元を転々とし、
それぞれの先でバツが悪くなると逃げ出すということを繰り返し、
ついには、故郷北海道の実家の母(原田美枝子)の元にまで行ってしまいます。

しかし、なんとそこでもうまくいかずに飛び出した彼は・・・。

 

藤ヶ谷さんのダメ男ぶりがスバラシイ(?)

どこへ行っても問題の本質と向き合おうとせずに、逃げ出すのみ。
しかし、自分のダメさ加減だけが、その都度ずんずんと胸に迫ってくる。
そしてとりあえず身を落ち着ける先の選択肢も狭まっていって、絶体絶命状態に・・・。
絶対に帰りたくないと思っていた実家に帰るほかなくなってしまうのです。

そんな彼が最後に転がり込んだのか、
家を飛び出して母とは別れていた実父(豊川悦司)の元。
裕一は子どもの頃、父のようにだけはなりたくないと思っていたのですが、
再会してみれば父の姿は今の自分そっくりというのが、
なんともはや、傑作で皮肉なのでした。

そしてまた、なんだかんだとありつつも、
一件落着に思えたシーンの後にあった、どんでん返しが効いている!

 

しかしまあ、そこまでどん底に落ちてそこから立ち上がった裕一なので、
まあそれでも何とかやり直せるでしょうと思えるところが救い。

ダメ男ぶりが見ているだけでも辛くて切なくて、絶望的な気分にさせられるのですが、
そこにまたおかしみもあって、素敵な作品でした。

裕一が訪ねた人々の配役が、またそれぞれ存在感があってナイス!

 

<Amazon prime videoにて>

「そして僕は途方に暮れる」

2022年/日本/122分

監督・原案・脚本:三浦大輔

出演:藤ヶ谷太輔、前田敦子、中尾明慶、毎熊克哉、野村周平、香里奈、原田美枝子、豊川悦司

 

ダメ男度★★★★★

先細り度★★★★☆

満足度★★★★☆


ミステリと言う勿れ

2023年09月19日 | 映画(ま行)

血塗られた狩集家の秘密とは?

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人気漫画を実写化したテレビドラマの劇場版。
人気のエピソード「広島編」です。
私は原作漫画もテレビドラマも大好きで、
かねてから「広島編」は映画向きと思っていたので、
公開を首を長くして待っていました!

広島の名家、狩集(かりあつまり)家を巡る遺産相続事件の顛末です。

広島の美術館を訪れるため広島へやって来た整(ととのう)くん(菅田将暉)が、
ガロくんの知人であると言う女子高生・狩集汐路(しおじ)と出会い、
あるバイトを持ちかけられます。

それというのは、狩集家の莫大な財産を、当主の孫に当たる4人の誰かが相続するために、
遺言書に従って謎を解いていく、その手助けをしてほしいというのです。
時には死者さえ出るというこの家の遺産相続に隠された衝撃の真実とは・・・!?

ということで、広島、旧家、遺産相続。
整くんも思わずつぶやいてしまうのですが「犬神家の一族」めいた、
おどろおどろしさを予感します。

けれど、時代は現在。
若い人が多く登場する本作、物語は軽快に進んでいくのですが、
この狩集家自体に隠された秘密が解き明かされるにつれて、
実際、おどろおどろしい状況が見えてくるのでした。

本作の秘密の一つが、狩集家の人々の髪の毛。
直毛のさらさらヘアの人と天然パーマでくるくる髪の人がいます。
天パがコンプレックスの整くんだからこそ気がついた視点。
そんなところがまた面白い。
ストレートパーマをかけているが実は天パという役柄の
町田啓太さんのくるくる巻き毛も見たかったな・・・。

他人の家に泊まるのもお風呂に入るのも嫌いという整くんに
「めんどくさいな」とはっきり言う汐路ちゃんの
サバサバした性格(でも実はナイーブ)も可愛くて大好き。

 

また、遺産相続候補の4人の配役というのが豪華でステキです。
町田啓太さん、萩原利久さん、柴咲コウさん、そして汐路役の原菜乃華さん。
そしてこの家の顧問弁護士に松下洸平さん。
この役は特に重要なので、この配役には納得。

ときおり挟まる整くんの蘊蓄も健在。
ここはなくてもいいと思う人がいるかも知れませんが、
これこそが整くんなので、これがなければタダの推理ドラマ。
推理ドラマの枠を越えた本作を、じっくり向き合って楽しんでもらいたいです。

整くんが広島を去るときに、いつものマフラーではない!
衣装あわせのミスか?などと思ってしまったのですが
その理由は、エンドロール後に分かるという仕組みになっていますので、
どうぞ最後の最後までご覧ください。

 

次作は、「富山編」で。
よろしくお願いします!!

 

<シネマフロンティアにて>

「ミステリと言う勿れ」

2023年/日本/128分

監督:松山博昭

原作:田村由美

脚本:相沢友子

出演:菅田将暉、原菜乃華、町田啓太、萩原利久、鈴木保奈美、松下洸平、柴咲コウ、滝藤賢一

ミステリ度★★★★★

蘊蓄度★★★★★

満足度★★★★★


「ミステリと言う勿れ 13」田村由美

2023年09月17日 | コミックス

連続と知られていなかった、連続殺人事件

 

 

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刑事・風呂光の祖母の知人が富山で橋から転落して亡くなってしまう。
整は、プライベートでその事故について調べていた風呂光に意見を求められ、
富山を訪れることに。
しかしそこで、思わぬ人々、そして事件に遭遇し--!?

* * * * * * * * * * * *

「ミステリと言う勿れ」の第13巻。
前巻から始まった「富山編」の続きです。

 

刑事・風呂光の関係から、富山を訪れた整くん。
前巻のラストで海岸に倒れていたのは、
人気トラベル雑誌の記者・望月のようでしたが・・・?

 

はい、それは確かに彼で、凍死しているのを発見されたのです。
連絡を受けて現場に駆けつける、流刑事。
ちょうどその時、整くんはその流刑事の家に泊めてもらっていて、
常ならよその人の家では眠れないのに、
なぜか朝までぐっすりと寝てしまっていた・・・。

ふむふむ、ミステリファンとしてはこの辺に怪しさを感じるわけなのですが・・・?

だがしかし、より怪しいのは望月とコンビで動いていて、
いつもいいように望月に使われていた蕪木ですよね。
この2人は、結局何者なのか・・・!?

 

次第に見えてくる2人の奇妙な関係性。
そして望月の異常性。
本作にはなかなか恐ろしいサイコキラーが登場するので、油断なりません。

 

結局の所、ガロくんたちが追っている「星座」と関係した一連の事件と
本作は関係があるのか、ないのか。
まだまだ全貌が見えません。

映画化された「広島編」と合わせて、こちらも「富山編」として
ご当地シリーズを今後も続けてほしいです。
そして本作の映画化も!

とすると、流刑事、望月と蕪木役に誰を当てるか。
そういう想像も楽しい。

 

「ミステリと言う勿れ 13」田村由美 フラワーコミックスα

満足度★★★★☆

 


こんにちは、母さん

2023年09月16日 | 映画(か行)

いくつになったって、女子だから

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大会社の人事部長、神崎(大泉洋)。

人からは出世街道まっしぐらと見えていますが、
実のところ、職場では常に神経をすり減らし、家では妻との離婚問題、
大学生の娘・舞(永野芽郁)との意思不通など、悩みが多い・・・。
ある時、母・福江(吉永小百合)が暮らす下町の実家を訪ねると、
母が何やらイキイキとしていることに気づき・・・。

山田洋次監督、出演が吉永小百合さんに大泉洋さんと来ればもう、
おかしくて、ちょっぴり苦く、そしてやがてほのぼの・・・が、
約束されているようなもの。

とにかく安心して楽しく見ることができます。

神崎は人事部長ということで、リストラも仕事の一つ。
大学時代からの友人にして同期採用の木部(宮藤官九郎)の
首を切らなければならなくなり、苦悩します・・・。
ところがこの木部が断固として退職を拒むので、いよいよ面倒なことになっていく・・・。

そんな神崎は、下町の実家で、
「ひたすら一日せんべいを焼くような、そんな仕事がいいなあ・・・」とぼやくのです。

この神崎の実家は足袋屋で、今も福江が商売を続けています。
今時足袋屋なんて・・・と思ったのですが、
近所の相撲部屋のお相撲さんたちが足袋を買いに来る。
なんだかんだいっても和装には必ず必要となるものでもあるし、
需要は一定数あるわけで、なければ困るものでもありますね。

ところで吉永小百合さんって、何歳?って、調べたら78歳。
ひゃ~、化けもののようにお若いですね。
こんな方なら、恋だってするでしょうよ。

息子は、母が恋をしているなどと聞いて目くじらを立てますが、
ぜんぜんアリだと思います。

というか、「恋」といっても多分、ちょっとした憧れとか
そばにいたいというくらいの気持ちだと思うのですよね。
いくつになっても女子にはそういう所があると思うし、必要だと思う。
その恋が、儚くも散ってしまうときの母の落胆。
切ないですね、一緒に泣きたくなる。
そういう所がさすがの吉永小百合さんの表現力。

そんな中で、唯一若さを放っているのが神崎の娘、永野芽郁さん。
彼女は母親に反発し、家出をしてこの祖母の家にやって来ます。

古い家、老女の一人暮らしの所に、若い女子が入ると途端に華やぎます。
実生活もそうだと思うのですよ。
年寄りばかりを集めたホームやシルバーマンション・・・
そうではなくて、様々な年代の人が近くに住んで協力し合う方が
良くはないかと常々思うのですが・・・。

などと色々考えつつ楽しんだ作品。

 

<シネマフロンティアにて>

「こんにちは、母さん」

2023年/日本/110分

監督:山田洋次

原作:永井愛(戯曲)

脚本:山田洋次、朝原雄三

出演:吉永小百合、大泉洋、永野芽郁、YOU、寺尾聰、田中泯、宮藤官九郎

 

下町度★★★★☆

大企業のサラリーマン度★★★★☆

満足度★★★★☆


桜色の風が咲く

2023年09月15日 | 映画(さ行)

二重の苦しみに襲われながら

* * * * * * * * * * * *

世界で初めて盲ろう者の大学教授となった福島智さんと、
母令子さんの実話を元にしています。

 

関西の町。
教師の夫と3人の息子と暮らす令子(小雪)。

3男・智が、幼少期に失明。
それでも、智は天真爛漫に育ち、やがて、東京の盲学校で高校生活を送るようになります。
ところが、18歳の時に、智は聴力も失うことになるのです。

暗闇、無音の世界。
宇宙に1人で放り出されたような孤独に、
智は気力も奪われてしまいますが・・・。

ここの下りは、涙なくしては見ることができません。
暗闇の生活というだけで大きなハンデなのに、さらに音までも奪われてしまうというのは、
一体どうした神の気まぐれ、というか嫌がらせとしか思えないですよね。
手話も役に立たないというこの状況で、
どうやって人とコミュニケーションをとるのか・・・?

でも、ヒントは点字にありました。
智はもちろん幼い頃から点字を身につけています。
そして母も、なんとか智の力になりたいと思い、点字を覚えていたのです。

その母が、智との日常生活の中で、新たなコミュニケーション手段「指点字」を考案する。
これこそが、智を孤独から救ったのです。
少なくとも盲学校の友人たちには、有用な手段ではあります。

人は大きな困難も乗り越えることができる。
でもそれは周囲の人々とのつながりの中で。
たった1人ではダメなんですね。

そんなことを強く思いました。
心打たれる作品です。

<WOWOW視聴にて>

「桜色の風が咲く」

2022年/日本/113分

監督:松本准平

出演:小雪、田中偉登、吉沢悠、吉田美佳子、山崎竜太郎

 

ハンデキャップ度★★★★★

母の愛度★★★★★

満足度★★★★☆


ノースマン 導かれし復讐者

2023年09月14日 | 映画(な行)

毒母!!

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舞台は9世紀。
スカンジナビア地域のとある島国。

10歳アムレートは、父オーヴァンディル(イーサン・ホーク)王を
叔父・フィヨルニルに殺され、
母・グートルン(ニコール・キッドマン)王妃も連れ去られてしまいます。
一人で祖国を脱出したアムレートは、父の復讐と母の奪還を心に誓う。

数年後、アムレート(アレクサンダー・スカルスガルド)は
ヴァイキングの一員となっています。
フィヨルニルがアイスランドの農場を営んでいることを知り、
奴隷に変装してアイスランドに向かう・・・。

本作は、シェイクスピアの「ハムレット」のもととなった
12世紀の作家・サクソの「アムレート」伝説を元にしています。
ヴァイキングが力を振るった時代の生活や文化がリアルに再現されています。

人々が迷信や暴力、略奪等の混沌の中で生きていた時代。

オーヴァンディルが支配していた国を、その義弟・フィヨルニルが奪ったわけですが、
その後さらにまた別の者が国を奪い、
フィヨルニルは祖国から逃れてアイスランドの辺境の地で農場を営んでいる、
という皮肉な運命も、実にさらりと語られます。
でもまあ、大きな農場の当主として、そこそこ支配的立場にあるわけです。
そこに奴隷としてやって来たアムレート。
しばらくは正体を隠し、復讐のチャンスを狙います。

しかし、驚くべきは終盤の、母・グートルンの吐く言葉。

彼女は決して亡き王にも行方不明の息子にも心残りなどなく、
というよりもそもそも王殺しを焚きつけたのが彼女で、
つまりは彼女は自らの欲望のままに、やりたいようにやって生きていたというわけ。
コワイコワイ・・・。

私には、復讐譚よりもこの魔女的王妃像が心に刺さったのでした。

男の付属物でありがちな、こんな時代の女性にして、
ここまで「自己」中心の強烈な個性には圧倒されてしまう。

ま、それもいいか。

 

<WOWOW視聴にて>

ノースマン 導かれし復讐者

2022年/アメリカ/137分

監督:ロバート・エガース

出演:アレクサンダー・スカルスガルド、ニコール・キッドマン、
   クレス・バング、イーサン・ホーク、ビョーク、ウィレム・デフォー

暗黒の時代度★★★★★

毒母度★★★★☆

満足度★★★.5


ほつれる

2023年09月13日 | 映画(は行)

ほつれて修復不能になっていく夫婦関係

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夫・文則(田村健太郎)との関係がすっかり冷え切っている綿子(門脇麦)。
友人の紹介で知り合った男性・木村(染谷将太)と恋仲になり、頻繁に会っています。

ある日グランピングお泊まりの後、帰宅のため別れた直後、
木村の身に起こった事故・・・。
このことで、綿子の心は大きく揺れ動き、
これまであえて見ないようにしてきたことと向かい合わざるを得なくなります・・・。

綿子も木村も互いに既婚者。
つまり、不倫です。
そもそも綿子の心が夫から離れたのは夫の浮気が原因。
でも、特に仕事もしていない綿子は、あくまでも不倫は不倫として、
夫との離婚までは考えていません。
当然、木村とのことは夫には秘密。
夫の文則はバツイチで、元妻が引き取った子供がいます。
その元妻が子供の面倒を見られないときに、文則に援助の依頼が来る。
そうしたことも、綿子と文則のうまくいかない理由の一端になっているのです。
夫は、最近の互いの関係悪化を憂慮し、なんとか関係を修復したいと思っているのですが、
正直、綿子はそれどころではない心境に陥っていくのです。

一見文則の話し方は穏やかで、妻の気持ちを汲んでいるようではある。
けれど、どこか独善的で、結局は綿子を責めている。
しかし、この感じ、分かります。
こういう人いるよな~、というリアルな感じ。

でも、綿子の方も一方的に虐げられる妻ではなくて、ずるくてしたたかな面も。
だから、双方もう少し互いに本音で話せばいいのに、と思うのですが、
それがなかなか難しいというリアルな夫婦の関係性も分かります。

なんとか取り繕って夫婦の形を守ろうとしてきた2人だけれど、
徐々にほつれ始めた一枚の布は、もはや修復不能になっていく・・・
というような物語でしょうか。

切実だなあ・・・。

 

<シネマフロンティアにて>

「ほつれる」

2023年/日本/84分

監督・脚本:加藤拓也

出演:門脇麦、田村健太郎、染谷将太、黒木華、古舘寬治

 

リアルな夫婦の関係性★★★★☆

不倫度★★★★★

満足度★★★★☆