映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

インフェルノ

2016年10月31日 | 映画(あ行)
仕組まれた罠にご用心



* * * * * * * * * *

ダン・ブラウン原作のラングドン教授シリーズ、第3弾。
本作はいきなり、病院のベッドの上で目を覚ました
ラングドン教授(トム・ハンクス)のシーンから始まります。
彼にはここ数日の記憶がなく、頭には銃弾がかすめたキズ。
しかもそこへ謎の襲撃者が襲い掛かってくる。
わけがわからないながらも、女医シエナ・ブルックス(フェリシティ・ジョーンズ)に助けられ、
病院から脱出します。


この辺で、私は「ボーン・アイデンティティー」を思い出してしまいました。
(先日見直したばかりだったのです。)
記憶を失い、わけがわからないところを、襲撃される。
スリリングですねえ。
冒頭からこんなことをされると、本当に、否応なく物語に引きこまれてしまいます。



ゾブリストという生物学者が、人口増加で
このままでは地球の自然環境破壊の後、人類は滅亡すると唱え、
その対策として死のウイルスを世界へ広めようとしています。
本人はそのウイルスのありかを暗号として残した後、自殺。
随所の美術品に隠された暗号を読み解くために、
ラングドン教授の力が必要となるのです。
教授とシエナは、襲撃者から身を交わしその暗号を読み解くために、
奔走することになります。





フィレンツェ、ヴェネツィア、イスタンブール。
ボッティチェリの「地獄の見取り図」やダンテのデスマスク、
例によって、素晴らしい風景や美術品の登場に、何やらリッチな気分。


その上本作には大きな罠が一つ仕掛けられている・・・、
そして、教授の隠されたロマンスも・・・、
ということで、まあ、退屈しない娯楽作品であります。



インド作品でおなじみのイルファン・カーンの登場が嬉しかった。
始めは大悪人と思えたのですが、
その実のところ・・・という仕掛けもね。


「インフェルノ」
2016年/アメリカ/121分
監督:ロン・ハワード
出演:トム・ハンクス、フェリシティ・ジョーンズ、イルファン・カーン、オマール・シー、ベン・フォスター

緊迫度★★★★★
満足度★★★★☆

人生は小説よりも奇なり

2016年10月29日 | 映画(さ行)
世間の冷たい風に晒されたからこその・・・



* * * * * * * * * *

ニューヨーク・マンハッタンに住む画家ベン(ジョン・リスゴー)と
音楽教師ジョージ(アルフレッド・モリーナ)は、
39年連れ添った同性のカップルです。
2011年にニューヨークで同性婚が可能になったことで、念願かなって入籍。
彼らのことを知っている友人たちはこの結婚を祝福し、パーティーを開きます。

しかし、世間的にはやはりまだ偏見や差別は大きい。
この結婚が知られたことから、ジョージは失職してしまいます。
ベンはもう70歳を超えた高齢でもある・・・。
たちまち二人は生活に行き詰まり、住む家も手放さなければならず、
せっかくの新婚なのに、二人は別々の家に居候をしなければならなくなってしまいます。



ベンは甥っ子の家に。
そこでは反抗期の少年(チャーリー・ターハン)(私好みの美少年!)と部屋を同じにしなければならず、
気を使うこと甚だしい。
またそちらの家族も気遣いで疲れてしまう。
なんとも居心地の悪い日々。
一方ジョージは、友人のゲイカップルの家に同居しますが、
そこでは夜な夜な若い人々が集まってどんちゃん騒ぎ。
落ち着いて居ることも眠ることもできません・・・。
この苦難はいつまで続くのか・・・。



ゲイのカップルの話・・・ということで、
私、さほど興味も持てず公開時には見逃していたのですが、
なかなかどうして、いい話でした。
そもそも、この二人、並の夫婦なんかよりよほどお互いを理解し、いたわりあっています。
39年も共に暮らしていれば、それが当たり前。
それなのにこの歳で離れ離れ、
他人の家に気を使いながら暮らさなければならないことの大変さはつくづく身にしみます。



今は彼らをなんとか応援しようという人々も多いけれど、
これまでの間にはどれだけ偏見や差別に晒されたことか。
そういう辛さを彼ら自身は少しも語らず、受け入れています。
そうしたことで出来上がった絆だから強いのでしょうね。
ラストシーンは、涙、涙・・・。



「人生は小説よりも奇なり」
2014年/アメリカ/95分
監督:アイラ・サックス
出演:ジョン・リスゴー、アルフレッド・モリーナ、マリサ・トメイ、ダーレン・バロウズ、チャーリー・ターハン

長年連れ添った信頼度★★★★★
満足度★★★★☆

「聖なる怠け者の冒険」 森見登美彦

2016年10月28日 | 本(その他)
宵山幻想

聖なる怠け者の冒険 (朝日文庫)
森見登美彦
朝日新聞出版


* * * * * * * * * *

社会人2年目の小和田君は、
仕事が終われば独身寮で缶ビールを飲みながら夜更かしをすることが唯一の趣味。
そんな彼の前に狸のお面をかぶった「ぽんぽこ仮面」なる人物が現れて…。
宵山で賑やかな京都を舞台に果てしなく長い冒険が始まる。
著者による文庫版あとがき付き。


* * * * * * * * * *

宵山で賑わう京都。
赤い浴衣を着た金魚のような少女。
ダルマ。
現実に忍び込む異世界。


どこか幻想的なこの世界観に既視感がある・・・と私は思いました。
そう、「宵山万華鏡」。
それこそは、森見登美彦さんらしさ満載の連作短編集でありました。
なので、それを書いておきながら、本作をなぜ書く必要があったのだろう???
と、思えてしまうのです。


この文庫は、新聞連載されたものをかなり苦労して単行本化し、
更にこの文庫化にあたってかなりの改稿をしているとのこと。
著者にしてもなかなか納得の行かない作品なのではないでしょうか。
(いや、むしろ思い入れがありすぎるのか?)
どうにもテーマがはっきりしないというか、結局何をいいたいのかよくわからない。
宵山幻想モチーフを取り込むためにムリに作った物語のようにも思える。
何か残念です。

→「宵山万華鏡」


「聖なる怠け者の冒険」森見登美彦 朝日文庫
満足度★★☆☆☆

グッドモーニングショー

2016年10月27日 | 映画(か行)
緊迫感に欠ける・・・



* * * * * * * * * *

ニュースショーの生放送中に、爆弾男が乱入・・・
といえば最近、ジョージ・クルーニー主演の「マネーモンスター」があったばかり。
対するこちらは君塚良一監督に中井貴一・・・? 
どうなのだろう、お手並み拝見、ということだったのですが・・・。



朝の生放送TV番組「グッドモーニングショー」のメインキャスターである澄田(中井貴一)。
朝は3時起き。
しかしその朝、いきなり妻と息子から面倒な話を持ちかけられ、
また、勘違い女のサブキャスター小川(長澤まさみ)からも、何やら厄介な話が。
おまけにプロデューサー石山(時任三郎)からは、
この番組が近く打ち切りになることを告げられる。
何にしてもお先真っ暗でヨレヨレの澄田ですが、
それでも、いつもの通り番組は始まります。
そんなときに飛び込んできたニュースは、
都内のカフェで人質立てこもり事件が発生したということ。
そしてその犯人・西谷(濱田岳)が、
何故か「澄田を呼べ」と要求していると警察から連絡があるのです。
おそるおそる現場へ向かい、犯人にインタビューを試みる澄田ですが・・・。



「偉そうにいつも上から目線でコメントしやがって。
それに、くだらない番組の垂れ流し、それを謝れ!!」
と、犯人はいきなり澄田に土下座を要求するのです。
しかし次第に、彼がこんなことを引き起こした本当の理由がわかっていく・・・。



ブラックバイトで、どんどん追い詰められていく西谷。
そして、西谷から見た澄田への一方的な繋がり。
現代を象徴するような西谷の抑圧された心情は、一応説得力を持っています。
けれど、全体的に緊迫感にかけるというか・・・。
コメディタッチというところに主眼を置いたからなのかもしれませんが、
なんだか「命がけ」という緊張感が感じられず、
進展もスピーディさに欠けます。
濱田岳さんは、なにを考えているのかよくわからない、というところはいいのですが、
やはり、凶悪犯には見えないな・・・。







そんなことからどうもこれは、TVドラマで十分だったのでは、
と思ってしまいました。
わざわざ映画館に見に来るほどのものでもない・・・。


長澤まさみさんの華麗なる勘違い女は、ナイスでした!! 
この頃の「真田丸」を見て思うのですが、
はじめはそれこそ単なる勘違い娘に見えていたのですが、
最近はすごくいいポジションに落ち着いているのです。
面白い役どころ、こういうのが彼女の見せ所なのか・・・
と、この頃好きになりました。

「グッドモーニングショー」2016年/日本/104分
監督・脚本:君塚良一
出演:中井貴一、長澤まさみ、志田未来、池内博之、林遣都、濱田岳、時任三郎、吉田羊

緊迫度★★☆☆☆
満足度★★.5


リップヴァンウィンクルの花嫁

2016年10月25日 | 映画(ら行)
ギブアンドテイクの関係で?



* * * * * * * * * *

SNSで知り合った相手と結婚することになった七海(黒木華)。
特に情熱があったわけではない。
「お手軽に出会って結婚」、と自分でも思っています。
それで、これは結婚後に少しずつ愛を深めていく男女の物語?
と、思いきや、そうではなかった。
七海は親族が少なく、結婚式の両家のバランスが取れないことから、
「何でも屋」の安室(綾野剛)に、代理出席のメンバー派遣を依頼します。
そして結婚して間もなく、夫に浮気の疑惑が浮上。
しかし何としたことか、七海は逆に義母から浮気の罪を被せられて、
追い出されてしまうのです。
あっけなくも結婚生活は破綻。
行き場を失った七海に、安室は月給100万円という住み込みのメイドの仕事を紹介します。
七海はそこで、メイド仲間の真白(Cocco)と意気投合するのですが・・・。



やれやれ、長い前フリだったのですが、
実は本作、この真白と七海のことがテーマだった・・・。
180分の本作半分くらいはこの前フリだったかも。
でも、七海がここにたどり着く経緯なくして、
七海のこの時の心境は語れないわけでもあります。
そもそも安室とは何者なのか?
月100万円って、それ絶対危ないよ~。
一見人が良さそうには見える安室の行動も怪しすぎるし。
・・・という杞憂も、だんだんワケがわかってきます。



真白はこんなふうに言うのです。

「優しさとか真心なんかを受けると、苦しくなってしまう。」

人から無償で何かをしてもらうとき、
自分はそれに値するのだろうか、と思ってしまうのでしょう。
もしくは、その後裏切られたときのことを考えると怖くなってしまうとか。
だから彼女はあえて「お金で買う」のだといいます。
ギブアンドテイクの関係でいれば、全て割り切って考えられる。
金の切れ目が縁の切れ目。
それでいいと思っている。
けれど少なくとも七海は、そうは思っていないわけですけれど。


こうしてみると安室も実は真白と同じ精神の持ち主のようにも思えるのです。
なんでも引き受ける。
けれど、全てあくまでも「商売」。
本当は人のために何かをすることが好きでしょうがないのに、
冷めたふりして、あえてお金をもらう。
それは結局自分が傷つかないためなのかもしれません。
彼の気持ちの「熱さ」を最後の最後に見ることができますよ・・・。


まあ余談ですが、私、本作の綾野剛さんがすごく気に入りました。
誠実すぎず、ワル過ぎず、実は熱いのに、「仕事」のフリしてる。
こういう役柄、彼には珍しいと思うのですが、素敵です。



ただただ、成り行きで流されて生きていたような七海が、
真白と知り合うことで、確実に自分で歩み始める、
つまりはそういう物語。


結婚式の親族になり替わる代理出席というのはいいですね! 
そんなバイトがあるなら私もやってみたい。
ごちそうも食べられるし・・・。



「リップヴァンウィンクルの花嫁」
2016年/日本/180分
監督・原作・脚本:岩井俊二
出演:黒木華、綾野剛、Cocco、原日出子、地曵豪

ギブアンドテイク度★★★★☆
満足度★★★★☆

「信長協奏曲14」 石井あゆみ

2016年10月24日 | コミックス
ひとときの花

信長協奏曲(14) (ゲッサン少年サンデーコミックス)
石井あゆみ
小学館


* * * * * * * * * *

上杉謙信、死す!!
打倒信長の重要人物を失った足利義昭は、
新たな共謀者を得ようと、織田家武将からの寝返りを
画策する!毛利家の外交僧・安国寺恵瓊の助言のもと、
標的となったのはあの人物…!!
緊張感漂う情勢の最中、織田家内ではサブローの思いつきに
より再びあのイベントが開催されて…!?


* * * * * * * * * *

信長協奏曲の新刊です。
やはりつくづく思うのは、映画化されたものに比べて、
こちらのストーリーのなんと広くて深いこと。
秀吉、蘭丸、おゆきとその周辺の人々がしっかり描写されています。


本作は、上杉謙信が亡くなった、というところから始まります。
これが1578年。
本能寺の変が1582年なので、残された時間も少なくなってきました。
信長は天下統一の夢はまだ果たせず、中国攻めに苦慮。
そんななか、荒木村重の謀反が伝えられたりもする。
(あ~、黒田官兵衛さ~ん(T_T))
という、厳しい状況の中、突然サブロー信長が
柴田勝家率いる越前の陣中に現れて、すもう大会を催します。

「皆さんたまにはリラックスしてね~」

というサブローの心遣い。
リラックスどころか常以上に燃えてしまっている皆様ですが。
お茶々が子どもの部に出場して、男の子に勝ったりしてます。
この先ますます深刻になっていくストーリーの、一時の花。
良いシーンでした。
それにしてもこの中ではまだ明智光秀の動きは特になし。
どうなっちゃうのでしょうねえー。

「信長協奏曲14」 石井あゆみ ゲッサン少年サンデーコミックス
満足度★★★★☆


ハドソン川の奇跡

2016年10月23日 | クリント・イーストウッド
英雄か、犯罪か



* * * * * * * * * *

さて、クリント・イーストウッド監督作品です!!
2009年ニューヨークで実際に起こった航空機事故を描いているんだね。
2009年1月15日乗客乗員155名を乗せた旅客機がマンハッタン上空850メートルでエンジン停止。
バードストライクと言って鳥がエンジンに入り込んじゃったんだね。
空港に引き返すかあるいは別の近くの空港に着陸するという選択肢もあったのだけれど、
 機長チェズレイ・サリンバーガー(トム・ハンクス)は、
 それでは間に合わないと判断して、ハドソン川へ着水したわけだ。

その間、事故発生から208秒。
 ほんとに、あれこれ悩んでるヒマなんかないよね。
しかし、着水したのはいいけれど、1月の凍りつきそうな水がどんどん侵入してくる。
 機長を始め乗務員が乗客を誘導して、翼の上に避難させて・・・。
でもこれはニューヨークという人目の多いところなのが良かったんだよね。
すぐに近くを行く船が救助に駆けつけた。
 結局155名全員が救出されたというのは、やはり奇跡に違いないと思うよ。
そして、その様子はすぐにそのままTVで流されて、
 機長は一躍国民的英雄になったのだけれど・・・。
国家運輸安全委員会が、機長の判断について異議を唱えるんだね。
 機長の判断は本当に正しかったのか、
 あえて乗客を不必要な危険に晒したのではないかと、厳しい追求が始まります。
全員が助かったのは事実だから、はじめからわかっている。
 だけど、実際すごくドキドキさせられちゃいました。
 迫力があって、リアルです。
 実際に自分では絶対に体験したくないと思っちゃったもの。



私、少し前に見た「フライト」という作品を思い出してしまった。
 あれも制御不能の飛行機を背面飛行までしてなんとか着陸に成功し、
 乗客を救った機長が、その直後、罪に問われるという・・・。
 だからもしかしたらその「フライト」は
 このハドソン川の事故をモデルにしたのかと思ったのだけれど・・・。
そうではなくて、それはまた別の事故がモデルだったんだね。
つまり、そういう事故が、結構あるということか・・・。



それにしてもね、実際全員が助かったと言うのに、この理不尽な対応はどうなのよっ!!
 ていうのが本作のキモということだよね。
 結果オーライ、それでいいじゃん、って普通は思う。
でもきっと、この事故の損害を機長の「判断ミス」って言うことで
 責任を押し付けたかった何者か(?)の意図があったんじゃないかなあ・・・。



私はだから本作、機長が責任を押し付けられて終わりなのかと思ってたんですよ、実は。
 でもそうじゃなかった。
そこがやっぱり、イーストウッド監督じゃないですか。
奇跡を起こすのは機械じゃない、人間だって言うのがね、いいですね。
余計な枝葉を付けず、シンプルに一つの顛末にまとめ上げたのがよかったと思う。



「ハドソン川の奇跡」
2016年/アメリカ/96分
監督:クリント・イーストウッド
原作:チェズレイ・サレンバーガー「機長、究極の決断『ハドソン川』の奇跡」
出演:トム・ハンクス、アーロン・エッカート、ローラ・リニー、クリス・バウアー、マイク・オマリー
ドキドキ度★★★★☆
満足度★★★★☆

SHERLOCK シャーロック 忌まわしき花嫁

2016年10月21日 | 映画(さ行)
天才で変人にして、麻薬中毒



* * * * * * * * * *

英BBCのテレビドラマ「SHERLOCK シャーロック」の特別編です。
英米では2016年元日に放送される作品を日本で劇場公開したもの。
本作TV版でベネディクト・カンバーバッチが人気急上昇となったわけですが、
私はTVドラマは見たことがありません。
それで、本作が初体験。



本作、通常は現代が舞台なんですね。
シャーロック・ホームズやワトソンなどの人物設定がそのままで。
ところがこの作品は、シャーロックが過去の未解決事件を推理する、
ということで、シャーロック・ホームズ本来のビクトリア朝ロンドンが舞台となっています。
花嫁姿で自殺した女が、その死後に夫を殺しに現れる・・・。
そんな不可解な事件が起こります。



麻薬中毒のホームズの幻覚か?
ときには幻想的シーンも交えながら、テンポの良い会話でストーリーが進んでいく。
常のTVドラマファンにはたまらないところかと思います。
ワトソン役のマーティン・フリーマンは、「ホビット」のビルボ・バギンスでしたね!
ユニークな作品で、面白いと思いました。





ところで私は、こちらも現代、ニューヨークが舞台の
シャーロック・ホームズ「エレメンタリー」シリーズの方は見ていまして、
これも面白いですよ~。
やはりホームズは麻薬中毒で、治療のプログラムを受けています。
ワトソンは女性。
こちらの小気味よいテンポの速さもタダモノではない。


いつの世も、皆さんシャーロック・ホームズが好きなんですねえ。
(もちろん私も!!)



SHERLOCK/シャーロック 忌まわしき花嫁 (特典付き2枚組) [DVD]
ベネディクト・カンバーバッチ,マーティン・フリーマン,アマンダ・アビントン
KADOKAWA / 角川書店


「SHERLOCK シャーロック 忌まわしき花嫁」
2015年/イギリス
監督:ダグラス・マッキノン
出演:ベネディクト・カンバーバッチ、マーティン・フリーマン、アマンダ・アビントン、ルイーズ・ブリーリー、ユーナ・スタッブス
不可解度★★★★☆
満足度★★★.5

永い言い訳

2016年10月20日 | 映画(な行)
子育ては免罪符?



* * * * * * * * * *

本作は先に原作を読んでから、拝見しました。
こういう場合、ストーリーを知っていてさえもそれ以上に楽しめるものと、
全く期待はずれのものと、
どちらかということが多いのですが、本作は見事に前者。
十分に堪能しました。



人気作家・津村啓(本名・衣笠幸夫)(本木雅弘)が、
突然のバス事故で妻(深津絵里)を亡くします。
しかしその頃、妻に対する愛情はすでに冷め果てていて、
なんとその事故の起きたときには、彼は愛人(黒木華)とともにいた。
妻の死に際しても涙を流すこともなく、
彼は世間に対して、ただ悲しみに暮れる夫を演じるしかなかった。
そんな時、幸夫は同じ事故で亡くなった妻の親友の家族と出会います。
残された夫(竹原ピストル)、小学6年の息子、そしてまだ幼い娘。
その家族の窮状を知った幸夫は思わず子供の世話を申し出るのですが・・・。





幸夫の妻は、まだ幸夫の無名時代から彼を支えて来たのです。
そんな妻に対してのコンプレックスからか、妻からは心が離れていっていた。
妻に対しての自分の行動の罪悪感に押しつぶされそうになりながら、
自分はそうとは自覚していない。
こんな彼の心の空洞を、果たして大宮の家族たちとの交友が埋めることができるのか・・・。



幸夫のマネージャー岸本(池松壮亮)が、そんな彼を見ていいます。
「子育てっていうのは、免罪符なんだ」と。
「今のままではずっと苦しいですよ」と。

育メンは、できない男の“逃げ”だというのですね。
ひゃ~、キツイ。
そんなこと言ったら、せっかく増えてきた男性の育児休業がまた減っちゃうじゃない
・・・と思うのですが、
しかし、それもまたありそうなことではないかと、ヒヤリとさせられます。
いやいや、この人、まだ若いのにこんなにも幸夫の心中を読んでしまう。
一体何者? 
どういう人生をこれまで歩んできたんだっ?
と若干思ってしまいましたが。
しかし、この幸夫の場合については、正に的を得た言葉だったわけです。
確かに人の役に立ち、しかも子どもたちと触れ合うことは彼に生きる力を与える。
だけれども、それは彼が妻との関係を真摯に見つめ直すことからの逃げでしかないのですね。
この家族との関係がいつか破綻することは目に見えています。
ただ、相手も心ある者達だったというのがまた問題なのでした。



原作と映画との違うところはいくつかあったのですが、
「なるほど」と思ったのは、
幸夫が最後に妻が切ってくれた髪を、
原作では別の美容院で切って、ヘンテコな髪型で我慢するのですが、
映画ではそのまま伸びっぱなし。
最後に彼の気持ちの整理がついたときにはじめて、
妻の勤めていた美容室に出向いてカットしてもらうのです。
確かに、そのほうがストーリーに説得力がある気がします。



ところで、Kindle限定版で“「永い言い訳」にまつわるXについて”というのが出ていまして、
西川監督の本作にまつわる色々な話があり、
非常に興味深く読みました。
まだ若い女性監督として、人を率いなければならない立場の難しさに触れたところは、
すごくよくわかる気がしました。
これまで組んでいたカメラマンを別の人と変えたり、
新しい助監督を入れたりする時の気苦労、
「小心者」だからと監督はおっしゃるのですが、
いやいや、それが普通の感覚だと思います。
映画作りだけを考えればよいのではなくて、こういう大変さもあるものなのですね。
そして本作では、子役の子に非常に苦労させられたとか・・・。
あえて、プロの子役ではなくてオーディションで素人の子を選んだそうなのですが・・・。
本当に目指すところまでは望めないということなのでしょう、
子役の演技についてはどうしても「甘く」なってしまうのだと。
私、実は本作中で少し感じたのです。
灯ちゃんのセリフがあまりにも「素」で、たしかに自然といえば自然、
しかし全体の流れの中では浮いてしまっているというところが、確かにありました。
しかし、この事情を汲めば、なるほど・・・、です。


「永い言い訳」
2016年/日本/124分
監督・原作・脚本:西川美和
出演:本木雅弘、竹原ピストル、深津絵里、堀内敬子、池松壮亮

満足度★★★★★

「永い言い訳」西川美和

2016年10月19日 | 本(その他)
妻が死んでも、これっぽっちも泣けなかった男のもがき

永い言い訳 (文春文庫)
西川美和
文藝春秋


* * * * * * * * * *

長年連れ添った妻・夏子を突然のバス事故で失った、人気作家の津村啓。
悲しさを"演じる"ことしかできなかった津村は、
同じ事故で母親を失った一家と出会い、はじめて夏子と向き合い始めるが…。
突然家族を失った者たちは、どのように人生を取り戻すのか。
人間の関係の幸福と不確かさを描いた感動の物語。


* * * * * * * * * *

すでに公開されている西川美和監督作品映画の原作です。
待ちきれずに読んでしまいました。
映画のチラシにはこんな言葉が描かれています。

「妻が死んだ。これっぽっちも泣けなかった。そこから愛しはじめた。」

人気作家・津村啓が、長年連れ添った妻を突然のバス事故でなくしてしまうのです。
しかし、その瞬間、あろうことか津村は愛人とともにいた・・・。
妻との関係はすっかり冷め果てていたのです。
葬儀もテレビのインタビューも、冷静にこなした。
と言うより、冷静でいて悲しみを演じるしかなかった。
浮気をしていたことや妻の死に対して何の感慨もわかないことが、
胸中では罪悪感として巨大な闇が横たわっているようにも感じられるのですが、
それでも表面は、見る人が見れば奇異に感じられるほどに、冷静なのです。
そんな彼が変化を見せたのは、同じ事故で亡くなった妻の親友の一家と出会ってから。
残された夫、6年の息子と保育園年中の娘。
仕事を持つ父親が娘の世話をするのも大変で、
やむなく6年の兄が妹の保育園の送り迎えや世話をするという大変な毎日を暮らしているのでした。
そこで津村は、ごく自然に幼い娘の世話を申し出てしまうのです。
自分には子どももなく、子どもの世話などまるで似合わなそうなのに。
始めは限りなくぎこちなく、しかし次第に子どもたちやその父親とも打ち解けて、
津村はそのことに生きがいを感じ始めるのですが・・・。


そこでハッピーエンドにはならないのがミソ。
その関係がある時破綻します。
確かにこの一家とともにいれば孤独ではないし、自己有用感も得られる。
だけれども、これは津村にとってはある意味、『逃げ』なのですね。
本当に向き合うべき、妻とのことからの。


私は津村が思わず家族を援助しようと思ったところはすごく自然なような気がしました。
彼はもともと人様の面倒なんか見るようなタイプではないのです。
けれどそこに本当に困ったひと、特に子供がいて、
自分が手を差し出すことが可能であるとき、
やはり人は手を差し伸ばさずにいられない。
そういうものだと信じたい。
だからここは、津村が自分のためになると思ったからとか
そういう計算づくではなくて、始めたことなのですよね。
ところがそれが思いがけず、ハマるものだった・・・。
でもそれは、双方のためになるようでいて、実はそうではない・・・
というところが、いかにも人間観察の鋭い西川美和さんらしい展開です。


この物語は多分「津村が妻のために涙を流す」、そういうシーンで終わるはず、
と思いつつ読んでいきました。
さて、どうしてそうなりますか、お楽しみに。


いつもながら、西川美和さんの人の心の虚をつくような不思議さを描く手腕にはやられます。
そして一見不思議ではあるけれど、でも考えてみればそうだよね、そうなるよね、
と納得させられてしまうのが凄い。
映画も絶対見に行きます!!


年の離れた兄と妹、兄が妹の面倒をみなくてはならないというところで、
津村が「火垂るの墓」を連想したところがシャレていました。

「永い言い訳」西川美和 文春文庫
満足度★★★★★

ジェイソン・ボーン

2016年10月17日 | 映画(さ行)
自分を取り戻す戦い



* * * * * * * * * *

マット・デイモンのジェイソン・ボーンのシリーズは
まさか続きがあるとは思っていなかったのですが、
見事カムバックでした。
はじめの「ボーン・アイデンティティ」からは15年、
先の「ボーン・アルティメイタム」からはもう9年も経っているんですね。
つい少し前のような気がしていたのに、ビックリ。
というわけで、さすがのマット・デイモンも年を取ったなあ・・・と感じたわけですが、
それがまた、なんだか渋みをまして良かったのでした・・・。



なんとボーンは、ストリートファイトなどして稼ぎながら、身を潜めていたようです。
そこへCIAの元同僚ニッキーが現れる。

CIAが、世界を監視するための極秘プログラムを始動させたというのです。
そこで、時を経てジェイソン・ボーンが再始動!
ボーンの追跡を任されたCIAエージェントのリーは、
ボーンを組織に取り込もうと画策。
彼女の真意は最期まで謎のままです。

また、ボーンに恨みを持つ作戦員(バンサン・カッセル)は
常にボーンを抹殺しようと付け狙う。
四面楚歌の中、
ボーンはかつて自分が「トレッドストーン」計画に自ら身を投じていった理由をも突きとめていきます。



ますます研ぎ澄まされていく情報網の中での戦い。
相変わらずそのスピーディな展開にはドキドキさせられます。
ラスベガスのカーチェイスはすごかった・・・!!



ボーン・アイデンティティ、ボーン・スプレマシー、ボーン・アイデンティティ、
ときて、この度はじめて、フルネームそのものの「ジェイソン・ボーン」ですね。
やっと彼が自分自身を取り戻したということなのでしょう。
なんだか初めからもう一度見たくなってしまいました。

「ジェイソン・ボーン」
2016年/アメリカ/123分
監督:ポール・グリーングラス
出演:マット・デイモン、トミー・リー・ジョーンズ、アリシア・ビカンダー、バンサン・カッセル、ジュリア・スタイルズ

アクション度★★★★☆
満足度★★★★☆

「ナルニア国ものがたり6 魔術師のおい」C・S・ルイス 

2016年10月16日 | 本(SF・ファンタジー)
ナルニア国の始まり

魔術師のおい―ナルニア国ものがたり〈6〉 (岩波少年文庫)
ポーリン・ベインズ,C.S. Lewis,瀬田 貞二
岩波書店


* * * * * * * * * *

別世界へ送りこまれたディゴリーとポリーが、
死滅した都チャーンで魔女をしばる呪文をやぶったため、
2人のいくナルニア国に悪の種がもたらされてしまいます。
―ナルニア国誕生のドラマを語ります。


* * * * * * * * * *

ナルニア国、第6作目。
ここには今まで登場した人物が全くでてきません。
それもそのはず、時代はうんと遡って、
ペベンシー兄弟がはじめてナルニアに行くよりも何十年も前のことです。
ディゴリーという少年が、彼のおじのせいで、
仲良しの少女ポリーとともに別世界へ送られてしまうのです。
始めに行った先は死滅した都チャーン。
そこではディゴリーの好奇心のせいで、恐ろしい魔女を呼び覚ましてしまい、
あげくにその魔女を元のこの世界へ連れ帰ってしまうのです。
その後、ディゴリーとポリー、魔女、魔女を崇拝するおじ、
そしてなんと街馬車の御者と馬までもが
また別の世界へ来てしまう。
そこは始め何もない真っ暗な世界だったのですが、
アスランがナルニアの国を作る様子をすっかり見ることになります。
正に創世記です。


ナルニア国がどうしてできたのか。
アスランが作った世界になぜ魔女が入り込んでいたのか、
本作はこれまでの色々な種明かしがされているのです。


実は本作の主人公ディゴリー少年は、後にペベンシー兄弟がお世話になる屋敷の教授、その人なのでした。
あの時、兄弟たちの不思議な冒険の話を聞いても
ばかにしたりはしなかった、その訳がやっとわかりましたね。
はじめにルーシーが迷い込んだ衣装ダンスにも、しっかりとした曰くがあるのでした。


これまで、ナルニアの北・巨人と魔女の国、
東に大海原とアスランの国、
南にアーケン国と砂漠、そしてカロールメンの国、
ということで3方向のことが描かれてきて、
この度、西のことがわかりました。
ずっと西の果てには銀のリンゴのなる樹がある、と。
でもまあ、これはナルニアの創生期のことなので、その後の姿は少し違うのかもしれませんが。
初代のナルニア国王というのも実に意外なのでしたが、
まあ、それも良しですね。

今回、魔法的なものを使ったのが普通の人間であること。
そして、人間界に来た魔女は魔法が使えない
というあたりが、何やら意味がありそうな気がします。

「ナルニア国ものがたり6 魔術師のおい」C・S・ルイス 岩波少年文庫
満足度★★★.5

母と暮せば

2016年10月15日 | 映画(は行)
今、母のもとに戻ってきた意味



* * * * * * * * * *

かなり切ない物語のようなので、見るのをためらっていましたが、
ようやく見ました。


長崎で助産婦をしている福原伸子(吉永小百合)は、
3年前の原爆で学生の息子・浩二(二宮和也)を亡くしました。
夫は先に亡くなっていて、長男は戦死。
わびしい一人住まいです。
でも、浩二と結婚を約束していた町子(黒木華)が、伸子を心配し、
いつも様子を見に来てくれています。
彼女も浩二のことが忘れられないのです。


そんなある日、伸子の前に浩二が顔を出す。
・・・つまり、幽霊ということなのですが、怖さは全くありません。
浩二は生前と同じように母に快活に語りかけます。
けれど、結局は自分が死んでしまった身であることを思い出したり、
町子のことを思い出したりして涙がこぼれると、
す~っと、姿がかき消えてしまいます。
それでも次第に二人は、町子はもう浩二を忘れて、
いい人がいれば結婚したほうが良いと思うようになっていきますが・・・。



戦死した人の話はどれも辛いものですが、
浩二のように、その死を迎える寸前までごく普通に生活をして、
瞬時に何もわからないままに命を落としたというのもつらいですね。
死の間際にお母さんや恋人のことを思い出す間もなかった。
自分の死を認識することすらも・・・。
「これが自分の運命だった」と、浩二は言うのですが、
母はいいます

「いや、違う。地震や洪水の天災なら運命だけれど、
原爆は落とさないこともできた。」

本作はあの8月9日の3年後から始まるので、
母親がその時どんなに悲しく切なく辛かったのか、その直接的な描写はありません。
でもこういうセリフの端々に、
今でも息子が命を落とさなければならなかったことへの悔しさが
消えてはいないことが伺われます。
そしてまた、本作は、亡くなった人ばかりではなく、
生き延びてしまった人たちの痛みにも触れています。



町子が新たな人生に踏み出そうとするとき、
伸子は自分が勧めたことにもかかわらず、気落ちしてしまうのです。
いよいよ自分は一人になってしまった。
この先生きることの意味さえも見失い・・・。
そうしたときのラストはとても悲しいのですが、
私たちはここではじめて、浩二が姿を表した意味を知ることになるのですね。
そうではないラストもあり得たのかもしれない。
けれども、伸子の心を思うとき、これが最大のハッピーエンドなのだと、
自分に言い聞かせる私がいます。
若い方なら不満かもしれない。
でも私くらいの年なら、ありかな、と思う。

母と暮せば [DVD]
吉永小百合,二宮和也,黒木華,浅野忠信,加藤健一
松竹


「母と暮せば」
2015年/日本/130分
監督:山田洋次
出演:吉永小百合、二宮和也、黒木華、浅野忠信、加藤健一
切なさ度★★★★★
満足度★★★★★

SCOOP!

2016年10月13日 | 映画(さ行)
自堕落な男の再生、そして・・・



* * * * * * * * * *

伝説的スクープをモノにしてきたカメラマン都城静(福山雅治)。
しかし最近は振るわず、芸能スキャンダル専門の中年パパラッチとなっており、
借金と酒にまみれた自堕落な日々を送っています。
そんなある日、写真週刊誌「SCOOP!」の新人記者・生川野火(二階堂ふみ)とコンビを組むことに。



始めはイヤイヤだった野火。
「この仕事、サイテー」と言っていたのが次第にのめり込み、
「この仕事、サイコー」と言うようになる。
そして静にも、芸能人スキャンダルではなく、
ホンモノのスクープを狙おうという気力が芽生えていく・・・。



さて、こんな彼らに時々協力するのが、“チャラ源”(リリー・フランキー)と呼ばれる怪しげな男。
いかにも生活は破滅している様子だけれど、
以前静が大変世話になったということで、
持ちつ持たれつの腐れ縁を続けていたのです。
そしてある時、そのチャラ源が・・・。



都城、野火、チャラ源、
それぞれのキャラがなんとも際立っています。
クールな役柄の多い福山雅治さんは、そのキャラを封印。
すさんで、泥臭く、アクの強い役柄。
それでもやっぱりかっこよかったりするのはもう、仕方ないですが。
一方、二階堂ふみさんは、エキセントリックで理解しがたい女を演ずることが多いのですが、
ここでは威勢のいい元気印の女の子。
これがまた可愛らしくていいんだなあ・・・!
そして壊れた男、チャラ源は、さすがのリリー・フランキーさん。
はまり役。
そして吉田羊さんの頼もしい編集者、これもいい。
ステキに勢いのある作品でした。



原作作品は、1985年原田眞人監督・脚本「盗写1/250秒」とのこと。
「FRIDAY」などの写真週刊誌が脚光を浴び始めた頃の作品ですね。




「SCOOP!」
2016年/日本/120分
監督・脚本:大根仁
出演:福山雅治、二階堂ふみ、リリー・フランキー、滝藤賢一、吉田羊

キャラクター性★★★★★
満足度★★★★☆

「また、犬と暮らして。」穴澤賢

2016年10月12日 | 本(その他)
先の愛犬との別れを経たからこそ

また、犬と暮らして。
穴澤 賢
世界文化社


* * * * * * * * * *

 世界文化社版で重版を重ね、他社の文庫版でもいまだに好評発売中の、
日本一のブログ犬との「別れ(ペットロス)」を描いた『またね、富士丸。』。
当時、愛犬との暮らしを突如奪われ、心を閉じてしまった著者・穴澤 賢氏の
それからと、あらためてまた、真正面から犬と向き合い、新しい暮らしを
スタートさせた穴澤氏のNO DOG,NO LIFEな生活を綴る。


* * * * * * * * * *

以前にもご紹介した、ペットブログ人気NO.1「富士丸な日々」。
そしてまた、その富士丸の衝撃的な急死と
富士丸ロスに陥った著者のこと。
犬好きな友人にその話をすると、彼女もすっかりハマってしまい、
本を買ったので貸してあげる、と渡されたのがこの本です。
私も、ブログ「Another Days」で知っていましたが、
穴澤賢さんは富士丸が亡くなっておよそ2年後に、
ようやくまた別の犬を受け入れる気持ちになったのですね。
それだけでもう、祝福したい気持ちでいっぱいです。


現在著者は、鎌倉で奥様と、大吉と福助という2匹の犬との生活を楽しんでいらっしゃいます。
単に犬と言ってもその性格は実に色々。
著者はブログの中では大吉を「王子」、福助を「タヌ吉」と、よく呼んでいますが、
それがよく個性を表しているようです。
(本作中ではこの呼名は使われていませんが。)
そしてまたときには富士丸との比較も。
でもどれがいいとか悪いとかではなくて、どの犬もそれぞれ大好きなんだなあ
・・・ということが伝わってきます。
富士丸と過ごした日々があったので、
犬を飼うことに大きな気持ちのゆとりを持っていることが伺えます。
犬たちも幸せそうでいいなあ・・・。
鎌倉だし!


"大福" (2匹まとめた著者の呼称。)の子犬の時の写真もあって、めちゃ可愛いです。

「また、犬と暮らして。」穴澤賢 世界文化社
満足度★★★★☆