映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「アラミスと呼ばれた女」宇江佐真理

2017年01月31日 | 本(その他)
開陽丸にいた、男装の通詞

アラミスと呼ばれた女 (講談社文庫)
宇江佐 真理
講談社


* * * * * * * * * *

安政三年、肥前長崎。
出島で働く父から英語や仏語を習う十歳のお柳。
「うち、お父ちゃんのように通詞になりたかとよ」。
女人禁制の職に憧れる幼いお柳の運命は、
釜次郎、のちの榎本武揚との出会いによって大きく変わっていく。
攘夷運動、大政奉還から戊辰戦争へ。
激動の時代に消えた一人の「男装」の通詞。


* * * * * * * * * *

宇江佐真理さん、久しぶりです。
この本はかなり前から買ってあったのですが、
すっかり「髪結い」シリーズにハマって、読み損ねたままになっていました。
しかし本作、もっと早くに読むべきでしたね。
幕末から大政奉還、戊辰戦争・・・激動の時代を
女性ながら通訳として榎本武揚のために尽くした・・・という、
まるでNHKの大河ドラマになりそうな物語だったのです。
しかも、概ねはフィクションではありながら、実際にいたらしいのです。
アラミスと呼ばれるフランス語に長けた女性が。
う~ん、興味が掻き立てられます。


アラミスというのは、「三銃士」の物語の中で、
その三銃士の一人の名前ですね。
麗しく、女性的ということのようです。
男装をしていたお柳が「女性的」なので、
フランス人たちは彼女をそう呼んだらしいです。
しかし、女性なので、表向きにはそういう者がいたという記録はなく、
かろうじて、この時のフランス人のスケッチに留められているのみ。
そこから想像をたくましくしてこのような物語が書けるというのは、さすがです。


そもそも本作、長崎から物語は始まりますが、
お柳は、後に榎本武揚に従い、開陽丸に乗って蝦夷地まで来るのですよ。
開陽丸は、復元したものが江差にありまして、
私も、中の展示を見たことがあります。
榎本武揚ですから、もちろん函館の五稜郭にも行きます。
函館在住だった宇江佐真理さんならではの題材であるわけです。
だから、私も非常に親しみがわきました。
しかし開陽丸にフランス軍人が乗っていたなんて、私、知りませんでした。
(だから、開陽丸の展示をちゃんと見れば、わかっていたはずなんですけどね
・・・情けない)
彼らは、国の軍隊を抜けてまで、幕府軍についたのです。
それもすごいなあ・・・。

予想以上に、胸を打つ、歴史と絡んだ女性の一代記。
いやほんと、しつこいですがこれ、大河ドラマで見たいです。

「アラミスと呼ばれた女」宇江佐真理 講談社文庫
満足度★★★★★

未来を花束にして

2017年01月30日 | 映画(ま行)
信念を貫くことの重み



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1912年ロンドン。
モード(キャリー・マリガン)は洗濯工場で働き、夫・息子と暮らしています。
ある日、女性参政権運動に参加している同僚に誘われるまま公聴会へ行き、
証言する機会を得ます。

「母もこの工場で働いており、自分も赤ん坊の時からそこで過ごした。
賃金は安く、工場の環境は劣悪で、働く女は皆短命・・・。」

彼女は話しているうちに、こんなふうに一生洗濯女でいるしかない現実に気づき、
そして、でも、今とは異なる生き方もあるのではないか、
と思うようになります。

更に彼女はWSPU(女性社会政治同盟)リーダーの
エメリン・パンクハースト(メリル・ストリープ)の演説に感銘し、
運動にのめり込んでいきます。

モードはデモに参加し、ついには逮捕され、
夫(ベン・ウィショー)から家を追い出され、息子に合うことも禁じられてしまうのです。
それでも彼女は諦めない・・・。



これがつい100年ほど前の出来事なんですね。
今や当たり前すぎてありがたいとも思わない私たち女性の選挙権。
しかし、そのためにこんな苦しい戦いがあったとは・・・!
英国ではこのストーリーより50年ほど前から
「女性参政権」を訴える活動はあったようなのです。
しかし、あまりにもおとなしい活動だったため、男たちには聞き流されるのみ。
何しろこの制度のためには法を変えなければならないわけですが、
女性に参政権がない以上、法律はすべて男性が握っている。
彼らは「女なんかに政治がわかるか。口を出されてたまるか。」と思っているので、
はじめから真剣に制度を変えようなどとは思わない。
そういう難しさがあるわけです。
しかも、本作でも見られるように、当の女性の殆どは、無関心。
そしてこの時期、
このままのやり方ではダメだとしびれを切らした推進派の女性たちは
ついに、暴動を起こします。
ショーウィンドウを割ったり、ポストを爆破したり、電線を切ったり・・・。
人に危害を加えないようにと配慮はしながら・・・。


そのような活動に対して弾圧は厳しく、
モードは公安に行動を監視されたり、何度も収監されたりするのです。
信念を貫き通すことは、時には人生や命をも賭さなければならない。
そうした人々のお陰で今がある。
このことを忘れてはならないですね。


ラスト付近はまるでサスペンス作品のようにハラハラさせられました。
しっかり見せて、そして訴えかける力のある作品です。



ちなみに、日本で女性の選挙権が認められたのは、戦後1945年12月。
戦後の民主化で、棚ぼた式に降りてきた形ですが、
でもそれ以前より女性参政権の運動はあったのです。
大正デモクラシーと呼ばれる時代に、あの平塚雷鳥らによって。
でも、キナ臭い時代になり、戦争が始って、それどころではなくなってしまっていたのですね。
本作は老若を問わず、すべての女性に見てほしいです。
そして、男性はどうでもいいから(!)女性は絶対に選挙を棄権しないようにしましょう。
そうしたら、もしかして世の中はもう少し変わるかも・・・ですよ。
本当に、本作を見たら簡単に棄権なんかできません。


「未来を花束にして」
2015年/イギリス/106分
監督:サラ・ガブロン
出演:キャリー・マリガン、ヘレナ・ボナム・カーター、ブレンダン・グリーソン、アンヌ=マリー・ダフ、ベン・ウィショー、メリル・ストリープ

歴史発掘度★★★★★
満足度★★★★★

消えた声が、その名を呼ぶ

2017年01月29日 | 映画(か行)
知られざる歴史と壮大な旅



* * * * * * * * * *

何やらもったいぶって分かりにくい題名なのですが、
最後まで見るとなるほど、大いに納得の題名なのでした。
後から気づいたのですが、私の好きなファティ・アキン監督じゃありませんか! 
やはりこの監督、どうしてか私の心をゆさゆさ揺さぶる・・・。



1915年。
第一次世界大戦中のオスマン帝国、マルディン。
主人公ナザレット(タハール・ラヒム)はアルメニア人で、鍛冶職人です。
妻と双子の娘がいます。
当時のアルメニアはオスマン・トルコの支配下にありました。
トルコ人は概ねイスラム教徒ですが、アルメニア人はキリスト教を信仰しています。
とりあえず家族は平和に暮らしていたのですが、
その夜、いきなりトルコ人の憲兵がやってきて、ナザレットは強制連行されてしまうのです。

日本ではあまり知られていないのですが、
この時がオスマン・トルコによるアルメニア人大量虐殺の始まり。
一説では150万人のアルメニア人が殺害されたといいます。
本作ではナザレットの強制連行シーンのみ描かれていますが、
その後妻や子供はもちろん、残りの家族も町の人々も皆、
トルコ人によって「死の行進」に駆り立てられたことになります。
さて、ナザレットは奴隷のように砂漠の道を作る工事で働かされますが、
その挙句、喉をかき切られて殺されそうになります。
しかし、かろうじて命をとりとめますが、
喉が傷つき話すことができなくなってしまうのです。
戦争が終わり、自由の身となったナザレット。
しかしすでに家族も皆殺されたと聞かされ、絶望に打ちひしがれます。
でもそんな時、双子の娘は生きている、そんな確かな情報を得るのです。
一筋の希望を胸に、絶対に娘達を見つけ出そうと立ち上がるナザレット。
それからの道のりが壮絶なのです。
大西洋を渡りキューバへ。
キューバからアメリカのフロリダ・・・そして最後には雪のノースダコタ。
ナザレットが家を出てから8年が経過しています。



はじめの方に、ナザレットと二人の娘が、空を飛んでゆく鶴を見るシーンがあります。
「飛ぶ鶴を見たものは、遠くへ旅をする」
そんな言い伝えがある、とナザレットは言います。
「じゃあ、私たちはきっといつか、ずっと遠くまで旅をするんだね。」
と娘達がいう。

非常に暗示的なシーンなのですが、
まさか、こんなに遥か彼方までの旅であったとは!!
お金はない、言葉は通じない、ましてやナザレットは話すことができない。
旅だなんて生易しいものではありません。
壮絶で壮大な道のりを、娘に会いたい一心で
生き抜き、歩き続けます。
とはいえ、こんなナザレットを助け、協力してくれる人々もいるのです。
多くは迫害を逃れ故郷を離れた地で新たな生活を始めたアルメニア人。
世界各地にアルメニア人のコミュニティがあるのですね。
こんな言い方は、ありきたりで大げさすぎるかもしれませんが、
しかし、襟を正して本気で言いますね。
「感動に心揺さぶられる作品」でした!!



ちなみに、ナザレット役のタハール・ラヒムは
つい先日見た「ダゲレオタイプの女」に出ていましたね。
意識して見たわけではないのですが、縁があります。

消えた声が、その名を呼ぶ [DVD]
タハール・ラヒム,シモン・アブカリアン,マクラム・J・フーリ,モーリッツ・ブライプトロイ
Happinet(SB)(D)


「消えた声が、その名を呼ぶ」
2014年/ドイツ・フランス・イタリア・ロシア・ポーランド・カナダ・トルコ・ヨルダン/138分
監督・脚本:ファティ・アキン
出演:タハール・ラヒム、シモン・アブカリアン、マクラム・J・フーリ、モーリッツ・ブライブトロイ

歴史発掘度★★★★★
壮絶な旅度★★★★★
満足度★★★★★

「レベレーション-啓示ー2」 山岸凉子

2017年01月28日 | コミックス
「王」を言い当てるジャンヌ

レベレーション(啓示)(2) (モーニング KC)
山岸 凉子
講談社


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山岸凉子さんのジャンヌ・ダルクの物語、第2弾です。
前作ではいよいよ故郷の村を離れるジャンヌ、というところまででしたが、
本巻は、シノン城に赴き、シャルル王太子に対面。
そしていよいよ戦場となるオルレアンに出発する直前までを描きます。


通常、ただの田舎娘が王に「兵を貸してほしい」などと言っても
取り合ってもらえないですよね。
そもそも王の耳まででそんな話が届くとも思えない。
しかしですよ、ジャンヌの「天啓を受けた」という強い自信と使命感、
そして諦めない心が周囲の人を動かしてゆくのです。
しかし、その人々の心をつかむためには、
何かしらの「奇跡的」なできごとが必要。
そこであの有名なエピソードがあるわけです。
城の広間に大勢集まった人々の中から、
一度もあったことのない「王」を言い当てる、という。


本作で、作者山岸凉子さんはハッキリとジャンヌが神からの啓示を受けた、
というふうに表現しています。
ジャンヌはそれに突き動かされるように行動してゆくわけですが、
でも、ジャンヌ自身が奇跡の力を発揮した、
というふうには描いていないのです。
彼女は巧みな観察力と洞察力で王を言い当てたのです。
決して神がかりではない。
強い精神力で人間はどこまで高みに登ることができるのか、
それを言っているようにも思えます。


ところで前作ではジャネットの村の司祭が、
「神の声を聞くという者は時々いるけれども、
そのものはたいてい『逃げたい現実』を持っている」
と言っていました。
それで私はこの人物が現代的思想の代弁者?というように思ったのですが、
なんと本巻ではこの人、
「そうかジャネット、やはり神の声は本当だったのだね。
主よ少しでも彼女を疑う心を持ったわたしをお許しください」
などと言っている。
う~む、この人まで騙してしまうジャンヌ。
一般庶民などイチコロ間違いなし。
髪を切り男装をしたジャンヌは実際カッコイイですしね。
どんどん人の心をひきつけていくジャンヌ。
次巻はいよいよ戦闘に突入でしょうか。
早くも、続きが待ち遠しい。

「レベレーション-啓示―2」山岸凉子 講談社モーニングコミックス
満足度★★★★☆


ダーク・プレイス

2017年01月27日 | 映画(た行)
忌まわしい過去の事件の真相



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1985年、カンザスの田舎町。
母親と娘、二人の惨殺事件が起こりました。
生き残った8歳末娘リビーの証言により、
長男ベンが逮捕され終身刑となります。

事件から28年後。
世間から注目の的になりながらも身寄りのないリビーは、
無気力で自嘲的になっています。
そんなある日、有名事件の真相を語り合う「殺人クラブ」からの招待を受けます。
お金に困っていたリビーは、謝礼金目当てで
これまで思い返すことのなかった忌まわしい事件の真相を探り始めます。



ベンは多分本来は気持ちが優しく真面目な少年だったのでしょう。
けれど事件当時は多感な15歳。
「悪魔信仰」にハマり、また、いわれのない少女へのいたずらを摘発されたりして
世間からの疑惑を受けやすい状況に陥ってしまっていました。
リビーは結局、実際には見てもいない兄の犯行を証言してしまったわけですが、まだ8歳。
あんな事件の後、周囲の大人が皆で「兄さんがやったんだね?」と問い詰めれば、
思わず首を縦に振ってしまうのも止む終えないことに思えます。

そこからは時間が止まったように過ぎていって、
そして28年もの後にまた、時が動き始める。
兄はなぜ殺人を否定しなかったのか。
そしてあの夜、母がリビーに「愛している」と言ったわけ。
ヒントはこのあたりにあるわけですが、
浮かび上がってくる過去は、人々の思惑が錯綜した複雑で皮肉なものでした・・・。



ミステリとしてはなかなか楽しめました。
ショート・ヘアにキャップのシャーリーズ・セロンも素敵ですし、
クロエ・グレース・モレッツの悪女ぶりもいいですね。

ダーク・プレイス [DVD]
リビー:シャーリーズ・セロン,ライル:ニコラス・ホルト,ディオンドラ:クロエ=グレース・モレッツ,パティ:クリスティナ・ヘンドリックス
Happinet


「ダーク・プレイス」
2015年/イギリス・フランス・アメリカ/113分
監督:ジル・パケ=ブレネール
出演:シャーリーズ・セロン、ニコラス・ホルト、クロエ・グレース・モレッツ、クリスティーナ・ヘンドリックス、コリー・ストール、タイ・シェリダン

ミステリ度★★★★☆
満足度★★★.5

ヒトラーの忘れもの

2017年01月26日 | 映画(は行)
極めて一方的な理不尽な任務



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第二次大戦後のデンマーク、史実に基づく物語です。
実はこの日は他の映画を見る予定だったのですが、
ふいに予定が狂ってそちらには間に合わなくなってしまいました。
代わりに、こちらも見たいとは思っていたものですが、
ピンチヒッターとして拝見。
でもたぶん、こちらを見て正解だったと思いました。



ナチスドイツの敗退で、独立を取り戻したデンマーク。
しかし、海岸沿いに無数の地雷が残されていたのです。
ドイツ軍が連合軍の上陸を阻止するために、無茶苦茶に埋めまくったようです。
さて、その海岸に、捕虜となった元ナチスドイツの少年兵たちが連れてこられます。
彼らはほんの即席の訓練を受けただけで、
地雷撤去に当たることを強制させられました。
彼らの監視役ラスムスン軍曹は、
ナチスを憎むあまり彼らに非常に厳しい態度をとります。
ろくに食料を与えなかったり、
具合が悪い者にも休むことを許さなかったり。

一つ間違えば命を落とすこの緊張の作業を、
少年たちは黙々と続けます。
棒一本で地雷を探り当て、素手で信管を外すのです。
しかしやはり事故は起こります。
爆発で瀕死のある少年は、「家へ帰りたい」と泣き叫ぶ。
彼らはまだ子供なのだと、あらためて認識するラスムスン。
そして、無垢な彼らを見、共に行動するうちに、
次第に彼らを不憫に思う心が芽生えてきます。
まるで父親のように・・・。



ラスムスンの気持ちの変化こそが、本作のテーマです。
戦争で敵対したものでも、ひとりひとり向き合って話せば、
そこに憎しみなどはない。
いつも語られる戦争の愚かさはそこにあります。



ナチスに罪はあるが、この少年兵に罪はない。
デンマークにとっては恥部的なこんな物語を、よくぞ作品にしたものです。
本作自体はフィクションなのですが、
ラスムスン軍曹の最後の行為が、私たちの心を少しすくい上げてくれます。
ある意味、そうだったいいな・・・という願いのような終わり方ですが。



「ヒトラーの忘れもの」
2015年/デンマーク・ドイツ/101分
監督:マーチン・ピータ・サンフリト
出演:ローラン・モラー、ミケル・ボー・フォルスガード、ルイス・ホフマン、エーミール・ベルトン、オスカー・ベルトン
歴史発掘度★★★★★
理不尽度★★★★☆
満足度★★★★★

「邪悪 上・下」 パトリシア・コーンウェル 

2017年01月25日 | 本(ミステリ)
ひりひり感がつらい・・・

邪悪(上) (講談社文庫)
池田 真紀子
講談社


邪悪(下) (講談社文庫)
池田 真紀子
講談社


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ハリウッド大物の娘の死を警察は事故と判断しているが、
州検屍局長スカーペッタは疑念を抱く。
それはさながら誰かが彼女だけにわかるよう、
死体に証拠を残しているかのようだった。
FBIの家宅捜索など様々な妨害に遭いながら
事件の背後にある秘密を明らかにしていく一方、
愛する姪のルーシーに危険が迫る。(上)

最愛の姪ルーシーをつけ狙う元FBIの女にフロリダ沖で太腿を撃たれ
瀕死の重傷を負った州検屍局長スカーペッタ。
2ヵ月後、復帰した殺害事件現場で不審な動画メールを受け取る。
それはFBIインターン中の若きルーシーの部屋を盗撮した邪悪な映像の数々だった。
宿敵キャリーの執拗な魔の手が再び忍び寄る! (下)


* * * * * * * * * *

早くもあれから一年たちまして・・・。
コーンウェル「検屍官シリーズ」の最新作です。
物語では、前作からおよそ2ヶ月後ということになっています。
スカーペッタは前作で、大腿部に重症を負い、その傷もまだ癒えてはいません。
しかし、相変わらず忙しく仕事をしているスカーペッタですが、
その日、ハリウッド大物の娘の死亡事故現場に赴いた彼女のもとに、
不審な動画メールが届くのです。
それは、過去1997年、まだFBIにいた姪のルーシーを盗撮した動画です。
20年近くを経て、なぜ今頃こんなものが、誰によって・・・?
スカーペッタにはすぐに想像がつくのですが、
それはすでに死んだとされている危ない凶悪犯のキャリー・グレセン以外にはありえません。
その動画は、一度再生するとそのまま消えてしまい、
後で人に見せることもできないのです。
そんなものが送られてきたという証拠も何もありません。
スカーペッタは、ルーシーのことが心配でいてもたってもいられなくなり、
連絡の付かない彼女の元へ急ぎます。


やはり、ついに蘇ったキャリー。
強敵です。
それにしても、スカーペッタの神経がすり減るような杞憂と、
まだいえない傷の痛みに、こちらの神経が参ってしまいそうになります。
そして基本的に彼女は誰のことも信じられないようなのです。
FBIという仕事に忠実にあろうとする夫ベントンや、
我が子のように思い愛している姪のルーシーにすら危惧を感じている。
長年の仕事のパートナー、マリーノにも若干の壁がある
(それはムリもありませんが・・・)
こういう感じに、最近少し疲れを感じてしまう私なのでした。
もう少し、ノーテンキになれないもんでしょうかね。
いえ、そうした少しの油断が命取りだというのはわかりますが。
でも、キャリーの出現により、まだまだこのヒリヒリした感じは続きそうです・・・。
やれやれ。


そんな中で、私が好きなのはスカーペッタのアシスタントであるブライス。
通常CFCにいて、よくスカーペッタとの連絡窓口になったりします。
彼は非常におしゃべりで、
スカーペッタの急ぎの用事のときでも電話口で長々と冗談を交えて余計なおしゃべりに興じます。
スカーペッタは多分にイライラするわけですが、私は好きですねえ・・・。
ここで緊張が緩んで、ホッとします。


このシリーズでは常に最新の"社会にとっての脅威"が示されるのですが、
今回は"データ・フィクション"。
つまり、ハッキングなどによって電子データが知らないうちに改ざんされたりすること。
そんなことになれば、私たちはニセのデータに踊らされ、
通常の市民生活さえおぼつかなくなってしまうかもしれません。
何もかもコンピュータに頼っている今だからこそ、
ありそうなことで怖いですね・・・。


とりあえず、来年の新作のときには
スカーペッタの怪我だけでも全快していてくれるといいな・・・。

「邪悪 上・下」パトリシア・コーンウェル 講談社文庫
満足度★★★☆☆

DEMONデーモン

2017年01月24日 | 映画(た行)
何のひねりもないけど

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日本では未公開、ということでWOWOW視聴です。


母の遺産の一軒家を相続し、故郷の田舎町に戻ってきたリリアン(ジュリア・スタイルズ)。
ところが間もなく、ブラックウェイ(レイ・リオッタ)という男に
執拗な嫌がらせを受けるようになります。
このブラックウェイという男は、町を暴力で牛耳り、
悪事を思うままに奮っているのです。
リリアンは保安官に相談に行きますが、全く弱腰で、
「早くこの町を出たほうがいい」というだけ。
他の町の人々も、皆同じような反応だったのですが、
製材所のレスター(アンソニー・ホプキンス)という老人と、
彼を慕うネイト(アレクサンダー・ルドウィグ)という青年だけが彼女に味方し、
ブラックウェイに立ち向かう決心をします。


ストーリーは何のひねりもなく、
ひたすら「巨悪」であるブラックウェイとリリアンら3人の対決が描かれます。
しかしまあ、女と老人とひ弱そうな青年というチームに
一体どれだけのことができるのか、そこがミソといえばミソ。
立ち向かう勇気こそが肝心であります。


こんな部の悪い抗争に、なぜ老人が味方することになったか、
というのも大事ですね。
そしてまた、弱っちそうに見えた青年が意外と、
ひょうひょうとしながらもタフで強かったりする。
画面はひたすら暗く陰鬱なムードたっぷり。
でも、そこまで陰惨な雰囲気を出すほどの内容ではなかったかも・・・。
正義は勝つ。
いかにもアメリカ的作品です。


「DEMONデーモン」
2015年/アメリカ/91分
監督:ダニエル・アルフレッドソン
出演:アンソニー・ホプキンス、ジュリア・スタイルズ、レイ・リオッタ、ハル・ホルブルック、アレクサンダー・ルドウィグ

正義は勝つ度★★★★☆
満足度★★.5

「葵の月」 梶よう子

2017年01月23日 | 本(その他)
それぞれの鮮烈な生き様

葵の月
梶 よう子
KADOKAWA/角川書店


* * * * * * * * * *

西丸書院番組頭を務める立原家の娘、志津乃は、
父と継母が進めようとしている新たな縁談に気を揉んでいた。
相手の高階信吾郎は、父と同じ西丸の書院番士であり、武芸に秀でた美男。
誰から見ても申し分のない良縁である。
だが、志津乃には、決して忘れることのできない人がいた。
かつての許婚の坂木蒼馬は、西丸書院番士であったが、
徳川家治の継嗣、家基の死を切っ掛けに突如失踪したのだ。
蒼馬を忘れられずにいる志津乃に対し、
信吾郎は、蒼馬が家基の暗殺を疑われていることを告げるのだった―。
蒼馬が失踪した真相を知るため、志津乃は彼を捜す決意をする。
『ヨイ豊』で注目を集める著者が描く、最新時代長篇。


* * * * * * * * * *

梶よう子さんは、私にははじめての作家です。
本作は確か新聞の書評に取り上げられて興味が湧いたのではなかったっけ?
(図書館に予約を入れてから少し時間が空いたのでよく覚えていない。)
でも、登場人物それぞれに思い入れが湧いて、面白く読みました。


徳川家基の不審な死が、物語の発端となります。
家基と親しくしていた坂木蒼馬という男による暗殺ではないか
との噂もあるなか、彼は失踪。
蒼馬の許嫁であった志津乃が、蒼馬の行方を探そうとします。
蒼馬と同門で、親友でありライバルでもあった高階慎吾は、
一見好感触の剣士。
しかし、彼は心に闇を抱えていることが見えてきます。
武家の娘としてほとんど家から出ず、ただ嫁に行く待機のような生活をしていた志津乃は、
外の世界を知り、どんどんアクティブになっていくのもいいですね。
そして密かに彼女を慕いつつ支えようとする平八くんもいいゾ。


まあ、事件の謎解きというよりも、
この時代に生きる人々の、それぞれの有り様が絡み合う様を楽しんだという感じです。
語り手が入れ替わりながら進んでいくストーリー仕立てと、
それぞれに「月」を織り込んでいく情景もステキでした。
また機会があれば読んでみたい作家さんです。


「葵の月」梶よう子 角川書店
満足度★★★★☆

図書館蔵書にて

アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場

2017年01月22日 | 映画(あ行)
一人の少女か、80人の一般人か



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戦地から遠く離れた会議室で、
ドローン映像により繰り広げられる「戦争」を描きます。
以前「ドローン・オブ・ウォー」という作品で、
少し前ならSFとしか思えないドローンによる空爆のストーリーを見ました。
自分は安全な場所にいて、相手を攻撃すること。
そうしたことによる操縦士のPTSDがテーマでした。



さて、本作は・・・
大規模な自爆テロ計画を、今、正に実行しようとしている集団がナイロビにいる。
パウエル大佐(ヘレン・ミレン)はこれまでの長く地道な活動により、
そのことを突き止めたのでした。
そこで彼らの動向をドローンで監視しつつ、英米合同軍事作戦が始められます。
この、ロンドンの司令部、
米ネバダ州の空軍基地(ドローンの操作室)、
そしてナイロビの現地工作員、
それぞれの場で同じ画像を確認しながら、作戦を進めるのです。



ある家で、自爆テロの準備が行われているのを映像により確認。
先日見た「ある戦争」では、敵を視認しないままに攻撃したことが後に問題とされたのですが、
ここでは、抜かりなくキッチリと人物確認していました。
「おそらく・・・だろう」、ということではダメなのです。
むしろそこが一番肝心な処。
こういうところを見ると、やはり「ある戦争」の判断は甘すぎたのだ、
と言わざるをえないのかもしれません。


さて、犯人の確認もついて、いよいよその家の空爆を行おうとした寸前、
その家のすぐ裏手に一人の少女がやってきてパンを売り始めます。

空爆を実行すれば、少女は間違いなく命を落とすか重症を負うだろう・・・。
そうしたことのパーセンテージを計算する手段さえ彼らは持っている、
というのもすごいですね。
さて、だからといって、このまま空爆を中止し、自爆テロが実行されてしまえば、
おそらく80人あまりの死傷者が出ることは確実。
少女一人のために、80人を犠牲にするのか・・・?
司令室はジレンマに陥ってしまいます。
概ね軍人は実行を、政治家は中止を
のぞんでいるように思えましたが、
みな判断を別の人に任せようとするばかりで
最後の決断を下そうとしない。
無邪気にパンを売る少女と、焦りまくる英米のお偉方の対比。
・・・滑稽といえば滑稽ですが、
本当に、正解はどこにもありそうにない・・・。



本作は、観客に少女への思い入れを作るために、
当初からこの少女の生活を少し描き出しているのです。
自転車屋さんを営んでいるお父さんが、彼女にフラフープを作ってあげて、
無邪気にフープであそんでいる少女。
それをたまたま、ドローンの操縦士がズームして目にしていて、
しばしその光景に和んだりしているわけです。
これはもう、空爆なんかできないですよね・・・。
でも、話はそう甘くはない・・・。



本作ではドローンのみならず、鳥や虫に偽装したカメラも登場して、
驚かされます。
ドローンでは覗くことができない、室内までもを盗撮する事ができるのです。
ただし、操縦はスマホで至近距離でなくてはできないので、
現地工作員が近くから操縦します。
そのあたりは兵が偵察をしていて、
うかつにウロウロしていればすぐに怪しまれて捕まってしまう。
そこで彼はポリバケツ売りのフリをするわけですが・・・。
それこそ会議室にいる人たちの勝手な要望に振り回される彼が、
ちょっと気の毒なようにも思えてきます。
スマホに夢中な彼に、近所の少年が、「ゲームしてるの?、僕にもやらせて」
なんて言ってくるところがまた。
下っ端の四苦八苦がちょっぴりユーモラスでもあるところ。



最後に、ある女性が
「自分は安全なところにいて、こんなこと(空爆)をするなんて・・・」
と、軍のやり方を非難します。
中将であるアラン・リックマンはいう。
「自分は自爆テロの現場処理をいくつもしてその様子を知っている。
安全なところにいる、なんて言わせない。」
まあ、これも一つの答えではありましょう。
でも、正解ではない。


本作、2016年1月に他界したアラン・リックマン追悼の意味も含んでいるようです。
彼の低く響く声が好きでした・・・・。

「アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場」
2015年/イギリス/102分
監督:ギャビン・フッド
出演:ヘレン・ミレン、アラン・リックマン、アーロン・ポール、バーカッド・アブディ、ジェレミー・ノーサン

科学技術度★★★★☆
安全な戦場度★★★★★
満足度★★★★★


ベル&セバスチャン 新たな旅立ち

2017年01月21日 | 映画(は行)
反発し合う父と息子



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先に見て、私が大好きだった「ベル&セバスチャン」の続編です。
日本では公開はなかったのですね。
まあ、なくても良い続編を作って失敗する例は多くあります。
でも本作は本当に必要な続編なのです。
というのは、セバスチャンの父親のことが描かれているので。


アルプスの山でおじいさんセザールと暮らすセバスチャンには両親がいません。
山で行き倒れた女性を救ったのがおじいさんで、
その女性はセバスチャンを産み落として亡くなってしまったのです。
それでセバスチャンはそのままおじいさんに育てられた。
つまりおじいさんとは血のつながりはありません。
ここまでが前作でわかったことでした。
さて、では父親はどこの誰で、どうなっているんだろう・・・
ということが本作で明かされるのです。


戦争も終わり、セバスチャン10歳。
ときには学校をサボってベルと野山で遊び呆けていたりするのはご愛嬌。
そんなある日、セバスチャンが母親のように慕っているアンジェリーナ(セザールの姪)が
帰ってくることになったのですが、帰国途中、飛行機が墜落してしまうのです。
絶対にアンジェリーナは生きていると信じるセバスチャンとセザールは、
飛行機の墜落現場付近まで飛んでくれる飛行機を探します。
それはピエールという男でしたが、
なんと彼こそがセバスチャンの実の父だったのです!
セバスチャンの実の母が持っていたペンダントに刻まれた名前で
それがわかったのですが、当のピエールは何も知りません。
ということで、山火事の山中を初対面の父と息子とがさまようというストーリーになっていきます。


強情でクソ生意気なガキが、自分の息子だったと知るピエール。
こんな無責任なやつが自分の父親だなんて信じたくないセバスチャン。
互いに反目を繰り返しながらも、次第に心をつないでゆくさまが心地よく描かれます。


前作とは趣きは異なりますが、これもなかなか良い物語でした。
相変わらず、セバスチャン役のフェリックス・ボシュエくんがカワイイ! 
あ、もちろんベルもね。
あのモフモフ感、わ~、なでてみたい。
無駄に4日も山を歩き続けたセザールと整備士さん、ご苦労様でした~!

ベル&セバスチャン 新たな旅立ち [DVD]
フェリックス・ボシュエ,チェッキー・カリョ,ティエリー・ヌーヴィック,マルゴ・シャトリエ,ティラーヌ・ブロンドー
TCエンタテインメント


「ベル&セバスチャン 新たな旅立ち」
2015年/フランス/97分
監督:クリスチャン・デュケイ
出演:フェリックス・ボシュエ、チェッキー・カリヨ、マルゴ・シャトリエ、チイエリー・ヌービック
WOWOW視聴にて
親子度★★★★☆
満足度★★★★☆

「怪しい店」 有栖川有栖

2017年01月20日 | 本(ミステリ)
火村英生シリーズファンなら、ぜひ

怪しい店 (角川文庫)
有栖川 有栖
KADOKAWA


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推理作家・有栖川有栖は、盟友の犯罪学者・火村英生を、敬意を持ってこう呼ぶ。
「臨床犯罪学者」と。
骨董品店"骨董 あわしま"で、店主の左衛門が殺された。
生前の左衛門を惑わせた「変な物」とは…(「古物の魔」)。
ほか、美しい海に臨む理髪店のそばで火村が見かけた、列車に向けハンカチを振る美女など、
美しくも恐ろしい「お店」を巡る謎を、
火村と有栖の名コンビが解き明かす。
火村英生シリーズ、珠玉の作品集が登場。


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有栖川有栖さんの火村英生シリーズ。
様々な「店」をテーマにした短編集です。


はじめに取り上げられているのが『古物の魔』で、
古物商で起きた殺人事件。
これを読んでいたら、私も無性に骨董品のお店を覗いてみたくなってしまいました。
もちろん、由緒ある高いものなど買うことはできません。
でもちょっとした置物とかアクセサリ、
どこでどんな人が作って、どんな人が使っていたのだろうと思いながら、
手元にあったりするのは楽しそうです。
買わないまでも、店先で見るだけでもいいですね。


『ショーウィンドウを砕く』は、珍しく倒叙形式。
つまり、犯人の視点で描かれています。
犯人側から見た火村は、
得体が知れなくて見透かれそうで、実に油断ならない感じ。
この話はテレビドラマ版でも使われていました。
・・・いや、他にも使われていたものがあったのかもしれませんが、
何故かこの話の1000円札のエピソードだけ、覚えていまして・・・。
ここのロジックは、さすが有栖川有栖!!


『潮騒理髪店』は、火村が寂れた海辺の町を一人旅するという、
これも珍しいパターン。
旅というか、仕事で訪れた町で、バスの待ち時間に起きたできごとで、
殺人事件は起きません。
いわば「日常の謎」。
火村がほんの数時間そこで見聞きしたことだけで、
一つの謎が解き明かされていきます。
ひなびた味のある秀作。


ラスト、表題の『怪しい店』。
ここに登場するのは<みみや>という店で、
ひたすら人の話を聞くだけのお店。
カウンセリングなどは、とにかく相談者の話を聞くことが大切だといいます。
人は自分の心の中を話すだけで、心の荷を下ろすことがあるらしい・・・。
意外と、身内や友人に言えないこともあるものですよね・・・。
人に話しているうちに、自分の本当にかかえている問題点や、
実は密かに見えている解決策に気づくこともあるでしょう。
だから、これはなかなかほんのりしたストーリーなのかと思いきや! 
やはり、ミステリなので、そう単純な話ではありません。
人の秘密に触れれば、良くない考えも浮かぶもの・・・。
皆様、やはり相談事はきちんと守秘義務を持ったカウンセラーのところへ行きましょう!!


バラエティに富んだ、ステキな一冊であると思います。
私の中ですっかり有栖=窪田正孝、火村=斎藤工のイメージが定着していました。

「怪しい店」有栖川有栖 角川文庫
満足度★★★★★

リピーテッド

2017年01月19日 | 映画(ら行)
一夜が過ぎるたびに失われる記憶



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「私が眠りにつく前に」というイギリスのベストセラー小説の映画化です。



ある事故の後遺症のため、毎朝目覚めるたびに前日までの記憶を失ってしまうクリスティーン(ニコール・キッドマン)。
彼女が記憶しているのは20歳までのことで、
実際は40を過ぎ結婚もしているのに毎朝目覚めるたびに、
結婚生活も何もかもを忘れてしまっているのです。
そのため、夫ベン(コリン・ファース)は、家の壁に結婚写真などを貼り、
彼女が目覚めてそれを見ればとりあえず今の状況がわかるようにしてあるのです。
そして、毎朝繰り返すそのことの説明・・・。
ちょっと気が遠くなりそうです。
それにしても、毎朝目覚めるたびに見知らぬ他人が隣で寝ていて、
自分が夫だなんて言われるのもゾッとしますね・・・。

まあ、この手の記憶障害を扱った作品はこれまでにもありましたが、
このミステリ仕立ての作品は、さすがベストセラーというだけあって、
なかなかよくできています。



ある日、クリスティーンは治療のために毎日のできごとを映像日記で残すことを
医師(マーク・ストロング)から勧められます。
治療で心が乱れると、夫が治療を反対していたため、夫には内緒で。
クリスティーンがそれを続けているうちに、
夫の言うこととは異なる記録があることに気が付きます。
そして、少しずつ記憶の断片が蘇る・・・。


何やらその医師も怪しいし、夫も怪しく思えてきます。
真実は一体どこにあるのか・・・?



ラストで現れる真実には本当に驚かされてしまいました。
ニコール・キッドマン✕コリン・ファースという2大俳優の起用が
実際、効果的だと思います。
おまけにラストシーンにも泣かされまして・・・。
さほど話題にはならなかった作品のように思えるのですが、
私は好きですねえ・・・。



リピーテッド [DVD]
ニコール・キッドマン,コリン・ファース,マーク・ストロング,アンヌ=マリー・ダフ
Happinet


「リピーテッド」
2014年/イギリス・フランス・スウェーデン/92分
監督・脚本:ローワン・ジョフィ
出演:ニコール・キッドマン、コリン・ファース、マーク・ストロング、アンヌ=マリー・ダフ
意外な真相度★★★★★
満足度★★★★☆

「電球交換士の憂鬱」 吉田篤弘

2017年01月18日 | 本(その他)
亡びゆくものへの愛

電球交換士の憂鬱 (文芸書)
吉田 篤弘
徳間書店


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世界でただひとり、彼にだけ与えられた肩書き「電球交換士」。
こと切れたランプを再生するのが彼の仕事だ。
人々の未来を明るく灯すはずなのに、
なぜか、やっかいごとに巻き込まれる―。
謎と愉快が絶妙にブレンドされた魅惑の連作集。


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電球交換士。
本作中の主人公、十文字の自称する肩書です。
切れた電球をひたすら交換するのが仕事。
まあ通常切れた電球くらいは自分で交換するわけですが、
でも高所にあったり、どこかの施設で多量な交換が必要なこともありましょう。
特別ないわけでもない仕事だなあ・・・と私などは思いました。
しかしこの十文字が交換する電球には実は秘密がありまして、
「カンザキ」というメーカーの、今は出回っていない往年の名作ランプを使っているのです。
その光は、見る人が見ればわかる、なんとも言えない落ち着きを感じさせる光。
この仕事には一応満足ししている十文字なのですが、
何故か身の回りで怒る面倒事・・・。
度々陥る憂鬱・・・。


吉田篤弘さん独特の、
どこかノスタルジーに彩られた世界観とユーモアを堪能しました。
本作のテーマは、言ってみれば
亡び行くもの、消え行くものへの愛、でしょうか。
まずは「電球」ですよね。
今はすっかりLEDに入れ替わりつつあります。
本作中では他に、銭湯、活版印刷、古い町名、デパート屋上の遊園地、
極めつけは、確かな固有名詞はでてこないけれども、
どこかの都市の古いタワーと、豪華にそびえる新しいタワー。
人は便利さと新しさを求め、知らず知らずのうちに古いものが消え去っていく。
だけれども、そんなに慌てて新しいものに変えなくてもいいんじゃないかな。
昔からのものの良さもあるのじゃないかな。
そんなふうにチョッピリ立ち止まってみたくなる物語です。


「電球交換士の憂鬱」吉田篤弘 徳間書店
満足度★★★★★

図書館蔵書にて

ペット

2017年01月17日 | 映画(は行)
個性あふれるペットたちを楽しもう



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飼い主が出かけた間にペットたちが巻き起こす大冒険&大騒動のアニメ。
時々はこんなふうに無邪気に楽しめるアニメもいいですね。



ニューヨーク。
テリアのミックス犬マックスは、飼い主のケイティとともに満足な生活を送っています。
そんなある日、ケイティは毛むくじゃらの大型犬デュークを保護して連れてきます。
マックスにとってはいきなりの闖入者。
反発し合うマックスとデュークでしたが、
その翌日、バイトの青年に散歩に連れられている間に迷子になってしまいます。
地下の下水道にたむろする捨てられたペットたちの一団に追いかけられたり・・・
数々のピンチを切り抜ける間に、
二人の間には次第に友情が芽生えていくのでした・・・。



動物たちの個性も様々です。
捨てられたペットたちのボスは、見た目はなんとも可愛らしいウサギ。
しかしこれが実に凶暴だったりするギャップがいいですね。

歩行器をつけた老犬も登場しますが、長老格。
そして意外とアクティブ!
また、見るからに可愛らしいポメラニアンが、
マックスたちの捜索を指揮する、勇気あふれるタフガイだったりするのもステキ。
動物モノは、つまり人間界の縮図だったりするわけです。
ズートピアと同じですね。



でも本作、飼い主のいない間にペットたちは何をしているのだろう、
という興味が出発点で、
犬を飼ったことがある人ならよーく分かる、よくある犬のしぐさが秀逸。
なんとも愛すべき作品となっています。



マックスとデュークがソーセージ工場に入り込んで、
思う様ソーセージを食べまくるシーンが良かったなあ・・・。
犬にとっての夢で、天国みたいなところなんですね。
こちらまで幸せな気分になってしまいます。



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ルイス・C・K,エリック・ストーンストリート,エリー・ケンパー,レイク・ベル,アルバート・ブルックス
NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン


「ペット」
2016年/アメリカ/91分
監督:クリス・ルノー

犬のしぐさ再現度★★★★★
満足度★★★★☆