映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「真田太平記(十二)雲の峰」 池波正太郎

2010年12月31日 | 真田太平記
真田家は永遠に・・・

真田太平記(十二)雲の峰 (新潮文庫)
池波 正太郎
新潮社


              * * * * * * * *

さあ、とうとう最終巻となりました。
大晦日にふさわしく、これを持ってきましたね。
はい。ロングランとなりましたが、ゆっくりたっぷり楽しみました。
切りよく、平成22年で幕としたいと思います。
もう真田幸村もいない・・・。さみしいなあ・・・。
そうだね、だからこの巻は兄信之のその後、ということになるね。
とにかく豊臣家が滅んで、徳川幕府安泰の体制に入りました。
しかし、家康もついに命の尽きるときが来ます。1616年。75歳。
えーと、夏の陣が1615年だから、本当にまもなくなんだね。
結局自分の思いを貫き通して、やるだけのことをやって亡くなったのか・・・。
この本の中では結構嫌な奴だったけど、偉大な人物なのは確かだなあ。

将軍の地位はもう既に秀忠が継いでいたのだけれど、家康亡き後、いよいよ彼が実権を握ることになる。
家康は結構真田信之を気に入っていたんだよね。
自分のお気に入りの重臣の娘をいったん養女としたうえで信之に嫁がせたくらいだから。
ところが問題は秀忠。
彼は関ヶ原の戦いの折、上田城で真田昌幸・幸村に足止めをくらい、
関ヶ原の決戦に間に合わなかったことで、真田家を非常に敵視しているんだよね。
秀忠は信之のことまで逆恨み。信之は始めから徳川方についていたのにね。
ふん、コイツもやな奴だよ・・・。
それでね、前巻にあったシーンだけれど、信之がひそかに幸村と対面したことをかぎつけて、信之の罪を問おうとしたんだ。
しかーし、お江さんらの働きによって、徳川方のこうした企みはちゃんと事前に察知してあった。
信之、慌てず騒がず。
「会ったのは冬の陣と夏の陣の合間の「休戦」中。
しかも、それは亡き家康の指示で会ったのだ」と、家康直筆の書状を突きつける。
ぐうの音も出ない秀忠方。
うひゃー、やったね!!気持ちいいですね!! 


真田の草の者たちはあくまでも昌幸・幸村の元で働いていたんだ。
でもこの度の戦でみな死に絶え(佐助も!!)、残ったのはお江さん一人になってしまった。
このお江さんも60を過ぎているというのに、若い!! 
森光子か?吉永小百合か?って感じだねえ。
それで彼女はこの先どうしようかと途方に暮れるわけだけれど、
信之の家臣のなにやら怪しい行動を見てしまったので、
信之に一応教えておこうと信之の元を訪ねる。
この二人は何となく顔を合わせたことがあるくらいで、特に親しくはなかったんだね。
そう、だから始めはお江さんも、後はもう信之なんかどうなっても知らないワ・・・と思っていたのだけれど、
幸村がとても尊敬していた信之なので、心が動いた。
そうして実際にあってみれば、なるほど、幸村の言葉にウソはない。
身分が下の者にも分け隔てなく接し、本当に信頼が置けて尊敬できるお人柄。
それで、お江さんも、上田城下に移り住み、
ときどき信之の元で情報収集したりすることになった。
幸村亡き後に、こうした彼のゆかりの人たちがつながっていくのがいいね。
気落ちした同士が肩を寄せ合う感じ・・・。


さて、そうは言っても秀忠は着々と幕藩体制を強めていく。
各地の大名があちらへこちらへと移封になる中、信之も安泰ではなかった。
えーと、つまり幕府によって、
アンタは今度からどこそこの地を治めなさいって、いきなり言われるわけだね。
そう。断るなんてとんでもない。それはお家の断絶を意味する。
将軍の命が下れば否応なく一族郎党ひきつれて、
見知らぬ最果て(?)の地に引っ越さなくてはならない。
それで信之は上田の地を去り、松代に行くことになるんだね。
はい! この秋、その松代を訪れたので、そのあたりのことはよく解りましたっ!!
上田と松代はそれほど離れているわけでもないし、
まあ、まだましな方だったと思うね。
それが1622年。
ストーリーはこの信之57歳のところで終わっています。
過ぎ去った日々が思い起こされる、余韻のあるラスト。
いやいや、どうもお疲れ様でした。
タイムマシンに乗って旅をしたような感じです。


さてと、『後書き』として、さらに後の信之のことも記されています。
信之が移ってきて以来、この松代藩はこの地で明治維新まで続くんだよ。
それもすごいよね。
いや、それよりも、この信之さんは93歳まで生きた!
ひゃあ・・・93歳ですか。
今でも充分長寿といえるけど、当時ならほとんど妖怪だね・・・。
弟、幸村の分まで生きたんだよ。
家康、秀忠、家光、・・・と来て四大将軍家綱の時代だって!
う~ん、ざまあごらんあそばせ、ってところだ。
悔しかったら、これだけ生きてみなさいよ!、と。
家康も秀忠もかなわなかったね。
ただ、松代の信之が安泰だったかといえばそうでもなくて、
いろいろお家騒動もあったらしい。
歴史とか、人の営みは奥が深いなあ・・・。

というわけで、ほんとうにこれで読了。
長い間、真田サーガにおつきあいいただきまして、ありがとうございました。


あ、それから皆さん、上田市である署名運動が繰り広げられていました。
それは「真田幸村をNHKの大河ドラマに」という要望の署名です。
もちろん、私も署名してきました。
ストーリーは充分大河ドラマ向きです。
皆様も、もし機会がありましたら、よろしくお願いいたします。
さて、もしそうなったら、幸村は誰がいいでしょうね・・・?
まあ、それはまた別な話・・・。


さて、次はどうします?
今度は伊達政宗あたりを読んで、ぜひ仙台へ行ってみたいと思うのだけれど・・・。
とりあえず年末年始に読むべき本がたまりまくりなので、もう少し先、落ち着いてからにしましょう。
では、またおあいしましょう!
皆様、良いお年をお迎えください。



隠し剣 鬼の爪

2010年12月30日 | 映画(か行)
強い閉塞感の中で、生きてゆく「侍」のむなしさ



           * * * * * * * *

「たそがれ清兵衛」に引き続く山田洋次監督、藤沢周平原作の時代劇です。
そのため、雰囲気は「たそがれ清兵衛」によく似ています。


東北の小藩に仕える下級武士の片桐(永瀬正敏)。
彼は家の奉公人きえ(松たか子)に密かに好意を抱いていたのですが、身分違い。
そもそもそれが恋というものだとも気づいていない。
やがてきえは商家に嫁いでゆくのですが、
そこの姑にこきつかわれ、病で立ち上がることも出来ないほどに衰弱してしまう。
それを聞きつけた片桐はその足で商家へ乗り込み、強引にきえを連れ帰ってくる。

・・・と、このあたりのほのかな男女の心のお話は、
実はサイドストーリーで、本筋はこちら。
片桐と同じ剣の門下に狭間弥市郎というのがいまして、
この男が藩の江戸屋敷で謀反を起こす。
密かに郷里へ護送され獄中にあった彼は、
巧みにも脱走し、農家に人質をたてて立てこもる。
狭間もなかなかの剣の遣い手であるため、
彼を倒せる男として、片桐に声がかかったのです。


片桐はこの封建社会にあって、もがき続けていました。
彼の父は藩のために切腹に追いやられ、
そのため彼の家は減俸となり生活は楽ではない。
強い身分制度のためにきえとの結婚はのぞめない。
そのうえかつての朋友を殺せと迫られる。
すべてにおいて「自分」の考えなど入り込む余地がない。
そこで生き続けることの意味は・・・?

強い閉塞感の中で、生きてゆく「侍」のむなしさ、
このテーマは「たそがれ清兵衛」や最近の「必死剣鳥刺し」にも通じています。
さあ、片桐は狭間との戦いで、秘伝の「隠し剣鬼の爪」の技を使うのでしょうか?
いえ、その技は別の意外なところで使うことになるのですが・・・・・。



全編を通じて、やわらかな庄内弁。
これが何とも耳に心地よいですね。
藩のお侍たちの会話が何とも長閑でユーモラス。
江戸から来たお役人が、彼らに西洋式の武器の扱いや、
軍隊としての訓練をするシーンがよかった。
彼の使うエゲレス語はまるでちんぷんかんぷん。
いつもすり足で移動する彼らは、手足を大きく振って走ることが出来ない。
何で一斉に右向いたり左向いたりしなきゃならないんだ、といい出す始末。
これだから田舎侍は・・・、とお役人はぼやく。
なんだかんだ言っても、基本的には長く続いた天下太平の世の中。
平和ボケは仕方ないではありませんか。

しかしそこここに、行き詰まった幕藩体制の様子が見え隠れします。
結局片桐にそれでも生き続ける意欲を繋いだのは、きえの存在なんですね。
希望の見えるラストはうれしい。

隠し剣 鬼の爪 通常版 [DVD]
山田洋次,藤沢周平,迫本淳一,朝間義隆
松竹


2004年/日本/131分
監督・脚本:山田洋次
原作:藤沢周平
出演:永瀬正敏、松たか子、吉岡秀隆、小澤征悦、緒形拳

プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂

2010年12月29日 | 映画(は行)
SFチックアクションファンタジー



            * * * * * * * *

これは私の全く認識不足ですが、TVゲームの映画化なのですね。
ぜんぜん知りませんでした。
そういえばアクションシーンなど、結構派手でリズミカル、片鱗はありました。

舞台は13世紀末中近東。・・・などと聞いてもぜんぜんピンと来ませんが、
まあ、つまりはペルシャ帝国が絶大な勢力を持っていた昔々の物語・・・。
王子ダスタンは王の実の子ではなく、
少年のときにその勇気を王に認められて拾われた養子です。
二人の兄は実子。
けれど仲良く成長した彼ら。
ペルシャ軍は聖地アラートを制圧。
それというのも敵国へ密かに武器を送っているという単なる憶測が元のことでした。
このあたりは、某国が密かに核兵器を隠し持っているという
単なる憶測で戦争を仕掛けた米国を皮肉っているのやらいないのやら・・・。
まあ、それはともかく、
アラートには時間をさかのぼることが出来るという「時間のダガー(短剣)」があり、
それを手に入れようとするある人物のしくんだ企みだったのであります。
またダスタンは、突如父王を殺害したという濡れ衣を着せられ、逃亡生活となります。
アラートの女王タミーナと共に・・・。



時間のダガー。いいですね。
単なるファンタジーにSF要素も加わり、さすがゲームの映画化を匂わせます。
そういえば、ダチョウのレースのシーンなんかがありましたね。
これはチョコボを思わせる。
(私もFFなら知っているんですけど・・・。)
荒くれの盗賊団を装った商人の存在がなかなか効いていました。
彼の座右の銘は「無税」。
いいなあ、こういうの。
日本の映画なら絶対彼は大阪弁だと思う。

ジェイク・ギレンホールの筋肉には目を見張りました。
思わずこれもCG?と思ったりして。
俳優さんというのも大変なものです・・・。
役柄で太ってみたりやせてみたり、筋肉つけてみたり。



まあ、特別目新しいともいえないアクションアドベンチャー作品でありますが、
結局この血のつながらない3兄弟は、
しかし心は固い絆でつながっていて、気持ちの良い作品ではありました。

プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂 [DVD]
ジェイク・ギレンホール,ベン・キングズレー,ジェマ・アータートン,アルフレッド・モリーナ
ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社


2010年/アメリカ/115分
監督:マイク・ニューウェル
制作:ジェリー・ブラッカイマー
出演:ジェイク・ギレンホール、ジェマ・アータートン、ベン・キングズレー、アルフレッド・モリーナ

「真田太平記(十一)大坂夏の陣」池波正太郎

2010年12月27日 | 真田太平記
真田幸村落命

真田太平記(十一)大坂夏の陣 (新潮文庫)
池波 正太郎
新潮社


         * * * * * * * *

ああ・・・。
何だか解説する気力も失せるような・・・。
さみしくて・・・悲しくて・・・そして呆然。
解っていたことではありますが、この巻でついに真田幸村が命を落とします・・・。
大坂夏の陣。


冬の陣の後、関東勢と豊臣勢のまあ、ちょっとした休戦状態だったんだね。
しかし、この間に大坂城の壕が関東勢によってみな埋め立てられてしまった・・・。
それを黙って見ていた関西方も情けないよね・・・。
各地から集まった豊臣に味方しようとする人たちは、そのまま大坂城に残っていたのだけれど・・・。
こんな状態ではもう大坂城に立てこもって籠城することはできない。
討って出て、闘わなければ・・・。
しかし数の上では圧倒的に不利。
大坂勢はもうほとんど負けを覚悟している・・・。
というか、秀頼を取り巻く重臣たちはここに至ってもまだ、
家康の怒りがとけて許されることを期待している・・・。
幸村は、そんな様子をあきれながら、あとは自分の出来るだけのことをするまでと、割り切っているね。
攻められるのを待っていないで、こちらから積極的に攻めなければ・・・
などと言ってもほとんど、耳を貸そうとしない豊臣の人たち・・・。


こんな休戦中のひとときに、幸村は密かに信之と対面を果たしますね。
信之は家康から幸村を徳川側につくよう説得するようにとの命を受けて、
この対面となるのだけれど・・・
信之はもともと説得できるとは思っていなかった。
幸村の気性をよく知っているから。
幸村も、そんなつもりはさらさらなくて、ただ最後に、兄と会ってみたかった。
双方、それだけだったんだね。
静かに酒を酌み交わしながら語り合う二人。
これが最後と二人には解っていた。
ううん・・・じんわりと来るシーンです。


ところで、ここで信之さん、今までのイメージでは考えられないことになってしまいますね。
うん、この二人の出会いをお世話したのが小野のお通という女性なんだけど・・・。
このひと、何故か徳川側の人や豊臣側の人、どちらとも密かに通じているような怪しい雰囲気の人だったよね、これまでは。
そうそう、信之も実はそう思っていた。
でも実際あってみると、謙虚で温かみがあって、すごくステキな雰囲気の人だったんだ。
で、思わずぽーっとなってしまった信之さんは、
何とかまた会いたくて、長い手紙を書いたりする。
それであげくに振られてるのね!
うーん、いい年して、信之さんのこのていたらくは、アンビリーバボーだ・・・。
いや、でも、緊迫感いっぱいのこの巻で、ここだけはすごく微笑ましくて救われたよ・・・。
たぶん、信之の千々に乱れた心の迷いごとなんだよ・・・、ね。


そんな休戦もつかの間、5月(現代の6月)いよいよ決戦の火ぶたが上がった。
関東勢15万5千。
大坂勢7万8千2百・・・。
幸村はとりあえず協力し合えそうな者と作戦を練るのだけれど・・・
できるだけ我慢して、敵をうんと引き付けてから、一挙にたたこう・・・という風に。
けれど、彼らは我慢できずに幸村との約束も忘れて飛び出してしまう。
とにかくこの戦いは幸村が大将のわけではなくて、
何事も彼の思うように運ぶことが出来ない。
そんなもどかしさの中で、あきらめの笑みを口元に漂わせて・・・
それでもやはり、彼は自分の戦いをしようと思う。
一挙に家康を討ち取って見せようと・・・。
最後の真田勢はすごかったですよ・・・。
本当に家康の陣へまっしぐらに突き進んできた。
家康を守るべき者たちの中でも、
あまりの恐ろしさに逃げ出してしまった者も多かったという・・・。
そう、すばらしい戦いぶりでした・・・。
ただ、あまりにも敵の数が多かったんですね。
傷つき疲れた幸村はついに・・・。
幸村49歳ですね。
若くして死んだというイメージが合ったけど、そう若くもないか・・・。
いや、そりゃ当時の平均寿命かも知れないけど、
今で言う49歳なら充分早死にでしょう。
思うに、九度山の蟄居がやっぱり問題だね。
この間にすっかり安穏と生きることに嫌気を感じてしまったんじゃないかなあ・・・。
そんな気持ちが彼を死に急がせてしまった気がするね・・・。
実際、そこで寝返って、徳川にへつらって長生きしてもよかったんだよ・・・。
いやあ・・・そうなったら、真田幸村の名前はぜんぜん残らなかっただろうけどねえ・・・。


幸村が命を落としたのは茶臼山の安居(あんご)神社付近・・・ということでした。
茶臼山は、今動物がある?
そう。思わず地図をみてしまったよ。
かつての合戦の場が今では遊園地だったりする・・・。
時の流れだねえ・・・。
今度、大坂城とかその近辺、是非行ってみたいですね。


それから、幸村の息子大助くん。
彼も最後は幸村と寄り添って最後まで闘いたかったけれど、幸村の命で秀頼の元に行く。
幸村は秀頼に何とか一度でも先頭に立って、皆の気持ちを鼓舞してもらいたいと思っていた。
それで、その話を伝えるために大助を大坂城の秀頼のところに行かせたんだ。
でもぐずぐずしている内にもう敵が攻め込んできて、城に火を放った。
秀頼や淀君とともに大助も命を落とす・・・。

壮絶なのと共に、何だか滅び行くものの美を感じてしまうね。
全く、動揺してしまう一冊でした・・・。


さて、いよいよ残り一冊となりました。
幸村のいない真田太平記・・・。
考えただけで寂しさがこみ上げてしまいますが。
信之のところでもう一波乱ありそうですよ。
では・・・また。

海炭市叙景

2010年12月26日 | 映画(か行)
失ったものの大きさに押しつぶされそうになりながら・・・



            * * * * * * * *

さて、本に引き続いてさっそく映画も見てみました。
この作品の成り立ちもなかなか興味深いものなのです。
函館のミニシアター“シネマアイリス”支配人の菅原和博氏が原作を読み、
是非これを映画化してみたいと思った。
監督は同じく北海道帯広出身の熊切和嘉氏が快諾。
さらに原作者の同級生である西堀滋樹氏などが加わり、制作実行委員会を結成。
市民参加型の映画作りとなったのです。
まさに函館市民の皆さんの協力のたまもので出来上がった作品。
作品中のちょっぴり浜言葉も、なんだかなつかしい。


原作では18の短編から成り立っていたのですが、
この作品ではその中から5編を選び、順に描写されていきます。
そんな中で、冒頭はやはりあの、「まだ若い廃墟」。

失業中の兄妹が初日の出を見るためにロープウェイで山に登る、あのストーリーです。
しかも、このストーリーについては原作にはないシーンも加わり、
かなりの膨らみを持たせています。
兄妹の両親が亡くなった時のこと。
兄がドックでどんなにやりがいを持って働いていたのか。
ドックを縮小する時の組合のいざこざ・・・。
やはりこのストーリーの占める位置はかなり重要なのです。
経済的には疲弊した地方都市。
そこに生きるある種のけだるさと厳しさを、まずは突きつける。
この冒頭の一作の位置は揺るがすことはできません。


他には、
立ち退きを拒否する老婆
妻の裏切りに気づいたプラネタリウムで働く男
仕事にも家族関係にも煮詰まっているプロパン屋の若社長
息子に避けられる路面電車の運転士・・・
それぞれかつては幸福な時もあったはずなのですが・・・、
失ったものの大きさに押しつぶされそうになりながらも、生きていく姿が描かれます。



それから、小説との大きな違いがもう一つ。
小説の方は季節が一作ごとに少しずつ進んでいくのですが、
この映画では皆同じ時なのです。
同じ年末。
それぞれの人々のそれぞれのストーリーが実は同時進行している。
互いに接点はないのですが、ラストで傍観者である私たちにだけ解る一つの接点があります。
この演出はちょっと心憎いですね。


結果、この映画作品は、原作と遜色のないすばらしい出来となっていると思います。
先日みた「ノルウェイの森」の小説と映画のギャップ・・・。
(実際はどうであれ、それを感じてしまった人が多い、ということだと思いますが)
それを考えると、この作品のイメージの一致は快挙といってもいいかもしれません 。
もともと、函館をイメージ(というよりはそのものなのですが)した作品ですしね・・・。
この街の持つ雰囲気そのものが、ドラマを内包しているともいえる。
ストーリーは暗いのに、どこかかすかな希望を感じさせるところも、
映画はしっかり描き出しています。
小説も、映画も、どっちが先でも後でも、
きっと満足出来ると思います。

2010年/日本
監督:熊切和嘉
原作:佐藤泰志
出演:谷村美月、竹原ピストル、加瀬亮、三浦誠己、山中崇、南果歩、小林薫

「海炭市叙景」 佐藤泰志

2010年12月25日 | 本(その他)
瓦礫のような街。日の出を見終わったら、兄とその場所に戻るのだ

海炭市叙景 (小学館文庫)
佐藤 泰志
小学館


             * * * * * * * *

映画化されまして、話題の作品です。
この「海炭市」、函館がモデルとなっておりまして、
北海道に住みまた、子供のころ一時函館に住んだこともある私としては
非常に気になる作品なのです。
地元の作品ということで、札幌ではどこの書店も平積みで
大々的に売り出していますけれど・・・。
他の地方の一般の方には、さほど注目を浴びるような作品ではないのだろうなあ・・・。


映画を見る前に、まず・・・ということで本の方を先に読みました。
まずこの著者のことにふれないわけにはいきません。

1949年函館市生まれ。
函館西高在学中に有島青少年文芸賞受賞。
國學院大學哲学科卒業。
81年「君の鳥はうたえる」が第86回芥川賞候補作となる。
以後88回、89回、90回、93回の芥川賞候補作に選ばれながらも、
受賞までにいたらず、90年10月自殺。
享年41歳。
この「海炭市叙景」は、
雑誌<すばる>の88年11月号から90年4月号までに連載されたものですが、
これが遺作となりました。

作品を純粋に味わうのにこのようなことは不必要なのかもしれませんが、
それでも、どうしても著者の感情とストーリーを引き合わせてみたくなってしまいます。
というのも、この冒頭の作品「まだ若い廃墟」が
かなり重要な位置を占める感じがするので・・・。


大晦日が開けた元旦早朝、
ロープウェイふもとの駅の待合室に若い女性がただ一人、いつまでも座り続けているのです。
彼女は兄と二人暮らしなのですが、この冬、双方ともに失業。
二人は家にあった小銭をかき集めて、街を見下ろす山に登り、
初日の出を見ることにしたのです。
登りはロープウェイだったのですが、下りには一人分しかキップが買えなかった。
兄は、自分は遊歩道を歩いて降りるから、下の駅で待っているようにと妹に告げます。
ところが待っても待っても兄は降りてこない。
どう考えても、何かあったとしか思えないのだけれど、
妹は行動を起こすことが出来ない。
数時間が過ぎ、営業時間が過ぎて店の人に声をかけられるまで、
妹はひたすら待ち続けていた。
その後、兄は遊歩道途中の崖で亡くなっているのを発見されます。
ストーリー中『自殺』と、はっきりは書いてありませんが、
明らかにそうだと思われるのですね。
妹はそれを予感しながら、事実を知ることが恐ろしくて何も出来なかった・・・。
山頂で初日の出を眺めながら、会話はなくても兄妹は同じ思いを共有したのです。

そうだった。
あの時、わたしはこの街がただの瓦礫のように感じたのだ。
それは一瞬の痛みの感覚のようだった。
街が海に囲まれて美しい姿をあらわせばあらわすほど、
わたしには無関係な場所のように思えた。
大声をあげてでもそんな気持ちを拒みたかった。
それなのにできなかった。
日の出を見終わったら、兄とその場所に戻るのだ。


その場所に戻ることを拒んだ兄の気持ちを彼女が代弁しているかのようです。


ということで、冒頭作品にはかなり動揺させられるのですが、
以下はこの海炭市に住む様々な人々の日常が、淡々と描写されていきます。
それはこの寂れた地方都市と切っても切り離せない、うらぶれた風景ではあります。
再婚した妻が息子に暴力をふるうことに気づく男。
競馬にのめり込み身を持ち崩す男。
若者に混じり職業訓練所に通う中年男。
妻との不和に悩む男
・・・いってみれば「負け組」に属する人々が主に登場するのですが、
不思議にそれは陰々滅々に陥らない。
もしかするとこれはこの作品の季節の移り変わりのおかげなのかもしれません。
冒頭作は述べたように、大晦日そして元旦の出来事。
それが一作ごとに季節が進んで順に描かれていくのです。
1月、2月、3月・・・。
正直この辺までは、いかに函館でも雪と氷に閉ざされて、
まさしく気持ちが落ち込んでしまう日が続きます。
しかしさらに時は進んで最終話では7月。
春から夏にかけて、梅雨のない北海道はまさに一番過ごしやすく華やかな季節です。
この生命力あふれる季節には、さすがの著者も抗いがたかったか・・・。
どうにも冴えない人々の、冴えないエピソードの連続の中に、
しかし次第に、それでも生きていこうとする生命力のきらめきを感じ始めます。

本来このストーリーは構想としてはここまでが半分で、
この後に夏と秋が来るはずだったのだといいます。
港祭りで賑わう函館を、著者はどのように描写するのか、
是非読んでみたかった気がするのですが、
でもその後の秋がちょっと恐ろしい。
むしろ、ここまでの未完で幸いだったといえるのかも知れません。

満足度★★★★☆

プール

2010年12月24日 | 映画(は行)
あくまでもゆったりと、まったりと・・・水に囲まれて



          * * * * * * * *

先に「マザーウォーター」を見てしまいましてちょっと前後しまししたが、
「かもめ食堂」、「めがね」に続くシリーズ。
「人と場所」のシリーズとも言われているようですが・・・。
ここの舞台はタイです。
タイのチェンマイ郊外。
ゲストハウスで働く母京子を訪ねて、さよがやってくる。
相変わらず、ゆったりまったりと時が過ぎます。
事件らしきものは何もなし。
自分の好きなことためらいがなく正直な母は、
思い立ったらすぐにさよのことなどほったらかしで、
ここ、タイに来てしまったようなのです。
そんな母をあきらめの心境で見ていたさよなのだけれど、
母の元を訪ねてみれば、なんと現地のビーという男の子を育てているという。
気持ちが穏やかではいられないさよ。
けれどもこの地のゆったりした時間に身を置くと、
そんな気持ちも次第に消え去っていく・・・。



南国のゆったりした雰囲気がなんともここちよいですね。
こういう風土の中で生活していると、気持ちが大らかになるのは納得できる気がする。
北海道人の私には夢のような風景です。
長―い冬と、春と一緒にやってくる夏。
そしてあっという間に秋になって散っていく木の葉・・・。
こりゃ性格がセコセコしても仕方ない気がしてきます。



「プール」と題される作品ですが、誰もプールでは泳ぎませんね。
ちょっぴり足を水に浸してみたり、プールサイドでお昼寝したり・・・。
この「人と場所」のシリーズ、実は「人と水」のシリーズですよね。
水による波とか波紋、光、きらめき、音、
そういうものが私たちに癒しを与える。
それは水が命をもたらす根源であるからかも知れません。
まあ、それも行きすぎれば大変なことになるのですが、
これらの作品中では決してその水は暴れ出したりしない。
豊かな水に囲まれながらゆったりと流れる時。
プールという人工物でさえ、癒しとなってしまうのはこの土地柄か。
心のさざ波までもが静まっていくこの地というのは、
実はどこにもあり得ない地で、
これは一つのファンタジーなのではないだろうかと思ったりする。
そんな、ストーリーのない、物語でした。

ここでも、思わずよだれの出る食事風景。
ちらし寿司! 
熱々の揚げバナナ!! 

プール [DVD]
小林聡美,加瀬亮,伽奈,もたいまさこ,シッティチャイ・コンピラ
バップ


2009年/日本/96分
監督:大森美香
原作:桜沢エリカ
出演:小林聡美、加瀬亮、伽奈、もたいまさこ

「チャンネルはそのまま! VOL.3」 佐々木倫子

2010年12月22日 | コミックス
子供の頃から変わらない雪丸嬢

チャンネルはそのまま! 3 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)
佐々木 倫子
小学館


             * * * * * * * *

"あんぽんたん記者、北の空を飛ぶ!!"と、あります。
お馴染みHHTV北海道★テレビに勤める雪丸花子嬢奮闘記、第3弾。

2巻目で私はこんな感想を抱いていました。

大抵はピンボケであり、ドジであるわけですが、時としてこれが思わぬ好展開を見せる。
そんな役回りの雪丸さん。
それで、この巻を見て思ったところが、どうもこの雪丸さんに生彩を欠くといいますか・・・。
どうも本当にただの「バカ」に思えてしまいまして。
単に私の思い過ごしでしょうか。
・・・非常に微妙なところではありますが、大事なところでもあると思います。
ピンボケでもいいけれど、どこか光るところがないと・・・。


しかも、このTVシリーズは長く続かないのではないか・・・などと、
大変失礼なことを・・・。
でも、立派に第3巻まで来ましたねえ・・・。
そこで、私は逆に気が楽になったのでした。
つまり雪丸嬢は天然のピンぼけで、だから面白いと割り切ればいいだけのことだと。
時々光る隠し持った才能なんてのは幻想で、
まあ、褒めるとすれば、一生懸命なところだけ。
まあ、それもいいでしょう。


さて、第20話「翼をください」で、
雪丸嬢は初めてヘリコプターに乗っての取材を体験します。
うーん、ちょっとうらやましいですね。
彼女はその前に先輩や同僚たちから、いろいろなことを吹き込まれる。
万が一のためにマイパラシュートが必要、
パラシュートがないなら傘を持っていけ、
ヘリは土足禁止、
騒音がひどいので筆談、
上空で食べるおにぎりは最高においしい・・・などなど。
すべて真に受けてしまう雪丸嬢。
始めははしゃぎまくっていた彼女ですが、次第に青ざめ緊張した様子になってきます。
パイロットは、もしやトイレを我慢しているのでは・・・と思うのですが、
実は彼女の心配事は・・・。
確かに、彼女はただの"天然"のようです・・・。


このストーリーで好きなのは、
時として、雪丸嬢のはちゃめちゃ度は置いておいて、
地味にがんばっている同僚たちが登場することです。
第18話「ウサギと獅子」では、営業担当の服部君登場。
テレビ局の営業とは、つまりスポンサーを取ってくること。
そのためにはとにかく視聴率がものを言います。
HHTVの最大のライバルはひぐまテレビ。
いや、ライバルというより北海道でもローカル局ダントツなのがこのひぐまテレビで、
実際やることが横暴でキタナイ。
苦戦の服部君。
それでも地道にがんばっております。
まあ、たいていはこういう人たちで社会は成り立っている。
雪丸嬢がそれをかき回すのは、若干の変化をもたらす起爆剤でもあるわけですね。


第16話「農家の子」は、珍しく帰省中の雪丸嬢。
彼女の実家は恵庭市郊外の農家、ということで
TV局に大量の"とうきび"が送られてきたりします。
皆はそのあまりの多さにげんなりしていますが、いいじゃありませんか。
ゆでて冷凍しておけば、当分楽しめますよー。
北海道ではけっして「トウモロコシ」なんて言いませんので、
私も"とうきび"と言わせていただきます。
ここでは雪丸嬢の子供の頃のエピソードが語られますが・・・、
なるほど、よくわかりました。
つまり、雪丸嬢は子供の頃からそのままに成長してしまっただけなんですね。
それはこの家族の影響でもある・・・と。
妙に納得してしまった一冊ではあります。

満足度★★★☆☆

「うたうひと」 小路幸也

2010年12月21日 | 本(その他)
ミュージシャンたちが奏でるハーモニー

うたうひと (祥伝社文庫)
小路 幸也
祥伝社


           * * * * * * * *

小路幸也さんの短編集ですが、この本のテーマは音楽。
様々なミュージシャンたちが織りなすドラマですが、それぞれに切なく温かい。
これはいつもの小路幸也さんそのものなのですが、
その音楽描写の確かさは、著者自身が一時ミュージシャンを志していたたまもの。
その様々な音色をじっくり楽しみましょう。

笑うライオン
笑うライオンこと崎谷貫太は、ドラマー。
ライブの演奏が好きで好きで、うれしくて、
髪を振り乱しながら、ついにこにこ笑って演奏してしまうので、
ついたニックネームがそれ。
彼は母親が苦手だったのです。
しつけが厳しくて厳格な母親はバンドの活動など認めない。
それが嫌で家を飛び出した彼は、もう何年も実家には帰っていない。
けれどある日その母が倒れたと聞き、やむなく実家へ戻る。
でも、彼はそこで思いがけないものを見るのです。
愛情の表現が下手な人というのはいるものですね。
言葉や表情。
それだけでは計り知れないモノを時として人は隠し持っている。
それに気づくのがおそ過ぎなくてよかった・・・という話ではありますが、
この物語はそれだけでは終わらない。
彼は怪我をして、バンドの活動を休まなければならなくなってしまいます。
バンドのスケジュールを変えるわけにも行かないので、
ドラムに代役を立てて、バンド自体は活動が続きます。
そうすると崎谷は、実は自分などいなくても充分にバンドは持つのではないか、
いやむしろいない方が・・・と疎外感を持ってしまう。
いつしか怪我は治癒したのに、戻れなくなってしまう崎谷。
さあ、笑うライオンは復活するのでしょうか。
音楽は人がその思いを表現するもの。
皆の気持ちが一つになるときにすばらしい効果が生まれる。
チームワークが要の気持ちのいいストーリーです。


明日を笑え
音楽の腕はそこそこ、でも音楽が大好きなデュークスは本当はハワイアンのバンド。
でもある日、米軍キャンプのステージの仕事が回ってきた。
そこでロカビリーをやれという。
まともにやってもブーイングの嵐だ・・・。
いっそのことギャグで乗り切ろう!
ということで、ギャグを挟んだ演奏が拍手と喝采の嵐。
コントとギャグが売り物の彼らはどんどん人気が出て、テレビ出演も決まった。
・・・そう、これはあのドリフターズがモデルのストーリーです。
この話、実は以前別の短編集で読んだのですが・・・。
うーん、どれだったか・・・。
とても印象深くて、話はよく覚えていました。
そうして彼らは、武道館でビートルズの前座を務めることになる。
その興奮!!
何だかそのころの熱狂した雰囲気が伝わって来ます。
それは、リアルタイムでその頃を生きた私などの年代の特権でしょうか。


それぞれ独立した短編集なのですが、
このように時々実在のミュージシャンを暗喩する場面が登場します。
作品中は実際には「ビートルズ」などの固有名詞は登場しません。
そしてまた、それぞれの短編の中に、
別の作品の登場人物のことがさりげなく話題として取り上げられていたりするのも楽しい。
別個でありながら実はつながったストーリー。
心が温められてうれしくなる作品集です。

満足度★★★★☆

ロビン・フッド

2010年12月20日 | 映画(ら行)
現代的味付けのロビン・フッド。だからこそかなりしっくり来る。



            * * * * * * * *

「グラディエーター」のリドリー・スコット&ラッセル・クロウ、再びのチームです。
ロビン・フッドは英国の伝説的ヒーローですが、実在は確認されておらず、
まさに「伝説」の中の人物のようなんですね。
しかし、だからこそかなり自由にその人物像を作ることが出来るわけです。


時は12世紀末。
時の英国王リチャードは十字軍遠征に行っていた。
その中に傭兵であるロビン・ロングストライド(ロビン・フッド)が
腕自慢の名射手として加わっていました。
特別に高潔な人物としては描かれていません。
普通に正義感はあるけれど
損得抜け目なさもある。
活き活きと魅力的です。
さて、戦の成果は上がらず、本国へ撤退する途上のフランス。
そこから物語が始まります。

この王は獅子心王と呼ばれる勇猛果敢な名君として描かれています。
自ら前線へ出て闘う。
しかしこの時それが災いして、命を落としてしまいます。
ロビンは騎士ロクスリーの死に立ち会い、
王の冠をロンドンの王宮に戻すことと、
彼の剣を故郷ノッティンガムの父親に返すことを約束します。

王位を継ぐのは、本国にいる弟のジョン。
しかし、これがはっきり言って馬鹿。
王の器ではない。
ロビンはとりあえず王冠をジョンに返して、仲間たちと共にノッティンガムへ向かう。
ノッティンガムを治めているのは、亡きロクスリーの父。
そして、ロクスリーの妻マリアンも、義父と共に土地を守り奮闘している。
しかし王の税の取り立てが厳しく、なかなか厳しい状態。
ところがそこで解ったのは、実はロビン自身この地に縁があったということ。
ロビンはロクスリーに成り代わり、マリアンを妻とすることになってしまう。

この辺の運命の導きによる出会い、何ともドラマチックでステキです。
マリアンは初めて出会った男と急に結婚することになってしまい、
承諾をしたものの、実は心を許したわけではない。
彼女の寝室へ彼を案内はしたけれど、彼女はベッド。
ロビンは暖炉の前の床に犬と一緒に寝るハメになったりする。
ちぐはぐな二人が、しかし次第に心を寄せ合っていく過程、これも見所であります。
このあたりはもう超ベテランのラッセル・クロウとケイト・ブランシェットですし、
余裕で楽しませてくれます。


この先はちょっと複雑なのですが、
まずジョン王と王の全く無謀な税の取り立てに反発する諸侯の反目が描かれます。
が、実はこれはフランスによる画策。
英国の内乱に乗じて、一気に攻め込もうという、フランスのもくろみでありました。


ジョン王といえば、マグナカルタ(大憲章)を受け入れた王なのです。
王の権限を制限する法。
でも歴史上このことがあったのは1215年。
この映画の設定はもう少し前なんですね。
つまり、その本来のマグナカルタ以前に、
同様の話がロビン・フッドから王に突きつけられた、という設定になっているわけで、
非常に興味深いです。
中世封建制度に反旗を翻し、立憲民主主義を勧めようとする・・・、
それが実現するのはマグナカルタが成立してからさえも長い年月を要するわけですが、
ロビン・フッドがその発端の一人という、
現代的ヒーロー像によみがえらせたのは非常にいいですね。




さて、終盤はフランスが英国に攻め込んで上陸。
迎え撃つ英国軍。
海岸での戦闘シーンです。
無数に押し寄せる船からフランス兵が降り立つシーンでは、
多くの映画で語られるノルマンディ上陸のシーンが思い出されました。
まあ、あれはフランス側の海岸。
これはイギリスの海岸なので、逆バージョンですけれど。

中世の衣装や民衆の暮らし向き、
ケルト風の音楽、
田園風景、
それからロンドンの灰色の町並み、城壁。
いろいろなシーンがとても楽しくて仕方ありません。
ロビンのリーダーシップにもほれぼれ・・・。
今、こういうリーダーシップのある政治家が日本にも欲しいですよね・・・。
でもその方向が間違えば、これまた大変なことになってしまうのですが。


実のところ、見る前は退屈な歴史物語、プラス壮絶な戦闘シーンの映画かなあ・・・と、
さほど期待していなかったのですが、
私としては非常に心に響く作品でした。
テーマ・映像・キャスト・音楽。
うん。満足。

2010年/アメリカ/140分
監督:リドリー・スコット
脚本:ブライアン・ヘルゲランド
出演:ラッセル・クロウ、ケイト・ブランシェット、ウィリアム・ハート、マーク・ストロング

ルームメイト

2010年12月19日 | 映画(ら行)
さりげないようで、ねっとり絡みつく狂気

ルームメイト [DVD]
ブリジット・フォンダ,ジェニファー・ジェイソン・リー,スティーブン・ウェバー,ピーター・フリードマン
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント


            * * * * * * * *

サイコサスペンスです。
恋人と別れ、その寂しさからルームメイトを探していたアリソン。
どこか野暮ったいけれども、まじめそうなへドラという娘と同居を決める。
彼女は洗練されたアリソンに異常に興味を持ち、髪型や服装をまねし始める。
また、よりを戻そうと電話や手紙をよこす彼女の恋人からの連絡をひそかにシャット。
またその彼に接近し・・・。

始めのちょっとした違和感が次第に膨らんで、
じわじわと怖くなっていくんですね、このへドラ。
幼い頃に双子の姉妹を亡くしたことが影響しているようなのですが、
気に入った女性と限りなく同化していこうとする。
しかし、それは愛なのか、憎悪なのか。
彼女にとっては愛と憎悪が同義なのかとも思える。
しかし通常では理解しがたいですね。
彼女は既に狂気のフチにいる・・・。
女は怖いですよ~。
ホントに、髪型や服装を同じにしただけでどちらがどちらやら、
ちょっと見では解らなくなってしまいます。
それをされたら、やはりいい気持ちはしませんよね。
不気味です・・・。
そして彼女は、普通ではない精神状態ながら、きちんと頭は回るのです。
そのアリソンそっくりな自分を利用して、
彼女の恋人の家に忍び込み、あげくに彼を殺害。
その後ろ姿を目撃した者もいて、しかしそれはどう見てもアリソンだ。
恋人を殺害し、アリソンを犯人に仕立て、
じわじわとアリソンを追い込み、自分に従わせようとする。
そうですね、これは単に独占欲。
相手の気持ちを思いやらないのはやはり愛とはいえない。

ルームメイト。
単に同居人ではありますが、
家族でもない自分と異質の人間、
実は何を考えているのか解らない。
…そう考えると、非常に怖い。


始めから、地下の洗濯室は不気味でイヤーな感じでした・・・。
レトロなエレベーター、
螺旋状の階段。
こういう舞台立てがサスペンスの雰囲気を盛り上げます。
ジェニファー・ジェイソン・リー、さりげないようで、ねっとりと絡みつくような狂気。
迫力ありました。


1992/アメリカ/108分
監督:バーベット・シュローダー
出演:ブリジット・フォンダ、ジェニファー・ジェイソン・リー、スティーブン・ウェバー、ピーター・フリードマン

「真田太平記(十)大坂入城」 池波正太郎

2010年12月17日 | 真田太平記
ようやく幸村の出番が来たけれど・・・

真田太平記(十)大坂入城 (新潮文庫)
池波 正太郎
新潮社


               * * * * * * * *

えーと、方広寺の鐘銘に難癖をつけて、家康はなんとしても豊臣方をつぶそうとはかっている・・・というところでした。
やむなく、豊臣方は大坂城にたてこもることになるんだね。
あれ、今頃気づいたんですが、「大阪」じゃなくて「大坂」だったんだ!
「大阪」になったのは明治以降だって・・・。
今までぜんぜん気づかずに「大阪」を使っていました。許してくだされ・・・。
しかし実のところ、豊臣方、特に淀君ですかね、何も戦をふっかけようなんて気持ちはなかったように見受けられる。
そうだね。マトモに闘って勝てるとはやはり思っていなかっただろう。
ハンストみたいな感じかな。
ここで粘っていれば、いずれ家康の怒りもとけるのではないかと・・・。
でも一応、各地の浪人などに救援の声をかけるんですね。
そう、それでやっと真田幸村の出番です!!
大坂冬の陣へ突入!!


幸村はもちろん九度山の蟄居を解かれたわけではないので、
密かに九度山を抜け出したということになります。
すなわちこの行為だけでもう家康に反逆したことになる。既に捨て身です。
ここで感動的なのは、信之の元に行っていた向井佐平次が、
幸村の行動を察知して、共に大坂入城を果たしたこと。
妻のもよも、夫はたぶんそうするだろうと始めから解っている。
いやあ、絆ですねえ・・・。
ほとんど自殺行為とは解っていても、やるべきことはある・・・か。
大坂城に立てこもる・・・って、私はあの天守閣にみんなで籠城するってイメージしてたんですが・・・。
いやあ、ここで言う大坂城っていうのはすごく広いんですよ。
大坂という土地、といっていいのかな。
何しろここに集まった兵力10万というから、
それだけでもそんな狭いところではないと想像がつくね。
米などの蓄えも1年分以上あったと言うし、
商人なども出入りしていて、一つの町みたいなものだね。
幸村はその外濠の外に真田丸と名づけた小さな砦をつくってここを根拠地にするんだね。
そこから遠くに秀頼のいる本丸の天守閣が見える、とあるよ。
以前の上田合戦で徳川勢を撃退したのはあくまでも父昌幸、と世間では認識していたんだね。
だから幸村はほとんど注目されていなかった。
まあ、だからこそ簡単に九度山を脱出できたわけでもあるね。
でも、いよいよ徳川方との戦闘が開始されてみると・・・
これもすべての勢が一斉に戦闘態勢に入るのではなくて、
多く配置された砦の何カ所かで小競り合いが開始されたという感じね。
うん、だけれど真田丸はそこで非常に威力を発揮した。
ここでの戦いでは徳川軍をさんざんに打ちすえて、
幸村の武名はここで初めて天下に鳴り響いたというわけ。
ふう・・・、つまり幸村はこれがやりたかったんだよねえ・・・。


ところでこの頃の秀頼。
前回ではたいそう立派な有様に、幸村や家康までもが目を見張った
・・・ということになっていたよね。
しかしそれから3年・・・1614年。
秀頼はどんどん太ってしまって、見る影がなくなっている・・・。
作中の描写はこうだよ。

六尺あまりの躰に肉がつきすぎてしまい、
なにやら、白くてぶよぶよした化け物を見ているようなおもいさえする。
眼の光も弱く・・・
京の公卿たちのように顔へ薄化粧を施すようになってしまった・・・・・・・・


うひゃあ、辛辣な描写・・・。
でもこれでは、彼に味方しようとする者たちも、士気が上がらないだろうなあ。
だね・・・。
しかも秀頼は、本丸から一歩も外へ出てこない。
こんな状況なんで、幸村はつまり秀頼のためではなくて、
自分がやりたいから大坂にいる、と。
そういうことなんだろうなあ・・・。
この広い大坂城内、人々も決して一枚岩ではなくて、
敵のスパイもたくさん入り込んでいるし、
先にいったように、そもそもまともに闘う気がある者が少ない。
打って出るなどもってのほか、何とか家康と和解に持ち込みたいというのがほとんど・・・。
こんな中で、幸村はよく頑張ったと思うよ・・・。
本当に幸村はがんばったのですが・・・
東軍はイギリスやオランダから買い入れた大砲を導入。
飛び込んでくる砲丸に淀君が恐れをなし、あっけなくも休戦となってしまう。
何とも戦い甲斐のない戦いで、幸村が気の毒になってしまうね・・・。
ああ・・・、ということで、次回は夏の陣です。


「さよなら、そしてこんにちは」 荻原浩

2010年12月16日 | 本(その他)
それぞれの生活をそれぞれが生きる

さよなら、そしてこんにちは (光文社文庫)
荻原 浩
光文社


             * * * * * * * *

この短編集、お仕事シリーズといってもいい。
いろいろな職業の人が登場し、人生の悲喜こもごもをユーモラスに語ります。


表題作の「さよなら、そしてこんにちは」の陽介の勤め先は、葬儀会社です。
彼は実は笑い上戸であり、また泣き上戸でもある。
葬儀のお世話をする彼は、決して顔に感情を出してはいけないのだけれど、
遺族の方々の言動についもらい泣きしそうになったり、
葬儀の最中にやがて生まれる我が子のことを想像して笑い出したくなったり・・・、
いろいろ苦労しているのです。


「ビューティフルライフ」の政彦は、会社をリストラされ、
サラリーマンには見切りをつけて一大決心、農園を経営しようと田舎に越してくる。
私はこの話がとても好きなのですけれど、
語り手はこの政彦でなく、中学生の息子晴也。
携帯電話も「圏外」となってしまうこのド田舎で、
高校生の姉と彼は不満がいっぱい。
でも、読み進む内に、この晴也は不登校であることが解ってきます。
誰も口には出さないことながら、
この両親の大決心、実は晴也の不登校に配慮してのことであるらしい。
でも、それを晴也が負担に思わないよう、あえてそのことは誰も言わないのです。
なんでも言いたい放題の姉ですらも。
家族の気持ちがよく表れていますね。
晴也自身そのこともよくわかってはいるのですが、
やはり転校先となるべく中学校に足は向かない。
でもある日・・・。
都会人が農業にあこがれて田舎に越してくる話はいろいろありますが、
このストーリー、切実さとのどかさが同居、なかなかいい味が出ています。
晴也の混乱しつつも瑞々しい視点が爽やか。



「美獣戦隊ナイトレンジャー」
ここでの主役は主婦由美子。
彼女は小学一年生の息子秀太に付き合って
テレビ番組「美獣戦隊ナイトレンジャー」を見る内に、
その登場人物の一人に虜になってしまったのです。
ブルーナイト役の篁(たかむら)一真。
もしゃもしゃのワイルドヘア。
ややつり眼がちの涼やかな瞳・・・。
実際、何とかレンジャーを演じるイケメンに夢中になる若いママというのは話題になりましたが、
この由美子さん、こんな番組をくだらないとしか見ない姑に気兼ねし、
ナイトレンジャーに夢中なことは自分だけの秘密・・・。
別に今の生活に不満があるわけではないけれど・・・、
カズマに胸をときめかすとき、自分はこのままでいいのかと、そんな思いも胸をよぎる。
そんなある日、由美子は遊園地へナマ戦隊ショーを見に出かけるのですが・・・。
ここには意外な展開が待ち受けています。
虚像と実像。
彼女はしっかりと現実を受け入れるのですね。


それぞれがそれぞれの生活を生きている。
ささやかな日常の物語なのですが、
毎日変わりばえのしない自分自身の生活も、
少しずつの心の揺れや変化、
実は自分だけのドラマなのかも知れない、などと思ったりして・・・。
こうして、ささやかな毎日を繰り返すことこそが「生きる」ってことなんですねえ。

満足度★★★★☆

ノルウェイの森

2010年12月15日 | 映画(な行)
監督の“イメージ”を楽しめばいい



           * * * * * * * *

この作品、最近見るどの映画の時にも予告編をやっていて、正直予告編は飽きました。
しかし、元々大好きな作品。
やはり見ないで済ますわけに行きません・・・。
ある解説によれば、小説を読んだ自分のイメージを損ないたくない人は見ない方がいい、
なんて書いてありましたが・・・。
確かに、村上春樹作品には読み手それぞれのイメージがありそうです。
この作品はトラン・アン・ユン監督のイメージでまとまっているわけで、
合うかどうかはその人次第。
まあ、私は自分のイメージにそう固執するわけではないので・・・。
とりあえず見た感想としては、まあ、こんなモノかな・・・という感じでした。
でも特に、ワタナベ君に関してはもう、ドンピシャリ。
言うことナシ。


ストーリーについては、こちら→ノルウェイの森 をご参照ください。


ワタナベと直子が東京で再会してから心を寄せ合うことについて・・・
ワタナベはもともと彼女にひかれていたんですよね。
キズキの彼女であった頃から。
キズキを失った後での二人は、
たぶん、身寄りのない孤児がお互いのぬくもりを分け合うような感じで、
会っていたのだと思う。
二人の持つ喪失感は同じものなのですが、でもいかにも二人は若い。
本来なら、いずれ喪失の底から脱出するエネルギーを持っているはず。
ワタナベは実際、その喪失感から抜け出し、明るい方を見ることもできる力がある。
けれど直子の方は喪失感から逃れられない。
というより、自分で逃れることを拒んでいるようなところがある。

トラン・アン・ユン監督はこの作品映画化のために、
村上春樹氏と何度も打ち合わせを重ねたといいます。
そんななかで、原作にはないセリフを村上氏が書き足したのだとか。
それが直子のこのセリフ。

「人は18歳と19歳の間をいったり来たりすればいいのよ・・・」

彼女が20歳の誕生日に言ったセリフですね。
彼女はキズキを忘れることに罪悪感を覚えるのでしょう。
むろん無意識のうちにということですが。
自分だけ大人になって、彼との思い出を置き去りには出来ない・・・。
そうだからこそ、このような結末になってしまうのだなあ・・・。



さて、村上春樹作品の登場人物たちの会話は、
いつも何か密やかで象徴的で言葉少なですよね。
これが本の上では私たちの想像力を膨らまし、
だからこそ各自のイメージが大切になってくる。
でもこの映画のように、ナマの人物がその会話をそのまま声に発すると、どうも・・・。
イメージの余地がなくなって、やけに薄っぺらく聞こえてくる。
やっぱり問題はそこら辺なんでしょうね。
特に、緑の台詞。
本を読んだときはさほど感じなかったのですが、
この作品では、妙にムカつく感じがしてしまったのはなぜでしょう・・・? 
エキセントリックな美少女としては、まさにはまり役に見えるのですが。
そういえばこの緑という子のイメージは、うんと若い頃の秋吉久美子だなあ・・・。



ああ、でも映画だからこそ表現できる場面もありました。
それは全体に漂う時代感。
当時の雰囲気ですね。
まあ、実際にそのときを過ごしていた私が言うのだから間違いありません! 
学園闘争華やかな頃、
でも一方では「シラケ」などという言葉もあって、
LPレコードがあって、赤電話があって・・・。
彼らのファッションも懐かしい雰囲気。


それから音楽なのですが、始めの方はまだよかった。
でも終盤、やけにバックミュージックが重厚になってきてうるさい。
まるで何十年も前の古い映画のような感じ。
これも当時の時代色の演出なのでしょうか? 
エンディングテーマとしてやっとビートルズの「ノルウェイの森」が流れるとホッとする。
これって「ノルウェイの森」を引き立てるためだったとか・・・?

茂った草原が風で波のようにうねる。
そんな中のワタナベと直子。
このシーンは好きでした。
「もちろん。」

2010年/日本/133分
監督・脚本:トラン・アン・ユン
原作:村上春樹
出演:松山ケンイチ、菊地凛子、水原希子、高良健吾、玉山鉄二

のんちゃんのり弁

2010年12月14日 | 映画(な行)
何だか納得できない・・・



              * * * * * * * *

31歳、専業主婦小巻。
彼女は甲斐性のない夫に愛想をつかし離婚届をたたきつけ、娘を連れて実家に戻ります。
そして仕事を探すのですが、資格もキャリアも何もない子持ち・・・。
そう簡単には見つからない。
やむなく水商売へ・・・と思っても、彼女にはその覚悟もない。
彼女が自信を持っているのは、幼稚園児のんちゃんのお弁当作りだけ。
そうだ、このお弁当を商売にしてしまえば・・・!!
彼女は立ち上がるのですが・・・


何にも出来ない主婦の奮闘記、成長物語・・・ということではありますが。
さて私、女性の自立についてはちょっとうるさいのですよ。
そういう観点で言えば、この話は前提がそもそもおかしい。
彼女の夫は自称小説家だけれど、何を書くでもなく、働きにもいかずゴロゴロ。
幸い彼の実家が裕福なので援助をもらって生活していた、というのです。
ちょっと待った。
ではその間、あんたは何をしていたのか。
同じくゴロゴロして(そりゃ家事はしていたんでしょうねえ・・・)
援助生活に甘んじていたのではないですか。
パートすら経験なさそうでしたよ・・・。
自分のこと棚に上げて夫を甲斐性がないというのはおかしい。
女なら良くて男ならダメってことはないでしょう。
こんな生活ではダメと気がついたのはいいのですが、
離婚しなければならない理由にはなりません。
わざわざ実家に戻らなくても、あなたがそこで仕事を探せば良かったのです。
こういう前提がしっかりしていないから、この作品、生活感がぜんぜんない。
だから、職探しも、お弁当屋さんも、リアリティがなくてお遊びに見えちゃうんです。
雰囲気は楽しいけれど、なんだかなあ・・・。



しかし、あの写真屋さんの彼は、なかなか良かった。
結局どうにもならなかったというところも含めてですね、
変にハッピーエンドにならないところは良し。

のんちゃんのり弁 通常版 [DVD]
小西真奈美,岡田義徳,村上淳,岸部一徳,倍賞美津子
キングレコード


2009年/日本/107分
監督:緒方明
出演:小西真奈美、岡田義徳、村上淳、岸部一徳