映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

メリー・ポピンズ リターンズ

2020年02月29日 | 映画(ま行)

やはり前作とセットで見るべき

* * * * * * * * * * * *


64年「メリー・ポピンズ」の25年後の世界を描きます。
実際には50年以上を経ているわけですが!!
しかし私、先にその前作を見たのは大正解でした。
本作は前作の物語世界を踏襲するために作られた、といってもいいかと思います。
隅々に前作へのリスペクトが感じられるし、
もちろんあのときの子どもたちが今度は「大人」として登場する、
そういう面白みもあるのです。

大恐慌時代のロンドン。
バンクス家の長男マイケル(ベン・ウィショー)は、
祖父と父の働いていた銀行で臨時職の仕事についています。
彼は少し前に妻を亡くし、残された3人の子どもたちとともに暮らしています。
そして、借金の返済期限切れのため、家を明け渡さなければならない危機に・・・。
そんなところへ現れたのがメリー・ポピンズ(エミリー・ブラント)。
マイケルと姉・ジェーン(エミリー・モーティマー)は
子どもの頃の不思議な出来事は夢だと思っていたのですが、
そのメリー・ポピンズがそのときと少しも変わらない若さで現れたのにビックリ。



父が残したはずの株券が見つからず、イライラするマイケルを尻目に、
メリー・ポピンズは3人の子どもたちとすっかり仲良くなってしまいます。

メリー・ポピンズは魔法でなくなった書類を見つけ出したり、お金を出したりはしません。
いつものように、子どもたちと時を過ごすだけ。
けれどそんな様子を見て、自分の「子どもの心」を取り返すマイケル。
そこが解決への糸口であるわけですね。

「道に迷ったときは、小さな灯りを見つけなさい」

そんなメリー・ポピンズの言葉が心にしみます。
家なんか失っても、この家族がいれば乗り越えられる。
つまりはそういうことなんだな。

で、私は確信したのですが、メリー・ポピンズはおそらくホグワーツ出身ですね。


現在のCG技術を駆使しても決してやり過ぎにはならず、
前作の世界観をそのまま、よりクリアに作り上げた感じ、満足感が高いです。
終盤、ついにメリー・ポピンズは時間をも巻き戻すのか?と思ったところが、
ビック・ベンの時計の針を戻すだけ、というオチもナイスでした!

<WOWOW視聴にて>
「メリー・ポピンズ リターンズ」
2018年/アメリカ/131分
監督:ロブ・マーシャル
出演:エミリー・ブラント、リン=マニュエル・ミランダ、ベン・ウィショー、
   エミリー・モーティマー、コリン・ファース、メリル・ストリープ、ディック・バン・ダイク

前作へのリスペクト度★★★★☆
満足度★★★★☆

 

 

 

 


スキャンダル

2020年02月28日 | 映画(さ行)

女性たちよ、屈するなかれ!!

* * * * * * * * * * * *


2016年に実際に起こった女性キャスターへのセクハラ騒動を元にしています。



アメリカ視聴率ナンバーワンを誇る保守系テレビ局、FOXニュースの
元人気キャスター、グレッチェン・カールソン(ニコール・キッドマン)が、
CEOのロジャー・エイルズ(ジョン・リスゴー)をセクハラで提訴します。
彼女はロジャーのセクハラを蹴ったために、番組を干されてしまったのです。
FOXニュースの看板番組を担当するキャスター、メーガン・ケリー(シャーリーズ・セロン)は、
自身がここに上り詰めるまでの過去を思い出します。
それにはやはりロジャーが絡んでいるのです。
そして、メインキャスターの座を狙う若手・ケイラ(マーゴット・ロビー)に、
ロジャーと直接対面するチャンスが巡ってきますが・・・。



なんとも胸くそが悪くなるような話・・・。
権力と財力を握る男性が、その見返りに与えられる権利と思い込むモノの一つが
“女性”なのではないでしょうか。
しかも金髪の美女。
おまけにここでは高学歴。
そんな女たちを自分の思うがまま支配できる。
逆らえば、追い出すのみ。
これって、浮気よりももっとたちが悪い。



女たちの立場からすれば、せっかくこれまでの夢が叶う寸前のところまで来て、
多少の犠牲は払ってもいい・・・と捨て身になれるか否か、
重大な決断を迫られるのです。
でも仮に受け入れたにしても、自分への嫌悪からは逃れられないだろう・・・。
そしてこのセクハラに屈したことが周りに知られることも恐怖となります。
だから始めグレッチェンの提訴に同調する女性はなかなか現れなかったのだけれど・・・、
耐えられない思いの方が強くなっていくわけですね。



おそらくこんな話はFOXニュースだけに限らず、どこにでも起こっている。
まだまだ、社会の中の女性の立場が弱いのでしょう。
本作が、女性たちが声を上げるための幾ばくかの力になるといいな・・・。

ところで本作の特殊メイクを行ったカズ・ヒロさんは二度目のアカデミー賞を受賞しました。
シャーリーズ・セロンは、本作モデルとなった女性キャスターとうり二つとのこと。
本人を知らないので私にはピンとこないのですが、
確かに、ちょっと見では今までの彼女とは別人のように見受けられました。
シュッとして、なんともカッコイイ!!
世界に誇る技術です。
素晴らしい!!

<シネマフロンティアにて>
「スキャンダル」
2019年/カナダ・アメリカ/109分
監督:ジェイ・ローチ
出演:シャーリーズ・セロン、ニコール・キッドマン、マーゴット・ロビー、ジョン・リスゴー

セクハラ度★★★★★
満足度★★★.5


「ハトシェプスト 古代エジプト王朝唯一人の女ファラオ」山岸凉子

2020年02月27日 | コミックス

デビュー50周年トークショー収録

 

 

* * * * * * * * * * * *


古代エジプト唯一人の女の王「ハトシェプスト」はいかにして生まれたのか?
その妖しく危険な魅力に惹かれる醜いメヌウには、
全てが正反対の美しい妹がいた(表題作)。
死者を蘇らせる異能の力と引き換えに若さを失っていく女の報われぬ愛を描いた「イシス」。
山岸凉子初のトークショー完全載録の永久保存版。

* * * * * * * * * * * *

山岸凉子さん作品はほとんど読んでいるつもりですが、
この古代エジプトものは未読でしたので、このたび拝見。
しかし文庫サイズのコミックはやはりキビシイ・・・。
字が小さすぎる・・・。
ハズキルーペの購入を本気で考え始めました・・・。

 

さて本巻には、古代エジプト王朝で唯一女性ファラオとなったハトシェプストに関連する2編と、
人の傷を癒やす力を持った「イシス」の3編が収められています。
人を超越した特殊な能力を持ちながら、
しかし自分が本当に欲しいものを手に入れることはできない・・・
そうした人物を描くのに、山岸凉子さんは特に力量を発揮するような気がします。
本作にも、そんな女性が登場。
良き物語です。


ところで実のところ私は本巻、このマンガ本体よりも、
山岸凉子さんのデビュー50周年トークショーの記録が収められていることの方がうれしかった!!
2019年10月6日に山岸氏の生誕地、北海道上砂川町で行われたもの。
幼少の頃の話やデビューから50年の作品を振り返っての話、
ファンなら聞き逃せない話の数々。
ここで、読むことができたのは実にウレシイ!!


蛇足ではありますが、私が山岸作品の仲で一番好きなのは「日出処の天子」。
これはもう日本の少女漫画の最高峰と思っております。
(もっとも、最近のコミックは読んでいないわけだから、あくまでも個人の感想ね)
そういえばこれも、人を超越した能力を持ちながら、
本当に望むものは得られない、と言う話でしたねえ・・・。

「ハトシェプスト 古代エジプト王朝唯一人の女ファラオ」山岸凉子 文春文庫
満足度★★★★☆

 


メリー・ポピンズ

2020年02月26日 | 映画(ま行)

“夢のような作品”を確認

* * * * * * * * * * * *

私、「メリー・ポピンズ リターンズ」を見ようと思ったのですね、まず。
しかし、その元の「メリー・ポピンズ」を遠い昔に一度みただけのような気がする・・・。
ということで、まずこちらから。
それにしても、1964年といえば先の東京オリンピックのあった年です。
私、小学校の時の「映画鑑賞会」で、児童こぞって映画館へ出かけて本作を見たのです。
当時は学校にもそんな行事があったわけですね。
まあ、そんなわけで内容自体はほとんど覚えていないのですが。

東風に乗って、こうもり傘にぶら下がり、
バンクス家の子どもたちの元にやってきた乳母のメリー・ポピンズ。
彼女は不思議な力で子どもたちをいろいろなところへ連れて行ってくれます。
子どもたちはメリー・ポピンズが大好き。
家の中も、すっかり明るく賑やかになります。
けれども、彼らの父、銀行勤めのバンクス氏は、
型破りのメリー・ポピンズを快く思わず・・・。

う~ん、今見るとテンポが悪くて冗長な感じがする、やはりすでに古典。
でもこの当時、本作は非常に画期的だったわけです。
アニメーションと実写の合成。
空を飛ぶメリー・ポピンズや、宙に浮かんだお茶会シーンの特撮。
ミュージカル風に歌とダンスがたっぷり。
なんとも夢のような作品だったはず。
・・・とまあ、その辺を確認した、ということぐらいで収めておくことにしましょう。

映画は1964年の作品ですが、舞台はおそらく1900年代初頭くらいのロンドン。
バンクス婦人は夫に内緒で婦人参政権推進の運動をやっていたりするのですが、
しかしやはり妻は夫に従うことが本分という時代、
夫の子どもたちへの教育方針に口を挟むことができない・・・、
そんな時代性を強く感じる作品でもあります。

多分、現在に蘇ったメリー・ポピンズは、もっとひねりがあって楽しめるのでは・・・?

 

 

<WOWOW視聴にて>
「メリー・ポピンズ」
1964年/アメリカ/140分
監督:ロバート・スティーブンソン
出演:ジュリー・アンドリュース、ディック・バン・ダイク、
   デビッド・トムリンソン、グリニス・ジョンズ

満足度★★.5


影裏

2020年02月24日 | 映画(あ行)

裏側の、影の一番濃い部分

* * * * * * * * * * * *


転勤のため岩手に移り住んだ今野(綾野剛)。
職場の同僚・日浅(松田龍平)と知り合い、次第に親しくなっていきます。
ともに酒を酌み交わし、川に釣りに行き、時にはコンサートにも行く。

ところがある日突然、日浅は会社を辞めてしまいます。
何も聞いていなかった今野は裏切られたような気がしてしまうのですが、
それからしばらく経って、又ふらりと姿を現した日浅。
しかし二人はどこかギクシャクしたまま、以前の無邪気な関係には戻りません。
そして又連絡が途絶えたしばらく後、日浅が行方不明となっていることを知る今野。
気になる今野は日浅を知る人の話を聞いて回りますが・・・。

作中で日浅が言っていた言葉が思い出されます。

「君は一瞬光の当たるところだけ見ている。
人を見るときはその裏側、影の一番濃いところを見るんだ」

日浅を知るいろいろな人の話を聞くうちに、彼の影の部分が浮かび上がります。
改めて自分は彼のことを何もわかってはいなかったと思い知る今野。
そして今野は、日浅にとっての自分の存在は一体何だったのか、
そこが一番知りたかったのではないでしょうか。
しかしそこは本当に一番影の濃いところで、
今となっては見ることもできない・・・。

ザクロ、蛇、苔、ニジマス・・・。
何やら意味ありげなアイテムが多数。
いろいろな解釈ができそうだけれども、まあ、ここではやめておきましょう。
東京での生活を整理してきたように言う今野の真実がまた、なかなかのモノでした。
なるほど、だから初めのうち、あんな風に暗くうつむいていたのか・・・。
そんなところが日浅の気をひいたのかもしれませんが。

綾野剛さまのパンツ一丁(トランクスじゃなくて、ボクサーブリーフってヤツ?)の姿とか、
すっぽんぽんのお尻を眺めることができまして、かなりのサービス過剰!
そして、中村倫也さんにも驚かされました!
そして何を考えているのか全然わからない日浅には、松田龍平さん以外考えられません!

<シネマフロンティアにて>
「影裏」
2020年/日本/134分
監督:大友啓史
原作:沼田真佑
出演:綾野剛、松田龍平、筒井真理子、中村倫也、安田顕、國村隼

影度★★★★☆
眼福度(?)★★★★★
満足度★★★★☆

 


「ゴースト」中島京子

2020年02月23日 | 本(その他)

今は失われたものについて思う

 

 

* * * * * * * * * * * *


目をこらすと今も見える鬱蒼とした原宿の館に出没する女の子、
二〇世紀を生き抜いたミシン、おじいちゃんの繰り返す謎の言葉、
廃墟と化した台湾人留学生寮。
温かいユーモアに包まれ、思わず涙があふれる7つの幽霊連作集。

* * * * * * * * * * * *

ゴーストと来れば怖い話かと思ったのですが、そうではありませんでした。
短編集で、それぞれに特につながりはありませんが、
どれも今は「失われた」人や物を思う、懐かしいような切ないような・・・、
そんな気持ちがわき上がるストーリーです。
私、どの話も好きでした。
こんなにお気に入りが多い短編集も珍しいと思うくらい。

 

★「ミシンの履歴」
古道具屋の奥の奥に、売り物にもならなさそうに無造作に置かれていた一台の壊れたミシン。
それは、昭和11年、製造されてすぐに洋裁教室に収められて活躍したミシンなのでした。
いわば、そのミシンの「一生」の物語です。
様々な人の手に渡り、大事にされたり酷使されたり、
空襲の火災にまで襲われて年月を経たミシン。
童話のようにミシンが語り始めたりはしませんが、
つまり私たちはミシンという「物体」にも命あるもののように
その気持ちを汲んだりすることができるわけなのですね。
そのミシンが語るのは、かつてミシンを使っていた人々の暮らしや気持ち。
失われ、思い出す人もいない今、
人ではなくモノが、そうした記憶を呼び起こすのです。
後の「廃墟」という作品でも、
かつて多くの人たちが住んだ香港の「九龍城」と、
それに関連して東京にあった「台湾人学生寮」の建物の廃墟の話が出てきます。
今は崩れかけてがらんどうとなった廃墟も、
かつてそこで生きていた人々のことを呼び起こすわけですね。

★きららの紙飛行機
ここに登場するのは、これぞ正真正銘の幽霊、ケンタ。
どうもこの子は終戦後浮浪児となり、そのまま亡くなったらしい。
どうしてかわからないけれど、ケンタはときおりこの世にふらりと現れる。
たいていの人に彼の姿は見えないのだけれど、たまに、彼を認める人がいる。
この日、彼を認めたのは“きらら”という名前の女の子。
彼女の母親がいわゆるネグレクトで、わずかなお金を置いたきりもう何日も戻らない。
お腹をすかせ、お風呂にも入らない彼女はかつてのケンタだ。
孤独な魂が呼び合ったかのように、二人で過ごす時間。
戦後から70年以上を経て、今もなおこんな境遇の子がいるという現実が悲しいですね。
最後のお風呂屋さんのシーンは救いでした。


★キャンプ
何やら不思議な話・・・と思って読み進むうちに意味がわかってきます。
難民のキャンプのように思われる大勢の人が暮らすキャンプ。
食料や物資は十分にあるのですが、それをもらうときは少し行列に並ばなければなりません。
マツモト夫人は、どうやら終戦後の満州で、
子どもを連れたつらい旅の果てにここにたどり着いたらしい。
そのときのつらい思い出が、今は夢のようにマツモト夫人に蘇るのですが、
とりあえず今はキャンプ暮らしながら安心して生活できている様なのです。
毎日大勢の人が新たにこのキャンプにやってきます。
それぞれにそれぞれの事情がありそう。
このキャンプの意味は悲しいものではありますが、
でもそれが救いのようにも思える。
切ないストーリーです。

「ゴースト」中島京子 朝日新聞出版
満足度★★★★★


天才作家の妻 40年目の真実

2020年02月22日 | 映画(た行)

妻の才能が勝るとき

* * * * * * * * * * * *


夫・ジョゼフ(ジョナサン・プライス)がノーベル文学賞を授与されることとなり、
夫、息子とともにストックホルムを訪れるジョーン(グレン・クローズ)。
そんな家族に、ジョゼフの経歴に疑問を抱く記者ナサニエル(クリスチャン・スレーター)が接近します。
ジョーンは若い頃から文才に恵まれていたのですが、
女流作家は受け入れられない時代で、作家の夢を諦めていたのです。

同じ道を志す夫婦。
妻の方が明らかに技量が上で才能に満ちている。
しかしその時代、「女流」は極めて世間に受け入れられにくい。


あらあら・・、このパターン、HNK朝ドラ「スカーレット」のキミコ&ハチさんと全く同じ。
私も“八郎沼”なので、ここのところのめり込むように見ているのです・・・。
こんな関係で、夫婦関係は維持できるのか・・・? 
いろいろと考えさせられるところです。
そのためか、本作も途中からものすごく興味がわいてきました。

ジョーンは、全く人に読まれないものを書くよりも、
夫の名前を借りてでも人に読んでもらえるものを書きたかったわけですね。
互いの利害が一致し、妻がゴーストライターという関係をずっと続けてきた。
納得ずくではあるのだけれど、しかし互いの気持ちは大きくひずんでいたのです。
妻に負い目がある夫は、その反動で浮気をしまくる。
そして、そのことへの怒りのエネルギーを小説に注ぎ込む妻。
共存関係であり、共犯関係でもある。
では互いに憎しみあっていたのか・・・?



最後のCAの言葉に、はっとさせられます。
「とても絆が強いご夫婦のように思いました。」と彼女は言うのです。
愛も憎しみをも織り交ぜての「絆」。
まさにこの夫婦の関係を言い表すのにぴったりの言葉でした。

若き日のジョーンを演じるアニー・スタークは、グレン・クローズの実の娘だそうです。
こんなことができるので、親子2世代俳優というのも悪くはありません。

 

 

<WOWOW視聴にて>
「天才作家の妻 40年目の真実」
2017年/スウェーデン・アメリカ・イギリス/101分
監督:ビョルン・ルンゲ
出演:グレン・クローズ、ジョナサン・プライス、クリスチャン・スレイター、マックス・アイアンズ、アニー・スターク

夫婦を考える度★★★★★
満足度★★★★★

 


グッドバイ 嘘からはじまる人生喜劇

2020年02月21日 | 映画(か行)

恋多き優柔不断の男の物語

* * * * * * * * * * * *

太宰治の未完の遺作「グッド・バイ」をケラリーノ・サンドロヴィッチが戯曲化し
上演されたものの映画化です。

戦後の復興期、文芸雑誌編集長の田島(大泉洋)には、何人もの愛人がいました。
妻子は戦時中疎開した青森で未だに暮らしているのですが、
田島はそろそろ東京に呼び戻さなければ、と思っています。
しかしそのためには、あまたの愛人たちと縁を切らなければならない。
とはいえ、それぞれの女性たちを愛しく大切にも思っている田島は、
その優しさと優柔不断さが故に、彼女たちに別れを切り出すことができない。

そこで懇意にしている小説家(松重豊)の意見を聞き、
とびきりの美人にニセの妻になってもらい、二人で愛人たちに会いに行く、
という作戦を実行することに。
そのニセの妻というのが、普段粗末な服装で担ぎ屋をしているがさつな女・キヌ子(小池栄子)。
彼女が化粧をしてオシャレな洋服に着替えれば、あっと驚く美女なのでした。
そして何人かの愛人の元を訪ねますが・・・。



例によって、ほとんど予習なしで見た作品。
だから見ているときは太宰治原作とは知りませんでした。
でも、後にそのことを知って、すごく納得がいったのです。
この、田島の人物造形が。
不倫の是非はこの際置いておくことにして、
田島は女性たちの個性がそれぞれに好きなんですね。
だからどれも捨てがたい。
けれどそれに罪悪感がないかと言えばそんなこともなく、
そして又、こちらの都合で一方的に関係を切ることにも又罪悪感を覚えてしまう。
どうすれば良いのやらわからない・・・と、
こんなダメ男は、幾分太宰本人が投影されているのでしょう。
そう思うと、やたらに田島のことが愛おしく思えてきてしまいます。
それで、散々愛人たちと過ごしたはずなのに、
最後にキヌ子とは「純愛」になってしまう、というのがすごくうまくできています。
又、ラストのどんでん返しが楽しい!!

小池栄子さんの、強烈なダミ声がものすごいインパクト。
そしてオシャレな夫人になりすましてもやっぱりダミ声を隠せていないのも、いいですよねー。
素晴らしい配役です。
なかなか掘り出し物の良作だと思います!

<シネマフロンティアにて>
「グッドバイ 嘘からはじまる人生喜劇」
2019年/日本/106分
監督:成島出
原作:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
脚本:奥寺佐渡子
出演:大泉洋、小池栄子、水上あさみ、橋本愛、木村多江、松重豊、濱田岳

コミカル度★★★★☆
逆転度★★★★☆
満足度★★★★☆

 


「ニッポン沈没」斎藤美奈子

2020年02月20日 | 本(解説)

新鮮なうちに読むべきだった・・・

 

 

* * * * * * * * * * * *


戦争、原発、経済格差…。
さあ、この国は沈没か?
どうなんだ?
いま何が起こっているのか。
その時々のトピックスを関連書3冊をベースに論じる、47の同時代批評。

* * * * * * * * * * * *

「うしろ読み」ですっかりなじんでしまった斎藤美奈子さんの本。
題名につられて読みました。
この本は2006年~2015年にかけて、著者がいくつかの雑誌に連載した時事評論をまとめたもの。
その時々のトピックス関連図書を読み解きつつ、語られています。
各所で、「うん、その通り、よくぞ言ってくれました」というところはあるものの、
やはり今となってはいかにもネタが古い。
こういうのは、やはり新鮮さが命という気はしました。
そしてまた、せっかくこのときに著者がこのような意見を述べているのに、
結局それはなおもそのまま進行していってドツボにはまっているなあ・・・
と今にして思うところも多くて、なんだかむなしくなってしまうことも。
まあつまり、やっと今頃になってこの本を読んでいる私の責任であります。

 

そんな中で、特に気になった話をいくつか・・・

★地方再生のこと
 これまでの地方再生は、そこを訪れる客の目線だったけれど、
 そこを住民の目線にして、住宅と商業施設が微妙に混在するコンパクトな町へ。
 いわゆる“シャッター商店街”への対策ですね。

★ヘイト・スピーチのこと
 ヘイト・スピーチとは、「嫌いなものを嫌いと言う」ことではない。
 ヘイト・スピーチは「マイノリティに対する差別であり攻撃」である、と。
 だから表現の自由とは別物。
 そう、ここのところをはき違えてはいけませんね。

★朝ドラのこと
 NHK朝ドラマについて、
 朝ドラのヒロインは毒気を抜かれ、小骨を抜かれ、時には背骨まで抜かれて
 かわいげのある天然キャラクターに作り替えられる。
 「生意気な女はあかんで~」「男社会のルールを壊す女はあかんで~」という暗黙のメッセージ。
 何年も何年もこういうドラマを見続けてきたことが日本人の意識、
 とりわけ男女平等意識にどう影響したか。

 そこで、斎藤美奈子さん、今期のドラマ「スカーレット」をご覧でしょうか? 
 キミコさんはウーマンリブもフェミニズムの理念もなしに、
 ただ個人としてやりたいことを、男社会のルールも無視してやり遂げています。
 やっと、朝ドラも前進していますよ~。
 ただし、そのことで別の大切なものを失う・・・
 というリスクを負うのは、やはり警鐘なのかな?
 私は、日本人の男女平等意識を前進させないのは「サザエさん」に
 大きな責があると以前から思っています。

★東日本大震災と福島原発のこと
 本巻には、この時期に書かれた文章が多いのです。
 あのときの私たちの重苦しい気持ちが蘇ります。
 しかし、あれからまだ10年に満たないというのに、
 なんとあのときの気持ちがきれいさっぱりと風化してしまっていることか。
 当時、震災前と震災後、日本の歴史の大きな転換点になる・・・
 などと言われたものなのに今となってはその言葉がむなしい。

図書館蔵書にて
「ニッポン沈没」斎藤美奈子 筑摩書房
満足度★★★.5

 


隣人は静かに笑う

2020年02月18日 | 映画(ら行)

良き隣人のはずが・・・

* * * * * * * * * * * *

20年以上前の作品を見ようと思ったのは、
ジェフ・ブリッジスとティム・ロビンス主演というのが気になったため。

「ショーシャンクの空に」が95年の作品なので、
ティム・ロビンスのその少しあとの出演作品ということになります。

テロリズムのついての講義を持っている大学教授・マイケル・ファラディ(ジェフ・ブリッジス)。
あるとき、路上で大けがを負った少年を救助します。
その少年は、最近ファラディの隣に越してきたラング(ティム・ロビンス)家の息子でした。
これをきっかけに、ファラディ家とラング家、家族ぐるみの交際が始まります。
そんなある日、マイケルは隣家のオリバー・ラングが偽名を使っているらしいことに気づきます。
そして、彼のことを調べ始めるのですが、
10代の頃に爆発テロ事件未遂を起こしている・・・。
建築家で3児の父である良き隣人。
しかし実はそう見せかけただけの、テロ犯罪者なのか・・・???

マイケルはラングがテロ犯罪者であることを確信するのですが、
彼の恋人は、人をやたらと疑うものではない、という。
又、知り合いのFBI捜査員さえもが、考えすぎだという。
果たしてラングはテロ犯罪者なのか、それとも・・・。
というところで、見ていても予断を許さないのですが、
しかし終盤は予想もつかない展開が待ち受けています。
アメリカ映画でこれは珍しい。
隣人が静かに笑う情景・・・。
これは怖い。
バッド・エンディングです。
まあ、だからこそ、スリルを味わいました!!

 

 

<WOWOW視聴にて>

「隣人は静かに笑う」
1998年/アメリカ/119分
監督:マーク・ペリントン
出演:ジェフ・ブリッジス、ティム・ロビンス、ジョーン・キューザック、ホープ・デイビス

意外性★★★★☆
満足度★★★☆☆

 


1917 命をかけた伝令

2020年02月17日 | 映画(あ行)

兵士とともに戦場を駆ける

* * * * * * * * * * * *

本作、ずっと楽しみにしていました。
全編ワンカット、期待が高まります。



1917年、第一次世界大戦下、フランス西部戦線。
イギリス兵のスコフィールド(ジョージ・マッケイ)とブレイク(ディーン=チャールズ・チャップマン)は、
重要な伝令の任務に就きます。
それは最前線にいる仲間1600人の命に関わることで、急を要するのです。
その最前線にはブレイクの兄もいます。
急ぎ、二人は自陣をあとにしますが・・・

カメラはずっとこの二人に付き添い、二人と周囲の状況を映し出します。
まるで私たち自身も戦場にいて、この二人とともに歩いているかのよう。
臨場感、緊張感が半端ではありません。



兵士のひしめく塹壕。
死体が転がるぬかるみ。
爆弾の仕掛けられたドイツ軍の地下壕。
墜落してくる戦闘機。
廃墟の町。
花びらの舞い散る河川。
そして爆音とどろく最前線・・・。

次から次へと移り変わる光景がすべて実際に地続き。
まあ、実際には全編ノーカットというわけではなかったようですが、
それにしてもスタッフの困難・苦労が忍ばれます。
よくもまあ、こんなことを・・・。

そもそも、始め任務のために呼ばれたのはブレイクだったのですが、
誰かもう一人選べといわれたので、
たまたまそばにいた友人のスコフィールドと行動を共にすることにしたのです。
ブレイクは兄を助けたい一心でやる気に満ちているのですが、
スコフィールドは何で自分がこんな任務に・・・と不平顔。
だがしかし、皮肉な運命が彼らを待ち受けます。
ちょっとここは予想外で、驚かされました。



彼らに任務を下す将軍がコリン・ファース。
そして指令書を届ける相手の大佐がベネディクト・カンバーバッチ。
こういうところに大御所を使うという配役も心憎いです。
そして途中で手に入れたあるものが、後に役立ったりする。
RPG的なこういうストーリー運びも面白い。

あっという間にすぎた戦場の約2時間。
面白かった~!

ところでこのストーリーは、実際に伝令兵だったという
サム・メンデス監督の祖父の体験談を元にしているそうです。
本作のテーマとノーカット撮影という手法が、この上なくマッチしています。

<シネマフロンティアにて>
「1917 命をかけた伝令」
2019年/イギリス・アメリカ/119分
監督:サム・メンデス
出演:ジョージ・マッケイ、ディーン=チャールズ・チャップマン、
   マーク・ストロング、コリン・ファース、ベネディクト・カンバーバッチ

臨場感★★★★★
緊迫感★★★★★
満足度★★★★★

 


「北村薫のうた合わせ百人一首」北村薫

2020年02月16日 | 本(その他)

うたの奥深さを知る

 

 

* * * * * * * * * * * *


五・七・五・七・七の三十一文字で、美しくも壮大な世界を綴り出す短歌。
向かい合い、背を向け、あるときは遠く離れながらも
響き合う二つの短歌の断ち切り難い言葉の糸を
独自の審美眼で結び合わせた50組100首に、
塚本邦雄・石川美南から三井ゆき・佐佐木幸綱まで、総数550首を収録。
現代短歌の魅力を味わい尽くす、前代未聞のスリリングな随想。

* * * * * * * * * * * *


(うたあわせ)というのは本来、歌人を左右二組にわけ、
その詠んだ歌を比べて優劣を争う遊びのようなのですが、
ここでは、北村薫氏が、同じテーマに沿った短歌を2首ずつ選び出し、味わいます。
その2首は古今の様々な方のもの。
普段そういうものに縁のない私にとっては、実に楽しい「うた」体験となりました。


それにしても、北村氏の選択はなかなか一筋縄にはいきません。
まず冒頭の二首。
「隣の赤」と題して

不運続く隣家がこよひ窓あけて眞緋(まひ)なまなまと輝る雛の段

隣の柿はよく客食ふと耳にしてぞろぞろと見にゆくなりみんな

何やら、まがまがしさの感じられる怖い「赤」ですね。
隣の柿は・・・の方は、よく言われる早口言葉を逆転したものですが、
「人食いの柿」よりもむしろ「ぞろぞろ」の方が恐ろしいのかもしれない、
と著者は言っています。

 

うたを味わう切り口は、その時々でそれぞれなのですが、
うたの意味というか内容について、
受け取る人によって異なるという話を興味深く読みました。

例えば、

少年の騎馬群秋の空を駆け亡き子もときの声あげてゆく

亡き我が子のことを歌う切ないうたではありますが、
大方の人の解釈は「運動会の騎馬戦」の騎馬を組んだ子が空を駆けてゆく情景なのだそう。
けれど著者は騎馬戦ではなく、いわし雲が白い馬に姿を変え、
その馬に乗って幼くして逝った子どもたちが、
苦しみから解き放たれて空を駆ける情景を思い浮かべたと言います。
私も著者の意見に賛成!

また、こういうのはどうでしょう。

つむじ風、ここにあります 菓子パンの袋がそっと教えてくれる

こちらの大方の解釈は、菓子パンの薄いビニール袋が、ビルの谷間の風に吹かれて、
くるくる舞っている様が「つむじ風、ここにあります」である、と。
実は私もそういうことを思い浮かべました。
ところが著者は、パン屋に並んだ様々なパンのうちの「うずまきパン」が、
「つむじ風、ここにあります」とささやいているのだと、思ったそう。
なるほど~。
実は巻末解説で、三浦しをんさんも著者と同じに思ったそうです。
作者が詠んだときの情景は確かにあるのかもしれないけれど、
いったん作品として世に出たからには、
こういうことに正解はなくて、どのように受け取っても自由、ということなんですね。

個人的に、もう一つ

はつなつの、うすむらさきの逢瀬なり満開までの日を数へをり

札幌に住んでいる私にとって、初夏の薄紫の花といえば、絶対にライラック!!
しかるに、これは桐の花なのだそうです。
出身地や年齢などによっても、歌の味わい方がちがってくるものなのかもしれませんね。

 

最後に、私が特に気に入った歌をいくつか

迷うこと多き日のはてに雪降りて装幀にレモンイエローを選ぶ

金輪際会わぬと決めたる一人(いちにん)と夢打際で夜毎にまみゆ

混み合える電車に持てる花の束かばいてくれし少年ひとり

すべて作者名省略してしまいました、お許しを・・・。
本作、続編があればぜひ読みたいなあ・・・

「北村薫のうた合わせ百人一首」北村薫 新潮文庫
満足度★★★★☆


斬、

2020年02月15日 | 映画(さ行)

人を斬るということ

* * * * * * * * * * * *


監督、出演、脚本、撮影、編集、そして制作までが塚本晋也監督によるもの、という作品であります。
とにかく自分の思うように作りたいのでしょう。
そうであるからこその、見応えのある個性的な作品だと思います。

250年の平穏な時代を経た後、開国か否かで大きく揺れ始める江戸時代末期。
舞台は終始江戸近郊の農村です。
文武両道、才気あふれる浪人・都築杢之進(池松壮亮)は、
農家に宿を借りながら農作業の手伝いをして過ごしていました。
そんなある日、一人の剣豪と思われる浪人・澤村(塚本晋也)が通りかかります。
澤村は都築に、ともに江戸へ行った後に京の動乱に参戦しようと誘います。
都築は同意しましたが、問題が一つ。
彼は確かに見事な太刀さばきを見せる剣の使い手ではありますが、
これまで実際に人を斬ったことがないのです。
そんなとき、無頼者たちが村に乗り込んできて・・・。

この当時、実際ほとんどの侍は人を斬ったことなどなかっただろうと思います。
侍に憧れる農家の少年と木刀で太刀稽古をする都築の姿は
実に颯爽としてカッコイイ!!
でもそれは木刀だからであって、彼は本当は人を斬りたくなどない。
いえ、人を斬ることが怖いのです。
でも武士であるからには本来の職務を忘れるべきではない、とも思っている。
無頼者たちも、何もしない農民に手を出すような手荒なヤツらではなく、
むしろ親しくなろうとする都築であったのですが、澤村が余計なことをする。
ついに、真剣で立ち会わなければならい場面となります・・・。



作品の冒頭で、刀鍛冶のシーンが映し出されます。
いつもの時代劇で、刀はあまりにも当たり前に使われているので
特別意識することはありませんが、刀って実に鋭く、強烈な凶器なんですよね。
こんなもの実際に目の前で振り回されたら・・・と思うだけでぞっとします。
都築はその怖さを知る、今で言えば当たり前の人物であるわけです。
侍なんかでなければ良かったのに・・・。
まあそんなわけで、ぞっとするシーンも出てきます。
こんな男たちの有様をじっと見届けるのが農家の娘・ゆう(蒼井優)。
この娘も生命力にあふれていて、単に純朴な農家の娘ではないというのがなかなか良いです。

ところで、本作の題名。
「斬。」ではなくて「斬、」なのです。
この「、」の意味。
話は完結しておらず、続くのだ、ということなのかもしれません。
途中で断ち切った、という感じがありますね。
確かに、ここでは都築の先行きがはっきり語られていません。
いずれにしてもまともに長生きできそうにない感じ・・・?

強烈な印象を残す作品でした。

 

 

<WOWOW視聴にて>
「斬、」
2018年/日本/80分
監督・脚本:塚本晋也
出演:池松壮亮、蒼井優、中村達也、塚本晋也

刀のインパクト★★★★★
アクション度★★★★☆
満足度★★★.5

 


バッドボーイズ フォー・ライフ

2020年02月14日 | 映画(は行)

17年を経たからこその

* * * * * * * * * * * *


「バッドボーイズ」17年ぶりの新作、シリーズ第3弾。
特別のファンというわけではなかったのですが、
この日、他にうまくタイミングの合うものがなかったので・・・。

マイアミ市警の敏腕刑事コンビ、マイク・ローリー(ウィル・スミス)と、
マーカス・バーネット(マーティン・ローレンス)。
ポルシェをとばしイケイケドンドン、独身を謳歌するマイク。
そして、そろそろ引退を考えているマーカス。
そんなある日、マイクが何者かに銃撃され、倒れてしまいます。
やがて、なんとか一命を取り留めたマイクは、
若手エリート捜査官で結成されたAMMO(マイアミ市警特殊エリート部隊)メンバーと
新たに手を組むことになりますが・・・。
相変わらず何者かが、彼の命を付け狙う・・・。

なぜ17年も経って今またこの物語なのか・・・。
というのが一番の問題でありますが、
すなわち、まだ若かったあの頃の二人が、そろそろ引退を考えるまでになった。
この物語は単なる思いつきの続編ではなくて、
それだけの年月を経たからこそのストーリーとなっているところがミソです。



メキシコの刑務所からある女が脱走。
彼女は自分の恨みを晴らすため、自分の息子とともにマイアミの市警関係者を暗殺しようとする。
その中の一人がマイクということになります。

女とマイクの因縁とは一体・・・?
なかなか驚かされました。
17年前にはまだなかったスマホや、その他、ハイテクを駆使。
若いメンバーとのジェネレーション・ギャップ・・・、やはりそうなりますよね。
アクションだけではなくて、見所も多く、意外と楽しめました!!

<シネマフロンティアにて>
「バッドボーイズ フォー・ライフ」
2020年/アメリカ/124分
監督:アディル・エル・アルビ、ビラル・ファラー
出演:ウィル・スミス、マーティン・ローレンス、バネッサ・バジェンズ、
   チャールズ・メルトン、パオラ・ヌニェス

ストーリー性★★★★☆
満足度★★★★☆


「吾輩はライ麦畑の青い鳥」斎藤美奈子

2020年02月12日 | 本(解説)

引き続き「うしろ読み」のうしろ読み

 

 

* * * * * * * * * * * *


名作の“急所”はラストにあり。
「へそをなでています」「南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏。難有い難有い。」
―意外と知らない唐突、納得、爆笑!?な終わりの一文。
『西遊記』『吾輩は猫である』から『ライ麦畑でつかまえて』まで、
世界の名著一三七冊をうしろから味わう型破りなブックガイド。

* * * * * * * * * * * *


先に紹介した「名作うしろ読み」の続編です。
刊行時は「名作うしろ読みプレミアム」という題名だったのを、
文庫化に当たって「吾輩はライ麦畑の青い鳥」と改題。
うんとキャッチーになりました!!

前巻はこちら→「名作うしろ読み」斎藤美奈子

 

著者によれば、本巻の方が「名作」の範囲を広げており、
前巻が「あっさり醤油味」なら、本巻は「こってり豚骨味・トッピング全部のせ」風とのこと。
確かに、こちらの方が私も読んだことがあるものが多い。
というわけで、引き続き「うしろ読み」のうしろ読み。

(注)「※」については、私のコメントです。

★あのトンチキな王子を罰してやれよ、と思うのは
 勧善懲悪のおとぎ話に毒されているせいかしらん。<人魚の姫>

★細い糸にすがって争うビンボー人。
 蜘蛛を踏まなかったのがそれほどの善行なのかという疑問も
 セレブなお釈迦様の退屈しのぎと思えば納得できるではないか。<蜘蛛の糸>

★最後の最後で「長州の憲法」にきっぱり引導を渡したのは、
 広田ではなく著者の思いの発露であろう。<落日燃ゆ>
  ※今憲法改正したら、「長州の憲法」に逆戻りじゃん!!

★芝居の終幕みたいな幕切れだが、この事件自体が、
 そう、列車を舞台にした一種の大芝居なのである。
 大人の世界では、しばしば「真相」よりも「解決法」が優先されるってことで。<オリエント急行の殺人>

★結局、活動的な美也子はああなって、楚々とした典子が幸せを得るんだな。チェッ。<八つ墓村>

★人生の折り返し地点をすぎて読むと最終章がしみます。<アルジャーノンに花束を>
  ※主人公チャーリー・ゴードンの知能の変化は、
   つまり人の一生の知能の変化なのではないか、と著者は言っているのです。

とりあえず、この辺で・・・


図書館蔵書にて
「吾輩はライ麦畑の青い鳥」斎藤美奈子 中公文庫
満足度★★★★☆