映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「耽美とヒロイン 漫画化! 世界文学」

2022年10月31日 | コミックス

珠玉

 

 

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名作文学を読みやすくマンガにするという企画は1960~70年代にはおなじみでした。
紫式部、アンデルセン、グリムといった世界中の作家の名作を原作に、
昭和時代から多数生み出されてきた名作文学マンガの作品群から、
選りすぐりのコラボレーションを選出します。

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名だたる少女漫画家が描く、名作文学のアンソロジー。
私、本巻の広告を見て、これを読まずにしてなんとしよう!!と思い、
即購入してしまいました。
私のような年代の者にとっては、まるで夢のようなラインナップです。

収録作は・・・

萩尾望都×アンデルセン「白い鳥になった少女」

水野英子×グリム「サンドリヨン」

牧美也子×紫式部「花陽炎 (源氏物語)」

美内すずえ×樋口一葉「たけくらべ」『ガラスの仮面』作中劇より

坂田靖子×ペロー「お妃と眠り姫」

文月今日子×ルイ・エモン「白き森の地に」

山岸凉子×グリム「ラプンツェル・ラプンツェル」

佐藤史生×ボーモン夫人「美女と野獣」

 

私の大好きな方ばかりということもあって、大半は読んだことのある作品なのですが、
でもよくぞこの豪華メンバーを集めてくださいました!!と、
この企画に拍手を送りたくなります。

特に、美内すずえさんの「たけくらべ」は「ガラスの仮面」の劇中劇のシーンです。
北島マヤが美登利を演じています。
やってくれますねえ・・・。
そういう手もあったか。
感服。

 

それぞれのストーリーは原作を忠実になぞったわけではなくて、
作者が自由に想像の翼を広げて独自の解釈をしたり、
続きのストーリーを描いたりしています。

 

冒頭、萩尾望都さんの「白い鳥になった少女」は、
実は私の中でかなり印象に残っていた作品でした。
アンデルセン童話を元にしています。

虚栄心に満ちて他者を見下す傲慢な少女インゲは、
ある日大きな水たまりを渡ろうとするときに、靴を汚すのがイヤで、
持っていたパンを踏み石代わりにして歩いてしまいます。
するとそのパンを踏みつけにした姿のまま、
水中に引きずり込まれて、身動きできなくなってしまうのです。
水中で、自分が羽をむしって飛べなくなったハエにまとわりつかれたり、
不気味な生き物が張り付いてきたり・・・。
この気味悪いシーンが、結構当時の私に刺さったのですよね・・・。
しかしそれでも、このときのインゲは自分の行いを悔いてはおらず、
ちっとも哀しそうでもない。
ただ無表情にお腹がすいた、せめて体が動けばいいのに・・・などと思うだけ。
そしてまた、別に人を殺したわけでも、ものを盗んだわけでもないのに、
なんでこんな目にあわなければならないのかと憤っているのです。
それが、ついに彼女が自分の行動を悔いるのは、
インゲの運命を童話で知った子どもが、インゲを哀れんで流す涙を見たとき。
その涙がインゲの心を変えるのです。
不気味で、やがて美しい物語。

 

坂田靖子さんの「お妃と眠り姫」は、「眠り姫」の続きの話ということになっていまして、
眠り姫の嫁ぎ先のお妃様が、なんと「オーガ」だったという・・・。
つまり人間ではなくて、怪物なんですね。
オーガは人を食ったりする野蛮な存在なのですが、
坂田靖子さんが描けばなんともほっこりとユーモラス。
本作では、最後はちょっぴり哀しくもあるという、
まことに坂田靖子さんでしか描けない世界感の物語。
秀逸です。

 

そのほかも、読み応えたっぷり。
私には大切な一冊になりそうです。

「耽美とヒロイン 漫画化! 世界文学」 立東舎

※図書の家、山田英生編集

満足度★★★★★


劇場版 ラジエーションハウス

2022年10月30日 | 映画(ら行)

病院と離島、それぞれの物語

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テレビドラマ「ラジエーションハウス」の劇場版。
ドラマは好きだったのですが、あえて劇場で見るまでもないかと思い、
配信で見ることができるのを待っていました。
ストーリーは、テレビ版の続きとなっています。

テレビドラマを見たことがない方のために付け加えますと、
ラジエーションハウスとは病院の放射線室のことです。
放射線技師・五十嵐や放射線科医・甘春の奮闘の物語。

ワシントンへ留学することになった甘春杏(あまかす あん)(本田翼)との別れの時が近づき、
落ち込んでいる五十嵐(窪田正孝)。
離島で小さな診療所を営む甘春の父・正一の危篤の報を受け、
杏は父の元へ駆けつけますが、程なく正一は息を引き取ります。
そこへ大型台風と土砂崩れ、さらには未知の感染症が襲いかかり、
杏は島で孤軍奮闘。

一方、杏がいない間の病院もすったもんだの出来事が多発。
それらがようやく一段落したときに、
ラジエーションハウスのメンバーは、島での杏の窮状を知ります。
それを知った五十嵐は・・・。

本作、予告編などで離島が舞台となった物語というような宣伝がなされていて、
そのために、なんだかいつもの話と違うという印象があって、
劇場で見ようと積極的には思わなかったという次第でもあります。
ところが実際に見てみれば、病院ではいつものごとく
いろいろな患者がいて、いろいろな騒ぎが巻き起こる。
その合間に杏の島での様子が描かれるのです。
そして、後半いよいよ五十嵐が島に向かう。

ということで、すべてが島の出来事みたいなPRは
ちょっと違うんじゃないかな?と思いました。
私は、やはりふだんの病院風景の方が好きなもので・・・
そちらをきちんとPRしてほしかった。
島のパンデミックは、特別見たいわけではなかった。
そもそも島での感染症に、何で放射線技師が乗り出すのかって、
なんだか不自然すぎる気がしてしまうのです・・・。

それにしても、悪いけど本田翼さんはいまだに「医師」が似合わない・・・。

テレビドラマでファンだった方は、大いに見るべし。
そうでない方は、特に見る必要はないかも。

<Amazon prime videoにて>

「劇場版 ラジエーションハウス」

2022年/日本/115分

監督:鈴木雅之

原作:横幕智裕、モリタイシ

出演:窪田正孝、本田翼、広瀬アリス、浜野謙太、鈴木伸之、遠藤憲一、山崎育三郎

ファンサービス度★★★★☆

満足度★★★.5

 


ハケンアニメ

2022年10月29日 | 映画(は行)

アニメの覇権を握るのは?

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私、本作は派遣社員のアニメーターの話かと思っていたのですが、
そうではなくて、アニメ業界の覇権を争う話でした・・・!

地方公務員からアニメ業界に飛び込んだ新人監督、斎藤瞳(吉岡里帆)。
彼女は少女時代に、天才監督・王子千春(中村倫也)のアニメに痛く心を揺さぶられ、
この道に踏み込んだのです。
目標は王子監督に追いつき、追い越すこと。

その王子監督は、過去にメガヒット作品を生み出したものの、
その後過剰なこだわりとわがままぶりが災いし、降板が続いていました。
プロデューサー有科(尾野真千子)は、
そんな王子監督を復帰させるため、大勝負に出ます。

一方瞳は、くせ者プロデューサー・行城(柄本佑)らと共に奮闘。

土曜夕方5時枠の裏表、
「サウンドバック 奏の石」(瞳)VS「運命戦線リデルライト」(王子)
ということでガチの対決をすることに・・・。

瞳は無名の新人監督。
一方王子はアニメファンなら尊敬してやまないアニメ界の星。
これは瞳にはかなり分が悪い。
けれど、彼女には彼女なりのアニメを届けたい対象があって、
そのこだわりだけは最後まで貫きたいと思っているのです。
さあ、この勝負、どうなる・・・?

今時、同時間の裏表放送といっても後に見る方法は色々あるので、
私なら両方見ちゃいますけどね。
単純にどちらを先に見たいかと言う勝負なら、やはり好みが優先しますかね。

アニメ作成に様々な人が関わっていたり、
そのPRのために多くの時間が費やされたり、
色々と普段私たちが目にしない側面が描かれているのが興味深いです。
そして、作中に描かれるアニメシーンも楽しい。
私など、前後がよく分からないアニメの1シーンだけでも泣きそうになりました・・・。

柄本佑さん演じる行城プロデューサーが、いい味を醸し出しています。
一軒クールで私情を挟まない利益優先タイプ。
でも、底辺には隠れた熱いハートが。
この人がいなければ本作は凡庸なものになってしまったかもしれません。

 

<Amazon prime videoにて>

「ハケンアニメ」

2022年/日本/128分

監督:吉野耕平

原作:辻村深月

出演:吉岡里帆、中村倫也、柄本佑、尾野真千子、工藤阿須加

アニメ業界描写度★★★★☆

満足度★★★★☆

 


鹿の王 ユナと約束の旅

2022年10月28日 | 映画(さ行)

原作には遠く・・・

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上橋菜穂子さんによる、2015年本屋大賞を受賞したファンタジー小説のアニメ映画化。

最強の戦士団「独角」の最後の頭だったヴァン。
強大なツオル帝国との戦いに敗れ、奴隷となり、岩塩坑の奥深くに囚われていました。
ある時不思議な山犬の群れが岩塩坑を襲い、
死に至る謎の病・ミツツァルが発生。
岩塩坑は死人の山となりましたが、そこを生き抜いたヴァンは
同じく生き残っていた幼女ユナを連れて脱出に成功します。

一方天才医師ホッサルは懸命にミツツァルの治療法を探していました。
その病はツオルの民だけがかかり、
敵対するアカファの民にはかからないと言われていたのですが・・・?

 

本作は私、本で読みいたく感動しました。
それで見てみたわけですが、危惧したとおり、
長大な物語を無理矢理2時間足らずにまとめたので、
どうにも食い足りないものになってしまっているようです。

敵対する国の関係やヴァンやホッサルの立ち位置など、
本作を見ただけではなかなか理解しがたいのではないでしょうか。
ホッサルが真相にたどり着くまでの過程が面白いというのに、そこもあっさりと片付けられていて、
これではこの物語の真の面白さを味わうことができません。

それなのに、ヤケにアクションとかスペクタクルシーンを挟み込んでいるのが、
一体どういう人を対象に作られているのかな?と疑問に感じてしまいました。

少なくとも、原作のファンはこういう作りには納得できないと思います。
(ホッサルの美形には納得しましたが)

残念ですが、こんなアニメ化ならなくても良かったと思います。
声だけがムダに豪華。

本を読んだ方がずっといい。

<WOWOW視聴にて>
「鹿の王 ユナと約束の旅」

2021年/日本/114分

監督:安藤雅司、宮地昌幸

原作:上橋菜穂子

出演(声):堤真一、竹内涼真、杏、木村日翠

 

原作再現度★★☆☆☆

満足度★★★☆☆

 


「R帝国」中村文則

2022年10月26日 | 本(その他)

恐るべき予言の書? 

 

 

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近未来の島国・R帝国。
人々は人工知能搭載型携帯電話・HP(ヒューマン・フォン)の画面を常に見ながら生活している。
ある日、矢崎はR帝国が隣国と戦争を始めたことを知る。
だが何かがおかしい。
国家を支配する絶対的な存在"党"と、謎の組織「L」。
この国の運命の先にあるのは、幸福か絶望か。
やがて物語は世界の「真実」にたどり着く。

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近未来の島国R帝国が舞台・・・。
まあ、言わずともそれがどこを暗示しているかは一目瞭然なのですが。

それにしても恐ろしい物語です。

R帝国は、民主国家を歌いながらもその実しっかり独裁国家を突き進んでいます。
そこで語られる戦争の真実は恐ろしいけれど、
実のところを突いているように思います。
第一このR帝国の状況は今のロシアの状況にあまりにもそっくり。
アール帝国のRはロシア?としても全然おかしくないですね。
とはいえ本作は2017年に発刊されたものなのですが。

そしてこの国家を支配する“党”に反抗する謎の組織が「L」。
つまり単純には「R」と「L」は「右」と「左」という風にも解釈ができるのですが、
この文庫の巻末で、著者がもっと恐ろしい意味についてを示唆しています。
何やら世界全体がきな臭い感じがする昨今・・・。

本作が単に想像力がたくましすぎる近未来小説であることを祈ります・・・。

 

それと本作で描かれる、HP(ヒューマン・フォン)のことも気になります。
人工知能搭載型携帯電話。
今のスマホのさらなる進化形。
人工知能搭載のそのマシンは、すでに人格を宿しているようで、
人々にとってはなくてはならない助言者のようなものになっています。
そこに“党”の意志が入り込んだとしたら・・・。
人々は簡単に支配されるようになるでしょうね。

暗澹たる未来。
こちらもまたそうならないように祈るばかり。

 

「R帝国」中村文則 中公文庫

満足度★★★★☆


千夜、一夜

2022年10月25日 | 映画(さ行)

待つことが身に染みついた女

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佐渡島の港町。
登美子(田中裕子)は、30年前に突然姿を消した夫の帰りを待ち続けています。
漁師の春男(ダンカン)は、登美子に思いを寄せているのですが、
彼女がその気持ちに応える様子はありません。

そんな頃、登美子は2年前に失踪したという夫・洋司(安藤政信)を探す
奈美(尾野真千子)と知り合い、彼女の夫捜しを手伝うようになります。
奈美は、夫が今どうしているのかよりも、いなくなった理由を知りたいと言うのです。
ある日、本土に用事で出かけた登美子は、街中で偶然洋司の姿を見かけて・・・。

 

年間8万人が失踪しているという現状に、窪田監督が着想を得た物語とのこと。

本作、舞台が佐渡なので、登美子の夫の失踪は
あるいは北朝鮮による拉致かもしれないと考えられているのです。
しかし、そうであるという確証があるわけでもない。

「ちょっと行ってくる」と散歩に出るかのように家を出て、それっきり戻らない夫。
事故なのか事件なのか。
あるいは自らの意志・・・? 
生きているのか、すでに死んでいるのか。
生きているとすれば、今どこでどうしているのか。
なぜ戻らないのか。
もしかすると、夫が家を出たのは自分に責任があるのかもしれない。
だから何の連絡もよこさないのか? 
毎日毎日このような自問自答を繰り返しながら30年・・・。
その行き場のない思いは、「夫の不在」を目の当たりにすれば
30年経っても癒えることも忘れることもないのです・・・。

登美子は結婚間もない頃の、2人の声の入ったカセットテープを繰り返し聞いています。
今はもう骨董品ともいうべきラジカセで・・・。
そしてついにテープはすり切れて切れてしまう。
そこに録音された2人の会話は、まるで幸せの見本。
そんなだったから、夫が彼自身の意志でいなくなったなんてあり得ない・・・。
登美子はその声を聞いて、そのように納得したかったのかも知れません。

そんなところに登場するのは、夫が失踪してまだ2年という奈美。
彼女はまだ「待つ」ことが常態化してはおらず、
登美子のように待つことのけだるさを身にまとってもいない。
そしてまだ若いのです。
奈美が新たな男性と付き合い始めたと知って、登美子は若干心穏やかではない。
だけれども登美子は、以前から言い寄ってくる春男を今さら受け入れる気にもならない。

もう、「待つ」ことがあまりにも自分の身に染みついていて、
そこから逸脱することができなくなってしまっているかのよう・・・。

 

年間8万人の失踪者ですか・・・。
その裏には、こんな風に残酷な時を過ごし続けている人たちがいるわけなんですね・・・。

切ない物語です。

全くの余談ですが、登美子さんが使っていたエコバッグの模様が、私のと同じだった!!

 

<シアターキノにて>

「千夜、一夜」

2022年/日本/126分

監督:久保田直

出演:田中裕子、尾野真千子、安藤政信、白石加代子、ダンカン

 

待つことの切なさ★★★★☆

満足度★★★★.5

 


アンチャーテッド

2022年10月24日 | 映画(あ行)

財宝の行方を探せ!

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アクション・アドベンチャーゲーム「アンチャーテッド」シリーズを実写映画化したものです。

ニューヨークのバーテンダーとして働くネイサン・ドレイク(ネイト)(トム・ホランド)は、
トレジャーハンターのビクター・サリバン(サリー)(マーク・ウォールバーグ)から
50億ドルの財宝を一緒に探さないかと誘われます。
ネイトには生き別れとなった兄がいるのですが、
サリーはその兄と組んで宝を探したことがあるというのです。
その言葉に誘われて、ネイトはサリーと共に宝を探すことを決意。

同じく財宝を狙う組織との争奪戦の末、
手がかりとなるゴールドの十字架を手にしたネイトとサリー。
ついには500年前に消えた幻の海賊船にたどり着きますが・・・。

なにしろ、いきなり空中、今にも落下しそうというシーンから始まる本作、
始めからドキドキハラハラさせられます。

スパイダーマンなら良かったのですけれど・・・。
スパイダーマンならぬネイトはどのようにしてこの危機を脱するのか・・・。

トレジャーハンターの物語ということで、
インディ・ジョーンズ路線を踏襲する作品と言っていいと思います。

スペインはバルセロナの地下に潜入していくシーンでは、
500年前に掘られた地下道がいきなり現代のダンスホールに通じていて、
大勢の人が踊り狂っていたりするもする。
確かに、長い歴史を刻む都市部ではそんなこともあるかもしれませんよね。
ユニークです。

彼らはマゼランの航海をたどるので、そこからまたフィリピン付近へ移動。
なんと朽ちかけた500年前の帆船を発見するのです。
なかなか感動的。
そしてそれがなんと、空飛ぶ船!!となって空中戦となるのが度肝を抜きます。
本作には空中シーンがたっぷりあって、斬新でスリルたっぷり。
それと、人々の裏切りが油断なりません。
最後に信じられるのは誰なのか・・・?

なんだかんだいっても頼りになるマーク・ウォールバーグ、ハマる役どころです。

新たなるシリーズとして、続編を望みます。

<WOWOW視聴にて>

「アンチャーテッド」

監督:ルーベン・フライシャー

出演:トム・ホランド、マーク・ウォールバーグ、ソフィア・アリ、タティ・ガブリエル、アントニオ・バンデラス

 

スリル度★★★★☆

裏切り度★★★★☆

満足度★★★★☆


アウェイク

2022年10月23日 | 映画(あ行)

「術中覚醒」以上に恐いもの

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富豪の青年クレイトン(ヘイデン・クリステンセン)は、
何不自由ない暮らしながら、心臓に病を持ち、移植手術が必要です。
友人の医師・ジャックに手術を依頼し、ドナーの順番を待っているところです。
そんな中、クレイトンは愛する秘書サムと将来を約束していました。
そんなある日、急にドナーが見つかったとの連絡を受け、急きょ手術を受けることに。

ところが、クレイトンは全身麻酔から意識が目覚めてしまう“術中覚醒”が起こり、
手術の痛みが押し寄せます・・・! 
体はすっかりマヒしていて、そのことを医師に伝える手段もないのです・・・。
さらにクレイトンは、医師達の会話から、驚くべき事実を知ってしまう・・・。

 

 

本作、前半と後半の印象がすっかり変わってしまうという企みに満ちた一作。

手術中に意識だけが覚醒して、その痛みをマトモに感じてしまうけれども、
身動き一つできないなどとあまりにもおぞましい・・・。
もし本当にそんなことがあるとして、
あまりの恐怖で神経系がマヒして、それこそ心臓マヒで死んでしまいそうな気がしますが・・・。
ともあれ、クレイトンは恐ろしい精神力でそこを耐え抜いて、
恐るべき事実を知ってしまうのです。
私的には、その事実こそが術中覚醒よりもさらに恐ろしいと思いました。

 

信頼の置ける友人。

頼もしい医療チーム。

愛する恋人。

過保護で過干渉の母親。

昇進目的で、手術を申し出る厚かましい医師。

 

これらの人物の印象が、後半から一転。
知るべきことを知らないとはなんて恐ろしい・・・。
でもクレイトンは、術中覚醒が起こったおかげで真実を知ることができたわけですよね。
まさに彼の、運命の一日でした。

 

<WOWOW視聴にて>

「アウェイク」

2007年/アメリカ/85分

監督:ジョビー・ハロルド

出演:ヘイデン・クリステンセン、ジェシカ・アルバ、テレンス・ハワード、
   レナ・オリン、クリストファー・マクドナルド

恐怖度★★★★☆

反転度★★★★★

満足度★★★★☆

 


「化物蝋燭」木内昇

2022年10月22日 | 本(その他)

怪異よりも恐いもの

 

 

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当代一の影絵師・富右治に大店から持ち込まれた奇妙な依頼とは(「化物蝋燭」)。
越してきた夫婦をめぐって、長屋連中はみな怖気を震うがその正体は?(「隣の小平次」)。
名手が江戸の市井を舞台に描く、切なく儚い七つの大江戸奇譚集。

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木内昇さんの、江戸を舞台としたちょっぴり不思議で恐い短編集。

 

表題の「化物蝋燭(ばけものろうそく)」は、影絵師・富右治に奇妙な依頼が舞い込みます。
菓子屋の屋敷の怖がりの男を追い出すために、夜中に影絵で脅してほしい、と。
不審な話だと思いながらも、その依頼を引き受けて、
夜毎屋敷に通うようになる富右治。
でもその依頼は、老舗菓子屋の跡継ぎの問題も絡んでいて・・・。
となると陰惨な後継ぎ争いに巻き込まれてしまう話?とも思えるのですが、
実はそうではなくて、
いろいろな人の真摯で温かな思いが絡み合った事情が次第に見えてきます。
怪異=恨みや恐怖ではなくて、人間らしい思いのこもったものもあるわけだなあ
・・・と思いました。

特に本巻は、そういう話が多いと思います。

 

ところがそんな中で、私が一番恐いと思ったのは「幼馴染み」
おのぶとお咲は幼い頃からいつも一緒にいた幼馴染み。
おのぶは積極的で勇ましい性格。
一方お咲は内気で人見知りが激しく、そして色白でカワイイ。
それなのでいつもおのぶがお咲をかばうような関係になっていったのです。
お咲の父親は飲んだくれのどうしようもない男ですが、
ある時かまどにかけた大鍋をひっくり返した事故で亡くなってしまう。
やがておのぶは、お咲とともに同じ店へ奉公に出ます。
これも、お咲が見知らぬところに一人で働きに入るのは難しかろうと、
おのぶが考えたから。

しばらくすると、おのぶには恋人ができるのですが、
お咲が、今はまだ他の人に知られない方がいいから自分が仲立ちをする、と言います。
おのぶは、会う日や場所などをお咲から相手に伝えてもらうようにするのですが・・・。
信頼できるかわいらしい妹分と思っていたお咲は、
実はとんでもない闇を抱えていた・・・。
それも、彼女には「悪意」の自覚がないのです。
人の気持ちを推し量るようなことはなくて、あくまでも自分自身のため。
そして、それが悪いこととは思わず、
大抵のことはにっこり笑えば周囲はみんな許してくれる・・・。

こんな人物とは関わりたくないものです。

まさに、怪異よりも人の心の方が恐い・・・。

 

「化物蝋燭」木内昇 朝日新聞出版

満足度★★★★☆

 


秘密の森の、その向こう

2022年10月20日 | 映画(は行)

亡き母に会いたくなる・・・

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大好きな祖母を亡くした8歳の少女ネリー。
両親と共に、祖母が住んでいた森の中の一軒家を片付けるため、
数日をそこで過ごすことになります。
少女時代をこの家で過ごした母は先に帰ってしまいましたが、
残されたネリーは森を散策し始めます。
そして、母マリオンと同じ名前を名乗る8歳の少女と出会います。
少女に招かれ、彼女の家を訪れるのですが、そこは、「おばあちゃんの家」でした・・・。

つまり、ネリーが出会ったのは8歳の少女時代の母マリオン。
そして彼女と共に行ったのはその時の家。
そこには、マリオンの母、つまり先日亡くなった大好きなおばあちゃんが、
母マリオンと同じくらいの年代で暮らしているのです。

どのような時空の歪みでそんなことになったのか。
本作はSFではないので、そんなことの説明はありません。
そして、少女は周囲の状況から自分が体験していることを本能的に理解するのです。

私は思う。
自分と同じ年代の母親と会って話をするというのは、
なんという幸せでありましょうや・・・。

母と娘。
どうしても互いの間にはほんの少しのミゾがあったりするものです。
でも、同じ年同士だったとしたら・・・?

ネリーは過去を見て、マリオンは未来を見る。
心の有り様はほとんど同じ。
共に無邪気に遊びながら、真に理解できる相手にようやく会えたような、
そんな気がするのではないでしょうか。

こんな時がいつまでも続かないことは互いに分かっている。
しばらくすれば2人はまた出会うことになるのだけれど、
その時はもう、こうして通じ合うことはないのだろう。
それもわかりながら迎える別れの時間のなんと切ないこと。

ネリーにとっては、おばあちゃんと言葉を交わす最後の時でもありました。
「さようなら」の言葉が温かく淋しく響きます。

私、これを見た後に無性に亡き母と会いたくなってしまって、
淋しく切ない気持ちでいっぱいになってしまいました・・・。
少女時代の母ではなくて、今の私と同年代の母と会ってみたいです。

 

<シアターキノにて>

「秘密の森の、その向こう」

2021年/フランス/73分

監督・脚本:セリーヌ・シアマ

出演:ジョセフィーヌ・サンス、ガブリエル・サンス、ニナ・ミュリス、
   マルゴ・アバスカル、ステファン・バルペンヌ

 

郷愁度★★★★★

満足度★★★★☆


モーリタニアン 黒塗りの記録

2022年10月19日 | 映画(ま行)

容疑をかけられた時点で、お終い

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実話に基づいています。
モハメドゥ・ウルド・スラヒ「グアンタナモ収容所 地獄からの手記」より。

米国弁護士ナンシー・ホランダー(ジョディ・フォスター)と
テリー・ダンカン(シャイリーン・ウッドリー)は、
モーリタニア人青年、モハメドゥの弁護を引き受けます。
モハメドゥはアメリカ同時多発テロに関与した疑いで逮捕され、
裁判さえ受けられないまま、キューバのグアンタナモ米軍基地で拘禁され続けているのです。
その真相を明らかにするため、調査に乗り出す2人。
やがて明らかになる隠された事実とは・・・?

モーリタニアンとはすなわち、モーリタニア人。
イヤ、そもそもモーリタニアという国がどこにあるのかも知らなかった私。
アフリカの北西部です。
イスラム教の国。
そしてまた、キューバに米軍基地があるというのも、いかにも意外。
なんとも、知らないことばかりでお恥ずかしい・・・。
アメリカは、あの9.11テロの後、なんとしてもその首謀者や実行犯、その他関係者を
あぶり出して処罰しないと気が済まないという状況に陥っていたわけです。
そんなわけで、本作のようなムチャクチャなことが起こる。

容疑が事実かそうでないかは二の次。
容疑をかけられた時点でもうおしまい。
後は拷問で口を割らせるだけ・・・
こんなやり方はこれまでもいろいろな時代にどこでも行われたことは知っているけれど、
それは現代のアメリカも例外ではない、というのがショックです。
正義の国アメリカはそんなことはしない?
いやいや、それこそは幻想に過ぎないわけで。

なんともやりきれない話です。

そんな中で、唯一喝采を送りたくなったのは、
ベネディクト・カンバーバッチ演じるところの軍側の弁護士、スチュアート・カウチ中佐。
彼はモハメドゥに対して拷問や家族に危害を加えるとの脅しを行ったことを知り、
役の継続を放棄します。
というより外されたというべきなのか。
ごくごく少数ではあるけれど、おのれの正義を貫こうとする方もいるものですね。

しかしそれは人生の道を踏み外すことでもあるのだけれど・・・。

 

結局モハメドゥは14年もの間拘禁され続けたのです。
よくぞ生き抜いたものです。
人間は弱いものではあるけれど、強くもあるのですね。

 

<WOWOW視聴にて>

「モーリタニアン 黒塗りの記録」

2021年/イギリス/129分

監督:ケビン・マクドナルド

出演:ジョディ・フォスター、タハール・ラヒム、ザカリー・リーバイ、
   シャイリーン・ウッドリー、ベネディクト・カンバーバッチ

 

人権問題度★★★★★

満足度★★★★☆


白いトリュフの宿る森

2022年10月18日 | 映画(さ行)

犬と共に行く、秘密の場所

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北イタリアの森で白トリュフを採取する老人達を描いたドキュメンタリーです。

世界で最も希少で高価な食材白トリュフ。
その名産地である北イタリアのビエモンテ州。
森の奥深く、犬と共に伝統的な方法で白トリュフを探し出す老人達。
その場所は決して家族や友人にも明かしません。
写真家のマイケル・ドウェック監督は3年間彼らの生活に入り込み、
信頼関係を築いた上で撮影を開始したとのこと。

トリュフ探しは犬が不可欠なんですね。
森の中の地中にあるトリュフ、目視で見つけるのは不可能です。
訓練し、気持ちの通い合った犬でなければ・・・。
なので、老人達は自分の相棒である犬をとてもかわいがり大切にしているのです。

ところが近年特に白トリュフが高騰。
ほとんど宝石のような扱い。
それなので、山への不法侵入や、毒餌を撒いて犬を殺してしまうという事故が多発。
そんなことですっかりいやになって、もうトリュフ狩りは辞める!!
と宣言する者もいるくらい。

でもほとんどの老人は、お金のためというよりも、
犬と共に山へ入り、トリュフを見つけ出すその高揚感が忘れられず、
もう年だから止めなさい、と
奥さんがしつこく言うのも聞かずに出かけてゆくのです。

頑固で意固地なこの老人達がなんともかわいらしくも感じられるのです。
しかし、その微笑ましさの一方、この超高級食材を巡って人々が踊らされる姿がある。

その両面を捉えた、なんとも興味深い作品でした。

<WOWOW視聴にて>

「白いトリュフの宿る森」

2020年/イタリア・アメリカ・ギリシャ/84分

監督:マイケル・ドウェック、グレゴリー・カーショウ

 

狂乱度★★★★☆

満足度★★★★☆

トリュフ食べたい度★★★★☆

 


「火影に咲く」木内昇

2022年10月17日 | 本(その他)

女もいろいろ・・・

 

 

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いつの世も同じ──。
幕末の志士たちも人を愛し、愛された。

新選組の沖田総司や土方歳三、吉田松陰門下生の高杉晋作や吉田稔麿、
西郷隆盛らとともに戊辰戦争へと突き進む中村半次郎……。
幕末の京を駆け抜けた志士たちも喜び、哀しみ、そして誰かを愛し、愛された。
激動の歴史の陰にひっそりと咲く"かけがえのない一瞬"を
鮮やかに描き出す全6編を収録した短編集。
読み終えて、あなたはきっとこう思う
──いつの世もやっぱり人は同じなのだ、と。

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幕末。
おのれの信じる道を突き進んだ男たち。
本作は、そんな人々と関わる女たちの物語です。

時代劇では、主役男性に連れ添う女性といえば、
影ながら男性を支える愛情深く芯の強い女・・・と言うのが紋切り型のイメージ。

けれどここに登場する女たちは、そうではありません。
そもそも、「妻」でも「愛人」でもなかったりする。

 

沖田総司の登場する「呑龍」では、
病で診療所に通う総司がよく待合室で顔を合わせる老女のことが描かれます。
武家の女性らしき布来(ふき)。
痩せ細って、もうかなり病状が進んでいそうながら、
総司に対しては上から目線であけすけな物言いをする。
総司は決してそれが不快ではない。
やがて布来は総司よりも先に逝ってしまいますが、
そうしてようやく総司は布来の、真の素性を知ります。
それは思いもよらず哀しい人生・・・。
苦界に身を落とした女の、孤独で苦しい人生が浮かび上がります。

沖田総司編で恋人めいた女性を出さなかったのは正解。
私はそういう話はちょっと読みたくない・・・と言うミーハー根性。

 

 

置屋の芸子・君尾(きみお)が、高杉晋作と出会うのは「春疾風」。
高杉晋作の、人より一歩、二歩、いえ10歩くらい先のことを考えている
独創的な考えや言動に魅入られてしまいます。
いつか、この人と対等に話ができるようになりたい。
君尾はその一心で、尊皇攘夷や社会の様々なことを貪欲に学んでいきます。
けれど高杉の恋人にはならない。
他の男と懇ろになったりする。
どちらかと言えば醜男なのだけれど、彼女を相手に藩情や、時勢の話をしてくれるから・・・。
この時代に自分の考えを貫いて生きようとする女性像。
イカします。

 

 

一方、坂本竜馬が登場するのは「徒花」
ここに登場するタカは、薬売商の家の娘。
坂本竜馬の護衛役となった岡本健三郎がこの家に長く寄宿することになります。
タカは健三郎とともに坂本竜馬とも知り合うのですが、
いかにも人好きがして大器を感じさせる竜馬ではなく、健三郎の方を選びます。
タカは世の中のことなど少しも興味がなくて、
自分とその結婚相手としての男のことしか考えない。
健三郎の方が真面目で堅実で、夫としてはめがねにかなうと思ったのです。
坂本が死した後に健三郎は思う。
「自分はこんな女にしか選ばれない・・・」。

けなげで良くできた女性ばかりが登場するわけではないという本作、
ある意味、スリリングでもありますね。

 

図書館蔵書にて

「火影に咲く」

満足度★★★☆☆


スペンサー ダイアナの決意

2022年10月16日 | 映画(さ行)

自分を取り戻す

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ダイアナ妃が、その後の人生を変える決断をしたと言われる
1991年の王室のクリスマス休暇を描きます。

この頃、ダイアナ妃とチャールズ皇太子の夫婦関係は冷え切り、
世間では不倫や離婚の噂が飛び交っていました。
クリスマスを過ごすために、エリザベス女王私邸サンドリンガム・ハウスに集まった王族たち。
誰もが平穏を装い、何事もなかったかのように過ごします。
ダイアナ妃は、ディナー時も礼拝時も常に多くの人の視線を浴び、
彼女の精神は限界に達しているのです・・・。

冒頭は、自身で運転をしてサンドリンガム・ハウスをめざすダイアナが、道に迷うシーンから。
とある店を見つけて中に入り、周囲の人に尋ねます。

「ここは、どこ?」

これは道に迷った彼女を描きつつ、
人生の途上でおのれの道を見失ったダイアナ本人のことを言っているのでしょう。
ついでに彼女は聞きたかったのかも知れない。
「私はだれ?」と。

英国王室の長い歴史、しきたり。
そういうものが彼女にずっしりと重くのしかかります。
豪華な王室の宮殿の中で、ダイアナは美しい皇太子妃として
あくまでもにこやかで幸せそうでいることだけを要求される。
本来の自分は一体どこに在るのだろう・・・。
自分が果たすべき役割がここにあるのか・・・? 
そんな中で本来しっかりと支えてくれるはずの夫の心が
すでに自分の上にはない・・・。
彼女がホッとできるのは子どもたちと過ごすときだけなのです・・・。

本作中の重要アイテムが真珠のネックレス。
ウソ!と言いたくなるような大粒の真珠。
彼女によく似合います。
それは夫が彼女にクリスマスプレゼントとして贈ったものなのですが、
ダイアナは気づいてしまった。
夫は全く同じものを愛人にもプレゼントしている、と。
そうなるともう、このネックレスは彼女にとっては屈辱の印でしかありません。
ディナー中に彼女はあまりの息苦しさにネックレスを引きちぎり、
ポタージュの中に散らばった真珠をスプーンですくい上げ、
ガリガリとかみ砕いて飲み込んでしまう・・・。
イヤまさか、と思うのですが、はい、ここは彼女の脳内映像。
一瞬後には、元どおりエレガントに真珠を身につけた彼女が映し出されます。
本作にはこのような映像が多用されていて、
私たちは彼女の狂気の淵を共にのぞいているような感覚に陥ります。

 

実はこの、サンドリンガム・ハウスの近隣にダイアナの実家があるのです。
今はもう誰も住んでおらず、朽ちかけて立ち入り禁止になっているその屋敷。
ある夜ダイアナはこっそり抜け出して、その屋敷に向かいます。
かつてのスペンサー家。
朽ちかけた廃墟、それはつまり、現在のダイアナの心の風景なのかも知れません。
もう生きる気力さえもなくしたダイアナですが・・・。

その後の彼女の決断はご存じの通り。
でもそうした決断が、結局はさらなる悲劇を巻き起こすことになるわけですが。
そうであっても、彼女はあのまま王室に残ることはやはりできなかったでしょうね。
ありのままの自分、“スペンサー”を取り戻すことの方が大事なのでした。

本作はフィクションではありますが、
実際のダイアナ妃の心境にかなり迫っているのではないかと思います。

シンデレラは王子と結婚しても案外幸せではない、というわけ。

 

<シアターキノにて>

「スペンサー ダイアナの決意」

2021年/ドイツ・イギリス/117分

監督:パブロ・ラライン

出演:クリスティン・スチュワート、ジャック・ファーミング、
   ティモシー・スポール、サリー・ホーキンス、ショーン・ハリス

 

重圧度★★★★☆

満足度★★★.5

 


決戦は日曜日

2022年10月14日 | 映画(か行)

努力、奮闘、チームワーク・・・ではなくて

* * * * * * * * * * * *

とある地方都市。
地域に強い地盤を持つ衆議院議員・川島昌平の事務所で、私設秘書として働く谷村(窪田正孝)。
衆議院解散のタイミングで川島が病に倒れ、
次の選挙で川島の地盤を引き継ぎ、川島の娘、有美(宮沢りえ)が出馬することに。

政治には全くのド素人、世間知らずで自由奔放、
熱意だけはあふれる彼女に振り回されながら、
谷村は彼女を当選に導くために奔走することになります。

そんな中、有美に次第に見えてくるのは政治や選挙の裏側。
その癒着や裏取引などに、正義感の強い有美は耐えられなくなってきますが・・・。

ここで、谷村はすでにもうそんな政治の世界は当たり前に思えていたのです。
そんなものだと割り切って、自身も事なかれ主義で
周囲に流されるままに、汚濁にまみれていたのです。
けれど谷村は、有美の気持ちに次第に感化されていきます。

有美を中心としてしっかりと陣営が作られている中、
今さら出馬を辞めるというのはあまりにも困難。
そこで有美と谷村は「落選」を目指して動くことにする・・・。

これまでも選挙に出馬する物語は色々あったと思うのですが、
そういう努力とか奮闘、チームワークの話ではなくて、
「落選」しようとする話、というのがなかなか洒落ていました。

有美役宮沢りえさんは、はまり役。
他にはまりそうな人はちょっと思い当たりません。
そしてまた、やはり窪田正孝さんもいいんだなあ・・・。
こちらは他にも適役そうな人はいるけれど、それだと別の「谷村」になってしまいそうです。

事なかれ主義、そしてさほど押しが強くはない。
優しいのだかやる気がないのだか・・・
しかし、仕事は意外とそつがない。
この微妙な感じ・・・。

 

<WOWOW視聴にて>

「決戦は日曜日」

監督・脚本:坂下雄一郎

出演:窪田正孝、宮沢りえ、赤楚衛二、内田慈、音尾琢磨

 

悪戦苦闘度★★★★☆

満足度★★★★☆