映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「左岸 上・下」 江國香織

2012年09月30日 | 本(恋愛)
福岡、東京、パリを結ぶ女の一代記

左岸 上 (集英社文庫)
江國 香織
集英社


左岸 下 (集英社文庫)
江國 香織
集英社

                      
                    * * * * * * * * * 

かつての「冷静と情熱のあいだ」の著者二人が、
再び、一つのストーリーを女性側と男性側から綴ったストーリーです。
ボリュームたっぷり、上下二巻×2。
江國香織さんが女性側から書いたものがこの「左岸」。
辻仁成さんが男性側から書いたものが「右岸」。
福岡、東京、パリ。
舞台を移しながら語られる、男と女の一代記となっています。
どちらから読むか迷いますが、
ここはやはり女性の立場で江國香織さんから行く事にしましょう。


さて、「左岸」です。
福岡市。
主人公茉莉は2つ上の兄惣一郎と、
隣家に住む幼馴染の九の3人でいつも遊んでいました。
聡明な惣一郎を茉莉も九も大好きで、
三人でいればいつも幸せで何も怖いものがなかった。
ところが、惣一郎は人並み外れて早熟で、ある日突然自殺してしまいます。
茉莉と九、二人の幸せな子供時代はそこで幕を閉じ、
劇的な人生の波に二人は飲み込まれていく・・・。


この二人は、惣一郎を軸に心の奥底でつながっているのですが、
実際にはほとんど接点がなく時間が流れていきます。
なんと冒頭は、17歳の茉莉が男と駆け落ちをして東京に出てくるというところから。
もちろん、九ではありませんよ。
でもその男とはまもなく別れ、別な男と福岡に舞い戻ってきます。
まあ、奔放と言えば奔放。
どんな時も彼女は本気ですが、
実はいつも心の底に九を置いている、そんな気がします。
しかし九の方も、ある日自分の思いを茉莉に告げたきり、
放浪の旅に出てしまうのです。
なかなか、この二人一緒のシーンが出てこないので、やきもきさせられますが、
けれども茉莉は着実に自分の人生を歩んでいきます。


でも、なぜか彼女とつきあう男性はぐうたらになって身を持ち崩すか、死んでしまうかどちらか・・・
という両極端で、結局長続きはしないのです。
そんな中で生まれた一人娘さきの成長を見つめながら、
年齢を重ねていく・・・。
茉莉自身の母親と茉莉との相克。
そして茉莉と娘さきとの相克。
母と娘の二重写しが物語に厚みを加えます。


それから今作を強くイメージ付けているのが博多弁。
茉莉は絵のモデルとして時にはパリに渡ったりもするのですが、
この博多弁こそが、彼女をファンタジックな存在とせず、
きっちりしたたかに生きる生身の女とすることに貢献しています。
約半世紀に渡る物語となりますが、
あの、一人で「うったうったうー」と唱えながらダンスを踊るエキセントリックな少女が、
こういうふうに年を取る・・・ということが、
ものすごく説得力がある気がします。
確かに、こういうふう以外にはならないですよね。
取ってつけたようなハッピーエンドにはならないのですが、
でも何やら素晴らしい充足感が残ります。
朝の連続テレビドラマにもなりそうな、女の一代記。
読みごたえたっぷりでした。


さてところで、実は九には不思議な力があります。
今作ではあまりそのことには触れられていないのですが、
私たちは「右岸」ではまた全く別の景色を見ることになります。
今現在、まだその半ばほどまで読んだところですが、
果たしてそのラストは・・・??
つい期待してしまいます。

「左岸 上・下」江國香織 集英社文庫
満足度★★★★☆


ジョン・カーター

2012年09月29日 | 映画(さ行)
劇場の大画面、そして3Dで見るべきだったのかも



                 * * * * * * * * * 

今作の原作は、1912年に発表された
SFヒロイックファンタジー「火星のプリンセス」。
アンドリュー・スタントン監督が子供の頃から夢中になり憧れた作品で、
ついにアニメでなく実写という形で映画化にこぎつけた、
というイワクがあるのです。
・・・というような前フリを一応しておくことにしましょう。


時は1868年、アメリカ南北戦争で活躍したジョン・カーターでしたが、
ある事件ですっかり生きる意味を見失っていました。
そんな彼がある日突然、地球から遠く離れた火星=バルスームに瞬間移動してしまいます。
バルスームには、緑色の肌で手が4本というサーク族かいて、
また、地球人とそっくりな赤色人はヘリウム国とゾダンガ国が敵対している。
そして、ゾダンガ国を影で操っているサーン族こそが
地球と火星を行き来できる不思議な力を持つ謎の存在。
ジョン・カーターは故郷アメリカにいた時同様、
人の争いごとなど無関係、自分は関わりたくないと思っているのですが、
ヘリウムの王女デジャーと知り合うことで
否応なく争いに巻き込まれ、
そしてついにはヘリウム国を守るため、立ち上がります。



ジョン・カーターは、地球上でも凄腕ではありましたが、
バルスームにおいては重力の関係でほとんどスーパーマン。
なるほど、こういう設定は興味深いですね。
当時のアメリカの、同国人でありながら南北に敵対していたこと、
またさらに原住民であるインディアンとの争いもあったことなど、
双方の事情がリンクしているところはなかなかいい。


ジョン・カーターはバルスームで飛行物を始めて目にします。
光で空をとぶ船。
太陽光パネルが羽のようになっている、というのも面白いなあ。
なんともブサかわいい巨大な犬のようなウーラも大好きでした。
サーク族の卵からかえったばかりの赤ん坊が、
ジョン・カーターに甘えるみたいにくっついて眠っていたのが、
なんとも可愛くてつい笑ってしまいました。



このように、結構気に入ったシーンもあったのですけれど・・・
なんだか全体的に、ドキドキ・ワクワク感がなくて、
ヒーロー・ヒロインにもやや華が足りない・・・。
冒頭に書いたように、このストーリーの原作は、
現在ある多くのスペースファンタジーの原点なんですね。
ここが出発点だった。
だから今これを見たら、ものすごくオーソドックスに思えてしまうのは、
無理もないことなのかも知れません。
そして、今作については、
やはり劇場の大画面、そして3Dで見るべきだったのかも知れません。
それなら迫力もあって、もう少し楽しめたのかも。
決して出来が悪いわけではないのですが、
大満足には何かが足りない・・・、そんな印象でした。

ジョン・カーター DVD+ブルーレイセット [Blu-ray]
テイラー・キッチュ,リン・コリンズ,サマンサ・モートン,マーク・ストロング,キーラン・ハインズ
ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社


「ジョン・カーター」
2012年/アメリカ/133分
監督:アンドリュー・スタントン
原作:エドガー・ライス・バローズ
出演:テイラー・キッチュ、リン・コリンズ、サマンサ・モートン、マーク・ストロング、キアラン・ハインズ

依頼人

2012年09月28日 | 映画(あ行)
否応なく大人びなければならない少年

           * * * * * * * * * 

11歳の少年、マーク・スウェイ。
頭が良くて、やんちゃ。
隠れてタバコを吸ったりもする生意気な少年です。
ある日、弟リッキーと共に森へ遊びに行き、
一人の男が自殺しようとするところに出くわします。
車の排気筒にホースを繋ぎ、車内に導入。
マークは、排気筒からホースを外し、自殺を阻止しようとしますが、
男に見つかってしまいます。
逆切れした男はマークに自殺の道連れを強要すると共に、
自分が自殺する理由
-マフィアが上院議員の死体を埋めた場所を知ってしまったこと-
を告げます。
マークはやっとのことで逃げ出すことができましたが、男は結局拳銃自殺。
さて、しかしマークは大変危険な秘密を知ってしまったのです。
マフィアはマークの口止めのため、殺し屋を放ちます。
マークは非常に危険な秘密を知ってしまったことを自覚しています。
さっそくFBIがマークに証言を迫るのですが、
うかつなことを言っては危険だと知るマークは、弁護士を依頼。
真実を語るべきか否か。
またマークに襲いかかる危機を切り抜けられるのか。
少年を主人公とした二重のサスペンスを楽しませてもらいました。


今作は、ブラッド・レンフロに興味があって見ました。
彼にとってのデビュー作ですが、ちょっぴり拗ねた感じの美少年。
魅力あります。
ちょっぴり斜め上目線で大人をからかうような表情。
いいなあ~。
おまけに、他の出演陣もいい。
連邦検察官には、トミー・リー・ジョーンズ。
彼は自分の州知事選の功績のために上院議員の行方を躍起になって探しており、
マークに無理矢理にでも証言をさせようとします。
マークの弁護士役となるのがスーザン・サランドン。
彼女はたまたま飛び込んできたマーク少年の弁護をたったの1ドルで引き受けます。
彼女は離婚した夫に子どもを奪われ、
自暴自棄でアル中になっていた時期がありました。
そんな訳もあって、孤立無援のマークに肩入れしたくなってしまったのですね。


マークの家庭は母子家庭でトレーラーハウスに住むかなりギリギリの生活。
弟リッキーはこの事件で精神的障害を負ってしまい、
付き添いのため仕事を休んだ母はすぐにクビ。
自分が何とかせねばと焦るマーク。
こうした背景もなかなかうまくできています。
否応なく大人びなければならい少年という設定が、
ますます美少年を引き立てるのですよね・・・。

というわけで、思わぬ拾い物をしたという感じの一作でした。

依頼人 [DVD]
ジョン・グリシャム,アーノン・ミルチャン,スティーブン・ルーサー
ワーナー・ホーム・ビデオ


1994年/アメリカ
監督:ジョエル・シュマッカー
原作:ジョン・グリシャム
出演:スーザン・サランドン、トミー・リー・ジョーンズ、ブラッド・レンフロ、アンソニー・ラパグリア

「天才柳沢教授の生活 33」 山下和美

2012年09月26日 | コミックス
“嘘”も時には人を幸せにする

天才 柳沢教授の生活(33) (モーニング KC)
山下 和美
講談社


                      * * * * * * * * *  

やはり柳沢教授の少年時代が好きな私。
今回も柳沢少年のエピソードをご紹介しましょう。


第225話「彼女に聞きたくて」
柳沢少年のクラスに転校してきた寺山菊江。
お人形さんのように可愛らしい彼女は、義父が銀幕の大スター五所河原秀雄で、
彼女自身も名子役として多くの映画に出演し、人気が高いのです。
当然のように周りの皆は彼女に対してちやほやするのですが、
柳沢少年だけはいつもの通り。
綺麗なエナメルの靴を履いている彼女に、

「ところで寺山さん 
学校の中ではうわばきに履き替えていただけますか?」

凍り付く周りの空気。
柳沢少年はその後皆から無視されるハメになるのですが、
もちろん、彼はそんなことは少しも気になりません。
でも、寺山菊江は更に上手を行っており、
柳沢少年のこの意地悪な発言にもにっこり笑って返す。
ある時柳沢少年は、気になっていたことを彼女に聞きます。

「君は何故常に笑っているのですか?」

彼女はほんの一瞬険しい表情で

「だって、みんなに愛されることが私の仕事なのよ」

この凄まじいまでのプロ意識とプライドに圧倒されます。
けれど、柳沢少年はさらに考える。
では、何も演じていない彼女は一体どこにいるのだろうか・・・
人間観察が好きな柳沢少年、やはり、周囲の同じ年の子供たちからは突き抜けていますね。
でも、今作ではふたりとも年齢相応のところも見せてくれるので、楽しい作品になっています。



第228話「未来を生きる君たちへ」
クリスマスのお話です。
柳沢家では子供たちが大騒ぎ。
サンタクロースはいるか、いないか、口論になっているのです。
妹則子はサンタはいるといって譲らないのですが、
柳沢少年は超現実的なので、ハナからサンタは信じていません。
弟次郎は、お兄ちゃんを尊敬しきっているので、
兄がいないというなら、いないのだと思っています。
柳沢少年は夢いっぱいの妹に向かってこう言います。

「今夜はプレゼントはありません。
なぜならお父さんが長崎への出張から戻ってくるのは2日後だからです」

まあ、あまりにも身も蓋もありませんね・・・。

私も実は幼い頃にサンタの存在について、
近所の男の子と大げんかをしたことがあります。
もちろん私は「サンタはいる」派。
・・・でも実は薄々いないとわかっていたような気もします。
ただ、『いる』という夢を共有したかったんですよね・・・。

さて、ところがクリスマスの朝、
ちゃんとプレゼントが置いてあったのです。
そんなはずはない・・・と思いながらも柳沢少年は、
自分宛のプレゼント、心から欲しかった船のプラモデルを手にして、
どんどん心が高揚していきます。
その謎はやがて解けるのですが、
柳沢少年は『嘘』も時には人を幸せにすることを知るのです。


さて一方、現在。
孫の華子ちゃんが、柳沢教授の娘、世津子に
「サンタなんていない」
と言われて泣いています。
教授曰く
「いないと証明できない以上、いる可能性は否定できません」
・・・いいお話ですね!

「天才柳沢教授の生活 33」山下和美 モーニングKC
満足度★★★★☆

「天才柳沢教授の生活 32」山下和美

2012年09月25日 | コミックス
少年時代が好き

天才 柳沢教授の生活(32) (モーニング KC)
山下 和美
講談社


                           * * * * * * * * * 

この本は実は昨年12月、発刊まもなく買って読んでいたのですが・・・、
どうも特別にご紹介したい話がないようで・・・
寝かせたままになっていました。
そうこうするうちになんとまた次の新刊が出てしまい・・・。
やはり、せっかくなので一冊抜けるのも嫌だし、ということで
遅まきながらご紹介します。


冒頭、219話「遠く離れて」
なんだかこの頃お母さんの機嫌がとても悪い。
というのも近頃よく夜中にかかってくる電話のせい。
いたずら電話ではなさそうなその相手は、
いつも何語かよくわからない言葉で語りかけてくるのだけれど、
ちっともわからない。
「ヨモハラセンセ・・・」と、呼んでいるようで、
どうも番号を間違えてかけてきているようなのですが・・・。
柳沢教授は、もしかすると、うちとよく電話番号の似た
四方原教授と間違えているのかもしれないと思うのです。
けれど彼は2年前に亡くなっている。
柳沢教授はそれを相手に伝えようと思うのですが、
しかし、彼は電話にでることができない。
なぜなら、教授は9時できっぱり眠ってしまうので!!
はは・・・、ここが教授の教授らしいところです。
滅多なことでは生活習慣を変えません。
けれど2年前亡くなった四方原教授に
一体誰が何を伝えようとして夜毎電話をかけてくるのか。
好奇心がつのった柳原教授は、ある夜中、ついに自ら電話をとる・・・!!!
人と人の絆というのは、奥深いものですね。


223話「好敵手の追憶」
教授の少年時代のストーリーが好きです。
沈着冷静、頭脳明晰、三白眼のその少年は、
けれどもちっとも優等生ぶらず、人を見かけで判断したりもせず、
常に好奇心の赴くままに行動する。
そんな時同級だった相葉啓二氏はやはり優秀で、
政治の道に進み官房長官まで勤めた。
二人は小学校の時以来、何十年ぶりかで再開します。
相葉氏は語ります。

「私は誰にも弱みを見せたことがなかった。
親にも兄弟にも。
誰かに弱みをみせればそれですべてが失われると信じ続けてこの年まで生きてきた。
子供の頃、一番眩しかったのが君だ。
君は失うことなど少しも恐れず、純粋にあらゆるものに好奇心を抱いていた。」

そんな彼は、ある日柳沢少年に弱みを見られてしまったと思い込んで、
そのまま今日まで来てしまっていたのですね。
二人の性格、生き方。
まさにそれぞれの道。
時の流れが、どちらの生き方も肯定しています。


「天才柳沢教授の生活 32」山下和美 モーニングKC
満足度★★★☆☆

TIME/タイム

2012年09月24日 | 映画(た行)
SF的未来のヴァンパイアストーリー



                     * * * * * * * * * 

命の長さが通貨の代わりとなるという、
恐るべきSFアクションサスペンス。


舞台は、科学技術の進歩により、すべての人間の肉体的成長は25歳で止まり、
そこから先は、左腕に埋め込まれた体内時計が示す余命時間だけ
生きることができる、という世界です。
スラムに住む貧困層は、せいぜい1日分の余命をやりくりするのがやっと。
手をつなぎあう事で余命のやり取りができてしまうので、
強引に人の余命を奪うなどの犯罪も多発。
一方完全に居住地も隔離されている一握りの富裕層は、
永遠の命を謳歌する人々・・・。
救いようのない格差社会が描かれます。
主人公はスラムの住民ウィル。
彼がこの格差社会に立ち向かいます。



さて実のところ、資産の上では全く同じことが現実に起きており、
それが命の軽重につながっているというのも、
現実をそのまま透かしていますね。
ということで、今作のストーリー運びはともかくとして、
この世界のシステムを非常に興味深く見ました。
手をつなぎ合えば、余命のやり取りが出来る。
それはつまり、先に上げたように強盗もできますが、
人と分け合うこともできるのです。
家族や恋人。
文字通り自分の命を削って、自分の大切な人に分け与える命。
または、見知らぬ人にさえも分け与える命は、ほとんど神の域。
ウィルの正義感と優しさが、とてもいい。


一方、貧富の差にかかわらず、この世界の人々は子どもを除き、皆25歳なのです。
老人がいない。

だから本当は100歳を超える25歳もいれば、
先日25歳になったばかりのホンモノの25歳もいる。
(ウィルの実年齢は28歳。)
ところが精神的にはやはり次第に老成していくようなのです。
同じく肉体的に25歳の、シルビアの父や母の表情に、確かにそれなりの年齢を見ることができまして、
なるほど~と感心してしまいました。
もっとも、髪型などでかなり雰囲気は出ていましたけれど。



つまりこれはアレですよ。
永遠に年をとらない吸血鬼=ヴァンパイア。
他者の命を吸い取って生きながらえるという意味でも、同じですよね。
これはSF的未来のヴァンパイアストーリーなのです。
永遠の時を得て、果たしてそれが幸せなのかどうか。
現にウィルに100年の命を譲って自殺したのは、永遠の命に倦んだ富豪でした。
こんな社会ではただ倦怠に満ちるだけで、芸術など発展しそうにありませんねえ・・・
いろいろなことを想像できてしまう、非常にユニークな作品でした。

TIME/タイム [DVD]
ジャスティン・ティンバーレイク,アマンダ・セイフライド,アレックス・ペティファー,キリアン・マーフィ,オリヴィア・ワイルド
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン


「TIME タイム」
2011年/アメリカ/109分
監督・脚本:アンドリュー・ニコル
出演:ジャスティン・ティンバーレイク、アマンダ・セイフライド、キリアン・マーフィー、ビンセント・カーシーザー、オリビア・ワイルド

ポスター犬 9

2012年09月23日 | 工房『たんぽぽ』
ボールと戯れて



これでやっと、子犬3匹トリオ完成。


ちなみにレ・ミゼラブルは、この12月末公開。
ヒュー・ジャックマン、ラッセル・クロウ、アン・ハサウェイ、アマンダ・セイフライド
といった豪華キャストで、しかもミュージカル!!
楽しみですね~。


で、ようやく3匹勢揃い。
なかなか製作時間が取れないこの頃です・・・(T_T)






「フリーター、家を買う。」 有川浩

2012年09月22日 | 本(その他)
目指せ、母が安心して過ごせる新しい住まい!!

フリーター、家を買う。 (幻冬舎文庫)
有川 浩
幻冬舎


                 * * * * * * * * * 

以前から読みたいと思っていた作品ですが、ようやく文庫化となりました。
ただどうしてもこの頃私は、
有川浩作品の、暗くて深い主人公側と相手側の溝=対立構造が
気になってしまって仕方ないのです。
だから今作はじめの方、武(たけ)家とそのご近所の異常な対立関係には
「やっぱり・・・」とちょっとがっかりさせられたのですが、
まあ、そこを我慢すればなかなか読み応えのある作品でした。


せっかくの就職先を3ヶ月で辞めてしまい、
以後自堕落に親のすねをかじり、
時たまのバイトでしのいでいた甘ったれ25歳の誠治。
ところが、母親がご近所とうまく行かず、孤立。
かなり重篤な鬱に陥っていたのです。
誠治はそんなことにも何も気づいていなかった自分を深く恥じ、
一念発起、バイトに精を出し、職探しと母の癒しに奔走。
目指せ、母が安心して過ごせる新しい住まい!!


25歳とは言え、誠治は全く子どもでした。
周りの何も見えていなかったし、就職の意味も何もわかっていなかった。
実はこの武家にも、内部の対立構造がありまして、
“父”VS“母・誠治・姉”。
実際、この父もうんざりするほどいけ好かない人物ですが、
誠治の就職のためには、かなり的確なアドバイスをくれたりします。
さすがダテに長く会社員として勤めているわけではない。
だからこの家庭内対立構造の溝は、ちゃんと埋められるのです。
なあんだ、ちゃんとそういうことも出来るのではないですか。
有川さん。


終盤、誠治がようやく正規の職を得て、
そこでやりがいを見出し頑張っている姿には、胸がすきます。
やっぱり仕事っていいですよね。
今、職につきたくてもつけない多くの若い人達全てに、
このようなやりがいのある仕事を持ってもらいたい!!
おねがいしますよ・・・!
(誰に?)

「フリーター、家を買う。」有川浩 幻冬舎文庫
満足度★★★★☆

天地明察

2012年09月21日 | 映画(た行)
宇宙に馳せる思いは同じ



                        * * * * * * * * * 

冲方丁さんの原作本が、すごく面白かったので、
やはり見てしまいました。
江戸時代前期、日本独自の暦を作った安井算哲(渋川春海)の物語。


碁打ちとして徳川家に仕える算哲(岡田准一)は、
算術にも星にも人一倍興味がありました。
北極星の高さを測ることでその土地の位置がわかる。
彼は日本中の計測の旅、北極出地の一同に加えられます。
1年以上に渡る大変な旅ですが、
星が好き、算術が好きな一行は存外楽しそうなのです。

そんな中で算哲は、今の暦は800年も前から使われている中国の暦で、
実際には1日~2日ずれが出ていることを知ります。
正しい暦を作りたい。
それが彼のライフワークとなっていくのです。

ストーリーもろもろなどについては、こちらを御覧ください。
→「天地明察」冲方丁




さて、映画作品としては・・・
万人向けエンタテイメントとして、よくできていますね。
本を読んだだけではイメージしづらい部分も、映画なら一目瞭然。
そういうところがやはりいいです。
岡田准一と宮崎あおいの起用も華があるし、
その他のキャストも絢爛豪華。
会津藩主保科正之に松本幸四郎、水戸光圀に中井貴一。
ナレーションは真田広之、音楽は久石譲という念の入れよう。
ちょっとへそ曲がりの私は、あまりにもキラキラしい作品は避ける傾向がありながらも、
見てしまいまして、楽しませてもらいました。
豪華すぎるからといって、避ける必要もない、正当な感動作品。



江戸時代の人々の知識と技術。
決して現代に劣っていませんね。
計算機もコンピューターもなくても、星の軌道を計算で出すことができる、ということですが、
どんな道具があっても私には無理。
恥ずかしいことではあります・・・。



暦をつくり上げることも大変ながら、政治的駆け引きも大変なのです。
朝廷貴族と武士の確執。
彼らのやり取りで、今の大河ドラマ「平清盛」を思い起こしました。
ここには約500年の隔たりがありながら、構図としては同じなんですね・・・・。
貴族たちが自分たちの生活様式をかたくなにも守り通しているのもすごいと思ったりして。
いえ、その伝統は今も宮中に受け継がれているわけで、全く、感服します。

「天地明察」
2012年/日本/141分
監督:滝田洋二郎
原作:冲方丁
出演:岡田准一、宮崎あおい、佐藤隆太、市川猿之助、笹野高史、中井貴一、松本幸四郎

007 トゥモーロー・ネバー・ダイ

2012年09月20日 | 007
もはや“現代”の007

                       * * * * * * * * * 

007、シリーズ第18作です。
1997年・・・だから、15年前かあ。
でも、かなり現代に近い。
もうほとんどいかにも『古い』という感じがなくなってきているね。


中国近海を航行中のイギリス海軍艦が何者かに撃沈され、英中の軍事的緊張が高まります。
でもこれは、国家間の緊張を高めることを目的としたある人物の策略。
それは、新聞やテレビ・ラジオ等の報道を牛耳るメディア王、カーヴァー。
なるほど、情報を制するものはすべてを制する。
いかにも現代風の悪役像になってきたよね。
情報操作で世界を撹乱し、操る・・・というのは今だからこそ信憑性があるなあ。
はじめの方は、イギリス艦がGPSで自らの位置確認を行なっていたのだけれど、
カーヴァーがGPSのデータ処理を撹乱させたため、中国領海に入り込んでしまっていたということなのだよね。
う~ん、よくわからないけど、まあ、わかるよね。
うん。もうすっかり、今の世界の007ということだ。
ボンドカーをケータイで操縦する、なんてあたり、
もう一時代昔の夢ものがたりじゃない・・・と。
そうだねえ。


それから、今回のボンドカールは中国の国外安保隊員の、ウェイ・リン。
つまりは女スパイだね。
敵同士のようだけれど、戦争を望むわけではない両国の共通の敵がカーヴァーということで、
共同作戦に当たることになる。
それも以前のように極度にデフォルメされた“東洋の女”ではなく、
普通にスタイリッシュでカッコイイ、ウェイ・リンなのでした。
二人、手錠でつながれながら、バイクでのチェイスのシーンは、
ハラハラ、ドキドキ、そしてカッコ良かったなあ。
テンポも良くて、退屈しなくなってきたね。
はい。まずは及第のボンドシリーズでした。

トゥモロー・ネバー・ダイ (デジタルリマスター・バージョン) [DVD]
ピアーズ・ブロスナン,ジョナサン・プライス,ミシェル・ヨー,テリー・ハッチャー
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン



「007 トゥモーロー・ネバー・ダイ」
1997年/イギリス・アメリカ/119分
監督:ロジャー・スポティスウッド
脚本:ブルース・フィアスティン
出演:ピアース・ブロスナン、ジョナサン・プライス、ミシェル・ヨー、テリー・ハッチャー、ジュディ・デンチ


「雪と珊瑚と」 梨木香歩

2012年09月18日 | 本(その他)
著者はどこまでも厳しい

雪と珊瑚と
梨木 香歩
角川書店(角川グループパブリッシング)


                      * * * * * * * * * 

珊瑚はシングルマザー。
雪という赤ちゃんを抱えていますが、
仕事をしないと生きてはいけないのに、保育園は見つからない。
これまで泣くなどということのほとんどなかった珊瑚も、
あまりの心細さに涙がこみあげてきます。
そんな矢先、一枚の張り紙を目にするのです。
「赤ちゃん、お預かりします。」
すがるように訪ねたその先に、
くららというおおらかな年配の女性がいて、すぐに話はまとまったのでした。


今作は珊瑚が多くの人に支えられながら、
子育てと仕事を通して様々な気づきを得て行く物語です。
珊瑚自身は母親に愛された記憶が全くありません。
育児放棄でほとんど家に居ない母親で、食べるものすらもなかったという子供時代。
そんな記憶を打ち消すように、彼女は愛情をわが子に注ぎ込みます。
母と子。
それは一体のようで、でもやっぱり独立した個々の人間。
珊瑚には母親としては今も受け入れられない相手なのですが、
弱点のある人間として、母を見ることができるようになっていくのです。


くららは海外生活が長く、そこで覚えた手軽で美味しい料理を珊瑚に振る舞います。
野菜の力を引き出し慈愛に満ちたこんな料理を
多くの人に食べてもらえたら・・・、
珊瑚はそんな思いが高じて、カフェとお惣菜の店を開く決心をします。
こんな素人の思いつきが次第に実現へ向けて具体化していく様が、
丁寧に描かれていまして、ここも見所です。
無農薬、有機栽培の安心できる野菜。
これらを使ったお惣菜の店。
店で食べてもいいし、お持ち帰りもできる。
おまけに店はこんもりと緑に囲まれた民家を改装したもの。
まあ、いかにも今時の女性が好きそうな感じ。
女性誌のグラビアにありそうな・・・。
でも確かに、こんなお店が近くにあったらいいなあ・・・と思います。
ファッションではなく、どこまでホンモノかが問題なんですけどね。


子育てしながら、仕事も自己の理想に向けて頑張っている。
しかし、そんな珊瑚に向けて、著者はなかなか厳しい。
以前パン屋に務めていたときの同僚に、
どうも珊瑚を嫌っているらしい女性がいたのです。
その女性から、ある日珊瑚に届いた手紙には・・・

・・・あなたみたいな、いい加減な生き方をしている人が、
『私こんなにもまじめに生きているのよ』
と体中で叫んでいるようなポーズを取るだけで、
実際に世間がころころ騙されていく、
私はそばで見ていて不愉快でたまりませんでした。


わざわざこんなことを手紙に書いてよこすとは、なんて嫌なやつ!!
と私などは思うのですが、
珊瑚はなんと真摯な性格なのでしょう、

「彼女が言わんとしていることは確かに自分が感じていた葛藤の核心をついている
・・・まさかここまで直截な言い方で、
自分というもののあり方を指摘されようとは思わなかった・・・」


と感じています。
うわ、そこまで責めるのか。
そんなにまでも完璧な人なんていないよ・・・と言いたくなりますが、
梨木香歩さんは本当に容赦がありません。
多分珊瑚には、肩肘を張って精一杯頑張って、いつか母を見返してやろうと、
意識しないまでも、そんな思いがあったのではないでしょうか。
世間に向けて、と言うよりも、むしろ母に向けていたのでしょうね。
だからこのひどい手紙は、そうしたことの気づきとなる。
いつもながら、根っこのところは深い、
油断のならない梨木作品。


それから雪ちゃんの成長ぶりが、実に微笑ましく感じてしまいます。
遠い昔のわが子の柔らかいほっぺの感触が蘇ります。
みずみずしい命の感触が
今作に光と希望を与えてくれています。

「雪と珊瑚と」梨木香歩 角川書店
満足度★★★★☆

鍵泥棒のメソッド

2012年09月17日 | 映画(か行)
女性の胸が「キュン」とするとき



                * * * * * * * * * 


「運命じゃない人」、「アフタースクール」でお馴染みの内田けんじ監督作品です。


売れない役者、35歳、ボロアパート暮らしの桜井武史(堺雅人)。
彼は銭湯で、羽振りのよさそうな男(香川照之)が
滑って転んで意識を失った場に居合わせました。
そしてつい出来心で、その男と自分の荷物をすり替えてしまったのです。
滑って転んだ男・コンドウは、そのショックで記憶を失ってしまい、自分が誰かも思い出せません。
手元の荷物で自分を桜井武史と思い込んだ彼は、
住所を頼りにアパートへたどり着きましたが、
そのあまりのボロさと散らかり様に愕然とします。
さて一方、ホンモノの武史は、コンドウの居所に行ってみます。
実は、コンドウの正体は凄腕の殺し屋! 
彼のもとに、怪しげな電話がかかってきて、
コンドウと間違われた彼は、事件に巻き込まれていきます。

さて、そしてもう一人の登場人物。
雑誌編集者の水嶋香苗(広末涼子)。
彼女は突然職場で結婚宣言をするのですが、
結婚の予定日まで決まっているのに、肝心の相手はこれから探すという。
???と思っていると、彼女は記憶喪失のコンドウと知り合い、
いい雰囲気になっていくのですが・・・。

なかなか一筋縄ではいかない人物設定ですが、
やはり内田監督作品だけあって、あれよあれよという間にさらに意外な展開を見せていきます。
張り巡らされた伏線。
そして、最後にすべてが心地よく収束していくさま、
なんとも快感で、充足感に満ちたエンディングへ向かっていきます。
記憶を失ったコンドウが、やはり元の性格はそのままで
きれい好きで、計画的、前向き。
そんなところもよくできていました。



ところで、皆様はこの題名「メソッド」の意味をご存知だったでしょうか?
恥ずかしながら、私は意味を知らなくて、
辞書で見ると「方法」とか「方式」とあります。
でも更には演劇用語で「メソッド演技法」というのがあるんですね。


メソッド演技の特徴としては、担当する役柄や劇中での状況やその感情に応じて、
より自然な形で演技を行う点である。
メソッド以前の演劇においては、役者は役作りや演技を行う際は、
発声や仕草、パントマイムなどのテクニックを使用し、感情や役柄の表現を行っていたが、
メソッドでは、そうした形式的で表現主義的な古典的な演劇手法と距離を置き、
より現実と近い、自然な演技を追求している。
そのため、演技をする過程においては、担当する役柄について徹底的なリサーチを行い、
劇中で役柄に生じる感情や状況については、
自身の経験や役柄がおかれた状況を擬似的に追体験する事によって、演技プランを練っていく。
代表的なメソッド演技としては、
映画『波止場』で兄から銃を突きつけられ、なだめようとするマーロン・ブランドや、
『エデンの東』で父親に泣きつくジェームズ・ディーンの演技が知られる。
(Wikipediaより)



そういえば武史がナイフで刺されて死ぬ練習を繰り返すシーンなどもありまして、
まさに、そういう意味での「メソッド」なのでしょう。



凄腕殺し屋コンドウのさらなる意外な正体を、どうぞお楽しみください!

→運命じゃない人」
→「アフタースクール」

「鍵泥棒のメソッド」
2012年/日本/128分
監督:内田けんじ
出演:堺雅人、香川照之、広末涼子、荒川良々、森口瑤子

デンジャラス・ラン

2012年09月16日 | 映画(た行)
二重の敵に対峙する、スリリングな展開



           * * * * * * * * * 

CIAを裏切り10年間逃亡を続け国際指名手配を受けている、トビン・フロスト(デンゼル・ワシントン)。
彼がついにCIAの手に落ち、南アフリカの収容施設に収監されました。

この施設の管理を任されていたのが、新人工作員のマット・ウェストン(ライアン・レイノルズ)。
普段はヒマを持て余していたマットですが、緊張が走ります。

しかし、この施設が謎の傭兵部隊に襲撃を受け、
他のCIA要員は全滅してしまいます。
トビンはマットを挑発するように言うのです。

「奴らは俺を狙っている。お前は俺を守る義務がある。どうする。」

やむなくマットはトビンを引き連れての逃亡を決意します。
マットは敵から自分自身とトビンの身を守らなければならないのですが、
そのトビンも、マットの元からの逃亡を狙っている超危険な人物。
超過酷な逃走劇が始まります。



はじめのうち、なんとも頼りなく思われていたマットが意外に優秀で、
小気味よく切り替わるカットとハードなハクションが次第に快感となってきます。
デンゼル・ワシントン演じるトビンは、海千山千の鋼の精神を持った男。
終始冷静でさすがの貫禄を見せますが、
若いマットが次第に本領を発揮していき、トビンの意表をついていくのも楽しい。
この二人が火花を散らすシーンが敵との対決以上にまたスリリング。
それぞれにカッコイイので、どっちを応援すべきか悩みます。


そもそも、何故トビンがこんな危険な目に合っているのかといえば、
それはある重大な極秘ファイルを彼が持っているから。
こんなもの、持ちたくはありませんね。
周りのすべてが敵だ・・・。
お定まりではありますが、誰が敵か見方か、
意外な真実も隠されています。



非常にスリリングな2時間。
堪能しました。


「デンジャラス・ラン」
2012年/アメリカ/115分
監督:ダニエル・エスピノーサ
出演:デンゼル・ワシントン、ライアン・レイノルズ、ベラ・ファーミガ、ブレンダン・グリーソン、サム・シェパード

「ある日、アヒルバス」 山本幸久

2012年09月14日 | 本(その他)
人に喜んでもらえるのが一番!


ある日、アヒルバス (実業之日本社文庫)
山本 幸久
実業之日本社


                      * * * * * * * * * 

やっぱりいいなあと思ってしまう、山本幸久さんのお仕事小説。
今作は、バスガイド、高松秀子(通称デコ)のストーリーです。


アヒルバス入社5年目の観光バスガイドのデコ。
ちょっぴりドジで特に優秀というわけではないけれど、この仕事は大好き。
時には、我が儘なお客に振り回されたりするのですが・・・。


彼女はその日のお客を、彼らの特徴を掴んで把握します。
例えばこの日の「これはお得!東京名所ぐるり旅」

賑やかなおばあちゃん3人組は"チャットモンチー"

おじさん4人にそのうち誰かの奥さんらしきオバサンがひとりのグループは"サザン"

ラフな格好のおじさん5人は"オレンジレンジ"

年寄りが半数以上の男性7人は"笑点"

男女のカップル二組は、その雰囲気から"オシドリ"と"不倫"

元気で写真撮りまくりの女子高生っぽい女の子には"チェキッコ"

何やら紳士風の初老男性は"偽伯爵"

・・・と、こんな具合。
なるほど、人の顔と名前を覚えるのが苦手な私でも、これなら印象に残りそう。


さて、ここに登場したチェキッコが、
後にバスガイドに憧れてデコの後輩として入社してきます。
思いがけず、その新人研修の教育係に任命されたデコ。
彼女の悪戦苦闘の日々が始まります。
教育係のもう一人、大先輩の"鋼鉄母さん"。
あまりにも厳しいので、デコ自身も苦手ですが、
鋼鉄母さんは子どもを保育園へ送り迎えしながらギリギリで頑張っています。
そんな姿を見ながらデコは働くことの大変さ厳しさを知り、
そしてなお自分の仕事が大好きになっていくんですね。
いつもながら山本幸久さんが描く、
頑張っているお仕事人には元気を分けてもらう感じです。
何よりも自分の仕事が人に喜んでもらえること、それが励みになるんですよね。
・・・けれど私のような事務職は、なかなか顧客の満足が目に見えたりしないので、
ちょっぴり虚しいことがあります・・・。
デコがうらやましい!!


この文庫版には特別書きおろし短編「リアルデコ」がついていまして、
東京スカイツリー登場。
お得です!

「ある日、アヒルバス」山本幸久 実業之日本社文庫
満足度★★★★☆

マイ・フレンド・フォーエバー

2012年09月13日 | 映画(ま行)
少年たちの友情に涙・・・

                      * * * * * * * * * 

HIVに感染した少年と、
彼を助けようと治療薬探しに奔走する少年との友情を描きます。


12歳の夏休み、ちょっぴり悪ガキのエリック少年。
けれど、母は仕事で忙しく、遊び相手も居ません。
そんな時、隣家に越してきたデクスターと知り合います。
この家にはエイズの子がいると、すでに町では評判になっていました。
1995年のこの頃は、HIV感染者には今よりもずっと偏見がつきまとっていました。
同性愛者であるとか、
近くによるだけで伝染るとか。
デクスターは輸血によってHIVに感染していたのです。
エリックも始めは
「お前が隣に越してきたせいで、ホモの友達だなんて言われるんだ」
と、相手にしないふうだったのですが、
次第に孤独な魂が呼び合うように親しくなっていきます。


エリックは言います。
「パンに生えたカビからアスピリンが見つかったように、
きっと身近なものに特効薬がある。」
それで始めは、いろいろなチョコを食べまくってみるのですが、
一緒に「実験」した自分までもがお腹を壊して失敗。
次には、いろいろな植物の葉を煎じて飲んで見ることにしました。
・・・けれども、これはちょっと危険なことでもあったのです。
そんな時、ルイジアナの医師が植物からエイズの特効薬を発見した
というニュースを見て、
その医師のもとへ行こうと決心。
少年二人が筏で川を下るという珍しいロードムービーとなります。


この旅は、病弱なデクスターの体調が心配でハラハラしてしまうのですが、
それにしても、鎖から解き放たれた犬みたいに、
なんとも自由で伸びやかな二人に、心が沸き立ちます。
しかし、ある夜うなされるデクスターが、こんなことを言います。
「暗いところで目を覚ますと、
自分が宇宙の果てにいるのではないかと、恐怖でいっぱいになってしまうんだ」
そうではない。
ちゃんと地球上にいるんだと安心できるように、
エリックはデクスターにあるものを渡すのです。


子どもなりの無邪気さと一生懸命さで、友を気遣うエリック。
二人の友情に、涙、また涙の感動作です。



それにしてもエリック役のブラッド・レンフロのなんて端正な顔立ち。
紛いもない美少年。
うーん、でも近ごろの作品では見かけないし、どうしているのだろうと、
ちょっと調べてみて、ショックを受けてしまいました。
・・・全く私の認識不足でしたが、
ブラッド・レンフロは2008年に25歳という若さで亡くなっているのです。
ヘロインの過剰摂取とのこと・・・。
残念です。
そういえば、彼は「ゴールデンボーイ」という作品にも出演していて、
私も見ているのですが、その時にはこんなことは知らずにいたわけですです。


→「ゴールデンボーイ」
(ここでも、彼が美少年であることはしっかりチェックしてましたね^^;)


相当手遅れですが、この先もう少し、彼の出演作を見てみようと思います。

マイ・フレンド・フォーエバー [DVD]
ブラッド・レンフロ,ジョセフ・マッゼロ,アナベラ・シオラ,ダイアナ・スカーウィッド,ブルース・デイヴィソン
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン


「マイ・フレンド フォーエバー」
 The Cure
1995年/アメリカ/99分
監督:ピーター・ホートン
脚本:ロバート・クーン
出演:ブラッド・レンフロ、ジョセフ・マゼロ、アナベラ・シオラ、ダイアナ・スカーウィッド、ブルース・デイヴィソン