ふろむ播州山麓

旧住居の京都山麓から、新居の播州山麓に、ブログ名を変更しました。タイトルだけはたびたび変化しています……

イスラエルの迎撃システム

2014-08-07 | Weblog
 ガザ地区からハマスが発射したロケット弾は、ほとんどがイスラエル軍によって撃ち落とされたといいます。一方、ガザには防御するためのシステムなどあるはずがありません。高城剛さんのメルマガから、イスラエル軍の迎撃システム記事を転載します。


【ガザ侵攻で兵器プロモーション】(世界の俯瞰図・高城未来研究所「Future Report」)

 戦争兵器は、実際に使用しなければその性能がわかりません。いくらスペックだけみても能力は計り知れず、例えば、自動車を購入する際に、スペックやデザインは素晴らしく、また、デモ映像もよく出来ていたとして、実際に運転するか、走っているのをキチンと見なければ「実用的」価値はわからないのと同じです。

 現在、イスラエルのガザ侵攻によって、多くの兵器会社がプロモーション機会として利用している現実があります。

 一番大きな「製品」は、別名「アイアンドーム」と呼ばれる「全天候型ミサイル防衛システム」です。事実、パレスチナとイスラエルの民間人をあわせた死者が、パレスチナが1300名を超えているにの対し、イスラエルが50数名しかいないのは、この「アイアンドーム」のためだ、と喧伝している人たちがいます。死者数の違いを問題だと考える方も多いと思いますが、ハマスも、実はこの一ヶ月で1000発以上のミサイルをイスラエルに発射しており(原発を狙ったものも含まれます)、それらを阻止しているのが、この「アイアンドーム」で、結果、死者数に大きな違いが出る事になりました。

 2011年に実戦配備が始まったこの防空システム「アイアンドーム」は、中距離ロケット弾などの射程4km~70kmの兵器を着弾前に迎撃する事が可能で、開発はイスラエル企業が手がけていますが、資金提供と事実上システムの共同開発に関わっているのは米国です(ボーイング社など)。

 点在配備できる可搬型のミサイル発射端末とメインシステムの組み合わせによって、あらゆる地形に対応可能で、「BMC」と呼ばれる「バトル・マネージメント&コントロールシステム」は、バッテリー駆動で動く様にできており、まったく電源が無い砂漠だろうが、複雑な地形な山岳部であろうが、どこでも組み上げる事が可能なシステムです。

 この「アイアンドーム」が、いままでの迎撃システムとは違うのは、衛星やレーダーとリンクし、設定された人口密集地にむけて打たれたミサイルを「優先的」に迎撃することができる点にあります。一度に多くのミサイルが向かってきた場合、優先的に撃墜する砲弾を決める必要がありますが、瞬時に、迎撃のプライオリティがAIによって判断され、被害を最小限に留める事ができるのです。その「瞬時の判断能力」と「モバイル性」、「分散型」、そして「トータルサイズを自由にできること」などが兵器業界で大変高く評価され、この度ついに「実用的」プロモーションに大成功しています。

 既に、この「アイアンドーム」にかわる新型の開発も進んでおり、この新型は長距離ミサイルにも対応し、マイクロバンド帯域を使った衛星により、広範囲に渡り迎撃可能な新型システムだと発表されています。

 しかし、現行商品の「アイアンドーム」でも、保守費用は極めて高く、その費用は年間で200億円を超えるほどなのですが、その金額を実は米国政府が様々な形で支援しているのが現実です(イスラエルの戦争費用は、日本のODAと同じで、結果的に米国内に循環する「戦争兵器エコシステム」があり、それに日本も組み込まれました)。

 日本もこの「アイアンドーム」の改良型を、沖縄あたりに配備したいのでしょうが、現在、興味を示しているのが、韓国とインドです(シンガポールは、既に小システムを導入済み)。韓国は隣国に北朝鮮を抱え、インドはパキスタンとの問題があります。特にインドは、広範囲に渡る防衛システムの構築が急務であり、サイズを自由に設定できる「アイアンドーム」を、とても高く評価し「特別製」をイスラエルに打診しています。

 今年、フランスで開催された兵器見本市「ユーロサトリ」2014に日本も初参加(三菱重工、日立、富士通、TOSHIBAなど)しましたが、「アイアンドーム」のような衛星を使った新型ミサイル防衛システムとロボット、そして無人機攻撃が兵器業界のトレンドであり、その為にも、衛星を軸にした宇宙開発(と名打った「海域」ならぬ「宇宙域」の取り合い)が急務と言われ、多くの国家や企業がここに向かっています。

 現在、「アイアンドーム」は、「もっとも効果的」で「もっとも実践でテストされた」ミサイル防衛システムと宣伝されておりますが、残念ながら、それは事実として実証されてしまったのです。



原文:http://www.mag2.com/m/0001299071.html
<2014年8月7日>
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする