自分の生まれた誕生日を忘れる人は、まあ、誰もいないだろう。^^ 年老いて、『…?』と物忘れする人は例外なのだろうが…。^^ ただ、年老いて・・とまでいかない人でも、訊(たず)ねられたとき、「あらっ? いくつだったかしらっ?」などと自分の年齢を隠蔽(いんぺい)される人がいることも事実だ。^^ そんなときは、詳しく捜査したくなる。^^ こんな人は知ってはいるが、忘れる人、いや、忘れたい人と言えるだろう。特にこの手の方には、ビミョ~~なご年齢の女性が多いようだ。^^
就業時間が終ったとある会社の事務所である。
「パンパカパァ~~ン!! 課長、おめでとうございますっ!」
若手課員の一人が、ヨイショ! ぎみにローソクに火がついた小さなケーキを手に、厨房(ちゅうぼう)から現われた。
「おっ! これはこれは…。サプライズだなっ! ははは…」
少し、はにかみながら、課長は笑顔になった。次の瞬間、課員一同から一斉に拍手が湧き起こった。
「ははは…。今年もとうとう来るべきものが来た! っていう感じなんだがな、実のところは…」
「なにを言っておられるんです。おめでたいじゃないですかっ!」
「ああ、まあな…。健康でこうして一年を過ごせたんだからなっ!」
「そうですよっ!」
キャリア・ウーマンで今年、五十路(いそじ)を迎えた課長補佐が若手社員を援護した。
「ああ、まあ、それはそうなんだが…。あと二年で定年だっ? これくらいの年になると、誕生日は忘れたくなるのさ。君だって、そうだろ? …おっと! これはひと言、多かった! ごめんっ! セクハラ発言だな…」
「いいんですよっ! 課長。事実なんですからっ! ホホホ…その分、奢(おご)ってもらおうかしら」
「おっ! いいよっ! お互い、誕生日を忘れる派、いや、忘れたい派だからな」
課内に爆笑の渦(うず)が湧き起こった。
誕生日をどう捉(とら)えるか? によって、忘れたい気分も変わるのだから不思議だ。ただ、私は忘れることにしたい。^^
完