忘れようとしても忘れることが出来ないのが恋の病(やまい)である。━ 寝ては起き、起きては見つつ幻(まぼろし)の ━ というやつだ。^^
とある会社の課内である。
「おいっ! あいつ、最近、随分やつれたんじゃないか?」
「そういや、そうだな…。身体の具合でも悪いんじゃないか?」
「いや、それはない! 昼にコンビニ弁当、二つ食べてたからな…」
「ふぅ~~~ん、食欲はあるんだ。それじゃ、あのやつれようはっ?」
「俺に訊(き)かれたって知るかっ!」
「恋の病じゃねえか?」
「そういや、事務員の忍(しのぶ)ちゃんがお茶出すと、手元(てもと)が震(ふる)えてるなっ!」
「そうそう! 借り物の猫みたいになっ!」
「借り物の猫か、ははは…そりゃ、いいっ!」
「こらっ! 笑うな、笑うなっ! やつが見てるっ!」
「ごめん、ごめん。それにしても…」
「まあ、そのうち忘れるさ…」
「時の経つのが薬・・と言いますからね」
「そうそう!」
恋の病は忘れるほど時が経てば、よくなるようだ。^^
完