結婚式の披露宴などで、よくお祝いの歌を歌ったりする。そういう席を苦手(にがて)とする人は、よく歌い出したり歌っている途中で歌詞を忘れることになる。要は上がってしまう訳で、脳内が真っ白になってしまう訳だ。^^ これではサッパリで、笑って誤魔化す訳にもいかず、なんとか収拾しなければならないから益々、脳内は真っ白になり、お豆腐状態になることになる。手作りの豆腐やお揚げは格別に美味(おい)しいが、披露宴会場でシドロモドロに歌われる歌は、さすがに戴(いただ)けない。^^
とある結婚式の披露宴会場である。お似合いのカップルの前で、来賓(らいひん)が次々に祝辞や歌でお祝いをしている。
「続きまして、新婦のお友達、五条知代さんからのご祝辞を頂戴いたします…」
式場係の進行役がマイクを握り、場馴(ばな)れした声で紹介する。友達の知代が場馴れしない態でスタンド・マイクの前に立つ。
「ま、間宮ちゃん、お、お目出度う! わ、わたし、歌いますっ!」
知代は、すっかり上がってしまい、支離滅裂に歌い出した。歌い出したのはいいが、途中で歌詞を忘れてしまった。さあ、大変だっ! 晴れの席だから、忘れましたと止(や)める訳にもいかない。知代は笑顔で即興(そっきょう)の替え歌をガナり始めた。これが、来賓者達には大受けで、拍手喝采(はくしゅかっさい)の渦(うず)を引き起こしたのだから物事はどう転ぶか分からない。^^ 結局、晴れの席をより晴々(はればれ)として歌い終わったのである。
晴れの席では、忘れることもアリ! なのである。^^
完