水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

忘れるユーモア短編集 (35)一夜漬け

2020年05月19日 00時00分00秒 | #小説

 日本人にとって食事の最後は、やはり香(こう)の物てある。香の物とは言うまでもなくお漬物のことだが、ついうっかり買い忘れることも主婦の方ならお有りだろう。そこで、どうするっ! という話になるが、少しの野菜があれば、それで一夜漬けを製作することが可能となる。製作などと言えば大げさだが、あっ! 余ったお野菜があったわね…などという少しの閃(ひらめき)きや判断力、調理技術などが必要となるから、やはり製作と言えるだろう。^^
 とある家庭の夕食風景である。
「おいっ! 琢磨は?」 「明日、急なテストがあるから一夜漬けするんですって」
「ふ~~ん。一夜漬けか…。で、夕飯は?」
「あとから食べるって…」
「なんだ、そうか…。? 漬け物が出てないぞっ!」
「あっ、そうそう! 忘れて切らしたから、一夜漬け作ったんだった…」
 妻は冷蔵庫から一夜漬けの小鉢(こばち)を取り出した。
「たまには一夜漬けもいいな…」
「テストの一夜漬けは、すぐ忘れるけどね」
「お前だって忘れて作ったんだろっ?」
「フフッ、そうだったわ」
「ははは…今夜は一夜漬けデーだなっ!」
「そうね」
 こうして、一夜漬けの夜は更けていくのであった。
 孰(いず)れにしろ、一夜漬けには忘れる・・という事実が付き纏(まと)うようだ。^^  
  
                                    


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